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トヨタ、ビッグデータを活用したスマートフォン向け新サービス「smart G-BOOK」

トヨタ独自の「Tプローブ交通情報」などを「ビッグデータ情報サービス」として提供

デモ機の前でサービス内容について解説するトヨタ自動車 友山茂樹常務取締役
2013年6月3日サービス開始

 トヨタ自動車は5月29日、G-BOOK対応カーナビなどのテレマティクスサービスを通じて収集・蓄積した車両位置や車速、走行状況などのプローブ情報「Tプローブ交通情報」と連携するスマートフォン向け新サービス「smart G-BOOK」と同プローブデータを含むビッグデータを自治体や企業向けに提供する「ビッグデータ情報サービス」を開発し、6月3日からサービスの提供を開始すると発表した。

スマートフォン向けサービスの新「smart G-BOOK」

 新しい「smart G-BOOK」では、これまでトヨタ純正カーナビにしか配信していなかった「Tプローブ交通情報」を利用できるようになった。これにより、きめ細かい最新情報による渋滞回避ルート案内などが可能になったほか、クラウド上の「トヨタスマートセンター」を活用し、音声入力によるセンター型音声認識サービス「エージェント機能」を追加。「一番近くにあるコンビニ」といったような会話形式の入力によって地図検索が可能になり、利便性が格段に向上している。また、現在値の周辺にある避難所情報などとも連携して災害発生時にルート案内できるようになったほか、ユーザーのGPS情報を「通れた道マップ」に反映させて情報精度の向上も図れるようになった。

「Tプローブ交通情報」でトヨタ純正ナビと同じように渋滞回避ルート案内などが可能になった新「smart G-BOOK」

 このほか、ユーザーによる投稿機能「交通情報SNS」を新設。道路上に障害物があったり、事故・渋滞などを発見したときにsmart G-BOOKの地図上に内容ごとのスタンプを投稿でき、内容をSNSメンバーと共有できる。この投稿スタンプはルート案内などのさいにも利用され、ユーザーが近づくと音声ガイダンスで警告してくれる。

 新「smart G-BOOK」は、Android版は6月3日、iOS版は6月中旬から提供予定となっており、目的地までのルート検索、周辺情報、ヘルプネット、災害関連情報などは誰でも無料で利用できる。さらに、ナビゲーション機能、エージェント機能、オペレーターサービス、交通情報SNSなどは、年間2500円の有料サービスとなる。さらに、VICS交通情報も追加で年間1000円を支払えば利用できる。サービス提供直後は特別価格キャンペーンが実施予定で、Android版、iOS版各1万人の合計先着2万人まで1年間の利用料金が1000円になる。

●提供サービス

種別サービスサービス内容
無料災害対策サービス通れた道マップ車両の通行実績を常時表示
関連施設検索避難所等の施設検索や現在地からのルート表示・案内を提供。
ルート案内機能は8月以降追加予定。自治体等が追加した情報を表示(8月以降)
ヘルプネット位置情報を自動送信、警察や消防へ取次ぎ
ルート確認Tプローブ交通情報トヨタのプローブ交通情報を地図に表示
スポット検索施設や店舗等の位置を検索
ルート表示(クルマ/徒歩)現在地から検索した地点までのルートを表示
有料(2500円/年)ナビゲーションクルマナビ/徒歩ナビ通信型ナビ(センターでルート検索、地図とルートを配信)3Dランドマーク、固有地名・高速分岐案内等に対応
通信圏外でも利用可能な新方式(通信+ローカルの組み合せ)へのバージョンアップ、およびターンバイターンモードの追加を予定(8月以降)
Tプローブ交通情報トヨタのプローブ交通情報をルート探索・案内に反映
近接情報の読み上げGAZOOのバーチャルバスガイドと連携(今秋以降)
車載ディスプレイとの連携スマホナビ対応ディスプレイ[DAN-W62](販売店装着オプション)で表示・操作(対応機種はiPhone4、4S)
センター型音声認識サービス「エージェント」  自然発話や曖昧な指示で目的地を検索
オペレーターサービス  オペレーターと直接対話をして要望を伝える
交通情報SNS  道路状況に応じたスタンプをワンタッチで投稿。他のユーザーが投稿地点に接近すると、投稿内容を自動で読み上げ(今秋以降)
現在地周辺にある避難所を表示中。施設情報の表示やルート案内も可能
G-BOOKのオペレーターサービスに加え、気軽に活用できる「エージェント機能」を搭載。音声で簡単に周辺の情報検索が可能で、検索結果をそのままルート案内に連動させられる
移動中に目にした道路関連の情報を各種スタンプでSNSに投稿。投稿された情報はほかの新「smart G-BOOK」利用者も閲覧でき、ルート案内中には音声ガイダンスでも警告してくれる
スマートコミュニティJAPAN2013の会場内にあるトヨタブースでの展示風景

自治体・企業向けサービス「ビッグデータ交通情報サービス」

 自治体や企業向けに実施される「ビッグデータ交通情報サービス」は、トヨタ独自の「Tプローブ交通情報」を使うクラウドサービス。主に災害発生時の対策や、交通・物流システムなどに利用することが想定され、災害時には避難所の施設情報、登録したスマートフォン端末を持つ防災職員、緊急車両、災害支援車両などの活動状況をマップ上に表示。自治台ごとに持っているハザードマップ、「Tプローブ交通情報」が収集する「通れた道マップ」の情報などと照合し、被災状況の確認や復旧活動をアシストする。基本利用料金は、月額20万円からと設定されている。

事前に自治体などから施設情報を登録してもらうほか、災害発生時には緊急車両などの位置情報をリアルタイムに更新。さらにユーザーからの情報提供による写真データなども地図上に反映可能で、いざというときの避難誘導、緊急車両の現場到着をアシストする
赤いアイコンは避難所。さらに、地図上には津波予想のデータが重ねられており、水色が浸水深1m未満、黄色が浸水深1~2mという予想データを表している

クルマを通じてユーザーや地域社会と長期的な信頼関係を築きたい

 5月29日~31日に東京ビッグサイトで開催中の次世代エネルギー総合展「スマートコミュニティJAPAN2013」の会場で行われた発表会では、トヨタ自動車の友山茂樹常務取締役が登壇。今回発表した「ビッグデータ交通情報サービス」が生み出された経緯、サービスの概要などを解説し、「これからのトヨタにとってクルマという接点を通じ、お客様や社会との信頼関係、補完関係を構築していくことが重要です。ビッグデータ交通情報サービスの提供によって、より便利で環境に優しく、安全で災害に強い都市作りに貢献したいと考えています」とコメントした。

「トヨタは、次世代の自動車ビジネスにおいて、クルマは単なるプロダクトではなく、お客様や社会との接点だと考えています」と語るトヨタ自動車の友山茂樹常務取締役
2002年にG-BOOKサービスが登場し、10年で携帯電話による接続数が330万台、DCM接続数も70万台まで増加し、膨大なプローブ情報が集まる環境が整ってきている
これまではプローブ情報で集められたデータをトヨタ社内だけで利用してきたが、これからはニーズに合わせてさまざまな形式で提供していく
実際に、発表会の開催直後に収集されたプローブ交通情報の生データ。基本的に公開されることのない部分ではあるが、車両の走行スピードや交通量、ABSの作動など細かな情報が逐次車両からデータセンターに送られている。また、この情報を元に、今後の交通量の増減の予想なども可能となっているとのこと

 また、スマートコミュニティJAPAN2013のトヨタブースでは、「ビッグデータ交通情報サービス」の情報紹介、デモ機の展示に加え、IT技術活用のコンセプトモデル「Smart INSECT」の車両展示も行われている。

スマートコミュニティJAPAN2013のトヨタブース
コンセプトモデルの「Smart INSECT」。INSECTという車名は、「Information Network Social Electric City Transporter」の頭文字を組み合わせたもの
ベースとなっているのは、トヨタ車体の超小型1人乗りEV「コムス」
Smart INSECTのフロントマスク。ヘッドライト下側には「コミュニケーションLED」を装備
インパネ上には車外に向けた「対話モニター」を設置。ルーフの前後にはモーションセンサーを備え、登録されたオーナーが身振りをすることでガルウイング形状のドアをオープンする

(編集部:佐久間 秀)