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赤色レーザーダイオードで植物栽培 スタンレー電気と東京大学が従来のLED光源を上まわる成長促進効果を実証

研究成果が「2025年農業技術10大ニュース」に選定

2026年1月27日 発表
図は、A.生育状況と、B.乾燥重量に関するLDとLEDの有意差が示したもの

 スタンレー電気は1月27日、赤色レーザーダイオード(LD)を用いた植物栽培について、東京大学大学院農学生命科学研究科 矢守航 准教授らの研究グループとの共同研究により、従来の発光ダイオード(LED)光源を上まわる成長促進効果を示すことを、世界で初めて実証したことを明らかにした。

 同研究は、レーザー・光デバイス技術の農業分野への応用可能性に着目し、高精度な植物栽培技術の確立を目的として実施したもの。その研究成果は、農林水産省が選定する「2025年農業技術10大ニュース」に選ばれた。

論文概要

 同研究では、植物栽培に用いられる人工光源として主流であるLEDと、近年注目されているLDを比較し、植物の光合成および生育に与える影響を検証した。

 赤色LD(660nm)は、植物の主要な光合成色素であるクロロフィルの吸収ピークに高精度で一致した単色光を照射できるという点が特長。

 実験では、複数の波長の赤色LEDとLDについて、それぞれの単色光をタバコの葉に照射し、光合成速度・気孔の開き方・水の利用効率などを測定。その結果、赤色LD照射下では、同等波長の赤色LED照射と比較して、光合成速度が最大約19%向上した。

 さらに、植物体全体の生育(乾燥重量=Dry Weight、葉面積、形態変化)への影響についても評価を行なった。

 12日間の連続照射試験では、赤色LD照射下の植物は、同等波長の赤色LED照射と比較して乾燥重量および葉面積が有意に増加した。また、赤色LED照射で確認された葉の黄化や光阻害といった生理的ストレス症状は、赤色LD照射では認められず、植物が光環境に対して高い耐性を示すことも明らかになった。

 これらの結果から、赤色LDはLEDに代わる次世代型の植物栽培用光源として有望であり、植物工場などの人工光型農業における生産性向上および省エネルギー化への貢献が期待されるとしている。

図は、LEDが比較的広い波長帯域で発光するのに対し、LDは波長帯が極めて狭い単色光を高精度で出力できることを示したもの

 同研究に取り組む背景としては、近年、気候変動や農業人口の減少といったリスクが高まる中、植物工場への関心と期待が高まっている。一方で、植物工場の普及・拡大に向けては、エネルギーコストを含む生産コストの採算性が大きな課題となっており、特に人工光源の性能は、生産性やランニングコストを左右する重要な要素となっている。

 これまで人工光源としては高効率で制御性に優れたLEDが主流であったが、同研究では、効率や出力制御性、配光技術などが進歩しているLDに着目し、植物工場の生産性向上に資する新たな選択肢の一つとして、LD光を用いた植物栽培の可能性を検証した。

研究成果のポイント

・光合成速度を最も効率的に高める赤色LDの波長が、660 nmであることを特定
・赤色LDは同等波長の赤色LEDよりも効率的な光合成をもたらす
・赤色LDには同等波長の赤色LEDよりも光合成を活性化し、植物の生育を効率的に促進する作用がある
・赤色LDは同等波長の赤色LEDに比べて「光合成において無駄の少ない、より効率的な光源」である