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アイシン、本社コムセンター1階「ヒストリーゾーン」リニューアル 「トヨグライド」など歴代製品約40点の展示で「挑戦の軌跡」を紹介

2026年6月22日 リニューアルオープン
見学費:無料
愛知工業(当時)が1961年から生産を始めた2速半自動変速機「トヨグライド」(展示品は3代目コロナ搭載品)

 アイシンは6月11日、愛知県刈谷市の本社敷地内にあるアイシングループの歴史や技術などについて紹介する展示館「コムセンター」の1階にある「ヒストリーゾーン」をリニューアルして6月22日から一般公開することに先駆け、報道関係者向けの事前説明会を実施した。

 コムセンターは誰でも(10人以上の団体、またはバスを使って来館する場合は前日までの事前申し込みが必要)無料で見学できる常設展示施設。2階建ての館内では、1階にリニューアルオープンしたヒストリーゾーンのほか、アイシングループの企業理念や概要などを解説する「コーポレートゾーン」を設定。2階では2025年のジャパンモビリティショーのアイシンブースで展示した「A’s GARAGE」の世界観をそのまま再現しているほか、「プロダクツゾーン」ではアイシングループが手がける「車体」「パワートレーン」「走行安全」「位置情報活用」「電子」「イノベーション」「アフターマーケット」といった製品・技術をジャンル別に紹介している。

 なお、コムセンターは基本的に月~金曜日のウイークデーに開館しているが、不定期で休館するケースもあるため見学する際はコムセンターのWebサイトに掲載されている「開館情報」を確認していただきたい。

展示内容をリニューアルした「ヒストリーゾーン」。入口の脇に今回のリニューアルのテーマとなった「THE CHALLANGE OF AISIN 挑戦の軌跡」の文字も刻まれている

「失敗を恐れるな」の精神は現代でもアイシンで受け継がれている

入口から入って正面に設定されている「創業期」の展示

 リニューアルで展示内容を大きく変更したヒストリーゾーンは、正方形に近い形をしたフロアに中央にコの字型のセパレーターを設置。その内側を1943年2月に「東海航空工業」として豊田喜一郎氏が設立した創業当時から1970年代までの「創業期」をスタート位置として設定。そこから順路を時計回りに進んでいくことで、アイシンが歩んできた歴史を年代とテーマ別に分けた10種類の展示什器から学べるようになっている。

スタート位置となる「創業期」の展示を見学したあと、壁沿いに続く順路を進みながら両サイドにある展示什器の展示内容を見ていくことでアイシンの歴史を学べる
1940年代~1970年代の「創業期」展示

「創業期」エリアは展示品の数は少ないものの、豊田喜一郎氏が陸軍本部の要請で航空機用エンジンの生産に向けて設立した「東海飛行機(東海航空工業が設立同年に改称した会社)」と、東海飛行機に工作機械を供給するため設立された「東新航空機」の2社が、戦後に「愛知工業」「新川工業」に生まれ変わり、1965年8月に合併して両社の社名を2文字ずつ組み合わせた「アイシン精機」が誕生するまでの歴史についてパネルで解説。

 また、愛知工業が戦後の需要増を見据えて開発した「家庭用ミシン」、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)から生産を委託された「トヨグライド」の2点を展示。1946年から生産を開始した直線縫いミシン「HA-1」は、高い機能性に加えて漆を用いる自動車用塗料で塗装された高級感ある外観も画期的なデザインとして国内外で評価され、自動車以外で初めて「TOYOTA」のロゴを配することを許された製品として会社の経営を支える柱となったという。

愛知工業の直線縫いミシン「HA-1」
漆を用いる自動車用塗料で塗装された高級感ある外観も評価され、自動車以外で初めて「TOYOTA」のロゴを配することを許された製品となっている
HA-1の解説パネル

 2速半自動変速機のトヨグライドは、トヨタの商用車「トヨペット・マスターライン」に搭載されて1959年に市販されたが、プラネタリーギヤや油圧機構による変速制御といった複雑な構造が与えられていたことから開発したトヨタ自身でも50台/月の量産に苦戦することになり、ミシン生産で精密加工技術を培っていた愛知工業も生産を受託。1961年から生産を始めてから1963年には累計生産1万台、1965年には累計5万台を達成して愛知工業が持つ高い技術力をアピールすることになった。

 このほか、新川工業ではクラッチなどトヨタ向けに自動車部品の製造を行なっており、1952年には研究開発部門を設立して独自技術の開発に乗り出したものの、最初に手がけたショックアブソーバーの開発に失敗。しかし、当時の渡部新八社長が掲げていた「失敗を恐れるな」「研究開発の失敗は、研究開発で償え」という経営理念を合言葉に開発は継続され、1955年に4輪用ショックアブソーバーの開発に成功。トヨタ車などに採用され、さらにドアロック、ドアヒンジなどの量産も実現して、この「失敗を恐れるな」という精神は現代でもアイシンで受け継がれているとアピールされた。

2速半自動変速機であるトヨグライドの展示
展示品は3代目コロナに搭載されていたもの
トヨグライドの解説パネル
「東海航空工業」としての創業時から1965年8月の「アイシン精機」誕生といった創業初期の歴史についてパネルで解説
「CHALLENGE 01」独自の技術で国産自動車の大衆化を支えたアイシン

「創業期」エリアに続く「CHALLENGE 01」では、アイシンが「量産の確立」と「技術の自立」で国産車の大衆化を後押しした歴史について、トランスミッション製品などの展示で紹介。

トヨタ「2000GT」に搭載された中容量FR5速MT「MF10」
4代目「トヨペット・コロナ」に搭載された小容量FR3速AT「03-55(トヨタ A40)」
「CHALLENGE 02」高度経済成長と多様化するニーズへの挑戦

「CHALLENGE 02」では日本が高度経済成長期を迎えた1970年代以降、アイシンでも主力である自動車部品に加え、得意とするギヤや樹脂に関する高度な技術をシャワートイレのノズルに転用し、伊奈製陶(現LIXIL)と共同開発するなど事業の多角化を展開。また、自分たちで生産していない商品を仕入れて販売する商社としての活動も手がけていたことも紹介されている。

「ハイラックス」で採用された「パワーウィンドウレギュレーター」
伊奈製陶(現LIXIL)との共同開発で1976年に発売したシャワートイレ「サニタリーナF1」
「CHALLENGE 03」石油危機・排ガス規制に立ち向かう技術革新

「CHALLENGE 03」では「石油危機・排ガス規制に立ち向かう技術革新」というテーマで、1970年代~1980年代に世界を揺るがした石油危機に対応し、合わせて環境負荷の低減にも取り組んだ製品や技術について紹介。「未来の高速交通手段」として注目されたリニアモーターカーの実現に不可欠な極低温状態を生み出すために手がけたスターリング技術はリニアモーターカーの走行実験で使用されたほか、1983年には「カローラ」に「スターリングエンジン」を搭載して世界初となる実車走行を達成していることもアピールしている。

「カローラ」に搭載して1983年に世界初の実車走行を達成した「スターリングエンジン」
スターリングエンジンの解説パネル
1980年に初代「アルト」、5代目「フロンテ」に搭載されて市販化された軽自動車用FF2速セミオートマチックトランスミッション「A100」
1983年に5代目カローラに搭載された小容量FF電子制御式4速AT「10-40LE」
「CHALLENGE 04」高級・大型車市場の拡大と、北米本格進出への決断

「CHALLENGE 04」では日本のバブル景気を背景にクルマの高級化、大型化が進み、合わせて高度化が顕著となった電子制御技術を活用してこれまでにない領域で車両の走行安全性、高性能化を推し進めたアイシンの技術が取り上げられている。

「アクティブサスペンションシステム」のシステム構成図とシステムで採用された「制御バルブユニット」「ピストンポンプ」「ECU」
A80型「スープラ」にオプション設定された「アクティブフロントスポイラー」
油圧制御式FR4速ロックアップ機構付きAT「A440」
「CHALLENGE 05」深刻化する交通問題への対応と未来技術研究への挑戦

「CHALLENGE 05」ではクルマの安全性能と環境負荷低減をさらに推進するため生み出された技術について紹介。「緩急制御式ABS」といった直接的な技術だけでなく、運転中のドライバーに分かりやすくルートを案内する「ボイスナビゲーションシステム」や適切な運転姿勢を取りやすくする「チルト&テレスコピック一体型コラム」といった人に寄り添う技術も「安全運転に資する装備」として取り上げていることもポイントとなっている。

初代「セルシオ」のマイナーチェンジモデルにオプション設定された世界初の「ボイスナビゲーションシステム」。音声ガイド付きの地図データはCD-ROMに収録され、8枚組みの全国版に対応するCD-ROMチェンジャーがトランクに設置された
4代目「スターレット」に搭載された緩急制御式ABS「E-ABS」
初代「アリスト」で採用された「チルト&テレスコピック一体型コラム」
「CHALLENGE 06」グローバル化と電子制御が切り拓いた安全・快適・燃費の新基準

「CHALLENGE 06」では安全・快適・燃費という多くのユーザーが価値を体感しやすい性能についてブラッシュアップしていく技術を紹介。後輪にも舵角を与えることで市街地走行の扱いやすさを高めるといった機能のほか、「エンジンフロントモジュール」はエンジンのチェーンカバーにウォーターポンプ、オイルポンプといった機能部品と水・油経路を集約して一体化。モジュール化によってコンパクト化を図り、軽量化によって燃費を向上。パワースライドドアは駆動装置をドアに内蔵。システムの簡素化で軽量化と合わせてコストを下げ、より多くの人に気軽に使ってもらえることを目指したとのこと。

2代目アリストに採用された「アクティブリアステアリング用アクチュエーター」
ルノー「メガーヌ」やダイハツ工業「ミラ」に採用された「ベーン(羽根)タイプ可変バルブタイミング(VVT)」
エンジンのチェーンカバーにウォーターポンプなどの機能部品と水・油経路を集約して、軽量化で燃費を向上させる「エンジンフロントモジュール」
2001年発売の初代「ヴォクシー/ノア」で採用された「駆動装置ドア内蔵型パワースライドドア」
「CHALLENGE 07」快適な暮らしを創り、持続可能な社会の実現に挑む

「CHALLENGE 07」では近年アイシンが注力しているエネルギー分野や「暮らしを快適にする」家庭向け製品を紹介。創業期からの伝統を受け継ぐミシンでは、2009年のグッドデザイン賞を受賞したプレスアームミシン「SP10」を展示している。

複数の室内機を1台の室外機で個別に制御できる「マルチタイプガスヒートポンプエアコン」のイメージ模型
人間工学に基づく扱いやすい形状が与えられ、2009年のグッドデザイン賞も受賞したプレスアームミシン「SP10」
「CHALLENGE 08」燃費性能、安全性、快適性を追求し世界をリードする

「CHALLENGE 08」では、多段化や軽量化によって効率を高め、燃費性能と快適性、走りの質などを飛躍させるATやCVTのカットモデルを多数展示。なかでもフォルクスワーゲングループからの要請によって世界初の中容量FF6速ATとしてVW「ニュービートル」、アウディ「TT」に搭載された「TF-60SN」は、限られたエンジンルーム内のスペースで6段変速を実現することに加え、長年に渡る取り引きで対応のノウハウが積み上げられている国内メーカーとは異なる独自の企業文化に適合する製品開発といった部分でも大きな転機となり、現在はアイシンの世界戦略機種に成長していると解説された。

VW「ニュービートル」、アウディ「TT」に採用された中容量FF6速ATの「TF-60SN」
初代「ヴィッツ」のマイナーチェンジ時に追加された小容量CVT「XA-15LN」
世界初の量産8速ATとして2006年にレクサス「LS」に搭載された高容量FR8速AT「L-001」
「CHALLENGE 09」電動化の礎と、大変革期への挑戦

 展示の最後となる「CHALLENGE 09」では、100年に1度の大変革期とも呼ばれている現在、そしてこれからの自動車産業で重要となるパワートレーンの電動化について、FF2モーターハイブリッドシステム「HD-10」とFF2モーターハイブリッドトランスミッション「HF-20」の各カットモデルを展示して紹介している。

2004年にフォード「エスケープ」に搭載されて登場したFF2モーターハイブリッドシステム「HD-10」
2010年に3代目「プリウス」に搭載されて登場したFF2モーターハイブリッドトランスミッション「HF-20」

「アイシンという会社を理解して、好きになっていただければ」と花井部長

株式会社アイシン グループ経営戦略本部 広報部 部長 花井博章氏

 事前説明会では、最初にアイシン グループ経営戦略本部 広報部 部長 花井博章氏が登壇。「皆さんもご存じのとおり、自動車業界では100年に1度の大変革期を迎え、アイシンでもフルモデルチェンジという言葉を掲げて変革に取り組んでいます。そんな時代だからこそ、アイシンが大事にしてきたもの、そしてこれからも大事にしていく変わらないものとして『挑戦』というキーワードを挙げて今回のリニューアルを行ないました」。

「過去にコムセンターのヒストリーゾーンを見学していただいたことのある方であればご存じのように、リニューアル前はアイシンがこれまでの歴史で生み出してきた製品そのものをできるだけたくさん見ていただくことをコンセプトにしていました。しかし、今回のリニューアルではアイシンがどのように時代やお客さまに寄り添って、どのように考えて挑戦してきたかということを知っていただくことを中心に置いています」。

「挑戦するということは難しい課題に挑むということでもありますので、実はアイシンの歴史にはたくさんの失敗があります。今回の展示内にもあまり日の目を見なかったような製品も含まれておりますが、そういった面も含めて、アイシンという会社を理解していただいて、好きになっていただければと考えております」とコメント。今回のリニューアルに込めた思いを説明した。

株式会社アイシン グループ経営戦略本部 広報部 広報室 展示会グループ グループ長 伊藤孝義氏

 花井部長に続いて登壇したアイシン グループ経営戦略本部 広報部 広報室 展示会グループ グループ長 伊藤孝義氏は、リニューアルオープンするヒストリーゾーンのあるコムセンターが、アイシングループ設立50周年を記念して2015年9月1日に建設されたことや、公開エリアとなっている1階、2階の展示内容について解説。

 すでに説明されているようにリニューアルでは「アイシンの挑戦の軌跡」をテーマに設定。失敗を恐れず、社会課題や新たな価値の創造に挑んできた先人たちの姿勢とその歩みを伝えることを目指し、製品や技術の展示に加え、その背景にある挑戦や情熱、できごとといったエピソードも紹介しているとアピールした。

 コムセンターではオープン以来、展示内容を2年に1回程度の頻度で大幅な改装などを行なってきたが、ヒストリーゾーンについては今回のリニューアルが初の変更となっているという。また、従来はできるだけ多くの展示品を見てもらいたいと考え130点ほどを並べていたが、今回のリニューアルでは重要な製品に絞り込むことで1つひとつを深く知ってもらうため展示を約40点に集約していると説明された。

リニューアルのテーマは「アイシンの挑戦の軌跡」
ヒストリーゾーンのフロアマップ
ヒストリーゾーンの概要
コムセンターの概要
コムセンター1階のフロアマップ
コムセンター2階のフロアマップ

コムセンター2階

ジャパンモビリティショー2025のアイシンブースでも展示された「アイシンの博士の愛車」

 リニューアルされたヒストリーゾーンのほか、コムセンター内にある各種展示についても見学する時間が用意されていたため、写真を中心に紹介していく。

2階に続く階段を上ってすぐの位置にある「A’s GARAGE」は、ジャパンモビリティショー2025で使用されたものをコムセンターのスペースに合わせて手直ししつつ有効活用
「ハイラックスサーフ」をベースとしたアイシンの博士の愛車は、ギラギラと光るメタリックのボディとスカイブルーを基調としたインテリアで未来感をアピール
「ストレスフリーエントリー」のデモンストレーション(37秒)
アイシンの知能化技術関する説明と製品展示
22世紀に向けたアイシン製品の進化を樹木に見立てた「進化の樹」
プロダクツゾーンの「パワートレーン」展示
アイシンが手がけるパワートレーン製品を一堂に展示
「GRヤリス」や「GRカローラ」に搭載されている「GR-DAT」。ここでは高容量FF8速オートマチックトランスミッションとしてカットモデルを間近に見学できる
eAxleの後輪駆動用(左)と前輪駆動用(右)を並べて展示。後輪駆動用はリアシートやラゲッジスペースに影響を与えにくいよう高さを抑え、前輪駆動用は狭いボンネット下スペースにも搭載できるよう前後長を抑えた構造になっている
5月の「人とくるまのテクノロジー展2026」の会場でも展示された3Dホログラムによる動的展示も、内容を入れ替えて体験可能としている
プロダクツゾーンの「車体」展示
パワースライドドアやセンサーを備えるドアハンドルなどの紹介
クッション内に設置した空気袋を作動させて乗員にマッサージ効果を与える「ニューマチックシート」
子供の存在をミリ波レーダーで検知して、子供が助けを呼ぶためのスイッチなどを組み合わせる「車内放置検知システム」
パワースライドドアやサンルーフを実際に動かして動作を体験できるデモ機
プロダクツゾーンの「走行安全」展示
「ドライバーモニタリングシステム」の体感デモ
各種シャシー製品の展示も行なわれている

コムセンター1階

コムセンター1階の「コーポレートゾーン」で展示されているBEVデモカー「i-mobility BEV Concept」

 コムセンター1階では、2023年に公開したアイシンの電動化製品を紹介するBEVデモカー「i-mobility BEV Concept」を「コーポレートゾーン」で展示しているほか、アイシンの社内プロジェクトでレストアされた3台の車両も展示されている。

i-mobility BEV Concept
アイシンの社内プロジェクトでレストアされた車両
1967年式の初代カローラ(KE10型)
1964年式の3代目トヨペット・コロナ
1966年式のトヨタ「スポーツ800」
アイシンでレストアした4台目のトヨタ スポーツ800とのこと
1階の受け付け脇にはアイシンのマルチモーダル対話AIエージェント「Saya」の姿も
コムセンターの外観