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ポルシェ、グローバルイベント「Sportscar Together Day」開催 来場した911開発責任者のフランク・モーザー氏「GT3はNA+MTが最高であり、今のモデルがそのラストではない」

2026年9月12日 開催
ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京でグローバルイベント「Sportscar Together Day」が開催され、911の開発責任者であるフランク・モーザー氏(左から2番目)が来場

 ポルシェは世界10か所にブランド体感施設「ポルシェ・エクスペリエンスセンター」を展開しており、2027年にはシンガポールにも開設されることが決定している。そして日本では2021年に千葉県木更津市に「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(PEC東京)」がオープンした。

 このPEC東京を含む、世界中のポルシェ・エクスペリエンスセンターが連動して展開するグローバルイベント「Sportscar Together Day」が9月12日に開催された。

「Sportscar Together Day」は世界中のポルシェ・コミュニティが集い、それぞれの地域ならではのプログラムを通じて、ドライビングの歓びを分かち合うグローバルイベントとなっていて、PEC東京に至っては2026年でオープンから5周年となるため、PEC東京5周年記念イベント「Sportscar Together Day」のネーミングとなった。

千葉県木更津市にあるポルシェ・エクスペリエンスセンター東京。2026年に5周年を迎えた

「Sportscar Together Day」への参加はポルシェオーナーをはじめ、ポルシェファンを対象としたもので、募集開始から約4時間で定員に達するほどの人気だったという。そして当日の来場者はおよそ1102名(来場車両は567台)で、会場はポルシェファンの熱気に包まれるものとなった。

 当日用意されたコンテンツはさまざまで、他では見ることのできない多彩なポルシェ車両の展示、911やカイエンなどによるドライビング体験や同乗試乗。さらには特別なゲストが次々と登場するステージイベントなどが行なわれた。なお、イベントへの入場を含め、すべてのコンテンツは無料で楽しめるといった大盤振る舞いのものとなっていた(食事とグッズ購入は除く)。

ポルシェオーナーを中心に1000人を超える来場者があった
さまざまな年代のポルシェ車両も見ることができた
メインビルディング内のようす
展示車両
918スパイダーのマルティニ・レーシングカラー
718 ケイマンGT4 クラブスポーツ
911ダカール。ラリーデザインパッケージ
911ダカールは世界限定2500台
959
919ハイブリッドが屋外に置かれていた
こちらは歴代RSモデルの展示
車内に乗り込んでのサウンド体験も
ガレージでは子どもを対象としたキッズテクニカルクラスを開催。ハイブリッドシステムについて解説された
ポルシェデザインの時計。展示と販売が行なわれた
ホディンキーとのコラボレーションモデル
イタリアのエスプレッソマシンメーカー「ラ・マルゾッコ」。こちらではエスプレッソが振る舞われた
食事はレストラン906と、今回のために用意されたブースにてPECのある国の特色ある料理が用意された
本格レーシングシミュレーター体験。順位がつくレース形式で行なわれた
タミヤ製のRCカーを操縦できる体験走行会。広い部屋に特設コースが設けられていた
ドイツ・ニュルブルクリンクのカルーセル、アメリカ・ラグナ・セカのコークスクリューなど有名コーナーを再現したハンドリングトラックを使った試乗
後輪が通過する際に、プレートを油圧で動かして意図的にリアの挙動を乱すキックプレートを使った試乗も行なわれた
オフロードエリアでも試乗を実施
ドリフトサークルでの同乗試乗

スペシャルゲストが次々と登場したステージイベント

ポルシェジャパン株式会社 代表取締役社長 イモー・ブッシュマン氏

 10時に開会式を迎えたPEC東京5周年記念イベント「Sportscar Together Day」では、ステージにてポルシェジャパン 代表取締役社長のイモー・ブッシュマン氏があいさつを行なった。

 ブッシュマン氏は来場者への感謝の意を述べた後、「PEC東京では、日々、さまざまなイベントやアクティビティが行なわれています。そして今日も特別な1日を迎えています。世界中のポルシェファンの皆さまとともに、私たちが共有するスポーツカーへの情熱、走ることの楽しさ、そして私たちすべてを結びつける唯一のコミュニティを祝う1日となっています。本日はなんと1200人の皆さまをお迎えできたことを大変うれしく思います。また、会場内にはポルシェの豊かな歴史と伝統が詰まった車両の展示もございます。本日は世界中に広がるポルシェファミリーとともに、ここ東京で国際色豊かなポルシェコミュニティの雰囲気を楽しんでいただければ幸いです」とイベントの紹介を行なった。

木更津市長の渡辺芳邦氏もあいさつを行なった。PEC東京のプログラムは木更津市のふるさと納税返礼品の対象となっていることも紹介した
ステージイベントの進行は、タレントのユージさんと英美里さんが担当。ユージさんは数台のポルシェを乗り継いでいて、現在は911 GT3のオーナー
バイリンガルMCナレーター/モータースポーツナレーターの英美里さん

912アートカー公開&トークセッション

スニーカーやストリートウェアのデザイナーであり、ストリートカルチャーのカリスマとも言われる世界的に有名なショーン・ウォザースプーン氏

 ここからはいくつかのステージイベントを紹介していこう。まずはショーン・ウォザースプーン氏がデザインを行なった完全新作となるポルシェ912アートカーのお披露目とショーン氏へのインタビューだ。

 ショーン氏は以前もタイカンのアートカー製作でポルシェと関わりがあり、その流れから今回のデザインも引き受けることになった。今回は古いモデルへのデザインということで、どのようにインスピレーションが湧いたのかをMCが質問した。

 それに対してショーン氏は「今回は、ヴィンテージカーというところからインスピレーションをもらいました。ポルシェの歴史などをたどりながら、これまで使われてきたような色合いだったり、そういったものをイメージしています。また、色合いだけじゃなく素材感だったり、テクスチャーだったり、そういったものも非常に大事にしました。それによりポルシェが持つ長い歴史の中で、本当にすばらしい要素をこのカラーで表現できたと思います」と説明した。

 デザインを進める上で大切にしていることを問われると、「私がどんな創作においても1番大切にしているのが、とにかく作りながら楽しむことです。自分で考えながら、こういうふうにデザインを仕上げたときは、自分自身も楽しいです。とにかくどんなことでも楽しむことが1番大事な要素になります」と答えた。

912アートカーのアンベール
ステージから降りてデザインの説明を行なった。インテリアにはリーバイスのヴィンテージデニムを使用しているとのこと
912アートカー
トランクスペース内
ショーン氏のサイン会も行なわれた
記念撮影にも気さくに対応していた

911 GT3 アルティザンエディション・トークセッション

911 GT3 アルティザンエディションを題材とするトーク。中央右側がポルシェAGのエクステリアデザイナー、山下周一氏。左側がマンタイレーシング・セールスディレクターのミヒャエル・グラスル氏

 次に紹介するステージ登壇者は911 GT3 アルティザンエディションのデザインにて、デザインチームの一員としてエクステリアデザインに携わった山下周一氏、そしてマンタイレーシング・セールスディレクターのミヒャエル・グラスル氏。ここでは山下氏のデザインについての話を中心に紹介していく。

ポルシェ911 GT3 アルティザンエディション
リアビュー。マンタイキットが装着されている
ポルシェAGのエクステリアデザイナー 山下周一氏

 山下氏は2006年よりドイツのポルシェAGに在籍。911 GT3、911スピードスター、パナメーラ・スポーツツーリズムなどのエクステリアデザインを担当してきた。

 山下氏は、高校を卒業するころからデザイナーという職業に憧れていたという。ただ、デザイナーといっても多くのジャンルがあるが、山下氏がなりたかったのはクルマのデザイナーだった。このことについて、「クルマとはプロダクトデザインの最高峰なんですね。クルマには人が乗り込む室内空間もあります。また、走るということから人命を乗せていたり、まわりの方の命にまで関わってくるものでもあります。つまりクルマの世界の中でさまざまなデザイン要素を考えなければいけないんです。そういった意味でデザイナーとしては、ある種の頂点の仕事という認識になります」と語った。

マンタイレーシング・セールスディレクターのミヒャエル・グラスル氏

 次にグラスル氏から911 GT3 アルティザンエディションのエクステリアパーツについての解説があった。それによると、まずこのプロジェクトはポルシェジャパンが設立30周年を迎えたこと、そしてポルシェ・エクスペリエンスセンター東京の5周年という2つの記念日があったことが大きな理由。つまり誕生日プレゼントのような、「そんなことを感じてもらえるようなものを提供できたらいいな」という考えがスタートになっているとのことだった。

 911 GT3をベースに選んだことについては、まずポルシェが日本のマーケットを大切にしていることを挙げた。そして日本のファンは、モータースポーツやスポーツカーのカルチャーに情熱的な気持ちを持っていることから、日本へ導入しているラインアップの中で911 GT3がふさわしいとなったそうだ。さらにそこにスペシャルな要素としてマンタイキットを装備することになったとのことだ。

ネーミングに「アルティザン」と付いた理由。アルティザンは日本語で「職人」を指す言葉となる。技術的な部分などから911 GT3を表す言葉としてもふさわしいだけでなく、アート性、デザイン性、そして技術による走りの部分がみごとに融合されているところから来ているものだという

 続いてはエクステリアデザインについて山下氏が解説した。まずは911のフォルムにいかに融合させるかを非常に大事なポイントにしたという。そこに取り入れたのが日本の伝統色であるブルー。ベースカラーのホワイトと合わせて、ブルーがボディサイドに流れるようにしているが、これはいわゆる空気の流れを表しているものとなるそう。

 ただ、日本を表す色としては日の丸の「赤」もある。そこを青にした理由はというと、葛飾北斎の版画から来ているものとのこと。そこで使われていた青をイメージしたという。とはいえ、波の模様をボディに入れるということではなく、流れのイメージと青を911 GT3に合う形にしていくことを重視したそうだ。そしてここにはかなりの時間を要したとのことで、クルマを眺める角度によってグラフィックのイメージもボリュームも変化するようにしているそうだ。

リアホイールのディスクには江戸切子の要素を取り入れている。これはクラシックなワイヤースポークホイールのデザインと親和性が高かったので、それらを取り入れるようにデザインされている
リアウイングの裏側には山下氏が車両ごとに手書きで書き込んだメッセージが入っている。911 GT3 アルティザンエディションは30台限定でメッセージの内容は同じだが、手書きなので文字の感じなど、1台ずつで異なっているという
後半は山下氏によるライブスケッチパフォーマンスが披露された。デザインにもデジタル機器を使う時代だが、初期のスケッチでは色鉛筆を好んで使用しているとのこと
描き進むところは来場者から見やすいようにモニターで表示
仕上がったデザインスケッチはじゃんけん大会で来場者に渡されることになった。そして勝ったのがなんと写真の女の子

911開発責任者によるスペシャルトークショー

ステージイベントの最後は911の開発責任者であるフランク・モーザー氏と、音楽プロデューサーであり、モータージャーナリストでもある松任谷正隆氏が登壇するトークショー

 PEC東京5周年記念イベント「Sportscar Together Day」での最後のステージイベントは「The Sports Car Then and Next」と名付けられた911開発責任者のフランク・モーザー氏と、音楽プロデューサーであり、モータージャーナリストでもある松任谷正隆氏が登壇するものとなった。

音楽プロデューサー、作曲編曲家、モータージャーナリストなどの肩書きを持つ松任谷正隆氏

 この日のMCを務めたユージさんと松任谷氏は古くからの知り合いとのことで、思い出話を含めてトークは最初から弾むものとなっていた。松任谷氏はいろいろなクルマを所有し、ポルシェも数多く乗り継いできた方である。そんな松任谷氏がポルシェに対する印象を尋ねられると「子どものころから思っていた自動車の楽しみというものがこのクルマに集約されている」と答えた。

 松任谷氏は現在992型を所有しているが、そのモデルも小刻みにアップデートされている。そしてモータージャーナリストとしての仕事の中でそれらのクルマを体験した印象を聞かれると「そうですね、911の991.2のときにカレラがターボになりましたよね。そして992.2のときはGTSがTハイブリッドになりました。そのように振り返ると『.2』となるバージョンアップでは、そういうこと(革新)が起こるんだなと感じました。時代が変わると新しい排出ガス規制などにチャレンジしなければならないというのもあると思います。世界が迎える社会課題と環境課題に対して毎回クリアしながらユーザーが満足できるような進化をしているのではないでしょうか」と答えた。

911や718の開発責任者で担当副社長あるフランク・モーザー氏

 続いてMCのユージさんはフランク氏に「開発のトップとしてGT3にはどのようなこだわりを持っていますか?」と質問を投げかけたところ、フランク氏は「新しいモデルを作るにあたっては、課題がたくさんあります。例えば環境性能ですが、その中身にもいろいろなものがあります。導入する国によってもルールはそれぞれで違っています。そういった中で、前のモデルの性能をどのようにキープするか、ここがとても重要な部分です。特にGT3はNAエンジンなので新しい課題を取り入れつつもエンジンのおもしろさをどのように残すかというところです」と語り、続けて「NAではないようにしてしまうことは非常に簡単なんですけども、GT3のアイデンティティであるNAエンジンは残すべきものです。だから新しい課題を取り入れつつ、それまで510馬力だったものを、課題が増えた新世代になっても510馬力に保ちました。こうしたことがGT3の開発の中で難しいところでした」と説明した。

さまざまな環境課題を課せられても、NAエンジンであることから変更せず、パフォーマンスを前モデルと同等の数値に保つことを実現した最新型911 GT3

 環境課題が厳しい時代ゆえに、今後のGT3も継続していくことはかなりチャレンジングな部分になってくるのではないか。そんな質問がMCから投げられた。

 それについてフランク氏は「皆さん、GT3に持っているイメージは力強さだったり速さだったりあると思います。ただGT3の魅力は、サーキットで活かせるようなパフォーマンスばかりではありません。私たちのチームはサーキットでどのように性能を出すかについてはもちろん重要視しています。でも、そういうふうに作りながらも公道を走れるようにしています。ここからも伝わると思いますが、訴えたいのはパワーだけではありません。ドライビングの際にクルマから伝わってくる挙動であったり、エアロダイナミックスの効果だったり、そういった部分を意識してドライブしていただければ、パワフルで速いといった部分以外の魅力も感じ取っていただけるはずです。ぜひそのように乗っていただければと思います」と回答した。

ハイブリッドについては、エンジンにプラスアルファの魅力が加わることでの性能アップ。そしてターボエンジンではよりスムーズでパワフルなフィーリングを実現することができる。そうした部分で「皆さんにはハイブリッドを魅力として感じてもらいたい」と答えた

 トークセッションの時間も残り少なくなってきたところで、松任谷氏からフランク氏へ質問があった。その内容が「GT3では一旦、MTの設定がなくなりました。しかし、その後にまたMTが設定されることになりました。そこでなんとなくですけど、世の中にMTの復活の流れみたいなものがあるのではないかと思うのですが」といったものである。

 この質問に対しフランク氏は笑顔で「とてもよい質問です。おっしゃるように、MTは多くのメーカーでもう製造していません。まあこれは必然のものなのですが、ポルシェはそこをやはり重要視しています。ポルシェのユーザーにはMTが大好きだという人が多いからです」と答えた後に、「これはあくまで個人的な感想」と前置きしたうえで「私は911で1番最高と言える組み合わせをNAエンジンとMTと考えています。もちろんポルシェにはさまざまな魅力があります。現実的にはハイブリッドモデルはMTにすることが難しいです。ただ、それでもパドルシフトでの操作も非常に楽しいものになっています。しかしMTはやっぱり残したいです」と語った。すると会場から拍手が湧いた。

 そしてこの後、衝撃的とも言える発言もあった。それが「最後にひと言。これは口にしていいかどうか分かりませんが、ここでお伝えします。今のGT3が最後のMTモデルだと思わないでください」であった。

 これがどういう意味なのかは、それぞれのご想像に任せるとして、とにかくMTにもまだ未来があるという余韻を残してくれたことは、ステージ前に集まったポルシェファンにとってうれしい話だと思う。

松任谷氏の質問は「今のGT3が最後のMTモデルだと思わないでほしい」という衝撃の言葉を引き出した

 以上がPEC東京5周年記念イベント「Sportscar Together Day」での内容となる。多くの人にとって憧れのクルマであろうポルシェは、やはりクルマ好きが憧れるにふさわしいブランドであることがこのイベントからも伝わったと思う。それだけに、ポルシェの今後の取り組みについても引き続き注目していただきたい。