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「TGRとハースという日米連合F1チームが参戦することで人材育成が加速する」とTGR加地雅哉氏
2026年3月28日 18:49
- 2026年3月28日 実施
2024年からF1チームの「ハースF1チーム」と技術提携などを開始したTOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)だが、今シーズンはタイトルパートナーになるなど提携の範囲を少しずつ拡大しており、ハースF1チームはTGRハースF1チームとして今シーズンを戦っている。
そうした中で、TGRグローバルモータースポーツディレクターの加地雅哉氏は、「2026 FIA F1世界選手権シリーズ アラムコ 日本グランプリレース(以下、日本GP)」が開催されている鈴鹿サーキットで報道関係者の質問に答え、タイトルパートナーになったことでハースF1チームとの提携がどこは変わらず、どこが変わったのかに関して説明してくれた。
タイトルパートナーとなったが、いい意味で人材を育成するというハースF1チームとの関係は変わっていない
──ハースF1チームとの提携関係がタイトルパートナーという関係に拡大し、すでに2戦が終わり、この日本GPを迎えています。そうしたハールF1チームとの体制などがどのように変わったのか教えてほしい。
加地氏:いい意味で変わっていないというのが答え。タイトルパートナーになることの意味は、トヨタの側がブランディングを期待して、何か新しい物事を作り上げていくということではない。これまでやってきたテクニカルパートナーシップ活動を、もっと評価をしていくことだと考えている。モリゾウさんと小松さん(ハースF1チームのチーム代表)が共感して、“人を大切にしていきたい”といういう活動が発展していったということに尽きる。その人を育てるパイプラインをどんどん太くしていく、それがこのタイトルパートナーの意味。人を育てるパイプランを追求していった結果、タイトルパートナーという形になっただけで、その意味で体制自体は何も変わっていない。
なので、その人を育てるパイプラインを太くしていくという観点では体制は強化されている。実際にハースF1チームの中に何人かが入っていって一緒に仕事させていただいており、ドライバーを育てるという体制も強化している。そうした形だとご理解いただければいいと思う。
──今シーズンの車両には、ROOKIE Racing(ルーキーレーシング)のロゴが増えている。それは何を意味するのか?
加地氏:自分はROOKIE Racingの広報ではないので、どこまでいっていいか分からないが、知っている範囲でお答えすると、こちらも人と人の絆から生まれているものだ。モリゾウさんのプライベートチームであるROOKIE Racingと、ジーン・ハースさんがオーナーで、小松さんがチーム代表を務められていることからの協力関係で、これからもお互いに協力してやっていけるようにしたいっていうことの1つの現われ。ROOKIE Racingが日本でのハースF1チームの活動をサポートしたりしており、それに対してハース側がコックピットまわりにROOKIE Racingのロゴを入れていただいている。コックピットという場所に入れていただいているのは、人材育成を象徴する場所だから。
──そうした関係性の延長線上で、ROOKIE Racingのドライバーがハースのテスト、TPCテスト(筆者注:旧型の車両を利用したテストのこと、昨年の8月に富士スピードウェイでハースのTPCテストが行なわれたのは記憶に新しい)に参加したりとかの可能性はあるのか?
加地氏:可能性はあると思う。例えば昨年のTPCテストに乗った坪井翔選手は、ニュルなどでROOKIE Racingから走っており、当然ほかのドライバーにも可能性はある。ROOKIE Racingのドライバーはモリゾウさんと一緒にクルマ造りをしている仲間でもあり、そうしたドライバーと一緒にTPCを経験してもらうという可能性はあるし、本年もそうしたTPCテストができたらいいなと考えている。現時点ではそれをいつやるのかなどは決まっていないので発表はできないが、決まり次第きちんと発表していきたい。
──TPCテストの詳細などはまだいえないと思うが、昨年のように真夏のコンディションだとテストとしては難しい側面があると思うが?
加地氏:それは認識しているが、F1のカレンダーを見ると、それができるのはあの日程しかないというのもある。今年は4月がああいう状況の中で急に決まったので、もしそうなることが分かっていたら、そこでやりたいところだったが、なかなかそうはいかないのが現実。ただ、それでもエンジニアリングの観点では面白い要素はあるし、JRPの上野社長のお言葉を借りれば“ヒューマンモータースポーツ的な、ドライバーが自分の能力を最大限使ってスピードの限界を攻める”という観点では、まだまだドライバーの伸びしろは大きいと思う。
トヨタがタイトルパートナーとなり、日本人代表がまわす米国のチームという日米連合のハースF1チーム
──ハースは2レースを終えてランキング4位だが、ここがトヨタが貢献できている部分はあるか?
加地氏:いえ、そこに貢献できているなんてことはい。あくまでチーム側がしっかり仕事をした結果。このパートナーシップは、そうした短期間の結果を求めているものではない。中長期的なターゲットをしっかり置いてやっている取り組みで、1レースやシーズン中盤の結果などに一喜一憂する必要はない。われわれが目指している、チームの底力になる部分をしっかり支援して、土台を作っていくということ。そうした協力する中で、弊社側にも技術やノウハウが蓄積されていくし、チーム側も強くなっていくと思う。
──今回ハースの車両にゴジラがついている。これはTGR側の後押しのようなものがあったのか?
加地氏:それはないです。これもハースの広報ではない私がどこまで話していいのか微妙なところだが、この取り組みはジーンさんと小松さんのアイデアで、ジーンさんが昨年の桜のリバリーを見て、次の年どうするかという話の時にジーンさんがゴジラがいいといって、小松さんが関係各所と調整してこうなったと聞いている。基本的には弊社側で特に動いたわけではない。
──今回平川選手がリザーブで来ていて、坪井翔選手も来場されていると聞いている。また、F2では宮田莉朋選手が頑張っている状況だ。こうしたTGRのドライバーがF1で、TPCテストなども含めてもっと活躍していく可能性はあるか?
加地氏:はい。一番はTPCテストのように実車に乗ってもらうことだし、ハース側ともドライバー育成プログラムは一緒にしっかりやっていきましょうという話をしている。そのあたりを去年から始めて、本年はさらに具体的なプログラムをやっていく段階で、TPCテストももちろん本年もしっかりやっていく。そこにトヨタ出身のドライバーがしっかり乗って、世界最高峰の道にしっかりたどり着けるように育成を一緒にやっていくことで、実力でレギュラーシートをつかめるというのが理想だと思う。
やはり日本人ドライバーというのはF1に必要だし、日本のモータースポーツのためにもヒーローは必要だ。その理想は変わらないし、そこをしっかりサポートしていくことが大事。とはいえ、実力主義であるべきだというのは当然なので、しっかりと実力を示して認められたドライバーが上にあがれるようにサポートしていく道を作るというのが、このプロジェクトでモリゾウさんが一番やりたいことだと私は考えている。
──TPCに乗れるドライバーを増やす予定はあるか?
加地氏:この人もあの人もと増やしていくのは、あまりいい結果を得られないと思う。ある程度腰を据えて、その決めたドライバーがしっかり成長する環境を作ってあげることがわれわれの仕事。本年のTPCテストもそうした方針で行なうので、あまりサプライズはないかなとは思っている。
──日本のトヨタという立場で、この日本GPはどのように捉えているのか?母国グランプリなのか、それとも別の捉え方か?
加地氏:もちろん私自身も日本人だし、トヨタという会社も日本の会社だ。その意味では特別なグランプリであることは間違いない。弊社は日本の会社で日本の自動車産業をもっともっと強くしていきたいし、日本のモータースポーツ産業を持続可能な産業にしていきたいと考えている。その中で、ハースF1チームは小松さんがチーム代表で、ハースチーム自体は米国企業ということで日米連合のようなチームになっている。実際弊社の従業員でも、トヨタが応援するチームということで、応援に来てくれている方々も少ない。その中で、チームに対して何かできることがあればと考えて、さまざまなことを考えているのが、われわれにとっての日本GPなのだ。



