試乗レポート

手に入れるなら今!? “本物のスポーツカー”ルノー「メガーヌ R.S.」マイチェン後の印象は?

手に届くところにあるスポーツカー

 欲しいなら、早く手に入れておいた方がいい。

 決して煽るつもりはないけれど、「メガーヌ R.S.」のステアリングを久々に握ってそう思った。今後コンパクトセグメントでこういう、われわれが本気で求めれば手に入れられる“本物”のスポーツカーを作ることが、どんどん厳しくなっていく。

 今回のトピックは、このメガーヌR.S.シリーズが小規模ながらも、嬉しいマイナーチェンジを受けたことにある。

 特筆すべきはベースモデルとなるメガーヌ R.S.(6速EDC)が、上位機種である「メガーヌ R.S. トロフィー」(6速EDC)と同じ、300PS/420Nmの出力を得たこと(トロフィー 6速MTモデルの最大トルクは400Nm)だろう。

 これは主に直列4気筒1.8リッターターボに装着されるタービンが、トロフィーと同じセラミックボールベアリングタイプへと置き換えられたことによる効果だが、さらに排気系には、アクティブバルブ付きのスポーツエキゾーストまでもが装着され、そのステアリングはナッパレザー/アルカンターラのコンビ仕様となった。

マイナーチェンジを受け3月に発売された「メガーヌ R.S.」。ボディサイズは4410×1875×1465mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2670mm。車両重量は1480kgというホットハッチ
LEDヘッドライト、リアLEDランプなどの意匠が変更されたほか、リアシーケンシャルウインカーを新採用。センターにスポーツエキゾーストを配置するリアバンパーデザインが走りを予感させる。19インチアロイホイール“INTERLAGOS”に装着するタイヤは245/35R19サイズのブリヂストン「POTENZA S001」
「アダプティブクルーズコントロール(EDCモデルはストップ&ゴー機能付)」「アクティブエマージェンシーブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)歩行者検知機能付」「トラフィックサインレコグニション(交通標識認識)」といった先進運転支援システムを新たに装備
メガーヌ R.S.のインパネ
ステアリングは新たにナパレザー/アルカンタラに変更され、パドルシフトも備える
シフトノブ
ペダル
センターコンソールの7インチマルチメディア EASY LINK(スマートフォン用ミラーリング機能)を操作することで、運転モードや車内環境をカスタマイズ可能。メーター内の表示はステアリングスポークのスイッチにより変更できるほか、選択したモードによってデザインが変わる
メガーヌ R.S.に搭載される直列4気筒DOHC 1.8リッター直噴ターボエンジンは、従来のスチールボールベアリングシステムに比べて摩擦を3分の1に低減し、ターボの応答性を高めるセラミックボールベアリングシステムを採用。最高出力221kW(300 PS)/6000rpm、最大トルク420Nm(42.8kgfm)/3200rpmを発生する

 また、今回は試乗できなかったが、トロフィーの6速MT仕様にも、これまで6速EDCのみに与えられていたローンチコントロール機能が新たに追加されたのだという。

「メガーヌ R.S. トロフィー MT」。ボディカラーはメガーヌ R.S. トロフィー専用色の「ジョン シリウスM」。フロントバンパーのナンバープレート上部に「TROPHYデカール」を装着するほか、19インチアロイホイールが赤いラインが入った専用の“TRIOHY”となる
シフトノブ
MTモデルは手引き式のパーキングブレーキ
ペダル
シートはRECARO製フロントバケットシート(アルカンタラ)

 ちなみにこのマイナーチェンジを見分ける方法は、前述したステアリング以外で言うと、ルーフに着けられたシャークフィンタイプのアンテナくらいなもの。マイナー前モデルのユーザーが外観で大きく差を付けられないのは良心的だが、だとすれば気になるのは走りの変化だろう。

 というわけでさっそく、マイチェンモデルを走らせてみることとしよう。

日常遣いでも特別な日でも、気持ちよくドライブできる安定感が増した走り

 新型メガーヌ R.S.を走らせてまず感じたのは、その乗り心地が幾分ソフトになったのではないか? ということだった。正式な発表は何もなかったのだが、かつてこの箱根で試乗したときよりも4つの足が、しなやかに動くようになっている気がした。

 ちなみにメガーヌ R.S.は、その最大の特徴である「4コントロール」システムによって、そもそもの足まわりが、この手のハイパワーFWDスポーツとしては柔らかめに設定されている。車速・操舵角・操舵速度から演算してリアタイヤを最大2.7度までトーアウトするこの機能によって、スプリング剛性を高めずともコーナーでの旋回性を高めることができるからである。また逆に高速コーナーでは、最大1度までトーをイン側へと動かし、その安定性を高めてくれる。

スポーティでダイナミック、正確なコーナリングフィールをもたらす「4コントロール」を採用し、Bピラーにさりげなくエンブレムを装着する

 とはいえ以前のメガーヌR.S.はもっと、伸び側の減衰力が強く、どっしり感が高かったと思う。個人的にはマイナー前のセッティングも、スポーツカーレベルで考えれば乗り心地がわるかったとは思わない。むしろ今回の足まわりは路面のうねりでバネ下の19インチタイヤをそこそこ動かすから、一長一短の場面もある。

 そういう意味では、もしこの足まわりに見えない改良が施されているのであれば、前期型がドイツ車的、後期型がフランス車的な味付けになったとでも言えるかもしれない。

 肝心な300PSへの出力アップは、正直言って驚くほどのものではなかった。前期モデルと直接乗り比べたわけではないが、まずそこに明確な差が感じられない。さらに言えば300PS程度の馬力なら、このシャシーが余裕をもって受け止めてしまうのである。

 むしろ感覚的には、中速トルクの向上による、常用域でのピックアップのよさが目立つようになった。たとえばこれまでは、ペカッ! とアクセルを踏み込むと、あとからトルクが付いてくるフィーリングが目立ち、そこに1.8リッターのダウンサイジングエンジンを意識させられた。しかし新型は、こうした極端なアクセルワークでも排気量を意識させない、自然なトルクの出方になった。

 総じて新型メガーヌ R.S.は、本気で鞭打ったときの実力から考えると驚くほど、乗りやすいスポーツハッチバックになっていた。

 そしてこれだけ乗りやすいと、後部座席の乗り心地が気になった。そこで編集部女史に運転してもらいながらワインディングを一通り普通に走ってもらったのだが、これがまた非常にまともで嬉しくなった。

 もちろん、そうは言ってもメガーヌ R.S.はスポーツモデルだから、カーブを曲がるときの横Gは高い。サスペンションが車体をグッと支えるGが、シートごしに体へと伝わって来る。しかし筆者が心配していた4コントロールの影響は、ほぼ無いといって問題なかった。リアのトーアウトステアによってカーブのたびに頭が左右に振られ、最悪頭をごちんと窓にぶつけるような動きなど、まったく起こらなかったのである。

 これは前述したとおり、旋回時におけるハンドルの切り方によって、リアタイヤが逆位相となる角度が調整されるからだ。つまりゆっくり丁寧にステアする限り激しい横揺れは起こらない。だからお父さんが丁寧に運転することさえできれば、メガーヌ R.S.は十分ファミリーカーとしても使える。

メガーヌ R.S.はアルカンタラのR.S.スポーツシートを装着。コンパクトハッチながら、後席に座っても膝まわりには余裕があるため、2シーターではなく多人数で出かけることも可能だ
荷室も普段遣いには十分な広さを備える。短い旅行の荷物も余裕で積めるだろう

 今回のステージは一般公道ということもあり、たとえばそのダンパーに仕込まれるセカンダリーダンパーの効果や、4コントロールによる回頭性を存分に確認することはできなかった。しかし、これまで一連のメガーヌ R.S.シリーズをクローズドコースで走らせた経験で言えば、間違いなくこれは手に入れる価値のあるスポーツカーである。

 特にスポーツ4WSの実用化は革命的で、FF車ながらも後輪駆動に負けない、コントロールする喜びを得るに至った。ブレーキングからターンインにかけての、驚くべき旋回性の高さ。乗り手によってはアンダーステアを相殺し、ゼロカウンターからこれを超える領域で、その挙動を操れる破格の楽しさ。それはパワーを上げ過ぎて安定志向なシャシーセッティングになっていかざるを得ない後輪駆動のプレミアムスポーツカーなんかよりも、はるかにピュアなハンドリングだ。

 だからメガーヌ R.S.とじっくり腰を据えて対話していけば、きっと運転がうまくなれる。そして、長く楽しむことができるだろう。つまりこの税込み464万円という価格は、間違いなくお買い得ということ。

 そんなメガーヌ R.S.が、今回さらにそのドライバビリティに磨きをかけて来たわけである。

 これまで、もしアナタが少しでもこのクルマを気になっていたのだとしたら、私はその背中を強く押してあげたい。2017年の日本市場登場からはや4年。この時期にマイナーチェンジを行なってきたということは、終わりが見え始めたということも考えられるからである。

 どちらにしろ、環境性能的にもこの先こうしたスポーツカーが生まれにくくなって行くのは明白で、それに気づいた人々が動き出すのも時間の問題だろう。私としてはそうなる前に、投機目的などではなく、本当に欲しい人にこうしたスポーツカーを手に入れてほしいのだ。

山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。
編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してSUPER GTなどのレースレポートや、ドライビングスクールでの講師活動も行なう。

Photo:安田 剛