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クアルコム、ゲームエンジン「Unreal Engine 5」を使ったデジタルメーターなど自動車向け製品を展示
2026年9月14日 17:10
- 2026年9月11日 実施
Qualcomm(クアルコム)は9月11日、幕張市内の会場で、同社の自動車向けソリューションの展示デモを行なった。
クアルコムは、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems:先進運転支援システム)向けのスナップドラゴンライド(Snapdragon Ride)、IVI(In-Vehicle Infotainment、車載情報システム)やデジタルメーター向けのスナップドラゴンコクピット(Snapdragon Cockpit)、5GやV2Xなどの通信モジュールなどの製品を自動車メーカーやティアワンの部品メーカーなどに提供していて、今回の展示デモでは製品を採用したソリューションが展示されていた。
スマートフォン向けのSnapdragonを自動車対応にした「スナップドラゴンライド/コクピット」などを提供するクアルコム
クアルコムは、携帯電話向けの通信技術から発展した半導体メーカーで、現在はその延長線上にスマホ向けSoCとなるスナップドラゴンを携帯電話メーカーに提供している。サムスンのGalaxyシリーズやソニーのXperiaシリーズといったAndroidベースのスマホの多くに採用されており、Appleが自社のiPhone向けにだけ開発製造しているAシリーズと並んでスマホ向けSoCの代表製品といってよい。
また、スマホ向けSoC技術を、スマホ以外の産業向けにも横展開する戦略をとっている。スマホ向けのSoCの技術を元に、PC向けに性能を強化した製品が「スナップドラゴンXシリーズ」、そしてスナップドラゴンの技術をIoTやフィジカルAI向けにリファインした製品「Dragonwing(ドラゴンウイング)」のように、スマホ向けの低消費電力でかつ高性能というスナップドラゴンの特徴をスマホ以外の産業にも適用することで、市場を拡大するというのがクアルコムの基本的な戦略となる。
自動車も同様で、レベル2+までのADAS向けの製品としてスナップドラゴンライド、IVIやデジタルメーター向けのスナップドラゴンコクピット、ライドとコクピットの両方の機能を1つのチップで実現するスナップドラゴンライドフレックス(Snapdragon Ride FLEX) などが用意されており、それ以外にもクアルコムの祖業である携帯電話通信を実現する5Gモデムなどの通信ソリューションなどを提供している。いずれの製品も、クアルコムがスマホ向けのスナップドラゴンで培った技術が横展開する形の製品となる。
例えば、IVIやデジタルメーター向けのスナップドラゴンコクピットでは、よりリッチな画面表示に、Epic Gamesが開発した「Unreal Engine 5(UE5)」と呼ばれるゲームエンジンが採用されている。
UE5は、もともとPCやスマホのゲームタイトル向けに開発された描画エンジンで、ゲームパブリッシャーはUE5を利用することで、少ない開発工程で表現力が高いゲームを開発することが可能になる。ゲームエンジンは、従来は文字通りゲームにだけ利用されていたのだが、近年は自動車の開発シミュレーションに使われたり、デジタルメーターの描画に使われることも増えている。ゲームエンジンを利用することで、ゲームの開発と同じように開発期間を短縮することが可能になるからだ。
今回クアルコムがデモしたスナップドラゴンコクピットでは、UE5を利用してデジタルメーターの描画が行なわれている。スマホやタブレットの画面と同じようにリッチなアニメーションを利用してメーター表示を行なえる。なお、説明員によればUE5だけでなく、ほかにもUnityといった別のゲームエンジンなどもサポートされており、「スマホなどで一般的に利用されている開発環境を利用してリッチな画面表示をできるのが、スマホ由来のスナップドラゴンコクピットの強みだ」との説明があった。
V2X、衛星通信を実現する「スナップドラゴンオート5Gモデム」などの通信モジュールも自動車向けに提供
前述の通りクアルコムの祖業は携帯電話向けの通信モデムで、CDMA(Code Division Multiple Access)方式と呼ばれる通信方式を開発して、それを実用化したことが同社の成長を実現した(日本ではKDDIがCDMA方式の一種であるCDMA2000/cdmaOneなどを導入していた)。そのCDMAをベースにして、その後の3G、4G、5Gなどの携帯電話通信技術が開発され、現在の5Gの導入時にもクアルコムは他社に先駆けて対応製品を投入している。
また、自動車向けに5Gモデム、Wi-Fi/Bluetoothなどのスマホに使われている技術に加えて、V2X(Vehicle To X:Xとは“何か”という意味。この場合はVehicle to Infrastructure=路車間通信、Vehicle to Vehicle=車車間通信などのこと)向けの通信モジュールなどを自動車メーカーやティアワンの部品メーカーなどに提供している。
会場では同社のV2X向けのデモキットが公開された。よく知られているようにV2Xは国によって利用される周波数が異なっている。欧米ではDSRCと呼ばれる5.9GHzが利用され、中国では5.9GHzだが中国独自のセキュリティ機能が必要になり、日本は760MHzがITSとしてすでに活用され、今後は5.9GHzへの対応も予定されている。
国によって周波数や機能が異なるため、グローバルに自動車を販売する自動車メーカーにとっては複数の国向けに1つのソリューションで対応できるものを必要としている。クアルコムはその自動車メーカーのニーズに対応するような、グローバルの複数のV2Xの規格に対応したソリューションを開発し、今回展示していた。
5Gモデムとなる「スナップドラゴンオート5Gモデム」のデモでは、NB-NTNの規格名で知られる衛星を利用した携帯電話通信を実施。NB-NTNは、既存の5Gのアンテナなどを利用して衛星と通信できる機能で、通信速度は速くはないが、携帯電話の電波が入らないような場所(山奥とか海上とか)で通信できるようになる。ただし、数kbpsと、非常に通信速度は遅いため、アプリケーションは限られることになる。
そこでクアルコムが独自に開発した「コーデックQGVC(Qualcomm Generative Voice Codec)」を利用して、1.2kbpsなどの非常に遅い通信速度環境でも音声通話を行なえるようにする。例えば山奥のような場所でクルマが故障して普通の携帯電話回線では助けが呼べないような環境でも、NB-NTNの衛星通信を利用して助けを呼ぶなどのユースケースを想定している。実際にデモをきいてみたが、非常にクリアに音声通信できていて印象的だった。
BMW「iX3」に採用されているスナップドラゴンライドの将来の展開やスナップドラゴンライドフレックス
ADAS向けのソリューションとなるスナップドラゴンライドは、BMWの新型「iX3」に「スナップドラゴンライドパイロット(Snapdragon Ride Pilot)」が採用されている。
すでに2025年から生産が始まっているBMW「iX3」に採用されているのは、あらかじめこういう動作をすると規定されているL2相当のADASで、クアルコムによればEuro NCAPで5スターを獲得したという。今回実車の展示はなかったが、「iX3」で採用されているValeoのスナップドラゴンライド搭載モジュールも公開されていた。
現在はAIモデルとガードレールを組み合わせた次世代システムを開発していて、2028年までに生産が始まるような製品に搭載される予定だという。さらに、それ以降にはさらにLLMなどの生成AIモデルも搭載される計画で、それが2028年以降に生産が始まる製品に投入される計画だという。スナップドラゴンには、強力なGPUやNPUなどのAI処理に適したプロセッサーが搭載されており、それを利用してAIをフル活用したADASやレベル3以上の自動運転などの実現を目指す。
そのほかにも、スナップドラゴンライドとスナップドラゴンコクピットの両方を1つのSoCで実現できるスナップドラゴンライドフレックスのデモも行なわれ、製品を実車に組み込んだデモカーなどが公開されていた。

















