試乗レポート

2020 ワークスチューニンググループ合同試乗会(TRD編)

コペンGR SPORTで剛性アップパーツとエアロパーツの効果を体感

3台のコペンで比較試乗を実施した

 自動車メーカーのカスタイマイズ部門4社が集まり、純正チューニングモデルを体感する試乗会が開催された。TRD、NISMO、STI、無限の4社が提供するモデルは、さすがに粒ぞろいで特色あるものばかりだった。ここではTRDが手掛けた「コペン GR SPOTR」の乗り比べ試乗の模様をお伝えする。

パーツの効果は市街地の速度でも感じられるのか

 コペンは贅沢な電動ハードトップを備えた軽自動車の2シータースポーツカーで手堅い人気があるが、オープンカーという構造上どうしてもボディ剛性に限界がある。もちろんオリジナルのままでも十分に楽しく仕上がっているが、さらにもう少し走りにフォーカスしたいというドライバー向けにチューニングされたGR SPORTが用意されている。

 今回はそれぞれのパーツの効果をより確実に体感できるように、コペン GR SPORTのノーマルをA仕様とし、パフォーマンスダンパーを前後に装着したクルマをB仕様。さらにB仕様にエアロパーツを装着したクルマをC仕様とし、3タイプを乗り比べてみた。ポイントはモータースポーツ用ではなく日常を運転を楽しくするというコンセプトである。

 GR SPORTは標準車に対して主としてボディ下部に補強パーツを組み込み、ハンドルの応答性やライントレース性が大幅に向上してダイレクトな感触を得られたことでコペンのスポーティさを高めているモデル。

 試乗はサーキットではなく、ツインリンクもてぎの外周路。つまりハイスピードではなく、日常的なタウンスピードでの試乗だ。コペンGR SPORTは以前に試乗しているが標準車に対して引き締まってスポーティで楽しかった。今回も澄みきった秋の空気の中で電動トップも途中で降ろして爽快な気分で走り始めた。オープンカーの快感だ。

 少し重めで接地感のある操舵フィールでシットリとしていることを確認した。オープンのボディは凹凸路やコーナーではやはりしなるのでステアリング操舵に対して若干の応答遅れを感じたが、前後バランスがとれている。さらに一定舵角でのライントレース性は標準車を上回っておりドライビングはいたって楽しい。

パフォーマンスダンパーは、基本的には前後に装着するが、車種によって剛性や取り付け場所も異なり、何度も試してベストポジションを探し出すという。コペン用の価格は9万円(税別)

 続いて試乗したのは後付けパーツのパフォーマンスダンパーを装着したB仕様だ。このパフォーマンスダンパーの装着位置はフロントはサスペンションメンバーとサイドメンバーを結び、リアはバンパーを止める位置に装着する。単筒ガスダンパーをブレ―スのように配置して微小な振動を吸収する役割を持つ。

 車体は走行中、常に変形し振動を発生していると言われるが、パフォーマンスダンパーの役割は強固に各部を締結するのではなく、車体の変形を穏やかにするためのパーツだ。想像どおり、横方向に対して効果が高いとされている。

 確かにステアリングフィールはニュートラル付近が締まり、応答遅れが少なくなっている。また、荒れた路面を通過した際に左右に揺さぶられるボディの上下振動が丸くなり、標準車では苦手な部分が大幅に改善されている。

 さらに左右に切り返す時のロールの戻りも穏かに収束し、結果的にステアリングを切る量も少なくなっている。シットリと落ち着いているのだ。これはサーキットでの話ではなく、外周路の低中速だったのにその差が大きいことに驚いた。

GRフロントスポイラー 価格4万7000円(税別)、GRフロントコーナースポイラー 価格4万円(税別)
GRサイドスカート 価格6万円(税別)
GRリヤサイドスポイラー 価格4万3000円(税別)、GRリヤトランクスポイラー 価格2万円(税別)

 最後はB仕様にエアロパーツを装着したC仕様に乗り換える。エアロパーツと言っても純正品らしくおとなしいもので、フロントのリップスポイラー、コーナースポイラー、サイドスカート、リアのトランクスポイラー、サイドスポイラーで構成される。

 パフォーマンスダンパーが左右方向の動きを主として穏やかにするの対して、エアロパーツの役割は上下方向動きを抑えることにあるという。しかしエアロパーツの各パーツは小さく、このサイズでどれほどの効果があるのか疑問だった。それもレーシングスピードではなく市街地想定の試乗コースである。

 ところがこれが意外なほど効果がある。まず路面の小さなギャップを乗り越した時の収束が早い。また、ステアリング応答性もニュートラルから自然にノーズを変えて、抑えが効いている印象だ。さらに違うと感じたのはステアリングを切り増した時の反応で、小さなリップやコーナースポイラーでもダウンフォースが出て、スーと旋回姿勢に入ることができる。余分なステアリング操作が少なくなっていた。

 説明では前後のスポイラーでバランスを取っており、例えばリアスポイラーを装着しないとフロントのダウンフォースだけ上がって、前後バランスが崩れてしまうという。また、フロントのコーナースポイラーはL字の角度やその面積で微妙に掛かる力が変わり、さらにその位置も試行錯誤を重ねながら決定されたようだ。

株式会社トヨタカスタマイジング&デベロップメント 開発本部 小林氏、新美氏に解説していただいた

 そういえば昔ツーリングカーレースをやっていた頃、フロントの小さなリップ&アンダースポイラーのサイズでダウンフォースがびっくりするほど違ったことや、やはり小さなトランクスポイラーでリアの安定性が違ったのを思い出した。それにしてもこの速度でこのサイズでと驚くばかりで、最新の進化した空力ボデイに加えることで効果が大きいことを実感した。

 このエアロに加えて、例のアルミテープ(ディスチャージテープ)もセットで販売されている。このアルミテープはボディに帯電するのをある程度防ぐことができるので、空気の乱れを減らせる効果があり、トヨタでは多く使われている。こちらはエアロパーツ装着後の空気の流れを微調整するパーツとして、サイズや貼付場所が決まっており、コペンGR SORTではフロントリップとリアエアロの内側に貼付されている。

 性能の順番を付けるとC仕様>B仕様>A仕様(標準のGR SPORT)となるが、少しずつ手を加えて自分なりのコペンGR SPORTの進化を楽しむのも後付けパーツのよいところだ。

 今回の取材で得たのは動的な運動性能、特に過渡領域では風洞などのデータとして実証できないものが多く、熟練の評価ドライバーが感応評価を繰り返しながら、パーツの形状、位置を決めているということだ。コペンGR SPORTの商品もこのようなプロセスを経て完成した。開発には10か月ほど要したという。これもメーカーならではだ。

その他のクルマのパーツ

GRスープラ用の新製品が登場
GRパフォーマンスダンパー+ブレースセット
当初(2019年開発中)はセンターに1本のみだったが開発を進め今の形状にたどり着いたという

 GRスープラ専用設計のパフォーマンスダンパーとブレースをセットにしたアイテム。道路のつなぎ目などを通過する時の乗り心地や操縦安定性をバランスよく向上させ、リニアなステアリングフィールと優雅で上質なドライビングを実現する。価格25万円(税別)。

 テールエンド内にスリット加工を施し、純正のバルブ機構を採用した「GRスポーツマフラー」は、ブラッククロームのテールエンドと迫カあるエキゾーストサウンドにより、GRスープラをさらにクールでスマートなスタイリングに仕上げる。価格34万円(税別)。

GRスポーツマフラー
ハイラックス

 フロントには、オフロードスタイルをより強調するシルバーの「フロントバンパーカバー」(3万8000円[税別])とレッドの「フロントアンダーカバー」(4万円[税別])を、サイドには乗降性を高める「サイドステップ」(10万円[税別])、荷台にはアグレッシブなスタイルに仕上げる「スポーツバー」(10万円[税別])を装着。また、4つをセットにした「スタイリングキット」(27万8000円[税別])も設定。

 さらに、新しく開発された「電動格納ステップ」(21万円[税別])は、既存のステップにアームを取り付けることで、助手席と助手席側後部ドアの開閉に連動して、ステップを自動で展開・格納し、乗り降りを快適にサポートしてくれる。

スタイリングキットは、フロントバンパーカバー+フロントアンダーカバー+サイドステップ+スポーツバーの4点セット
電動格納ステップを装着すると、起動時にステップが約70mm下降し、外側に53mm突出して乗り降りをサポートしてくれる
ハイラックス「電動格納ステップ」(1分17秒)
ライズ
フロントスポイラー+サイドスカート+リアバンパースポイラーをまとめた「エアロパーツセット」の設定もあり。15万円(税別)

 ライズをスポーティに仕上げるエアロキットを開発。ブラック×レッドのコントラストを活かしたエアロパーツは、スポーティなスタイルを演出するとともに、ダウンフォースをコントロールし走行安定性を向上。また、ボディ側面を流れる風を整流し直進安定性も向上させる。またブラックのフロントバンパーガーニッシュにより、フロントフェイスを引き締めている。

フロントスポイラー。4万7000円(税別)
サイドスカート。6万円(税別)
リヤバンパースポイラー。4万3000円(税別)
フロントバンパー ガーニッシュ。2万円(税別)
ドアハンドルプロテクター。1台分で6000円(税別)

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:堤晋一