試乗インプレッション

分厚くフラットなトルクで高速道路は得意中の得意。日本新導入のフォルクスワーゲン「ゴルフ TDI」に乗った

ディーゼル導入で7代目ゴルフがラストスパート!

 Cセグメントにおいて常に世界の自動車メーカーのベンチマークに置かれるのがフォルクスワーゲン「ゴルフ」だ。ゴルフは世界中で愛され浸透しているが、その理由はすべてに渡る完成度の高さとそれがもたらす安心感にある。

 現行型の7代目ゴルフは「MQBプラットフォーム」を初めて採用し、すでに完成の域に達していた6代目ゴルフからさらに製品の強化と効率化を図ったモデル。日本で登場したのは2013年6月なのですでにモデル末期に入っているが、度重なる改良でますます熟成度が高くなっており、ラインアップもガソリンモデルに加え、PHEV(プラグインハイブリッドカー)やEV(電気自動車)と増やしてきた。そして今回はディーゼルが導入され、7代目ゴルフがラストスパートをかける。

10月1日に発売される「ゴルフ TDI Highline Meister」(391万円。10%の消費税を含む)。ボディサイズは4265×1800×1480mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2635mm。車両重量は1430kg

 新登場の「TDI Highline Meister」と同時に試乗したのはガソリン車の「TSI Highline Meister」とPHEVの「GTE」。TSIは1.4リッターのターボから103kW(140PS)/250Nmの出力を発生し、1320kgの車両重量を持つ。さすがに定番のゴルフだけあってCセグメントとしてまとまっていることにはただ感心するばかりだ。

 ゴルフはシッカリしたボディがもたらすバランスのとれた性能の高さが持ち味で、あらためて乗り直すとさらに実感する。エンジンもトルクがあって、市街地から郊外路、高速道路まで過不足ないドライバビリティの高さがあり、柔軟性とレスポンスに優れている。

 7速DSGはシフトアップもシフトダウンも滑らかなつながりが好印象だ。信頼性は長時間使わないと分からないが、少なくとも試乗車ではフォルクスワーゲンが使い慣れたDSGらしく、ショックの少ない変速が印象的だった。どこでも手足のように使え、さまざまな場面で使い倒せるような気楽さがある。さすがにCセグメントのベンチマークである。

「ゴルフ TSI Highline Meister」(359万9000円)。「CPT」型の直列4気筒DOHC 1.4リッターターボエンジンは最高出力103kW(140PS)/4500-6000rpm、最大トルク250Nm(25.5kgfm)/1500-3500rpmを発生。トランスミッションは7速DSG

 一方、PHEVのGTEはTSIとほぼ同じ1.4リッターターボエンジンに80kW(109PS)のモーターを組み合わせる。8.7kWhという大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載し、車両重量は1610kg。モーターとガソリンエンジンを合わせて使える「GTEモード」は、ハイパフォーマンスモデルのようなスポーティで小気味よい走りが持ち味だ。

 ただ、PHEVは充電設備のある家屋で充電し、短距離をEVとして使う走らせ方に向いており、燃費性能だけを求めてロングドライブをすると期待に沿わないかもしれない。ちょっとした工夫をして走行条件を考慮するのもPHEVの面白さでもある。

「ゴルフ GTE」(469万円)。「CUK」型の直列4気筒DOHC 1.4リッターターボエンジンは最高出力110kW(150PS)/5000-6000rpm、最大トルク250Nm(25.5kgfm)/1500-3500rpmを発生。このエンジンに最高出力80kW(109PS)、最大トルク330Nm(33.6kgfm)を発生する「EAH」型モーターを組み合わせる。トランスミッションは6速DSG
純正装着のタイヤサイズはTSI Highline Meisterと同じ225/45R17だが、試乗車はデジタルメータークラスター“Active Info Display”(左)とセットオプション(21万6000円高)の「DCCパッケージ」を装着し、1インチアップの225/40R18サイズのタイヤ&ホイール(右)を装着

ゴルフの素晴らしさは“クルマとしてのまとまりのよさ”

ゴルフ TDI Highline Meisterと筆者

 さて、ディーゼルのTDIは2.0リッターターボで110kW(150PS)/340Nmの出力を持つ。持ち前のターボ過給された低速トルクの強みに加え、微低速からタイムラグのない発進にはフォルクスワーゲンの長年に渡る技術の蓄積を感じる。ディーゼルターボはアクセルの踏み始めにタイムラグを感じるものもあるが、ゴルフはスムーズに吹け上がり、発進時の微細なコントロールに気を遣う必要はない。

 トルク特性は分厚くフラット。追い越し加速も余裕があるので、高速道路は得意中の得意だ。クルージング中にACCを使ってみるが、エンジンのトルクが強く、レスポンスもいいので追従性が鋭く、使い勝手もよい。

 イエローゾーンは4600rpmほどから始まるが、全開加速でもそれほど回ることもなく、手際よく小気味よくシフトアップしていく。まして通常の緩加速ではトルクバンドの1750-3000rpmの回転域に入るか入らないかの所で変速する。7速のDSGはガソリンエンジン同様に微低速時のレスポンスに優れており、加速時も滑らかだ。ただし、緩加速時にタイミングがわるいと2000rpmぐらいで変速を戸惑うことがあり、シフトアップしてほしい状況でできないのは少し煩わしいこともある。意外と日本の交通状況ではありそうな場面だ。

「ゴルフ トゥーラン」にも搭載される「DFG」型の直列4気筒DOHC 2.0リッターディーゼルターボエンジンをゴルフ向けにチューニングして採用。最高出力110kW(150PS)/3500-4000rpm、最大トルク340Nm(34.7kgfm)/1750-3000rpmを発生。トランスミッションはゴルフ トゥーランの6速DSGから7速DSGに変更されている
イエローゾーンは4600rpmほどから。試乗車は特別仕様車のMeisterで“Active Info Display”を標準装備している

 ゴルフの素晴らしいところはクルマとしてのまとまりのよさで、それはハンドルの操舵感にも表現されている。ロック・トゥ・ロックが2回転と4分の3のパワーステアリングは操舵力の変化が自然で、適度に鈍くされているがシッカリとした操舵感がある。切り始めから手応えもあるが過敏でなく、安心感がある。これらの操舵感はパワーステアリングの性能だけによるものではなく、ガッチリしたボディと正確に動くサスペンションとのハーモニーによって安心感のあるハンドリングが生まれる。

 乗り心地は小さな段差をよく吸収し、バネ上の動きは抑えられている。大きなギャップを通過した時のショックはそれなりに伝わってくるが、強いショックは伝えない。現行型の7代目ゴルフはモデル末期にあるだけに熟成が進み、デビュー時に時折感じたフワリとした頼りないところは姿を消し、節度のよさが目立った。

 液晶メーターの視認性も優れており、必要なものが見やすい所にそろえられている。表示が複雑になりがちなPHEVでも同様で、シンプルで見やすい。また、必要な情報を引き出すスイッチも分かりやすく、直感的に操作できる。このスイッチ類の考え方はほかのコントロールスイッチにも共通しており、機能的にできている。

 走行中に必要なスイッチが自然に探り出せるところに配置され、さすがアウトバーンの国から来たクルマらしいと感じる。こういった点でもまだまだお手本にできるところは少なくない。

 TSIは軽快で欠点のないのが欠点と言うと言いすぎだろうか。TDIは燃費のよさと高速巡行の安楽さ、そしてGTEはスポ―ティで知的好奇心をくすぐるところがそれぞれのキャラクターだ。

ゴルフ TDI Highline Meisterのインパネ。同じグレードの場合、TSIとTDIで基本的な装備内容は同一となる
フロントにシートヒーターを備えるレザーシートは特別仕様車のMeister専用装備

 試乗車の価格はガソリンエンジンのTSI Highline Meisterが359万9000円(消費税8%)、ディーゼルエンジンのTDI Highline Meisterが391万円(消費税10%)となる。消費税率が異なるので単純な比較は難しいが、おおむね22万円(税別の場合。消費税10%では24万円ほど)の価格差になる。消費燃料代で価格差を埋めるのは簡単ではないが、高速走行の多いユーザーはTDIのどっしりした高速安定性、大きなトルクがもたらすゆとりなどに高いメリットを感じることができるだろう。

 ちなみにPHEVのGTEは469万円(消費税8%)となっており、ゴルフシリーズの中では「ゴルフ R」「e-ゴルフ」に続くハイプライスが付けられている。

 フォルクスワーゲンのメインストリームだけあってあらゆるパワートレーンから選択できるのもゴルフの魅力。Cセグメントは面白いクルマがたくさん控えているが、テッパンのゴルフを選ぶか、少し冒険してみるかは楽しい選択だ。

【訂正】記事初出後、価格差に関連する記述を変更させていただきました。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学