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内閣府、SIP自動走行システム(SIP-adus)に関する進捗報告
国際的な自動運転に関する動向報告も
(2015/10/13 11:58)
- 2015年9月17日 開催
内閣府が官民一体となって取り組んでいるSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の1つに、「自動走行システム(SIP-adus)」がある。このSIP-adusには、総務省、経済産業省、国土交通省、警察庁などクルマや道路に関わる各省庁のほか、自動車メーカー、大学教授、自動車ジャーナリストなどが参画。2020年の自動運転の実現を目指して国家的な取り組みを行っている。
その活動については順次報告されており、第5回目となる報告会が9月17日に中央合同庁舎8号館で開催された。
SIP-adusに関する報告を行ったのは、葛巻清吾 サブ・プログラムディレクター。葛巻氏はトヨタ自動車で自動運転車の開発も行っているが、この報告会では、特定自動車メーカーに依存しない、SIP-adusサブ・プログラムディレクターとしての発言となる。
自動運転に関する定義は各国によって微妙に異なるが、SIP-adusが定義する自動運転は下記の4レベルとなる。
レベル1 安全運転支援:現行で実用化されているオートブレーキなど
レベル2 高度運転支援:加速、操舵、制動を同時に自動車がドライバーのアシストをする
レベル3 高度運転支援:加速、操舵、制動を全て自動車がコントロール、緊急時のみドライバーが対応
レベル4 完全自動走行:加速、操舵、制動を全て自動車がコントロール、ドライバーが全く関与しない
葛巻氏は、最初にロードマップを掲示。目標・出口戦略として、「1.交通事故低減等 国家目標の達成」「2.自動走行システムの実現と普及」「3.次世代公共交通システムの実用化」を掲げた。時期的には2017年の後半にレベル2の準自動走行システムを実用化し、2020年に緊急時のみドライバーが対応するレベル3を実現。そのレベル3が普及した後、2030年には完全自動走行となるレベル4の実用化を目指す。
自動運転車の実現については、様々な技術開発が必要になるが、SIP-adusでは、例えば高精度地図情報や国際連携、交通事故死者低減・渋滞低減のための基板技術整備など協調領域をカバーしていく。
高精度地図情報となるダイナミックマップについては、「自動走行システムの自己位置推定、走行経路特定のための高精度地図」のみではなく「すべての車両のための高度道路交通情報データベース(デジタルインフラ)」として活用。コンソーシアムを結成し、オールジャパンで取り組んでいく。
このダイナミックマップ作成に関しては、三菱電機、アイサンテクノロジー、インクリメントP、ゼンリン、トヨタマップマスター、パスコ、三菱総合研究所の7社が国から受託したことが10月2日に発表されている。
葛巻氏は、将来的には「国家基盤データ」としての活用拡大に期待するとした。
SIP-adusでは、自動運転車とドライバーのインターフェースである“HMI”についても検討していく。「システムとドライバーのインターフェース」「システムと他の交通参加者のインターフェース」「システムと社会とのインターフェース」の3つの観点に基づいてアプローチし、社会的・国際的に自動運転車の位置づけを確立していく。
その1つの問題点として挙げられたのが「運転に関する役割と権限」。自動運転車では、ドライバーが運転する「運転支援モード」と、自動運転車が運転に関する操作を行う「準自動走行モード」(主導権はドライバー)を行ったり来たりするが、どのようなときに、どのように運転権限を委譲するかなどの規定が必要になる。2015年度(平成27年度)には、これらをドライビングシュミレータにより実験していく。
そのほか、ITS活用による実験、情報セキュリティについて報告が行われ、東京都と連携し次世代都市交通へ研究開発成果を盛り込んでいく。実際の次世代都市交通車両については、民間で作業部会を作り推進しているとした。
自動運転に関する国際動向
自動運転に関する国際動向については、国際連携ワーキンググループ 主査 天野肇氏から報告が行われた。
最初に米国の道路交通の課題について説明。米国では交通事故死者数が年間で3万3561人(2012年)、交通事故件数が56億1500万件(2012年)にもなり、4歳と11歳~27歳の死因のトップになっているという。渋滞では、55億時間の遅れが発生し、年間1210億ドルの損失。29億ガロン(1100万kL)の燃料の無駄となり、560億ポンド(2540万t)のCO2排出へと繋がっている。
それらの解決方法の1つと位置づけられているのが自動運転で、その実現へ向けての研究が進められている。
天野氏はミシガン大学が設立した自動運転研究施設「M City」について紹介。この施設の中には、自動運転実現に必要とされる路車間通信など様々な設備が用意されているほか、施設周辺の公道と一体化した試験環境が整えられているという。これまで米国の自動運転開発はGoogleやApple、NVIDIAなどIT企業本社のある西海岸が目立っていたが、デトロイトをかかえるミシガン州も州がバックアップする形で開発を加速させていく。
欧州においては、研究開発のためのフレームワークプログラム「FP7」後の先行イノベーション開発プログラムとして「Horizon 2020」があり、その中で自動運転に関するものも公募されているという。また、各国の研究開発についても「スウェーデン Drive Me プロジェクト」「オランダ DAVI プロジェクト」「イギリス Driverless cars プロジェクト」が紹介された。
天野氏は、自動運転車が公道走行をすることを国際社会が受け入れるために、「自動走行する車両(車、バス、トラック)が備えるべき機能、性能の基準作り」「それらが基準を満足していることを検証する技術的手法の確立」「車両が基準を満足していることを認証する国際的枠組みづくり」を整備することが必要という認識が進み、公道における実証実験が進められるよう議論が活発化しているという。
国際連合でも「自動車基準調和世界フォーラム(WP29)」の中に「自動運転分科会」を設置。2015年には「ブレーキと走行装置(GRRF)専門分科会」の中に「自動操舵専門会議」を立ち上げることが合意され、ドイツと共同議長を務める日本が、現在10km/h超での使用が禁止されている自動操舵に関する規則改正を主導しているとの報告があった。