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ボッシュ、年次記者会見で自動運転技術の開発状況などを紹介
次世代リチウムイオン電池開発に向けてGSユアサ、三菱商事と共同事業
(2013/6/21 14:11)
ボッシュは6月20日、同社の横浜R&Dセンターで「2013年日本のボッシュ・グループ年次記者会見」を実施した。
年次会見を行ったボッシュのヘルベルト・ヘミング代表取締役社長は、ボッシュ・グループの企業ビジョン、2012年度の経営状況や、今後の成長戦略などについて解説。2012年のボッシュ・グループ全体での売り上げは、世界のGDP成長率が2.4%に減速しているにもかかわらず、1.9%増加の525億ユーロになり、2013年度の見通しでも売上高が2~4%増加して業績が改善するとの見解を見せた。このなかでヘミング社長は「今後も成長を続けるためには利益率の改善が大きなポイントになる」と述べている。また、日本のボッシュでは国内売り上げの成長率が-2.7%となり、総売上高は2011年の3210億円から3130億円となったが、厳格なコスト管理、変化するビジネス環境に迅速に対応したことなどで利益率を高め、収益を維持している。さらに日本の自動車メーカーとの連動したビジネスが大きく伸張し、8%の成長を見せている。さらに新しい事業展開を獲得したことで今後も成長を維持できる体制を整え、「成功した年となった」と評価している。
このほか、ヘミング社長は「ボッシュの事業戦略は社会のメガトレンドが背景となり、これは長期的に変化が出ない部分だが、ときに予想外の出来事も起きる。例えば、最近になってアメリカでシェールガスが活用されるようになり、北米市場を中心に再生可能エネルギーへのシフトが予想より遅れる可能性が出てきた。ボッシュでは不確実な時代の中でいかに社会変化に備えるかを重要視している。ポイントになるのは具体的なシナリオを想定し、それに合う新たな策を用意しておくことだ」と語り、その具体策の1つとして6月19日付けで発表した「ボッシュ、GSユアサ、三菱商事の3社で合意した、次世代リチウムイオン電池開発に向けた取り組みに関する提携」を紹介した。
3社は次世代リチウムイオン電池を、電気自動車やプラグインハイブリッドカーなど未来のモビリティの基幹コンポーネントと位置づけ、電池のエネルギー蓄積容量を大幅に引き上げて電気自動車などの航続距離を飛躍的に向上させることを目指している。このために3社は2014年初頭を目処に、ボッシュが50%、GSユアサと三菱商事がそれぞれ25%を出資する合弁会社の設立を計画している。この合弁企業でボッシュは、複雑で高度な製品を大量生産する生産プロセスと品質管理のノウハウ、電池パックの制御システムや車体への組み込みなどの分野を担当。GSユアサは大型リチウムイオン電池セルの原材料と電気化学の研究開発、三菱商事は世界的なマーケティングネットワークの活用とリチウム資源の確保などの分野で新会社に貢献する役割分担となる。
また、会場となった横浜R&Dセンターについても概要を説明。ドイツ国外で最大のアクティブセーフティーシステム研究開発センターとなっている横浜R&Dセンターは1990年12月に設立。当初は日本市場向けのローカライズや日本の自動車メーカーとの調整などを担当していたが、その後2度に渡って規模を拡大。現在では27カ国・1000人以上の従業員が活動する多様性豊かな研究所となっており、自動車関連のシャシーシステム、ガソリンシステムなどの研究・開発しているほか、2輪車の安全技術ではボッシュ全体の中心となっており、ABSやスタビリティシステムを開発して栃木工場で生産を行っている。
2020年以降に高度な自動運転システムを市場投入!
年次会見の後半では技術講演会も実施。ボッシュ シャシーシステム・コントロール事業部 ドライバーアシスタンス技術部の千葉久部長によって解説が行われ、ボッシュが行ってきた安全技術の開発の歴史、ユーザーから求められているテクノロジーと今後の展開などについて紹介された。このなかで千葉部長は、「ボッシュのビジョンを象徴する技術」として自動運転システムの開発状況について大きく時間を割いて解説した。「事故のない社会の実現」「クリーン&経済性」「利便性」「自動化」という4つの要素がボッシュのビジョンであり、これらはすべて自動運転に繋がるとしたほか、マーケットのニーズとしても同社がドイツ、フランス、イタリアで行った意識調査では、60%のドライバーが「システムに依存するかどうかを運転手が判断できるなら使用してもいい」と回答したという。
自動運転についてドイツ連邦道路交通研究所(BASt)は、「部分的な自動化」「高度な自動化」「完全な自動化」という3段階のステップがあると定義。これを受けてボッシュは、すでに市場投入しているアダプティブクルーズコントロールや車線維持支援システムなどを進化させ、部分的な自動化に相当する2種類のシステムを開発中。「渋滞アシスタント」では、高速道路の渋滞時を想定して0~50km/hに部分的な自動運転を行い、「インテグレートクルーズアシスト」は高速道路や道幅の広い一般道で0~130km/h走行中に、道路標識を認識して自動的に速度調整する。さらに2020年以降の市場投入を予定する「ハイウェイパイロット」は高度な自動化に分類され、カーナビの案内に従って走行中に高速道路に入ると、目的となる出口までドライバー介入不要の自動運転が展開される。
また、将来的な自動運転システムの実現に向けた取り組みとして、必要となるカメラやセンサー類を車体に装着した開発・プロモーション用車両が用意され、ボッシュの本社があるドイツ・シュツットガルトとアメリカ・カリフォルニアで公道を使った試験走行がスタートしており、開発、機能評価が行われている。自動運転システムの実現は、長年にわたってクルマのECUや各種センサー、車両の挙動制御技術などを開発してきたボッシュならではの取り組みであると説明している。
また、技術講演会で使用された自動運転システムの紹介動画は、YouTubeの「BoschAutomotive」チャンネルで一般公開されている。
このほか、自動運転システムを考える際の不安要素は、システムの誤作動と通信システムを悪用する外部からの攻撃。技術講演会ではボッシュの関連会社であり、車両制御システムの検査ソリューションを手がけるイータス(ETAS)のウォルフガング・シーネル代表取締役社長なども登壇。自動運転システムの足もとを支える検査態勢、セキュリティソリューションなどについて解説した。