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ポルシェ、グローバルイベント「Sportscar Together Day」開催 来場した911開発責任者のフランク・モーザー氏「GT3はNA+MTが最高であり、今のモデルがそのラストではない」
2026年9月14日 13:55
- 2026年9月12日 開催
ポルシェは世界10か所にブランド体感施設「ポルシェ・エクスペリエンスセンター」を展開しており、2027年にはシンガポールにも開設されることが決定している。そして日本では2021年に千葉県木更津市に「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(PEC東京)」がオープンした。
このPEC東京を含む、世界中のポルシェ・エクスペリエンスセンターが連動して展開するグローバルイベント「Sportscar Together Day」が9月12日に開催された。
「Sportscar Together Day」は世界中のポルシェ・コミュニティが集い、それぞれの地域ならではのプログラムを通じて、ドライビングの歓びを分かち合うグローバルイベントとなっていて、PEC東京に至っては2026年でオープンから5周年となるため、PEC東京5周年記念イベント「Sportscar Together Day」のネーミングとなった。
「Sportscar Together Day」への参加はポルシェオーナーをはじめ、ポルシェファンを対象としたもので、募集開始から約4時間で定員に達するほどの人気だったという。そして当日の来場者はおよそ1102名(来場車両は567台)で、会場はポルシェファンの熱気に包まれるものとなった。
当日用意されたコンテンツはさまざまで、他では見ることのできない多彩なポルシェ車両の展示、911やカイエンなどによるドライビング体験や同乗試乗。さらには特別なゲストが次々と登場するステージイベントなどが行なわれた。なお、イベントへの入場を含め、すべてのコンテンツは無料で楽しめるといった大盤振る舞いのものとなっていた(食事とグッズ購入は除く)。
スペシャルゲストが次々と登場したステージイベント
10時に開会式を迎えたPEC東京5周年記念イベント「Sportscar Together Day」では、ステージにてポルシェジャパン 代表取締役社長のイモー・ブッシュマン氏があいさつを行なった。
ブッシュマン氏は来場者への感謝の意を述べた後、「PEC東京では、日々、さまざまなイベントやアクティビティが行なわれています。そして今日も特別な1日を迎えています。世界中のポルシェファンの皆さまとともに、私たちが共有するスポーツカーへの情熱、走ることの楽しさ、そして私たちすべてを結びつける唯一のコミュニティを祝う1日となっています。本日はなんと1200人の皆さまをお迎えできたことを大変うれしく思います。また、会場内にはポルシェの豊かな歴史と伝統が詰まった車両の展示もございます。本日は世界中に広がるポルシェファミリーとともに、ここ東京で国際色豊かなポルシェコミュニティの雰囲気を楽しんでいただければ幸いです」とイベントの紹介を行なった。
912アートカー公開&トークセッション
ここからはいくつかのステージイベントを紹介していこう。まずはショーン・ウォザースプーン氏がデザインを行なった完全新作となるポルシェ912アートカーのお披露目とショーン氏へのインタビューだ。
ショーン氏は以前もタイカンのアートカー製作でポルシェと関わりがあり、その流れから今回のデザインも引き受けることになった。今回は古いモデルへのデザインということで、どのようにインスピレーションが湧いたのかをMCが質問した。
それに対してショーン氏は「今回は、ヴィンテージカーというところからインスピレーションをもらいました。ポルシェの歴史などをたどりながら、これまで使われてきたような色合いだったり、そういったものをイメージしています。また、色合いだけじゃなく素材感だったり、テクスチャーだったり、そういったものも非常に大事にしました。それによりポルシェが持つ長い歴史の中で、本当にすばらしい要素をこのカラーで表現できたと思います」と説明した。
デザインを進める上で大切にしていることを問われると、「私がどんな創作においても1番大切にしているのが、とにかく作りながら楽しむことです。自分で考えながら、こういうふうにデザインを仕上げたときは、自分自身も楽しいです。とにかくどんなことでも楽しむことが1番大事な要素になります」と答えた。
911 GT3 アルティザンエディション・トークセッション
次に紹介するステージ登壇者は911 GT3 アルティザンエディションのデザインにて、デザインチームの一員としてエクステリアデザインに携わった山下周一氏、そしてマンタイレーシング・セールスディレクターのミヒャエル・グラスル氏。ここでは山下氏のデザインについての話を中心に紹介していく。
山下氏は2006年よりドイツのポルシェAGに在籍。911 GT3、911スピードスター、パナメーラ・スポーツツーリズムなどのエクステリアデザインを担当してきた。
山下氏は、高校を卒業するころからデザイナーという職業に憧れていたという。ただ、デザイナーといっても多くのジャンルがあるが、山下氏がなりたかったのはクルマのデザイナーだった。このことについて、「クルマとはプロダクトデザインの最高峰なんですね。クルマには人が乗り込む室内空間もあります。また、走るということから人命を乗せていたり、まわりの方の命にまで関わってくるものでもあります。つまりクルマの世界の中でさまざまなデザイン要素を考えなければいけないんです。そういった意味でデザイナーとしては、ある種の頂点の仕事という認識になります」と語った。
次にグラスル氏から911 GT3 アルティザンエディションのエクステリアパーツについての解説があった。それによると、まずこのプロジェクトはポルシェジャパンが設立30周年を迎えたこと、そしてポルシェ・エクスペリエンスセンター東京の5周年という2つの記念日があったことが大きな理由。つまり誕生日プレゼントのような、「そんなことを感じてもらえるようなものを提供できたらいいな」という考えがスタートになっているとのことだった。
911 GT3をベースに選んだことについては、まずポルシェが日本のマーケットを大切にしていることを挙げた。そして日本のファンは、モータースポーツやスポーツカーのカルチャーに情熱的な気持ちを持っていることから、日本へ導入しているラインアップの中で911 GT3がふさわしいとなったそうだ。さらにそこにスペシャルな要素としてマンタイキットを装備することになったとのことだ。
続いてはエクステリアデザインについて山下氏が解説した。まずは911のフォルムにいかに融合させるかを非常に大事なポイントにしたという。そこに取り入れたのが日本の伝統色であるブルー。ベースカラーのホワイトと合わせて、ブルーがボディサイドに流れるようにしているが、これはいわゆる空気の流れを表しているものとなるそう。
ただ、日本を表す色としては日の丸の「赤」もある。そこを青にした理由はというと、葛飾北斎の版画から来ているものとのこと。そこで使われていた青をイメージしたという。とはいえ、波の模様をボディに入れるということではなく、流れのイメージと青を911 GT3に合う形にしていくことを重視したそうだ。そしてここにはかなりの時間を要したとのことで、クルマを眺める角度によってグラフィックのイメージもボリュームも変化するようにしているそうだ。
911開発責任者によるスペシャルトークショー
PEC東京5周年記念イベント「Sportscar Together Day」での最後のステージイベントは「The Sports Car Then and Next」と名付けられた911開発責任者のフランク・モーザー氏と、音楽プロデューサーであり、モータージャーナリストでもある松任谷正隆氏が登壇するものとなった。
この日のMCを務めたユージさんと松任谷氏は古くからの知り合いとのことで、思い出話を含めてトークは最初から弾むものとなっていた。松任谷氏はいろいろなクルマを所有し、ポルシェも数多く乗り継いできた方である。そんな松任谷氏がポルシェに対する印象を尋ねられると「子どものころから思っていた自動車の楽しみというものがこのクルマに集約されている」と答えた。
松任谷氏は現在992型を所有しているが、そのモデルも小刻みにアップデートされている。そしてモータージャーナリストとしての仕事の中でそれらのクルマを体験した印象を聞かれると「そうですね、911の991.2のときにカレラがターボになりましたよね。そして992.2のときはGTSがTハイブリッドになりました。そのように振り返ると『.2』となるバージョンアップでは、そういうこと(革新)が起こるんだなと感じました。時代が変わると新しい排出ガス規制などにチャレンジしなければならないというのもあると思います。世界が迎える社会課題と環境課題に対して毎回クリアしながらユーザーが満足できるような進化をしているのではないでしょうか」と答えた。
続いてMCのユージさんはフランク氏に「開発のトップとしてGT3にはどのようなこだわりを持っていますか?」と質問を投げかけたところ、フランク氏は「新しいモデルを作るにあたっては、課題がたくさんあります。例えば環境性能ですが、その中身にもいろいろなものがあります。導入する国によってもルールはそれぞれで違っています。そういった中で、前のモデルの性能をどのようにキープするか、ここがとても重要な部分です。特にGT3はNAエンジンなので新しい課題を取り入れつつもエンジンのおもしろさをどのように残すかというところです」と語り、続けて「NAではないようにしてしまうことは非常に簡単なんですけども、GT3のアイデンティティであるNAエンジンは残すべきものです。だから新しい課題を取り入れつつ、それまで510馬力だったものを、課題が増えた新世代になっても510馬力に保ちました。こうしたことがGT3の開発の中で難しいところでした」と説明した。
環境課題が厳しい時代ゆえに、今後のGT3も継続していくことはかなりチャレンジングな部分になってくるのではないか。そんな質問がMCから投げられた。
それについてフランク氏は「皆さん、GT3に持っているイメージは力強さだったり速さだったりあると思います。ただGT3の魅力は、サーキットで活かせるようなパフォーマンスばかりではありません。私たちのチームはサーキットでどのように性能を出すかについてはもちろん重要視しています。でも、そういうふうに作りながらも公道を走れるようにしています。ここからも伝わると思いますが、訴えたいのはパワーだけではありません。ドライビングの際にクルマから伝わってくる挙動であったり、エアロダイナミックスの効果だったり、そういった部分を意識してドライブしていただければ、パワフルで速いといった部分以外の魅力も感じ取っていただけるはずです。ぜひそのように乗っていただければと思います」と回答した。
トークセッションの時間も残り少なくなってきたところで、松任谷氏からフランク氏へ質問があった。その内容が「GT3では一旦、MTの設定がなくなりました。しかし、その後にまたMTが設定されることになりました。そこでなんとなくですけど、世の中にMTの復活の流れみたいなものがあるのではないかと思うのですが」といったものである。
この質問に対しフランク氏は笑顔で「とてもよい質問です。おっしゃるように、MTは多くのメーカーでもう製造していません。まあこれは必然のものなのですが、ポルシェはそこをやはり重要視しています。ポルシェのユーザーにはMTが大好きだという人が多いからです」と答えた後に、「これはあくまで個人的な感想」と前置きしたうえで「私は911で1番最高と言える組み合わせをNAエンジンとMTと考えています。もちろんポルシェにはさまざまな魅力があります。現実的にはハイブリッドモデルはMTにすることが難しいです。ただ、それでもパドルシフトでの操作も非常に楽しいものになっています。しかしMTはやっぱり残したいです」と語った。すると会場から拍手が湧いた。
そしてこの後、衝撃的とも言える発言もあった。それが「最後にひと言。これは口にしていいかどうか分かりませんが、ここでお伝えします。今のGT3が最後のMTモデルだと思わないでください」であった。
これがどういう意味なのかは、それぞれのご想像に任せるとして、とにかくMTにもまだ未来があるという余韻を残してくれたことは、ステージ前に集まったポルシェファンにとってうれしい話だと思う。
以上がPEC東京5周年記念イベント「Sportscar Together Day」での内容となる。多くの人にとって憧れのクルマであろうポルシェは、やはりクルマ好きが憧れるにふさわしいブランドであることがこのイベントからも伝わったと思う。それだけに、ポルシェの今後の取り組みについても引き続き注目していただきたい。






















































