インプレッション

アウディ「Q5(車両型式:DBA-FYDAXS)」「SQ5(車両型式:ABA-FYCWGS)」(公道試乗)

 2016年秋に開催されたパリモーターショーで披露をされたアウディのSUV「Q5」。2008年誕生の初代に続く、Q5としては2代目となるこのモデルが、日本の道を走り始めた。

 ドイツブランドの作品ではあるものの、アウディ自身が「プレミアム・ブランドとしては世界初の進出」と紹介をするメキシコに建設された最新鋭の工場で生産されるのも、このモデルならではのトピック。そんなメキシコで開催された国際試乗会以来、1年近くぶりで日本での再会となった新しいQ5はまず、改めて従来型に準じた見た目の雰囲気が印象に残るものだった。

 一見したところでは“変わり映えしない……”と、思わずそんなフレーズさえ口から出そうになるのは事実。けれども従来型と並べてみると、シャープさを増したプレスラインやより抑揚が効いたボディパネルの張り具合などから、「こちらの方が明確に新しい」と実感できるのが新型のスタイリングだ。

Q5 1st edition
SQ5
Q5 1st editionのボディサイズは4685×1900×1665mm(全長×全幅×全高)でホイールベースは2825mm。SQ5は全高が30mm低い1635mmとなるが、ほかの数値は同一
ボディカラーは「アイビスホワイト」。オプション装備などはとくに装着しておらず、価格は704万円
新しいQ5シリーズではフロントグリル(写真中央)やドアミラー、リアハッチなどのカメラ、フロントバンパー両サイドのレーダーセンサー(写真右)などに加え、フロントウィンドウのカメラ、前後の超音波センサーなどを標準装備。アダプティブクルーズコントロール、アウディ プレゼンス シティ、アウディ プレゼンス リア、サラウンドビューカメラなどの先進装備を機能させる
Q5 1st editionはLEDヘッドライトを標準装備
ウインカーを内蔵するドアミラーは、2.0 TFSI クワトロとQ5 1st edition(写真)はボディ同色、SQ5はアルミニウム調となる
LEDリアコンビネーションランプも標準装備するが、リアバンパーに備える後退灯などは通常のバルブタイプとなる
LEDリアコンビネーションランプのリアウインカーは、“流れるウインカー”と呼ばれる「ダイナミックターンインジケーター」となる

 加えてインテリアでは、新型ゆえの新鮮さがさらに明らか。ダッシュボード中央上部にある“立てかけられた”ようなワイドなディスプレイや、オプション設定ではあるものの最新アウディ車の1つのアイコンとなりつつある「バーチャルコクピット」は、従来型では見られなかったアイテム。さらに、シフトセレクターやマルチメディア・コントローラーの“MMI”を配したセンターコンソールまわりも、よりスッキリしたデザインへとリファインされているからだ。

Q5 1st editionのインパネ。アルミニウムランバスのデコラティブパネルを標準装備して質感を高めている
14のマルチファンクションボタンを持ち、チルト&テレスコピック機能を備える3スポークレザーステアリングを全車標準装備
SQ5のインテリア。内装色はローターグレー/ブラックで、シートは14万円高のオプション装備となるファインナッパレザー(ダイヤモンドステッチ)
SQ5のデコラティブパネルはカーボンアトラス
SQ5のステアリングはSステアリングホイールエンブレム付き。フルデジタルメーターの「バーチャルコクピット」は「リアサイドエアバッグ」とのセットオプションで14万円高
SQ5のペダル類はメタル調。大型のフットレストも備える
「Bang&Olufsen」の3Dアドバンストサウンドシステムは18万円高のオプション品

 日本に導入されるのは、最高出力252PSを発生する2.0リッターのターボ付き直列4気筒エンジンを7速DCTと組み合わたパワーパックを搭載する「2.0 TFSI クワトロ」と、354PSの最高出力を誇る3.0リッターのターボ付きV型6気筒エンジンをこちらは8速ステップATとの組み合わせで搭載する、シリーズのトップグレードとなる「SQ5」。

 ちなみに今回も、ディーゼル仕様の導入が見送られたのは残念。メルセデス・ベンツやBMW、さらにはボルボなどのライバルには存在し、いずれも日本のユーザーに好評をもって迎えられていると耳にする昨今、日本のアウディ車にいまだディーゼル・モデルの用意がなされないのは、販売面にも少なからぬマイナスの影響がもたらされていることは容易に想像ができてしまう。

Q5に搭載する「DAX」型エンジン。直列4気筒DOHC 2.0リッター直噴ターボで最高出力185kW(252PS)/5000-6000rpm、最大トルク370Nm(37.7kgm)/1600-4500rpmを発生。JC08モード燃費は13.9km/L
SQ5に搭載する「CWG」型エンジン。V型6気筒DOHC 3.0リッター直噴ターボで最高出力260kW(354PS)/5400-6400rpm、最大トルク500Nm(51.0kgm)/1370-4500rpmを発生。JC08モード燃費は11.9km/L

 今回テストドライブを行なったのは、新型Q5の日本導入スタートを記念して、2.0 TFSI クワトロをベースに“Sライン・バンパー”や“Sライン・ドアシルプレート”、LEDのヘッドライトやリアコンビネーションランプ、20インチ・シューズなどの特別装備が採用された、250台が限定販売される「1st edition」と、現状ではシリーズ最強となる前出「SQ5」の2タイプ。

 まずは前者でスタートをすると即座に、こちらでもその絶対的な動力性能はすでに十二分という印象を受けることになった。

試乗車のSQ5はボディカラーに専用色の「デイトナグレー パールエフェクト」(9万円高)を使うなど、計105万円分のオプションを装着して価格は992万円

ベーシック・グレードでさえ「パワフルで静か」

「徹底した軽量設計」と自ら謳う、フォルクスワーゲングループ最新のボディ骨格「MLB evo」を採用した結果の1820kgという車両重量は、従来型に対して60kgほども軽い値。前述「十二分」という動力性能の印象は、もちろんそうした裏付けもあってのものになるわけだ。

 同時に大いに好印象を抱くことになったのは、その静粛性の高さ。ロードノイズの小ささを筆頭にこのモデルの静かさは、クラスでトップレベルと実感できる。ベーシック・グレードでさえこうして「パワフルで静か」という印象が強いのは、新型Q5の大きな特徴と美点でもある。

 一方、ワインディング・ロードへと乗り入れるとステアリング操作がやや忙しく感じられたのは、そのギヤ比がさほど速いセッティングとはされていないがゆえ。パワフルなエンジンを搭載し、電光石火の素早いシフトとダイレクトな駆動力伝達を特徴とする、いわば“スポーツ・トランスミッション”とも言うべきDCTを採用しつつも、走りのテイスト全般が格別スポーティとは受け取れないのは、どうやらこのへんに要因の1つがありそうだ。

標準モデルの2.0 TFSI クワトロはタイヤサイズが235/60 R18となるが、限定車のQ5 1st editionは20インチのコントラストグレーポリッシュホイールを装着。タイヤサイズは255/45 R20

 限定モデルゆえの、標準サイズよりも2インチ径を増したシューズが「見た目には優れる一方で乗り味をスポイルしてしまうのでは?」と危惧したものの、幸いにしてそれはとくに“わるさ”はもたらしていない印象。有り体に言えば、それは「滑るように走る」と表現しても過言ではない感覚。SUVながらとくに見下ろし感が強いという印象は薄い点なども含め、全般には「こうしたカタチのA4に乗っている」とも言い換えられそうなのが、このモデルの走りの印象であったのだ。

上質感の差は「トランスミッションの違い」に起因

 そんなベーシック・グレードから乗り換えると、より強力な動力性能云々の以前に、「こちらの方が、さらに上質な走りのテイストが味わえるな」と実感させてくれたのがSQ5ということになった。

 すでに述べたように、2.0リッターモデルでも走り出しの瞬間から力不足感はまったく抱かない。が、こちらではより滑らかで、さらに上質なスタートシーンを堪能することができるのは、どうやら「トランスミッションの違い」に起因する部分が大きそうだ。

 より長い歴史を備え、その分オーソドックスとも言えるステップATを採用するSQ5は、3.0リッターという排気量の余裕がもたらすイニシャルトルクの強いエンジンと、このトランスミッションのマッチングが抜群に優れている。そんなゆとりのスタート時の挙動が、ベーシック・グレード以上に質感に富んだ印象を発進のたびに味わわせてくれることになるのである。

 今回のテスト車は、車速や切り角に応じてステアリングギヤ比を自動調整する“ダイナミックステアリング”や21インチのシューズなどをオプション装着。前者が実現させる“速くて正確なステアリング”が、細かなコーナーが右へ左へと続くルートでは大いに役立ってくれた実感があった一方、標準サイズより1インチ大径の後者は、快適性の面ではややマイナスの影響を及ぼしていたとも感じられた。路面状態によっては不快な振動を、やや直接的に伝えることになっていたからだ。

SQ5の標準タイヤはQ5 1st editionと同じ255/45 R20だが、試乗車はオプション設定の255/40 R21に変更。タイヤ&ホイールのセットで20万円高
全車で4輪ベンチレーテッドディスクブレーキを採用。レッド塗装のカラードブレーキキャリパーはSQ5専用オプション(6万円高)

 際立った押し出し感の演出など、見た目の派手さは控え目である一方で、言わば「乗れば乗るほど」にその完成度の高さを教えられるのが新しいQ5シリーズ。そんなキャラクターの持ち主ゆえ、従来型同様に新型もまた長期に渡って、着実にセールスを積み上げて行くことになりそうだ。

河村康彦

自動車専門誌編集部員を“中退”後、1985年からフリーランス活動をスタート。面白そうな自動車ネタを追っ掛けて東奔西走の日々は、ブログにて(気が向いたときに)随時公開中。現在の愛車は2013年8月末納車の981型ケイマンSに、2002年式のオリジナル型が“旧車増税”に至ったのを機に入れ替えを決断した、2009年式中古スマート……。

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Photo:高橋 学