試乗インプレッション

ボルボ スタジオ青山限定販売「V90クロスカントリー オーシャンレース エディション」はどんなモデル?

車両型式:DBA-PB420A

ボルボ スタジオ青山のみ限定15台

 ボルボはオーガナイザーを務める「オーシャンレース」の名を与えた限定車をこれまでもときおり送り出してきたが、久々に登場した現行90シリーズ系で初となる同特別限定車は、いつもとは少々様子が違う。まず、わずか15台限定という希少さに驚く。世界では3000台が販売される中で、日本への導入はかなり絞られた。さらに、最新のボルボブランドを提供するため2017年10月にオープンしたコンセプトストア「ボルボ スタジオ青山」のみでの扱いとなるのも、かつてない試みだ。

「ボルボ・オーシャンレース」というのは、「アメリカスカップ」や「ヴァンデ・グローブ」と並ぶ世界3大ヨットレースの1つに数えられる、世界一周ヨットレース。3年ごとに開催され、本記事の掲載時点に開催中の2017年-2018年大会は、2017年10月にスペインのアリカンテをスタートし、ケープタウン、メルボルン、香港などを経由して、まもなく6月にフランスのアーグでゴールする予定となっている。世界トップクラスのセーラーが各国の寄港地を経由しながら、約8カ月かけて南半球から北半球にいたる6万9000kmもの距離を競う過酷なレースである。

 今回の特別限定車「V90クロスカントリー オーシャンレース エディション」も、そんな「ボルボ・オーシャンレース」をモチーフに、特装車両などを専門に手がけるボルボのスペシャルビークルチームが開発したもので、アドベンチャースピリット溢れるヨットレースの世界観を演出した数々の専用装備が与えられた内外装が、スペシャルな雰囲気をただよわせているのは見てのとおり。969万円という車両価格は、ベースの「T6 AWD Summum」に対し140万円高となるが、実車を見るとそれも大いに納得させられる思いだ。

 なおボルボでは、「ボルボ・オーシャンレース」で使用されるヨットに装備した各種センサーによりデータを収集することで、深刻化する海洋のプラスチックごみによる海洋汚染の調査に協力している。これを支援するため、同特別限定車の売り上げの1台あたり100ユーロが環境団体に寄付されることもお伝えしておこう。

グレーとオレンジがハイセンスで刺激的

 2014年に発表されたコンセプトカー「コンセプト・XCクーペ」をイメージしたという、ホワイトを基調にカオリングレーとフレアオレンジを大胆に採用した内外装は、とてもハイセンスでかつ刺激的な印象を受ける。フェンダーエクステンションなどのエクステリアパーツが、黒系ではなくグレーというのがオシャレだ。加えて、専用アクセサリーとして下の写真のようなボディカラーと同色のルーフボックスまで用意されている。

今回の試乗車は、ボルボブランドのコンセプトストア「ボルボ スタジオ青山」でのみ販売される15台限定車「V90クロスカントリー オーシャンレース エディション」(969万円)。ボディサイズは4940×1905×1545mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2940mm。撮影車はオプション設定のボディカラーと同色の専用ルーフボックスを装備
エクステリアでは専用のフロントグリルや5スポークの20インチアルミホイール(ピレリ「P ZERO」のタイヤサイズは245/45 R20)などを特別装備するとともに、フロント&リアのバンパー下部やサイドシルなどに専用のカオリングレーカラー・ボディパーツを採用するなど、センスのよい仕立てが特徴的

 同様にコーディネートされたインテリアも特別感に満ちている。スポーティなバケットタイプのシートに、ボルボ・オーシャンレースに通じるアクティブなライフスタイルや冒険心を表現したというフレアオレンジのシートベルトや各部のステッチ、カーボンファイバー製のパネルなどが目を引く。特別装備される1400Wで19ものスピーカーを備えたBowers&Wikinsプレミアムサウンド・オーディオシステムも、臨場感のある素晴らしいサウンドを届けてくれる。あらゆるものが非常にハイセンスに仕立てられている。

インテリアカラーはチャコール/ブロンド、ルーフライニングカラーはブロンド
室内の各所に鮮やかなオレンジを配してボルボ・オーシャンレースに通じるアクティブさを表現。カーボンファイバー・パネルも同限定車ならではの装備
フレア・オレンジの専用シートベルトやフロアマット、フレア・オレンジのステッチを施した専用シートなどが特別感を演出。そのほかチルトアップ機構付電動パノラマ・ガラス・サンルーフや「VOLVO OCEAN RACE」のロゴが入ったサイドスカッフプレート、Bowers&Wikinsプレミアムサウンド・オーディオシステム(1400W、19スピーカー、サブウーファー付)などの装備に加え、水着のままでも気軽に車内に乗り込むことができる「リバーシブル・フロントシートカバー」といった同モデルらしい専用品も標準装備している

 さらには、ボルボのエステートの真骨頂と言えるラゲッジルームにも趣向が凝らされている。黒木目の美しい専用ラゲッジフロアパネルをはじめ、同じく専用のラゲッジマットやバンパー・ダートプロテクションマット、ラゲッジネットなどにフレアオレンジのアクセントが配されたほか、専用のUSBポートやLEDトーチライトまで特別装備されている。

 むろん、ラゲッジルームの右側に設置されたスイッチを操作することで遠隔操作で前倒しできるリアシートや、ダンパーを備え任意の位置で保持できるフロアボードなど、使い勝手に優れる装備はそのまま踏襲している。

ラゲッジルームではフロアパネルやラゲッジネットにフレア・オレンジを用いるとともに、専用USBポート(外部入力端子)や専用LEDトーチライトなどを特別装備
オレンジカラー・パイピングが施される専用のバンパー・ダートプロテクションマットも付属

パワフルな「T6」

 V90 クロスカントリーをドライブするのは久しぶりのことだが、XC90とはまた違った、エステートとしての利便性ととっつきやすさ、SUVらしい高めの目線や走破性という、両者のいいとこ取りをしたようなクルマであることをあらためて実感する。

 それなりにサイズの大きなクルマながら、ステアリングの切れ角が大きいおかげで意外と小回りがきく上、車高ひいては重心高がそれほど高くないため挙動も乱れにくく、ドライブフィールはいたって軽快に仕上がっている。また、現行型の登場当初はやや気になったバタつきや路面からの入力の強さが払拭されて、とてもフラット感のある快適性の高いライドフィールとなっていることも分かった。

「T6」ゆえエンジンもかなりパワフルだ。スーパーチャージャーとターボチャージャーにより過給される直列4気筒DOHC 2.0リッターエンジンは、いたって扱いやすく、いざとなると軽々と車体を力強く加速させてくれる。むろん、ボルボらしく先進安全運転支援装備が充実していることは言うまでもない。

直列4気筒DOHC 2.0リッターターボ「B420」型エンジンの最高出力は235kW(320PS)/5700rpm、最大トルクは400N・m(40.8kgf・m)/2200-5400rpmを発生。JC08モード燃費は10.7km/L

 90シリーズらしいエレガントなフォルムと、クロスカントリーならではのタフなイメージにオーシャンレースのエッセンスを加え、さらには持ち前の優れた機能性と走行性能、安全性までも兼ね備えた、そんな多面性も同限定車なればこそ。繰り返すが、限定わずか15台。そして、すでに何台かオーダーが入っているとか。そんな特別感に満ちた、久々の「オーシャンレース」を名乗るボルボのフラグシップにピンと来た人は、この機を逃す手はない。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:中野英幸