ニュース

石浦宏明vs.中嶋一貴のチャンピオン争いなど見所たくさんの「第14回JAF鈴鹿グランプリ」今週末開催

ブリヂストンのスーパーフォーミュララストレース

2015年11月7日~8日レース開催

当日料金:大人4300円(JAF会員証を提示した場合は3500円)

 日本最高峰のフォーミュラレースシリーズ「スーパーフォーミュラ」の最終戦となる「第14回JAF鈴鹿グランプリ」が、今週末の11月7日~8日の2日間に渡り三重県鈴鹿市にある鈴鹿サーキットで開催される。

 JAFグランプリの名称は、日本で最高格式のレースにのみ与えられる名称で、全7戦で行われているスーパーフォーミュラのなかでも最も重要な1戦となる。

 特に今回のレースは、今シーズンのスーパーフォーミュラのチャンピオンを決定するレースとなる。現在のポイントリーダーは石浦宏明選手で、2番手に中嶋一貴選手がつけており、激しいチャンピオン争いが期待できそうだ。また、今シーズンからスーパーフォーミュラに参戦している小林可夢偉選手の活躍にも期待が集まるところ。可夢偉選手は鈴鹿サーキットのF1日本グランプリで、3年前の2012年に表彰台を獲得。2010年にもシケインでの豪快なパッシングショーを見せるなど、可夢偉選手+鈴鹿サーキットの組み合わせでなにも起きないわけがない。

 また、日本のトップフォーミュラがスタートして以来、その足下を支え続けてきたブリヂストンが、このレースを持ってワンメイク供給を終了する。そのブリヂストンのラストレースとしても、多くのレースファンにとってメモリアルな一戦ということになりそうだ。

 このほか、鈴鹿サーキットでは多数のイベントを用意している。特に注目なのは、鈴鹿サーキットはだれもが知る本田技研工業の地元であるにもかかわらず、今回はトヨタ自動車のモータースポーツブランド「GAZOO Racing」のイベントが併催されることだ。このなかではドライバーのトークショー、キッズサーキット、AKB48 Team 8によるライブステージなどが予定されており、レースファンのお父さんだけでなく、ファミリーで楽しむことができるイベントが盛りだくさんなのだ。

石浦vs.一貴にロッテラー、オリベイラの4人に可能性が残るチャンピオン争い

 毎年最終戦までチャンピオン争いがもつれ込むスーパーフォーミュラだが、今シーズンのチャンピオン争いも最終戦まで持ち越されており、この最終戦で優位に立ったドライバーがチャンピオンになるという、ここ数シーズンと同じ流れになりそうだ。

 というのも、最終戦は2レース制になっており、獲得ポイントはそれぞれのレースで1位5ポイント、2位4ポイント、3位3ポイント、4位2.5ポイント、5位2ポイント、6位1.5ポイント、7位1ポイント、8位0.5ポイントとなるが、最終戦だけのボーナスとして各レースの優勝ドライバーに3点が与えられる仕組みになっており、それぞれのレースのポールポジション獲得ドライバーに与えられる1点を合わせると、最大で18点が稼げることになっているからだ。このため、最終戦の2つのレースでポールポジションを獲得し、かつ優勝すれば大きなポイントを獲得することが可能で、ポイント差によっては逆転することができるのだ。

 第6戦終了時のスーパーフォーミュラのポイントスタンディングは以下のようになっている。

順位カーナンバードライバーポイント
138石浦宏明45
21中嶋一貴39
32アンドレ・ロッテラー31
419ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ31
58小林可夢偉17
616山本尚貴17
740野尻智紀17
87平川亮11
964中嶋大祐7
1041ナレイン・カーティケヤン6
1139国本雄資6
123ジェームス・ロシター5
1320アンドレア・カルダレッリ4
1411伊沢拓也4

 表を見ていただいても分かるように、トップから18ポイント以内にいるドライバーは全部で4人。トップは石浦宏明選手、6点差で2位が中嶋一貴選手、14点差のタイで3位にアンドレ・ロッテラー選手、4位にジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手となっている(同ポイントの2人は、優勝回数が多いロッテラー選手が上位)。とは言え、最終戦で得られるポイントが「最大で18点」ということを考慮すれば、チャンピオン争いは1位の石浦選手と2位の中嶋選手が圧倒的に有利な状況になっている。

P.MU/CERUMO・INGING SF14をドライブする石浦宏明選手

 石浦選手は今でこそトヨタのエースドライバーの1人となっているが、実は若いころはかなり苦労している。トヨタの育成ドライバーを決定する「フォーミュラトヨタ・レーシングスクール(FTRS)」を受験したときにも年齢が理由で落とされるなど、決して平坦なステップアップの道をたどってきた訳ではない。しかし、そこから不屈の精神でチャレンジを続け、2006年になってその挑戦がトヨタの関係者に認められてトヨタの育成ドライバーに選ばれ、全日本F3選手権に挑戦することから上への道が開けた。

 その後、2007年にはSUPER GTのGT300クラスに参戦。大嶋和也選手とのペアで見事にドライバーチャンピオンを獲得し、2008年からはスーパーフォーミュラの前身となるフォーミュラ・ニッポンに参戦している。途中で中断があったものの、2014年からは現在のチームであるP.MU/CERUMO・INGINGチームから参戦を再開。今年は第2戦で初優勝したほか、第4戦でも優勝。常に上位に入るという安定したレース運びを見せており、堂々のポイントリーダーとして最終戦に臨むことになる。

PETRONAS TOM’S SF14をドライブする中嶋一貴選手

 これに対して中嶋選手は、言わずと知れた日本人初のフルタイムF1ドライバーである中嶋悟氏の長男として生まれた“レース界のサラブレッド”で、全日本F3にデビューしたときにも初戦でいきなり初優勝するなど、常にスポットライトが当たる存在だった。トヨタの若手ドライバー育成プログラム「TDP」の一員として成長し、2007年にはGP2に挑戦して表彰台を獲得。2007年の最終戦にウィリアムズからF1デビューして、その後は2009年まで同チームで走ったこともよく知られている。だが、2009年末にトヨタがF1から撤退すると中嶋選手もシートを失い、2010年は浪人の年を過ごすことになってしまった。

 その挫折をバネに、2011年からフォーミュラ・ニッポンに参戦すると、翌2012年には見事チャンピオンを獲得した。また、2014年にもスーパー・フォーミュラのチャンピオンを獲得しているほか、現在ではトヨタのWECプログラムのエースマシンのドライバーも務めており、日本に止まらず、トヨタの世界的なモータースポーツ活動のエースドライバーとなっている。

 そういった“苦労人”石浦選手と“サラブレッド”中嶋選手という2人の対比はよく語られるところだが、実際には、どちらも挫折をバネに大きく成長しているところは共通している。つまり、どちらのドライバーもプレッシャーに対して強いということに疑いはないと思う。ただ、スーパー・フォーミュラですでに2度ドライバータイトルを獲得している中嶋選手に対して、石浦選手は今回が初めてのタイトル挑戦となるだけに、その重圧は比ではないはずだ。

 もちろん、ロッテラー選手やオリベイラ選手も決してタイトルを諦めたわけではなく、レース1から最大9点を狙いに行くだろう。そうなれば、レース2で三つどもえといった争いになっても不思議ではない。今回のJAF鈴鹿グランプリではそうした人間ドラマが含まれるレースが2回も楽しめるのだから、こんなにお買い得なレースはそうそうあるものではない。

日本に帰ってきた小林可夢偉の1年を総決算するレース

Team KYGNUS SUNOCO SF14をドライブする小林可夢偉選手

 ファンにとってもう1つの見所は、現在ポイントランキング5位につけている小林可夢偉選手の逆襲があるかどうかだろう。2014年までF1を戦っていた可夢偉選手は、その才能をF1関係者にも認められながら、スポンサーシップの欠如という現実的な問題から今年は活動の拠点を日本に移したことはよく知られているところ。その可夢偉選手が戦っているのがこのスーパーフォーミュラで、デビューイヤーの今年は第2戦で2位、第5戦で3位といった結果を残している。可夢偉選手をこのシリーズの新人と考えれば、初年度でこれだけの結果を出しているのは十分驚きに値するのだが、本人や周囲はこの結果に満足していないだろう。それだけに最終戦にかける意気込みは大きいはずで、可夢偉選手の活躍もこのレースの見所の1つと言える。

 可夢偉選手と鈴鹿サーキットと言えば、2012年のF1日本グランプリで見せた激走による表彰台獲得がすぐに浮かんでくるだろう。また、2010年に初めてF1で鈴鹿サーキットを走ったときも、シケインでオーバーテイクショーを披露するなど、実に印象的な走りを見せている。今年1年をスーパーフォーミュラで戦ってマシンなどへの理解も進んでいるとも考えられる。この最終戦で以前のような走りが再現されればチャンピオン争いをかき回す存在ともなり、よりおもしろいレースが期待できそうだ。

鈴鹿では珍しいトヨタ主催のイベントや、JAF会員への割引プログラムも見逃せない

 ここまで述べてきたように、今回の「第14回JAF鈴鹿グランプリ」は、ドライバー選手権のタイトル争いや、初戦以来となる可夢偉選手の鈴鹿戦ということを含めて、レースそのもののコンテンツ性が非常に高い。さらに日本のトップフォーミュラを支え続けてきたブリヂストンのラストランという点でも見逃せない1戦と言ってよいだろう。

 そんなレース自体に加えて、主催者の鈴鹿サーキットはほかにも魅力的なコンテンツを来場者に提供していく予定。とくに今回は、グランドスタンド裏のGPスクエアにトヨタのレース向けブランド「GAZOO Racing」による「TOYOTA GAZOO Racing PARK」が設置される。よく知られているように、鈴鹿サーキットはホンダの子会社であるモビリティランドのサーキットであり、子会社に富士スピードウェイを持つトヨタが鈴鹿サーキットでイベントを開催するというのはあまり例がない。

 それだけでも要注目なのだが、これに加えてトヨタエンジンを搭載するドライバーのトークショーも予定されており、チャンピオンを争う4人や可夢偉選手なども登壇する。そのほかにも、監督トークショー(PETRONAS TEAM TOM'Sの舘信秀監督、LENOVO TEAM IMPULの星野一義監督、KONDO RACINGの近藤真彦監督が参加予定)、スーパーフォーミュラマシンの「搭乗体験」「エンジン始動」「解体ショー」、ペダルカーを集めた小さな子供向けの「キッズサーキット」といった各種イベントも用意されている。

選手や監督などのトークショーもレース観戦の魅力(写真は2014年に鈴鹿サーキットで開催された「モータースポーツファン感謝デー」の1シーン)
「AKB48 Team 8」のライブも開催予定(写真は2014年に富士スピードウェイで開催された「トヨタ ガズーレーシング フェスティバル」の1シーン)

 また、「AKB48」の最新のチームとなる「Team 8」のライブも予定されている。トヨタ自動車が後援することで知られているAKB48 Team 8(http://toyota-team8.jp/)は「会いに行くアイドル」という、AKB48の最初のテーマ「会いに行けるアイドル」をさらに先に進めたテーマで運営されているチーム。将来、AKB48の総選挙で上位に来るかもしれないアイドルを見てみたいと思うなら、このライブに参加してみるとよいだろう。このほかにも、各種ステージなどが用意されているので、詳しくは鈴鹿サーキットのWebサイト(http://www.suzukacircuit.jp/superformula/event/gp2.html)でご確認いただきたい。

 チケットは鈴鹿サーキットのWebサイトのほか、各種プレイガイド、コンビニエンスストアなどで販売されている。前売り券などの情報は鈴鹿サーキットのWebサイト(http://www.suzukacircuit.jp/superformula/ticket/)で詳しく紹介されている。なお、今回はJAF鈴鹿グランプリとJAFの名称が冠されたレースでもあり、JAF会員に対しては当日券の購入に割り引きが用意されている。当日券は通常は大人4300円だが、JAF会員証を提示すると3500円に割り引きされる。

 これは前売り券の大人4000円よりも安価な設定で、JAF会員であればかなりお買い得な価格設定と言える。なお、会員証の提示で会員本人を含めて5人まで割り引きされる。このほかにも、JAF会員証の提示でJAFがGPスクエアに設置するラウンジに入場することができる。このラウンジには2013年のF1ドライバー全員のサイン入りヘルメットが展示されるほか、ドリンクサービスなども提供される予定になっているので、JAF会員であれば会員証は忘れずに持参するとよいだろう。詳しくはJAFのWebサイトの専用ページ(http://www.jaf.or.jp/jafgp2015/)をご確認いただきたい。

(笠原一輝)