試乗レポート

2代目プジョー「208」はジワリと粘る“猫足”も健在の元気なホットハッチだった

欧州と日本でカー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「208」の乗り味はいかに?

 もし目の前でライオンに牙を剥かれたら、震え上がって生きた心地がしないはずだが、こちらのライオンは何度見ても、先進的でオシャレで精悍。いわゆる“いい面構え”だというのが大方の評価となっている。大きく口を開けたフロントグリルに、両サイドには牙をモチーフにしたデイタイムランニングライト、リアにはかぎ爪を思わせるテールランプが個性的なプジョー「208」だ。

試乗した「208 アリュール」(259万9000円)のボディサイズは4095×1745×1445mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2540mm。GTラインのみ全高が1465mmとなる。車両重量は1160kg(GTラインは1170kg。サンルーフ付きは+10kg)
牙のようなデイタイムランニングライト
かぎ爪をモチーフにしたテールランプ

 2019年のジュネーブショーで披露されて以来、販売も好調で欧州カー・オブ・ザ・イヤーに輝いただけでなく、日本にも2020年7月に上陸し、日本のインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを獲得。久々にやってきた大物フレンチコンパクトカーである。名称は従来通りの方式なら「209」となるはずだったが、今回はそうではなく208の2代目ということになった。

 しかしその中身はプラットフォームから一新。モジュール化によってガソリンからEVまでカバーできる柔軟性と高剛性を併せ持つ、新世代の小型車向けプラットフォーム「CMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)」を採用している。

直列3気筒DOHC 1.2リッターのPureTech ガソリンターボエンジンは、最高出力100PS/5500rpm、最大トルク205Nm/1750rpmを発生。排ガス規制ユーロ6にも適合していて、燃費はWLTCモードで17.0km/L

 パワートレーンは直列3気筒1.2リッターターボエンジン+8速ATの組み合わせで、グレードはベーシックな「スタイル」(受注生産)、装備と価格のバランスがいい「アリュール」、17インチタイヤでスポーティな内外装となる「GTライン」の3構成。この日の試乗車は、16インチタイヤを履くアリュールだ。

装着タイヤは16インチのミシュラン「プライマシー4」で、サイズは195/55R16(GTラインは205/45R17)
フロントのカメラは単眼タイプ
リアアンダーシャイニーブラックデコを装備(スタイルは除く)

文字が浮かび上がっているように見える先進的なメーター

 運転席に座ると、まず目に入るのは文字が浮かび上がっているように見える、「3D-iコクピット」と呼ばれるデジタルメーター。さりげなく先進的で洗練されたセンスを感じさせながら、必要な情報は分かりやすく表示される。センターパネルに7インチのモニターも設置され、Apple CarPlayとAndroid Auto対応で、スマートフォンをつないでナビや音楽などが使えるようになっている。

 こちらは実際、2020年の初秋にiPhoneをつないで合計5時間ほど走ってみたが、これで十分だと思える便利さだった。ただメーターに関しては、本来なら日差しを遮る役目を果たすはずのメーターナセルの左右に隙間が空いており、日差しの向きによっては光が当たって反射し、見えにくいと思う場面があった。

奥側にある表示部分と、上面から手前のパネルに反転表示させた2つの表示を重ね映すことで奥行きのある立体的なメーターを実現している
7インチタッチスクリーンでは、エアコン、オーディオ、ハンズフリー通話、運転支援システムなどの操作設定が行なえる

 そしてステアリングは小径で、上下がフラットなタイプを採用。シートはサイドサポート形状がほどよくあり、同クラスのコンパクトカーのドライビングポジションよりも、少し深い位置に腰掛けるように感じるかもしれない。この感覚は、プジョーに慣れ親しんだ人にとってはしっくりくる“お約束の”ポジションだ。

上下がフラットになった小径ステアリングを採用
左側には音声認識機能起動ボタン、音量調整ボタン、メーター表示切替ダイヤルを配置
右側には選択ダイヤル、入力ソースやチャンネル切り替えボタン、電話ボタンを配置
ステアリングの右のダッシュボードにはレーンキープアシスト、レーンポジショニングアシストのスイッチが配置される

 スタートボタンを押すと、振動もノイズも小さくエンジンが回り始める。それがアクセルをひと踏みした途端、さっきまでは猫を被っていたのだと痛感する、軽やかでイキイキとした加速フィールに変身。8速ATがいい仕事をするようで、加速と減速のコントロールが思いのままにしやすく、都市部のストップ&ゴーさえ楽しくなってくる。

運転席と助手席にはほどよいサイドサポートがあり、しっかり体を支えてくれる
シートの素材はファブリック&テップレザーシート

 高速道路に入ると、ETCゲートから本線までの合流で、すでにスカッと爽快。踏み始めてすぐからターボがダイナミックに引っ張り上げてくれる感覚で、「エンジンっていいな」という喜びに浸らせてくれるから、何度も再加速をしたくなってしまう。最近のコンパクトカーは風切り音などのノイズもよく抑えられているモデルが多いので、208が別段優れているとは言い難いものの、高速巡行中でも運転席と後席で普通に会話ができ、不快なノイズに疲れることはまったくない。

アクセルペダルの反応もよく、気持ちいい加速感が得られる

 また、2020年の初秋に信州の山道を走った際に、かつて「ホットハッチ」と呼ばれた「205」や「206」の勇姿がまざまざと蘇るような、熱い走りを体験した。カッチリとした剛性感のあるボディと、そのボディの荷重移動を絶妙なしなやかさで受け止めるサスペンション。タイトなカーブでは、「猫足」と呼ばれた頃のリヤサスペンションのジワリとした粘りが感じられ、さすがと唸らされた。

 しかも、ヒヤリとするような危うい挙動がまったくない安定感に感心しきり。猫足時代はトレーリングアームだったリヤサスペンションは、今はトーションビームになっているのだが、先代208よりもこうした「プジョーらしさ」が復活していると感じて嬉しくなる。いつの間にか、クルマがいいだけでなく自分の運転が上手くなったような気にもさせてくれて、すっかり夢中で汗ばむくらい走り回ってしまったのだった。

シフトレバーの「M」ボタンを押せばパドルシフトを使うセミマニュアルモードにもなる
電動パーキングブレーキを完備
センターコンソールのスイッチは鍵盤のように下に押すタイプを採用

 さらに、208にはノーマル、エコ、スポーツと選べるドライブモードがあり、エコだとやっぱり爽快感が物足りなく感じてしまう。でも必要以上にアクセルを踏みすぎないので、ノロノロ渋滞の時などに使うといいかもしれない。スポーツモードにすると、アクセルペダルの反応が俊敏になったり、ハンドルもややガッチリとした手応えになる気がしたり、低く吠えるようなエンジン音が聞こえてきて、気持ちを高めてくれるのが嬉しい。きっちりと3つのキャラ変が味わえるようになっている。

リアのサスペンションもとてもいい仕事をしてくれる

 そして208には、全車速追従機能付きのクルーズコントロールや、ステアリング操作をアシストしてくれるレーンキープアシストといった、先進の運転支援システムも装備された。高速道路で作動させてみたところ、操作感はおおむねよかったのだが、スイッチがハンドルの裏についており、なかなか運転中に目で見て確認することが難しい。慣れればブラインド操作ができるとは思うが、できればステアリングスイッチにしてもらえると、初心者も使いやすいのではと思った。

前後席にUSBポート、ワイヤレス充電も完備する高い利便性

全長がほぼ同等の新型「ノート」よりややタイトな印象のある後部席

 使い勝手の面では、後席は208と全長がほぼ同等の新型「ノート」(全長4045mm)と比べると、わずかに足下や頭上はタイトな印象。全長3995mmで驚異的な後席空間を持つ「フィット」には及ばない。ただ、チャイルドシートやジュニアシートを装着して子供を乗せてみたところ、それほど窮屈さはなく、家族3人ならそこそこ快適に使えそうだと感じた。

可倒式のリアシート
3人家族なら充分な容量のラゲッジスペース
メーカーは異なるが同じサイズのスペアタイヤを搭載

 ラゲッジスペースは5人乗車時で265Lと、このクラスの標準的な容量を確保しており、開口部も大きめ。6:4分割で後席が倒せるため、ベビーカーなど大きな荷物を積むことも可能だが、完全にフラットにはならず少し段差は残る。そのほか、前席まわりの収納スペース、カップホルダーやUSBポート、非接触充電などが揃い、使いやすさもしっかり考えられている。

センターコンソールの助手席側には充電用USB Type-Cポートを装備
センターコンソールの運転席側にはUSBポートを完備。お気に入りの音楽を入れたメモリースティックを挿せば直ぐに聞くことができる
ワイヤレス充電は全グレードに完備
後席にもUSBポートを2つ完備

 2020年は日本車でも「ヤリス」や「フィット」、2020年末に駆け込みでノートがフルモデルチェンジし、実力派コンパクトカーが豊作だったのだが、そこに勝るとも劣らないライバルとして推したいのが、この新型208だ。特に乗るたびにウキウキさせてくれたり、走ることに夢中にさせてくれるコンパクトカーを探している人には、ぴったりの1台。いつまでもフレンチコンパクトをマニアだけのものにしておくのは、もったいない。208には、食わず嫌いを克服するどころか、大好物にするチカラがあると実感したのだった。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Zなど。 現在は新型のスバル・レヴォーグとメルセデス・ベンツVクラス。

Photo:高橋 学