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「For the Engineering Race」を掲げ、ル・マン24時間を戦うトヨタレーシング
2026年6月13日 21:25
第94回ル・マン24時間レースにおいて、トヨタ自動車はこれまでのTOYOTA GAZOO Racingという体制から、TOYOTA Racingという体制で取り組んでいる。この体制変更については、東京オートサロン2026でトヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏、同 代表取締役副社長 中嶋裕樹氏の対決の構図の中で発表されたもので、大きな驚きをもって迎えられた。
TOYOTA GAZOO Racingは「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を掲げており、WRC(世界ラリー選手権)などに参戦。GRヤリスやGRカローラに代表されるように、明確に市販車を出していくことを志向している。この背景には、モリゾウ選手こと豊田章男会長の先の思いがあり、TOYOTA GAZOO Racingでは「People(ピープル):ドライバーやエンジニア・メカニックの人材育成」「Pipeline(パイプライン):データ解析・活用術」「Product(プロダクト):車両の開発」という3つのPを重視するという明確な指針を出している。
F1への参戦に関しては、2026年のWRC第1戦ラリー・モンテカルロ(つまりモナコ)を訪れた際に、「やっぱりスポーツっていうものは奥が深いし、その中で本当にコンペティティブにやっているところに、こちらの会社の都合で出たり入ったりは、それは無責任ですよ。だから、入る以上はね、入る以上はもう完全にね、完全に二度と抜けないぞという覚悟でやるために、今はトヨタのモータースポーツが取り組んでいるつもりなので。そうなると、トヨタがマニュファクチャラーとしてどんな貢献ができるんだと。どんな未来を作れるんだというところが大事になると思いますから、もうちょっとお待ちいただいて……」と語っており、モータースポーツの参加においてはマーケティング都合で出たり入ったりせず、しっかり会社の開発プロセス(人やクルマ)に組み入れたいという意図を語っている。
TOYOTA GAZOO Racingでは、そのゴールが市販車であり、市販車を常に「走る、壊す、直す」といったプロセスで進化させていくことを設定しており、ある意味とても明確になっている。
一方、今回のトヨタレーシングが掲げるのは、「モータースポーツの先端技術を通じて、長期的にトヨタの技術開発を支える基盤を強化していく」ということ。これは、市販車というゴールを設定するのではなく、トヨタの先端技術を開発していく場としてモータースポーツを選んだということだろう。
ル・マン24時間レースにおいて、トヨタ自動車は現在トップカテゴリのプロトタイプカーであるハイパーカークラスに挑んでおり、直接の市販車を発売する予定はない。ル・マンのハイパーカー規定発表時近辺において、市販車「GRスーパースポーツコンセプト」の開発発表を行なったものの、この車両開発は中止となっており、ある意味市販車とは異なった開発をハイパーカークラスで行なっている。
今回のトヨタレーシングでの参戦は、これを明確にしたもので、開発主体はGRカンパニーではなくトヨタ自動車のパワートレーンカンパニー。ハイブリッドシステムやエンジンなどを開発している部署で、「TS050 HYBRID」「GR010 HYBRID」「TR010 HYBRID」といったWEC(世界耐久選手権)で戦う、フロントにモーター、リアにエンジン+モーターというハイブリッドシステム開発してきた。このハイブリッドシステムはTHS(TOYOTA HYBRID SYSTEM)のレーシングバージョンということで「THS-R」と名付けられており、トヨタの高度な技術が注ぎ込まれている。
記者も2022年のル・マンへ向けたパワートレーンの搬出式に取材で参加したことがあり、その際はエンジンやトランスミッションをむき出しで見せてもらった(この時点で、90度V型を120度V型へと変更。当時は極秘だった)ことがあり、その秘密だらけのものものしい雰囲気は覚えている。門外不出の秘密がたくさん詰まったパワーユニットがル・マン用マシンの心臓部になっている。
この取材の際、東富士研究所のテストベンチでテスト用のパワートレーンを運転させてもらったが、その際にアクセルを踏み切ることができなかったのはよい思い出だ。横にいた小林可夢偉選手に「これアクセル踏んでエンジンが壊れてしまったらどうするんですか?」と聞いたら、「直すだけやん」と言われたものの、どう見ても数億円レベルのユニットを踏み切ることはできなかった。
話が若干それてしまったが、トヨタレーシングはそんなトヨタの最先端技術を突き詰めていくレーシングチームとして位置付けられたように見える。
リーダーもトヨタ自動車のCTO(Chief Technology Officer、最高技術責任者)である中嶋裕樹副社長に一任。ドイツ ケルンに拠点を置くTOYOTA GAZOO Racing Europe GmbHもTOYOTA RACING GmbHへと名称を変更し、中嶋副社長がリーダーとなった。
中嶋副社長は富士24時間レースの際に、ル・マン24時間レースに挑む思いを語っており、トヨタレーシングという形への変更も豊田章男会長に相談した際の「じゃあモリゾウの力を借りずにやってみたらどうだ」「ル・マンだってモリゾウの力なしで勝ってみろ」という会話がきっかけになっているという。
トヨタレーシングとしては、「もっといいエンジン」「もっといいシャシー」を証明する場がル・マン24時間レースであり、フェラーリやBMW、キャデラック(GM)といった強力なライバルがいることは、世界的にも強さを証明できることになる。
ル・マン24時間の決勝レース開始時刻は13日16時(日本時間13日23時)、「For the Engineering Race」を掲げたトヨタレーシングの戦いが始まる。




