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SUPER GT 第7戦オートポリス、GT500/GT300両クラスでGT-Rが1-2フィニッシュ

GT500は1位、2位がわずか2ポイント差。最終戦もてぎに激しいチャンピオン争いを持ち越し

GT500で優勝した1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)

 SUPER GT 第7戦「SUPER GT in KYUSHU 300km」が、10月31日~11月1日の2日間にわたり大分県日田市にあるオートポリスで開催された。11月1日の決勝レースでは65周の激しいレースが展開された。

 今年も激しいチャンピオン争いが展開されているGT500では、予選3位からスタートした1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)が、ピットストップ後にポールからトップを走ってきた12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/J.P.デ・オリベイラ組)をオーバテイクし、その後両車は1度の接触を含み激しいデッドヒートを繰り広げたが、最終的に1号車がわずか0.348秒差で12号車を振り切って優勝した。今回の結果により、ポイントリーダーの座を維持した12号車と、1号車の差はわずか2ポイントとなり、最終戦となるツインリンクもてぎのレースに12号車と1号車を含めて6台にチャンピオンの可能性が残ることになった。

 GT300はポールからスタートした2号車 シンティアム・アップル・ロータス(高橋一穂/加藤寛規組)がタイヤバーストによりリタイアする波乱の展開で、ピットストップを短くする作戦に出た3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/高星明誠組)が優勝し、2位には予選14位から挽回に成功した10号車 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/千代勝正組)が入った。これにより、アンドレ・クート選手は今年のGT300ドライバーチャンピオンを獲得した。

 なお、いずれのカテゴリーでもGT-Rが1-2フィニッシュを実現したが、これは第2戦FUJI GT 500kmレース以来の今シーズン2度目のことになる。

ミシュラン、ブリヂストン装着のGT-Rが激しいデッドヒートを繰り広げたGT500

GT500のスタートシーン。各車予選の順位通りに1コーナーを通過していった

 毎年、タイヤのピックアップ(コース上に落ちているタイヤカスを拾ってしまい、タイヤの性能が低下する現象のこと)が問題になるオートポリスのレースだが、今年のレースを大きく決定づけたのは、ピットストップのタイミングと周回遅れの車両によるトラフィックだった。

 予選でポールポジションを獲得したのは12号車 カルソニック IMPUL GT-R。今回のレースでは、ウェイトハンデが前戦までのポイント×2kgからポイント×1kgとなったのだが、前戦までに51ポイントを獲得していた12号車のウェイトハンデは51kgとなるが、50kg分のウェイトハンデは燃料流入制限のリストリクターを1つ絞るハンデに置きかえることができるというルールを唯一利用することが可能で、リストリクター1ダウン+1kgというハンデで戦うことが可能になった。

 オートポリスはエンジンパワーよりもウェイトにより厳しいサーキットと考えられているため、これは12号車にとって追い風となったと考えられる。実際、ランキング2位だった49ポイントの100号車RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)は49kgのままで予選11位に沈み、ランキング3位で45ポイントだった46号車 S Road MOLA GT-R(本山哲/柳田真孝組)が予選10位に沈んだことを考えれば、その影響は大きかったと考えることができる。

ポールからスタートして2位になった12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/J.P.デ・オリベイラ組)、ポイントリーダーの座を維持

 決勝レースではいずれのマシンも無難なスタートを切り、予選順位のままでレースは展開していった。1位は12号車、2位は予選2位の38号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)、3位に予選3位の1号車 MOTUL AUTECH GT-Rといった具合に、当初はこの3台による激しいトップ争いが展開された。いずれもラップライムは似通っており、GT300の周回遅れ車両が登場する度にくっついたり離れたりという展開になっていた。

 一方、4位以下は予選4位からスタートした24号車 D'station ADVAN GT-R(佐々木大樹/ミハエル・クルム組)が蓋をする形になり、早々に上位争いは前出の3台に絞られることになった。レースが動いたのは24周目。2位を走っていた38号車がコースアウトし、1号車が2位に上がることになった。このコースアウトで38号車は16秒以上トップから遅れる形になり、トップ争いから脱落することになった。

 レースが折り返しを迎えようかというタイミングの30周目前後から、霧雨だった雨がやや強くなり始める。それでも路面を濡らすほどではなく、ウェット用のタイヤに交換するほどではないという路面状況。このため、ウェット用タイヤに交換するなら通常のピットストップ時にと考えるチーム側は、なかなかピットストップを決断できないという状況が続いた。

 先に動いたのは1号車。37周目にいち早くピットストップを決め、早い作業で12号車に追いつく作戦に出る。これに対して12号車は40周目まで引っ張る作戦に出た。しかし、その間に1号車のタイヤが暖まり、12号車に比べて1~2秒速いペースで走っており、12号車がピットストップを終えると12号車のすぐ後ろに1号車がつく展開になってしまった。ピットアウト直後はタイヤが暖まっていない状態で、結局、その間に1号車は12号車をオーバーテイクすることに成功し、トップに立った。

 だが、レースはそれでは終わらなかった。タイヤが暖まった12号車はすぐに1号車に対しての追い上げを開始し、両車はあっという間にテール・トゥー・ノーズになった。12号車をドライブする安田選手は、1号車をドライブする松田選手に対して豪快にアウトから追い越しをかけ1度は前にでるが、インサイドの縁石にヒットした形になった1号車が12号車に対してぶつかる形で両車は接触。これにより、1号車が再び前に出るという、同じメーカー同士ながら激しいレースが展開されることになった。同じメーカー同士とはいえ、1号車はミシュラン、12号車はブリヂストンとタイヤメーカーが異なっており、両タイヤメーカーの威信を背負った戦いだけに、どちらも一歩も引けない激しいレースとなった。

 結局、その後も周回遅れの登場によって差が縮まったり離れたりを繰り返しながら最終ラップまでバトルが続き、結局1号車が12号車に対してわずか0.348秒差という僅差で逃げ切って優勝した。2位は12号車、3位は後半追い上げた17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/武藤英紀組)。

3位となった17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/武藤英紀組)

 この結果により、ポイントランキングは1位 12号車(66ポイント)、2位 1号車(64ポイント)となったが、その差はわずかに2ポイントで、両車とも最終戦で自力でチャンピオンを決定できる位置にいることになる。3位に38号車(53ポイント)、4位に46号車(50ポイント)、5位に100号車(49ポイント)、6位に36号車(49ポイント)となっており、計算上は6位にまで可能性が残っているが、実質的には上位2台の争いとなる可能性が高そうだ。

 この結果により、GT500のチャンピオン決定は11月14日~15日に栃木県茂木町で行われるツインリンクもてぎでの最終戦になるので、同レースは見逃せないレースとなりそうだ。

GT500結果(暫定)

順位カーナンバー車両ドライバータイムタイヤウェイトハンデ(kg)
1位1MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリ1時間50分42秒495MI44
2位12カルソニック IMPUL GT-R安田裕信/J.P.デ・オリベイラ0.348BS51
3位17KEIHIN NSX CONCEPT-GT塚越広大/武藤英紀14.056BS25
4位38ZENT CERUMO RC F立川祐路/石浦宏明16.235BS45
5位36PETRONAS TOM'S RC F伊藤大輔/ジェームス・ロシター31.049BS43
6位46S Road MOLA GT-R本山哲/柳田真孝41.666MI45
7位15ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT小暮卓史/オリバー・ターベイ49.28BS18
8位6ENEOS SUSTINA RC F大嶋和也/国本雄資55.011BS27
9位19WedsSport ADVAN RC F脇阪寿一/関口雄飛1LapYH24
10位64Epson NSX CONCEPT-GT中嶋大祐/ベルトラン・バゲット1LapDL3
11位100RAYBRIG NSX CONCEPT-GT山本尚貴/伊沢拓也1LapBS49
12位37KeePer TOM'S RC FA.カルダレッリ/平川亮1LapBS36
13位39DENSO KOBELCO SARD RC F平手晃平/ヘイキ・コバライネン1LapBS18
14位8ARTA NSX CONCEPT-GT松浦孝亮/野尻智紀3LapsBS10
15位24D'station ADVAN GT-R佐々木大樹/ミハエル・クルム19LapsYH31

GT500ポイントスタンディング(上位10台、暫定)

順位カーナンバードライバーポイント
1位12安田裕信/J.P.デ・オリベイラ66
2位1松田次生/ロニー・クインタレッリ64
3位38立川祐路/石浦宏明53
4位46本山哲/柳田真孝50
5位100山本尚貴/伊沢拓也49
6位36伊藤大輔/ジェームス・ロシター49
7位37A.カルダレッリ/平川亮36
8位17塚越広大/武藤英紀36
9位24佐々木大樹/ミハエル・クルム31
10位6大嶋和也/国本雄資30

2台のGT-Rが予選下位から追い上げて1-2フィニッシュ、ダンロップタイヤの10号車は戴冠決定

GT300クラスのスタート。こちらもピットスタートの31号車を除けば予選順位通りに1コーナーへ入っていった

 GT300の焦点は、前戦までの結果により2位以下に25ポイントの差をつけている10号車 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/千代勝正組)のGT300ドライバータイトル獲得を、2位以下のチームが止められるかという点にあった。予選でポールを獲得したのは2号車 シンティアム・アップル・ロータス(高橋一穂/加藤寛規組)、2位はランキング3位(2位はクート選手のチームメイトで途中欠場しているため権利がない千代であるため、実質的には2位)の31号車 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一組)で、ポイントリーダーの10号車が14位に沈んだため、31号車の活躍が期待されるレースとなるかと思われた。ところが、パレードラップが始まる前に31号車からトラブルが発見され、ピットスタートになることになってしまった。この結果、31号車は上位争いの可能性がほぼ消滅し、10号車により有利な状況になった。

 レースの前半を支配したのは、ポールからスタートした2号車 シンティアム・アップル・ロータスで、通常のピットストップまでトップを維持した。だが、2号車がピットストップを終えてピットから出ると、20周目にいち早くタイヤ交換を終えていた3号車 B-MAX NDDP GT-Rがすぐ真後ろにいるという展開になっていた。3号車は予選こそ8位と振るわなかったものの、車両自体のパフォーマンスはよく、それを生かして早めにピットストップし、他車のいないところで追い上げをしていたのだ。それが大成功し、見事にトップに立ってそのまま優勝した。これに対して抜かれた2号車はその数周後にタイヤがバーストし、そのままリタイヤとなってしまった。2号車は今年2回もポールを獲得しているなど速いところを見せるが、結果につながらない不運に見舞われることが多い年となっている。

GT300クラスで優勝した3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/高星明誠組)

 14位からスタートした10号車 GAINER TANAX GT-Rは、前半でシングルまで順位を上げ、千代選手に替わった後半は他車よりも数秒速いペースで追い上げを開始し、あっという間に3位に浮上した。そして前述の2号車のタイヤバーストがあり2位に上がると、そのままゴールした。これによりクート選手の今年のGT300ドライバータイトルが決定した。3位はこちらも予選12位から追い上げた7号車 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒聖治組)。

2位に入った10号車 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/千代勝正組)。クート選手はこの結果によりGT300のドライバーチャンピオンを獲得

GT300結果(暫定)

順位カーナンバー車両ドライバータイムタイヤウェイトハンデ(kg)
1位3B-MAX NDDP GT-R星野一樹/高星明誠1時間51分17秒185YH41
2位10GAINER TANAX GT-Rアンドレ・クート/千代勝正3.628DL74
3位7Studie BMW Z4ヨルグ・ミューラー/荒聖治45.102YH34
4位77ケーズフロンティア Direction 458横溝直輝/峰尾恭輔55.281YH3
5位21Audi R8 LMS ultraリチャード・ライアン/藤井誠暢56.394YH19
6位55ARTA CR-Z GT高木真一/小林崇志1分05.335BS36
7位0グッドスマイル 初音ミク SLS谷口信輝/片岡龍也1分14.750YH16
8位33Excellence Porsche坂本祐也/山下健太1LapYH3
9位20UPGARAGE BANDOH 86中山友貴/井出有治1LapYH-
10位60SYNTIUM LMcorsa RC F GT3飯田章/吉本大樹1LapYH1
11位87クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3青木孝行/山西康司1LapYH-
12位50SKT EXE SLS加納政樹/安岡秀徒1LapYH-
13位65LEON SLS黒澤治樹/蒲生尚弥1LapYH35
14位31TOYOTA PRIUS apr GT嵯峨宏紀/中山雄一1LapBS49
15位360RUNUP Group&DOES GT-R吉田広樹/田中篤1LapYH-
16位48DIJON Racing GT-R高森博士/田中勝輝1LapYH-
17位51JMS LMcorsa Z4新田守男/脇阪薫一1LapYH28
18位30NetMove GT-R小泉洋史/岩崎祐貴2LapsYH-
19位111Rn-SPORTS GAINER SLS植田正幸/鶴田和弥2LapsYH-
20位9PACIFIC マクラーレン with μ's白坂卓也/阪口良平3LapsYH-
21位2シンティアム・アップル・ロータス高橋一穂/加藤寛規11LapsYH5
22位22グリーンテック SLS AMG GT3和田久/城内政樹11LapsYH4
-61SUBARU BRZ R&D SPORT井口卓人/山内英輝29LapsDL30
-5マッハ車検 with いらこん 86c-west玉中哲二/密山祥吾29LapsYH-
-25VivaC 86 MC土屋武士/谷川達也46LapsYH35
-11GAINER TANAX SLS平中克幸/ビヨン・ビルドハイム57LapsDL41
-88マネパ ランボルギーニ GT3織戸学/平峰一貴-YH22

GT300ポイントスタンディング(上位10台、暫定)

順位カーナンバードライバーポイント
1位10アンドレ・クート89
2位10千代勝正69
3位3星野一樹/高星明誠61
4位31嵯峨宏紀/中山雄一49
5位10富田竜一郎45
6位7ヨルグ・ミューラー/荒聖治45
7位55高木真一/小林崇志41
8位11平中克幸/ビヨン・ビルドハイム41
9位25土屋武士/松井孝允35
10位65黒澤治樹/蒲生尚弥35

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)