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ホンダ、新型燃料電池車のコンセプトカー「Honda FCV CONCEPT」を「水素社会に向けたHondaの取り組み説明会」で世界初公開
新型燃料電池車「FCV」の発売は、2015年中から2015年度中へ後ろ倒し
(2014/11/17 18:03)
- 2014年11月17日開催
本田技研工業は11月17日、東京・青山の本社ビルにおいて「水素社会に向けたHondaの取り組み説明会」と題した会を開催。その中で、2015年度中に発売するという新型燃料電池車「FCV」のコンセプトカー「Honda FCV CONCEPT」を世界初公開した。
奇しくも11月17日は、トヨタ自動車が2013年のモーターショーに出展した燃料電池車のコンセプトカー「TOYOTA FCV CONCEPT」の市販車名を「MIRAI(ミライ)」にすると発表した。本記事では混同を避けるため、Honda FCV CONCEPTについては省略形を使用せず表記する。
ホンダの市販車の発売は、当初2015年中(2015年1月~12月)がアナウンスされていたが、今回の発表においては2015年度中(2015年4月~2016年3月)へと微修正されている。
説明会において本田技研工業 代表取締役 社長執行役員 伊東孝紳氏は、ホンダのこれまでの燃料電池に関する取り組みを紹介。ホンダは、「つくる」「つかう」「つながる」の3つのコンセプトで、多様なエネルギー源から作ることのできる水素を利用した水素社会の実現に取り組んでおり、CO2ゼロ社会の実現に取り組んでいくという。
つくるについては岩谷産業と協業し、水素製造から充填までの主要構成部位を世界で初めてパッケージ型とした「スマート水素ステーション」を開発。つかうについては、「FCX」「FCXクラリティ」と発展させてきた燃料電池車が担う。つながるについては、FCXクラリティで実証試験を積み重ねた外部給電機能を指し、今回新たに「Honda Power Exporter CONCEPT」が発表された。
伊東社長に続いて、経済産業省 資源エネルギー庁 燃料電池推進室 室長 戸邉千広氏、環境省 自動車環境対策課 課長 小野洋氏が登壇。経産省の戸邉氏は、この6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂 2014」に含まれる「水素社会の実現に向けたロードマップの実行」に触れ、産学官で協力しながら水素社会への取り組みを一層加速していくと語った。
●経済産業省「水素・燃料電池戦略ロードマップ」
http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140624004/20140624004.html
環境省の小野氏は、現在環境省で実施している大気汚染対策、地球温暖化対策を着実に推進していくとし、ホンダと岩谷産業には2010年度(平成22年度)以来、環境省委託実証実験を行ってもらっていると紹介。設置自由度の高いスマート水素ステーションはその成果であるとし、現在35MPaのスマート水素ステーションの次世代タイプとなる70MPaタイプについても2015年度(平成27年度)の予算で公募を開始したいといい、再生可能エネルギー由来の水素ステーションの補助事業の予算要求を行っていると紹介した。
新型燃料電池車のコンセプトカーHonda FCV CONCEPTの開発については、本田技術研究所 四輪R&Dセンター FCV開発責任者 清水潔氏が解説。FCXクラリティではサイズの制約上センターレイアウトしていた発電装置「燃料電池スタック」を構成するセルの構造を改良。20%薄型化し、1枚のセル厚さを2mmにするとともに、1.5倍の出力特性を獲得。結果、燃料電池スタックを33%小型化することに成功。フロントボンネット内に、燃料電池スタック、パワーコントロールユニット一体型駆動モーター&ギアボックス、電圧コントロールユニット、電動ターボ型コンプレッサなどの一体型パワートレーンを配置している。
これにより、大人5人が座れる室内空間を確保した室内空間を確保したというものの、詳細なスペックは未発表。現時点で発表されているのは、燃料電池スタック出力 1000kW以上、航続距離 700km以上、乗車定員 5名、水素タンク充填圧力 70MPa(700気圧)、充填時間 3分というものになる。
このHonda FCV CONCEPTにあわせて発表されたのが新型外部給電器がHonda Power Exporter CONCEPT。V2Lガイドライン(電動自動車用充放電システムガイドライン)に準拠しているため、Honda FCV CONCEPT以外の車両にも接続可能な給電器で、最大9kWを出力。AC100Vで3kVA、単相三線100/200Vで6kVAを出力する。
質疑応答では、発売時期にと価格に関するものが多かった。発売時期想定が後方にスライドしたことに関して伊東社長は、「先般我々としてもいろいろ課題があったことを鑑み、このクルマは相当高度な制御をしているためもあり、念には念を入れて開発するため若干お時間をいただこうと考えている」と答えたほか、価格については「ちゃんとした競争力のあるものにしたい」と語った上で、「トヨタさんは素晴らしいご提案をされていて、我々としてもすごく刺激になっている、これから一生懸命仕事をしようと考えている」と述べた。
伊東社長は、とくに価格についての質問に補足する形で、「クルマというものは数を作れば必ずコストが下がります。どんなものだってそうです。でも(このクルマは)お客さまが使う際に『水素はどこで入れるのだ?』という問題がある。そういった意味で、かつてない、今までガソリンスタンドがある中でこれをやる(クルマを出す)というレベルではない困難さを伴っている。しかし、環境課題を考えると1日でも早くクリーンエネルギーに変えなければならないという強い意志がある。我々メーカーにもあるし、幸い日本政府にもある。(20)20年は言い過ぎかもしれないが(20)30年にくらいには(燃料電池車が)一杯走っているような姿ができればいいなと、僕は夢には思います」と熱く語った。
燃料電池車について先行するトヨタとライバル視されがちなホンダだが、燃料電池車市場はインフラも含めてまだ立ち上がってすらいない。官民一体になったHySUT(水素供給・利用技術研究組合)の取り組みにもあるように、今は誰もが安心して燃料電池車を運用できるような社会を築いていく段階にある。
トヨタは明日、11月18日10時から燃料電池車「MIRAI」の発表会を行うことを明らかにしており、2015年から本格的に燃料電池車は立ち上がって行くことになる。