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三菱ふそう、フランツィスカ・クスマノ新CEOが就任から100日のビジョンを語る 「新しい現実」に対応してアーチオンとしての相乗効果を最大化へ
2026年7月16日 05:00
- 2026年7月14日 実施
三菱ふそうトラック・バスは7月14日、同社の代表取締役社長・CEOのフランツィスカ・クスマノ氏が4月1日の就任から100日を迎えたタイミングで報道関係者向けの会見を川崎市の同社本社で開催した。
クスマノ氏は、日野自動車との事業統合による新会社「アーチオン」の傘下に入った三菱ふそうの新しいリーダーとして、就任から約100日間で得た知見や、今後の経営戦略について語った。
生産エンジニアからCEOへ、日本との深い縁
クスマノ氏は1989年生まれのドイツ人。自身のキャリアについて「商用車業界で15年以上の経験がある」とし、2011年にダイムラー社で鋳造生産部門の生産エンジニアとして大型エンジンのブロック製造に携わったあと、ハイブリッドエンジンの開発や生産管理、販売などを経験してきた。
直近では、2022年からウニモグなどの特装車を扱うメルセデス・ベンツ・スペシャルトラックス部門のCEOを務めていた。
日本との関係は、2013年から三菱ふそうの開発部門でハイブリッドエンジンの担当として日本に滞在していた経験がある。「数年ぶりに日本に戻り、三菱ふそうの社長に就任できたことを非常に嬉しく思っている」「三菱ふそうのトラックは全世界で信頼性、耐久性、安全性の代名詞となっており、これは私たちのDNAに長い間、根ざしている」と語り、ブランドへの強い自負をのぞかせた。
就任100日間で重視した「聴くこと」と現場主義
4月1日の就任以来、クスマノ氏が最も注力してきたのは「積極的な判断を下す前に、とにかく現場の声を聴くこと」であったという。「お客さま第一主義は単なるスローガンではなく、私の信念であり、戦略の基盤である」と強調し、日本国内だけでなく、インドネシア、オーストラリア、ポルトガルなどの主要拠点を訪問した。
特に三菱ふそうにとって海外最大の市場であるインドネシアでは、数十年におよぶ製品への信頼と、強固なサービスネットワークの重要性を再確認したという。また、オーストラリアでは大型トラック「スーパーグレート」やコネクティビティサービスへの高い関心があったとした。
新しい現実に対応できる三菱ふそう
そして、今後の三菱ふそうが立ち向かわなければならない課題を3つ紹介。それを「新しい現実」と表現した。
まず、1つ目は地政学的な緊張が高まっていて、世界的な不安定情勢が業界全体に影響を与えていること。2つ目はこれまで25年間にわたりダイムラートラックと共有してきたITシステムやデータからの分社・分離という課題があり、単独のシステムとして再構築する作業は極めて複雑なプロジェクトとなっていること。そして、3つ目はアーチオン傘下での日野自動車との統合だ。
同氏は「お客さまを中心とした活動」「戦略的なパフォーマンスの向上」「チームと人材への投資」を柱に据えて前進する姿勢を示した。特に日野との統合については、統合プラットフォームの活用により規模のメリットを活かすだけでなく、スピード感を持った開発体制を構築することを重視するという。
また、KPIについてもより顧客を中心とした考え方に変える。例えばオーダーからの納期や、修理にかかる時間をKPIとして管理していくという。
質疑応答
会見では、他社への対抗策、日野との差別化、新会社の運営体制について具体的な質問が相次いだ。主なやりとりは以下の通り。
──現在、脅威となっている中国メーカーに対し、アーチオンとしての競争力をどう高めるのか。サプライヤーの見直しや中国サプライヤー活用はあるのか。
フランツィスカ・クスマノ氏:アーチオンの体制は、アジアだけでなく世界のトラック業界における「ゲームチェンジャー」になる。日野自動車と開発、調達、生産の各部門で緊密に協力し、規模を活かすことは非常に重要だ。単なるコスト削減だけでなく、スピードのためでもある。
サプライヤーについても、ふそうと日野の両サイドで見直しを行なっている。地政学的な変化によりサプライチェーンには大きな圧力がかかっているため、柔軟性が高く、何かあってもすぐに立ち直れる堅牢なチェーンを構築することが優先事項。コストだけでなく、技術やサプライヤーの復元力を見極め、ケースバイケースで正しいバランスを取っていく。
──日本企業の強みと、変えなければならない点はどこか。
クスマノ氏:日本の製品の品質と信頼性は、世界中のどのお客さまを訪問しても「素晴らしい」と言われる。そして、ディーラー関係は絶対に維持すべき強み。
変えていかなければならないのはスピード。100%完璧なものを待つよりも、早く革新的なものを求める顧客も増えている。
──日本と海外の顧客のニーズに違いはあったか。
クスマノ氏:信頼性、安全性、そして燃費やTCO(総所有コスト)といった基本的な要求は世界共通だ。しかし、技術への要望には地域差がある。ゼロエミッションを強く求める市場もあれば、ユーロ3や4といった実績のある力強いエンジンを求める市場もある。
また、コネクティビティやフリート管理といった新しいサービスへの意欲も地域によって分かれる。私たちは川崎の本社でこれらのニーズを吸い上げ、地域特有の要望にも迅速に応えられる優先順位付けを行なっていく。
──自動運転技術について日野との協力で何が変わるのか。また、日本のドライバー不足にどう貢献するか。
クスマノ氏:自動運転は商用車業界において極めて重要な技術。日本のお客さまと話をすると、深刻なドライバー不足で苦しんでおり、高齢化が進むとアシストシステムも必要。自動運転への期待が非常に高いことに驚かされる。
日野と一緒になることで、多額の投資が必要な電子アーキテクチャやソフトウェアの投資の負担を分けることができる。ただし、自動運転には法律の整備や、社会全体の受容性が重要で、まずは商品開発を日野と協力して、時間をかけて実現に向けて進めたい。
──アーチオンとしてライバルである日野と同じ基盤の製品を売ることになるが、差別化はどうするのか。
クスマノ氏:アーチオンのなかで日野と一緒に仕事をすることになっても、全く同じ商品になるわけではない。間接部門、管理部門を一緒にするということ。パワートレーンや将来の技術は、常に差別化していこうと思っている。
お客さまに接するサービスネットワークは変えず、ブランドとしてネットワークは別に持つ。そして、海外ではこの点は重要で、グローバル競争で生き残るためには、一緒にやるべきところはやり、ブランドとしての個性は守るという両立が絶対に必要だ。
──クスマノCEOから見た、日野自動車の強みとは何か。
クスマノ氏:日野には長い歴史があり、特にトヨタグループとの関係を通じて得たオペレーションの知識や専門知識が非常に豊富だ。プロセスが安定し、常に改善するという考え方が組織に根づいている。
私たちは現在、ビジネスサイドでどちらの会社がどの分野で優れているか、効率がよいかを詳細に比較する必要がある。人事や開発など、日常業務のレベルまで見比べ、両者の「いいとこ取り」をしていきたい。
──フォックスコンとのバス事業における協業について、トラックにも波及するのか。
クスマノ氏:フォックスコンとの提携はフルスピードで進んでおり、今年後半には「ふそうバス」を800人規模の従業員で進めていく。これまでのバスに加えて新しいポートフォリオを加える。つまり、ディーゼルエンジンのバスに加えて電気のバスのラインアップを持つことが狙いだ。
日本のバス市場は非常に大きな課題を抱えている。日本のバス市場は非常に小さいと言わざるを得ないが、今後はディーゼルバスも維持しつつ、電気バスへの移行という大きな変革に対応していく。日本国内だけを見ていてはやっていけないため、だからこそフォックスコンとのジョイントベンチャーという道を選んだ。
現時点でトラック分野での協業は考えていないが、常に競争力のある解決策を模索しており、パートナーとともに歩んでいくつもりだ。





