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フォルクスワーゲン、30代女性がメインターゲットの新型「ポロ」発表会

テレビCMに榮倉奈々さん起用。先着1500台に「ACC」を贈るキャンペーンも実施

フォルクスワーゲン グループ ジャパン 代表取締役社長の庄司茂氏と新型「ポロ」
2014年8月25日開催

 フォルクスワーゲン グループ ジャパンは8月25日、新型コンパクトカー「ポロ」を発表・発売した。従来モデルに対して新設計エンジンの搭載による燃費改善、ミリ波レーダーによるプリクラッシュブレーキシステムの標準装備など、メカニズムの進化が図られている一方、基本的なスタイリングは従来型を踏襲した。価格やボディーサイズなどについては関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140825_663437.html)でも紹介している。

 同日、都内で発表会が開催され、新型の特徴や、フォルクス・ワーゲン グループジャパンの2014年前期業績の総括が行われた。

“目の肥えたダウンサイザー”に向けたハイスタンダードコンパクト

フォルクスワーゲン グループ ジャパン マーケティング本部長の正本嘉宏氏

 新型となるポロのスタイリングは基本的に従来型と同じで、主にフロントバンパーやグリルのデザインを変更した。3995×1685×1460mm(全長×全幅×全高)のボディーサイズも変更なし。パワートレーンもターボチャージャー付きの1.2リッター直列4気筒エンジンに7速のデュアルクラッチトランスミッション「7速DSG」を組み合わせる点も同様だ。

 しかし、エンジンは新設計で、バルブ駆動方式がSOHCからDOHCに変更されながらも軽量コンパクトになり、エンジンルームの余裕も増えた。燃費も改善され、従来から約5%アップとなる22.2km/L(JC08モード)となっている。

 発表会でプレゼンテーションを行ったフォルクスワーゲン グループ ジャパン マーケティング本部長の正本嘉宏氏は、もともとポロは燃費がよいクルマとしながらも「新型では、走行状況次第では国産のハイブリッドモデルと遜色のないパフォーマンスを発揮する」と解説。燃費がさらによくなったことを強調した。

 一方で大きく変わったのは先進安全装備。プリクラッシュブレーキシステムの「Front Assist Plus」を、30km/h未満で自動ブレーキを作動させる「シティエマージェンシブレーキ」と組み合わせて採用。衝突時に自動で減速する「マルチコリジョンブレーキ」、ステアリング操作などからドライバーの疲労度を判断して休憩を促すドライバー疲労検知システム「Fatigue Detection System」を、それぞれ全車標準装備とした。

 また、レーダーによって先行するクルマをスキャンし、設定速度以内の速度で追従走行する「アダプティプクルーズコントロール(ACC)」を一部グレードに標準装備とした。このACCについては「新型ポロ発売キャンペーン」として、先着で1500台まで無料で装備(標準装備車の購入者には相当額を購入サポート)できる。

 そのほか、インフォテイメントシステムの「Composition Media」を採用。ラジオやCD、MP3音源の再生、ハンズフリーフォンなどに対応。オプションの純正ナビゲーション「714SDCW」は音声認識やDSRCにも対応している。

 正本氏はポロのクラスのユーザーについて、ダウンサイジングとコンパクトカーを乗り継ぐといった2つの流れがあると説明。そのなかで「クラスを超えた高い安全性能や快適性能、ダウンサイザーのような目の肥えたお客様に応えられるような付加価値競争が激化する」と予測する。

 そして、新型ポロを「コンパクトカーに対するニーズである、燃費、取りまわしのよさ、バリューフォーマネーに加えて、先進安全装備や快適装備を持ち、従来のコンパクトカーの常識を塗り替える高い商品力を持ったクルマ」とし、「コンパクトカーの新たな基準を作り上げた、まさにハイスタンダードコンパクト」とポロのよさを強調した。

 さらに正本氏は、大きな変化のなかった新型ポロのデザインについて「シンプル、クリーン、流行を追わずに本質を追求する、まさにクラスレスなデザイン。今風でスタイリッシュだが、時間とともに陳腐化してしまうデザインよりも、“リモワのスーツケース”や“ライカのカメラ”のように、年月を重ねても古びない魅力がある」と説明した。

 なお、今回のポロのグレードはオプションパッケージも用意しているが、基本的には「コンフォートライン」の1種類のみ。その理由は展開をシンプルにしたかったからだと語る。さらに今後の展開については、従来型同様に「ブルーGT」および「クロスポロ」を投入予定。また、ドイツ本国でも未投入だが、将来登場が予想される「GTI」などのスポーツグレードも導入検討中。このほかに、より小さい排気量のエンジンを搭載したポロについても、環境志向の高まりから国内導入の検討を行っているとのことだ。

コミュニケーション・ターゲット
コンパクトカー市場の推移。国産ハイブリッドカーのコンパクトクラス参入により、市場が大きくなっている
コンパクトカー市場の2つのユーザーグループ
コンパクトカーの市場予測
ポロが「ハイスタンダード・コンパクト」である理由
ポロの装備を従来型や他社の同クラス車と比較
主要装備である「プリクラッシュブレーキシステム」や「マルチコリジョンブレーキ」
アダプティブクルーズコントロールなど、ひとクラス上の快適性を備える
燃費は22.2km/L(JC08モード)

30~40代女性がターゲット、テレビCMは榮倉奈々さん

フォルクスワーゲン グループ ジャパン 代表取締役社長の庄司茂氏

 新型ポロは“女性がターゲット”と明確に位置づけている。発表会では、フォルクスワーゲン グループ ジャパン 代表取締役社長の庄司茂氏が「これほど女性に振ったマーケティング活動をするドイツ車は初めてだと思う」と口にするほど女性メインの訴求を行っていく。

 その理由について、マーケティング本部長の正本氏は「ドイツ車というと男性的なイメージをお持ちの方が非常に多いが、ポロはオーナーの2人に1人が女性で、フォルクスワーゲンでも女性比率が高い。このような理由から、あらためて女性にフォーカスして、特に30代の女性の方々をメインターゲットにした」と説明。「彼女たちの充実した生活のワンシーンを彩る上質なクルマとして新型ポロを位置づけていきたい」と語った。

 そして、このターゲットに訴求するため、テレビCMは女優の榮倉奈々さんをイメージキャラクターとして起用。8月26日から全国で放映されるCMでは、仕事やプライベートをアクティブかつスタイリッシュに取り組む女性を榮倉さんが演じ、ポロをパートナーとした日常シーンを表現する。また、CM中ではアダプティプクルーズコントロールの機能説明も行っている。

テレビCMなどに榮倉奈々さんを起用。「Go Everyday」をキーワードとして展開する
価格は従来型の最終価格よりも低く抑え、装備も充実

想定よりも大きかった駆け込み需要と反動減

 このほかに発表会では、庄司氏から2014年の1月から7月までの業績についての説明も行われた。前期業績の注目点といえば消費税の増税による駆け込み需要と、増税後の落ち込み具合。庄司氏は駆け込み需要と反動減は想定よりも大きかったとし、反動減によって落ち込んだ数字は、現在でも戻ってきたという感覚を持っていないと説明した。

 駆け込み需要期の販売台数は「1月からは毎月新記録の連続で、特に3月は輸入車として初めて月間販売台数が1万台を超えるという記録的なレベルを達成した」と駆け込み需要の大きさを強調。反動減については4月以降、前年割れが続いている。反動減が続く理由としては、目立った新型車の導入ができていないことと、想定以上にユーザーの増税に対するインパクトが強かったことを挙げて、「駆け込みで買わなかったお客様に対しては、増税後に“なんで今、買わないといけないの?”という思いが強いような気がしている」と感想を述べた。

市場の駆け込み需要と反動減のイメージ
フォルクスワーゲンの1-7月新車販売実績
フォルクスワーゲンの1-7月認定中古車販売実績

 一方で改善の兆しとしては、認定中古車が新車よりも早く回復傾向にあり、駆け込み需要と合わせて過去最高の1万3300台を販売した昨年を上まわる見込みであると説明した。また、Webサイトの訪問者や実際のショールームの来場者を見ると、回復の兆しがあるという。

 また、同社では顧客とのつながりを強化する活動を行っている。販売店スタッフの研修のほか、4月26日に富士スピードウェイで行った「フォルクスワーゲンフェスト」の開催や、LINEのスタンプ公開、「ビートルマン」の活動、フォルクスワーゲン オーナーズ パスの加入率のアップなどもその一環だ。イベントについては、毎年続けていきたいと庄司氏から希望が語られた。

 今後の新型車の投入予定では、年末までに電気自動車の「e-up!」を導入するほか、ポロのグレード展開を強化して、「ブルーGT」「クロスポロ」の投入を予定しているという。また、2013年発売ですでに2万7000台を販売した新型「ゴルフ」についても、秋から供給を増加させる予定とした。

今後の展開
顧客とのつながりを強化する活動
フォルクスワーゲン オーナーズ パス(VOP)の展開
2014年下半期の投入モデル

新型ポロを展示

 発表会の会場には、新型ポロに設定される「コンフォートライン」とオプションパックを装備した「コンフォートライン アップグレードパッケージ」の両方が用意されて展示された。

新型ポロ。ボディーカラーは「サンセットレッドメタリック」
従来型との違いが分かりやすいのはフロント周り。グリルやバンパー形状が変わっている
グリルは従来型よりもフィンの枚数が増え、下側にメッキのラインを追加
ナンバープレート下にプリクラッシュブレーキシステムなどで使うレーダーを装備
ヘッドライトは内部のデザインが従来型と異なる
アップグレードパッケージではフォグライトを標準装備。アンダーグリルの形状も変化している
通常のコンフォートラインはフォグライトなしとなる
テールライト
タイヤは186/60 R15。アップグレードパッケージはアルミホイールを装着
コンフォートラインはスチールホイール+フルホイールキャップとなる
コンフォートラインの室内。エアコンがマニュアル式になる。メーターパネルは従来型と大きく変わり、アナログの水温計や燃料計が付いた。ステアリングはフラットボトムの新形状
オプションの純正ナビゲーション「714SDCW」
コンフォートラインのヘッドライトスイッチ
アップグレードパッケージのヘッドライトスイッチ。オートポジションとフォグライトの操作が加わっている
シート形状や表皮などは全車共通
アップグレードパッケージはエアコンがオートになり、フロントシート間にアームレストが備わる
エンジンは新設計のターボ付き1.2リッター。後方排気となるなどレイアウトも変化している
ラゲッジスペースには変化なし。2段式となるトノカバーも従来型から踏襲
スペアタイヤはなく、「タイヤ応急修理キット」が標準装備
アップグレードパッケージのみに装備されるレインセンサー
ポロのボディーカラーはこの写真の7色のほか、アップグレードパッケージに受注生産で選択できる「オリックスホワイトマザーオブパールエフェクト」を加えた全8種類。

(正田拓也)