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JAL、地元政財官界から大きな期待を集めるセントレア-バンコク線を4年ぶりに就航

自動車産業など多数の製造業が進出するタイを愛知と直結。2015年1月からはボーイング787-8で運航

2014年12月20日 運航開始

JALが4年ぶりに就航したセントレア-バンコク線。初便となるボーイング767-300ER型機(登録記号:JA619J)が無事セントレアを飛び立っていった

 JAL(日本航空)は、中部国際空港(セントレア)-バンコク間の定期便を12月20日に就航した。JALにおける中部-バンコク線は2010年に運休。約4年ぶりの再就航となる。

 JALでは1988年にタイ国際航空との共同運航便として名古屋空港(現・県営名古屋空港)とバンコクを結ぶ路線を開設。1995年からはJAL便として2010年まで運航してきたが、同社の経営破綻をきっかけに運休となっていた。

 地元からの強い要望があったことに加え、タイからの訪日者数の増加、中部からタイへのビジネスおよび観光需要の高まり、運航コスト削減などの背景があり、想定される利益に達する見込みが立ったことにより再就航となった。JAL広報部によれば、タイで2014年5月にクーデターが発生した影響による需要減少はあったものの、年末年始にかけて復調気配になっているという。

 セントレアからバンコクへは10時30分発-14時50分着のJAL737便。バンコクからセントレアへは22時55分発-6時20分着のJAL738便として、デイリーで運航される。日本とバンコクを結ぶJAL便は、成田空港から1便、羽田空港から2便、関西国際空港から1便をデイリーで運航しており、セントレア線の開設により5路線目。

 バンコクからはバンコクエアウェイズとのコードシェアにより、タイ国内(チェンマイ、プーケット、サムイ)、ミャンマー(ヤンゴン、マンダレー、ネビドー)、カンボジア(シェムリアップ、プノンペン)、ラオス(ビエンチャン、ルアンパバーン)、インド(ムンバイ)、モルディブ(マレ)の13都市へ乗り継げる。

空港内の時刻案内板にJL737便バンコク行きの表示
搭乗口となった20番ゲートでは就航セレモニーを実施
JAL代表取締役社長の植木義晴氏
セントレアのオリジナルキャラクター「なぞの旅人ふー」ちゃんも駆けつけた

 12月20日の初便は、ボーイング767-300ER型機(登録記号:JA619J)で運航。フルフラットシートのビジネスクラスや、“新・間隔エコノミー”で訴求している足元の広いエコノミーシートを採用する「SKY SUITE 767」(SS6)仕様の機体を使用した。ただし、ボーイング767-300ER型機が使用されるのは12月31日の運航までで、その後はボーイング787-8型機へ切り替えられる。

 当便の搭乗口となった20番ゲートでは、JAL代表取締役社長の植木義晴氏のほか、地元の政・財・官界から多数の来賓が出席して、セレモニーが催された。

 植木氏は「JAL便で約15年間運航していた際、私もDC-10の機長として何度も乗務した。残念ながら経営破綻により運休となってご迷惑をおかけしたが、こうして再就航でき、当時飛んでいた私としても、現社長としても非常に大きな喜びを感じている」と挨拶。

 そして、「経営破綻から5年間、世界一お客様に喜ばれ、愛される航空会社になりたいというスローガンを掲げて、経営、社員一体となり、そして様々なご支援をいただいて努力を続けてきた。こうして再就航する中部/バンコク線、そして日本航空を、皆さんにご愛顧いただきたい」と呼びかけた。

愛知県副知事の永田清氏

 地元からは愛知県副知事の永田清氏、国土交通省中部運輸局 局長の野俣光孝氏、一般社団法人中部経済連合会 会長の三田敏雄氏が順に挨拶。

 永田副知事は「この中部-バンコク線は大変需要の高い路線。1月から9月までのタイからのお客さんは対前年で2倍以上増えている。JALが会社復活の第一歩として、この路線を復活していただいたことは大変有意義」と期待の声を上げた。

 愛知県からタイへは、トヨタ自動車などの自動車産業をはじめとする製造業を中心に280社以上が進出。400を超える拠点が展開されており、愛知県では2014年4月よりバンコクに産業情報センターを開設して、進出企業の支援や、政府との連携拡大に向けて取り組んでいると言う。9月には大村秀章知事がタイ工業省との経済連携に関する覚書も締結している。

 同じく9月には、愛知県の農林水産物や加工品を披露する「愛知フェア」をバンコクで開催。特に「名古屋めし」が好評を博したとのことだが、ここでは「八丁味噌」や「きしめん」の輸出についても商談がまとまった。そして、日本とタイとの友好の象徴である名古屋の「日泰寺」についてもPRしたという。

 永田氏は挨拶の締めくくりに、「バンコクエアウェイズとの共同運航が多数あって、国内や周辺のASEAN地域への乗り継ぎが便利とのことであり、復活した路線を契機に、愛知県とタイ、周辺地域との相互交流がますます盛んになると期待している。JALには、ぜひこのバンコク線を成功させていただいて、さらにはパリ線なども復活していただきたい」と、さらなる路線拡大を希望した。

国交省中部運輸局長の野俣光孝氏

 国交省中部運輸局長の野俣光孝氏は、「2013年に訪日外国人が1000万人を突破し、2020年に向けて2000万人を目指して取り組んでいる。中部地域においては、中部・北陸9県が一体となって外国人の訪日を推進する『昇龍道プロジェクト』というものを作っており、2014年に400万人泊を目指して頑張っているところで、この路線は大きく貢献していただけるのではないか」と挨拶。タイからの訪日者数は1月から11月までのデータで前年比46.2%増となったとのことで、極めて有望な市場と見ているという。

 一方で、「航空路線が活性化するためには双方向の交流が必要。愛知県を始め、中部地域の企業からタイへの出張など、より多くの日本人がタイへ行くなど、路線就航を機とした相互交流活性化に期待している」とも語った。

中部経済連合会長の三田敏雄氏

 中部経済連合会長の三田敏雄氏は冒頭で「まず、この便ができたことについて、日本航空さんに心からお礼申し上げたい。この便は私ども中部圏にとって大きな第一歩であると思う」と歓迎の意を表した。

 その上で、「この便は夕方に着いて、ラッシュの前にバンコク市内に入り、その日をゆったり過ごせると聞いている。我々日本人がバンコクへ行くにあたって、非常に便利な時間帯に飛ばしていただけ、この地から飛び立つ人にとって大変有効な便だと思う。この便の発展を心から祈っており、中部経済連合会も盛り立てていく。皆様方にもご利用いただけるよう私からもお願い申し上げる」と呼びかけた。

タイ名古屋総領事館、国土交通省、中部国際空港関係者、愛知/岐阜/三重の各官庁の担当者ら、来賓によるテープカットが行なわれた

 初便は199名定員に対し「ほぼ満席」であるという。その搭乗者には搭乗証明書や記念品も配布。飛行機は放水車が作り出したアーチをくぐりながら滑走路へ向かい、タイ・バンコクへ向けて飛び立った。

セレモニー後、199席をほぼ満席にした乗客らが順次搭乗。搭乗口では植木氏が乗客との記念撮影に気さくに応じていた
搭乗客に配布された記念品と初便の搭乗証明書
20番スポット付近には放水アーチを行なうべく放水車が待機。ターミナル施設側の放水車はプッシュバック終了まで待機した
プッシュバック後、トーイングカーが離れるなど地上走行へ向けて準備。横断幕を整備士らによるお見送りも
地上走行開始とともに放水アーチを開始
放水アーチをくぐり抜けるボーイング767-300ER
アーチを作った2台の放水車

(多和田新也)