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BMWの新型「iX3」に搭載されたクアルコムの「Snapdragon Ride Pilot」ソリューションについてAnshuman Saxena氏に聞く
BMWやヴァレオといったパートナー企業とともにグローバルエコシステムへの成長を目指す
2025年9月10日 14:52
- 2025年9月8日(プレスデー) 開催
クアルコム(Qualcomm Technologies)はドイツ・ミュンヘンで開催されている「IAAモビリティ2025」に出展し、BMWの新型「iX3」に搭載された「Snapdragon Ride Pilot」をはじめとする同社技術を紹介する展示などを展開している。
「Snapdragon Ride Pilot」はクアルコムとBMWグループが3年間の共同研究の成果として誕生したADAS(先進運転支援システム)/AD(自動運転)に向けたソリューションであるが、現在、クアルコムを通じて世界中のすべての自動車メーカーとティア1サプライヤーに提供されているという。
BMWでは新型「iX3」を真のSDV(ソフトウェア定義車両)であると強調しているが、SDVを取り巻くパートナー企業との協業関係やビジネスモデルにも変化があるようだ。
「Snapdragon Ride Pilot」開発におけるBMWとの協業関係について、クアルコムでADASの開発を担当するAnshuman Saxena氏がインタビューに応えた。
Saxena氏は「Snapdragon Ride Pilotシステムは複数の顧客に提供されているもので、BMW向けにはクアルコムのSOC(システムオンチップ)が搭載されています。当然ながら、当社は車両に搭載されるSOC群のサプライヤーであり、同時にそのSOC上で動作するセンサー・視覚処理スタックも提供しており、これらがクアルコムの提供する完全なソリューションとなっています。これを超える部分、顧客機能をどのように定義するのか、車両への統合をどのように行なうのか、インターフェースをどのように定義して機能させるかといった点については、BMWとクアルコムは共同で、他の自動車メーカーへも適用するインターフェースを定義しています。つまり、BMWはクアルコムと共に汎用ソフトウェア製品としてこれを構築しているわけです」と説明する。
汎用ソフトウェアに向けてBMWがノウハウを提供する形になるが、Saxena氏は「開発過程で生み出される全ての知的財産(IP)は、BMWとクアルコムが共同所有します。つまり、BMWはクアルコムのSOCを搭載した自社車両にこれを搭載する権利を有し、クアルコムはSnapdragon Ride Pilotシステムとしてこのシステム全体を取得し、他の自動車メーカーへ適用して実装する権利を有します。これは紳士協定以上の、われわれが締結した正式な合意です」と説明した。
インタビューの当日9月8日に、ヴァレオとクアルコムは新たな協業を発表。クアルコムの「Snapdragon Ride Pilot」ソリューションと、ヴァレオのハードウェアとソフトウェアの専門知識を融合させるものとして、Snapdragon Ride SoCとAD/ADASソフトウェアが事前に統合されたソリューションを共同提案していくという。
Saxena氏は、BMWとの関係性に続くヴァレオとの関係性についても話した。
Saxena氏は「BMWとクアルコムは共同開発パートナーとして、BMW車両に関してクアルコムは単なるサプライヤーではなく、中核開発パートナーとして活動していました。SOCなどのサプライヤーとしての役割は当然ありますが、当社のチームは、BMWのチームと共同でソフトウェアスタックを構築しているのです。BMWにはこうしたシステムを理解し構築する、また自社車両に統合・認証取得・搭載する膨大な専門知識を有しています。つまりBMW車両向けの統合プロセス全体を自社で管理しているわけです。もちろんわれわれもソフトウェア組織の一員として支援しているからです」とBMWとの関係性について話した。
Snapdragon Ride Pilotのシステムは、新型「iX3」の登場によりBMW車両での動作が実証された。これを他のメーカーへ展開するには、ヴァレオのようなパートナーの存在が必要だという。
Saxena氏は「これをOEMのA、B、Cに持ち込んだ場合、誰もが統合の複雑さを理解しているわけではないのです。彼らは従来の1次サプライヤーや他のソフトウェアハウスなどに依存してきたから理解できないかもしれない。われわれには、このソリューションを採用し他社メーカーへ展開・統合するエコシステムを構築する必要があるのです。そこで重要なのがヴァレオのようなパートナーなのです。ヴァレオはBMW向けティア1サプライヤーでありハードウェアプラットフォームも提供しています。彼らは、車両アーキテクチャの理解者としての立場から、クアルコムにとって補完的な存在となります」と説明する。
Snapdragon Ride Pilotをグローバルなエコシステムとして完成させるには、こうしたパートナー企業の存在が必要だという。
Saxena氏は「ヴァレオはシステム統合ソリューションとして、クアルコム経由であれ、ヴァレオから直接であれ、あらゆる自動車メーカーへの展開を支援できるのです。戦略的連携は共同して展開を進めるためのもので、このエコシステム全体が成長すべき道筋なのです。さもなければ、採用する自動車メーカーは『どうやってクルマに組み込むか?』『どうやって検証するか?』といった課題に直面するでしょう。クアルコムにはノウハウがあり、クアルコムとヴァレオの戦略的提携によってこのノウハウが強化されるのです」との考えを示した。



