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トヨタ、クルマ情報Webサイト「GAZOO.com」を5月30日にリニューアル
マイクロソフトの全面バックアップで新しい世代に愛されるサイトへ
(2013/4/26 16:23)
順調に拡大してきたWebサイトを一新
トヨタ自動車は4月26日、同社が運営する自動車ポータルサイト「GAZOO.com」を5月30日にリニューアルすることを発表した。リニューアルにあたっては、この4月に正式リリースされたマイクロソフトのWindows Azure仮想マシンと、SharePoint Server 2013をプラットフォームとして採用。Webサイトの内容を一新するとともに、より効率的かつ戦略的なコンテンツ提供を目指す。合わせてスマートフォン向けサービスの拡充も図る。
トヨタは、ちょうど2年前の2011年4月にマイクロソフトと『「クルマ・家・人をつなぐ」戦略的提携』を行っている。トヨタ自動車 e-TOYOTA部 部長 山田博之氏は、その成果の1つとして今回の「GAZOO.com」のリニューアルに至ったと説明。1998年に開設された同Webサイトは、当初中古車の在庫の無駄を省くための取り組みとして中古車検索サービスからスタートしたもの。中古車の画像が大量に並んで表示されることから、「画像の動物園」を意味する造語をサービス名称に据えたという経緯がある。
その後、ECサイトや掲示板の機能を実装。保険、クレジットカードサービスとの提携も行い、さらにはメーカーを問わず自動車に関するニュース記事を掲載したり、ブログサービスなども提供したり、クルマのポータルサイト、および総合コミュニティサイトとして成長してきた。山田氏によれば、「20~30代の若者世代とつながる場として拡充を図ってきた」と言う。
そういった数々のサービスを展開していく中で、Webサイト利用者も順調に増加。2013年3月現在、1カ月間の利用者数は約165万人となっており、5年前と比べると約3倍のアクセス規模にまで拡大している。トヨタ自動車の顧客が主に50~60代であるのに対し、GAZOO.comの利用者は30代以下の若年層が多くなっているのも特徴だ。ただ、同氏によれば、「期待したとおりの成果を出していると言えるが、いくつかの課題があった」とのこと。
近年の少子高齢化などにより、クルマに求めるニーズが多様化しているうえ、「販売店でクルマを購入する前にネットで情報を得るスタイルが当たり前になっている」とし、必ずしもGAZOO.comがそういった社会構造の変化や潜在顧客のニーズに対応しきれていないと分析している。また、スマートフォンやタブレットといった新しいデバイスの登場に応じて、同Webサイトもそれに合わせたコンテンツを提供してきたものの、新技術・新端末への対応や、それらコンテンツの維持のために、制作コストとサーバーコストが増大する結果となった。
これらの課題を解決するため、同社は「利用者の獲得が見込めるガズーの特徴の強化」、「新しい端末やネットサービスへの対応」、「改良や運営に関するコストの低減」の3点をテーマとして掲げた。同社の他のサービスとの連携も視野に入れながら、若い世代を念頭においた多彩な情報をユーザー1人1人に合わせて提供できるようにするのが目標だ。これらを実現するために、大量の情報を迅速に処理できるプラットフォームが必要となり、2年前から協力関係にあるマイクロソフトのソリューションを活用することに決めたという。
リニューアル後はスマホアプリにも注力
リニューアル後のGAZOO.comでは、Webサイト上のサービスにとどまらず、スマートフォン向けのコンテンツやアプリも提供する。基本的には共通のコンテンツをPC向けとスマートフォン等向けにそれぞれ最適化して提供していくことになるが、スマートフォン向けにはオリジナルアプリ「ガズードライブ」もリリースする予定。ドライブルートを検索できるだけでなく、ドライブ中に観光スポットなどを案内する機能を備え、実際のバスガイドによる音声案内も用意する。「目的地に行くだけのドライブとはひと味違う、ドライブそのものを楽しむことができる」(山田氏)コンテンツを目指すとしており、以降も新たなアプリを積極的に展開していく方針。
さらに、オフラインとオンラインの結びつきを強める取り組みも加速させ、全国58箇所にある「ガズームラ」(http://gazoo.com/mura/blog/MuraTop.aspx)などを介して全国各地の観光情報を集約し、同社のテレマティクスサービス「G-BOOK」にもコンテンツ提供を進める。さらに、現在1400車種となっているクルマ情報のデータベースを新旧・国内外の3000車種にまで拡大し、より多くのクルマファンが集う自動車ポータルへと成長を図る考えだ。
その他、クルマ好きの子どもや、子どもをもつ女性や家族をターゲットに、同社オリジナルのカードゲームや、クルマをモチーフにした弁当作りの参考になるコンテンツなど、キッズ向け、ファミリー向けの新しいサービスも展開する予定となっている。
これらのバックグラウンドにマイクロソフトのWindows Azure仮想マシンとSharePoint Server 2013を活用することで、トラフィックの向上に耐えうる設計とするだけでなく、これまでサービスやコーナーごとにバラバラに管理されていたコンテンツの統合と、コストの低減を目指す。特にコストについては、ボリュームの大きいサーバー周りの費用を中心に大幅なコストカットを実現し、トータルで従来の約半分ほどに抑えられる見通しだ。
30万ページを瞬時に検索できるシステムを実現
日本マイクロソフト 執行役常務 エンタープライズビジネス担当の小原琢哉氏も登壇し、GAZOO.comのプラットフォームとして採用された同社のソリューションを詳しく紹介した。
今回GAZOO.comで活用するプラットフォームは、Windows Azure仮想マシンとSharePoint Server 2013で、この組み合わせでのシステム構築は世界初となる。企業から個人まで、多様なユーザーが利用可能なパブリッククラウドサービスであるWindows Azureは、スケーラビリティー、スピード、低コスト、運用の柔軟性といった面でメリットが高く、一方のSharePoint Server 2013は、ブログやSNSといったソーシャル機能を標準搭載しており、強力な検索機能も備えていることから、GAZOO.comのような大規模Webサイトに最適だとしている。
実装にあたっては、SharePoint Server 2013のエンタープライズサーチ機能を大幅に強化し、高度な検索機能を実現。30万ページもあるGAZOO.comの大量のコンテンツすべてをデータベースに格納し、利用者に対するリコメンド機能などを実現するために必要な情報を瞬時に探し出すことができるようになっているという。
ブログやSNSなどのソーシャル機能の他に、マイクロソフトが2012年に買収したYammerのビジネス向けソーシャルサービスの機能を加えることも検討中。トヨタ自動車のその他の公式サイトについても、今回のGAZOO.comと同様のWindows Azure仮想マシンを中心としたプラットフォームに移行する計画があることも明らかにした。
GAZOO.comのおいては、マイクロソフトのエンタープライズサービス部門がシステム構築を担当し、Windows Azure仮想マシンの正式サービスイン以前から米国本社の開発部門も交えて検証等を実施。要件整理や各種機能の実装は、インドにあるMicrosoft Services Global Deliveryによるオフショア開発を活用し、プロジェクトを進めてきたという。小原氏は「引き続き5月30日のリリース成功に向けて、トヨタ様と両社一体となって進めていく」と力強く語り、今回のアライアンスが着実に前進していることをアピールしつつ、説明会を締めくくった。