試乗レポート

スズキ「エスクード」(ハイブリッド)でロングドライブ 新東名120km/h走行もした燃費はどれだけのもの?

スズキ「エスクード」

ハイブリッド化した走りを体感するロングドライブ

 エスクードはスズキを代表する小型のクロスカントリーカーだった。タフな4輪駆動でオールマイティの性格から熱心なファンが存在している。

 そのエスクードがフルモデルチェンジしてクロスカントリーからSUVに変身したのは2015年、以降コンパクトカーを信条とするスズキの最上級SUVとして位置づけられており、需要の多いヨーロッパや東欧を中心に販売され、現在はハンガリーのマジャールスズキで生産され輸出されている。日本仕様のエスクードも例外ではない。そして最大のポイントはハイブリッド1機種に統一されたことだ。

 今回の試乗はちょっと足を延ばして浜松までのショートトリップ。新東名での120km/hクルージングや峠道など、オンロードでエスクード・ハイブリッドを満喫した。

エスクードのボディサイズは4175×1775×1610mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2500mm。車両重量は1320kg。モデルラインアップはハイブリッドと6速AGSを組み合わせた4WDモデルのみを設定。価格は297万円

 簡単にエスクードのハイブリッドを復習すると1.5リッターのK15C型の吸排気可変バルブタイミングを持つ自然吸気エンジンに6速AGS(シングルクラッチAT)を活用し、ストロングハイブリッドとしたシステムだ。ポイントはエンジンとISGを組み合わせたマイルドハイブリッドの後端に駆動用モーターを加えたことでEV走行、駆動アシスト、ブレーキ回生などをすべて行なうことができる。エンジン出力は74kW/132Nm。電気モーターは24.6kW/60Nmの出力を持ち、トランク下に収められた小型のリチウムイオンバッテリーと組み合わせてハイブリッドシステムを構成する。駆動システムはスズキではALLGRIPと称する4WDのみとなる。

最高出力74kW(101PS)/6000rpm、最大トルク132Nm(13.5kgfm)/4400rpmを発生する直列4気筒1.5リッター「K15C」型エンジンと、最高出力24.6kW(33.4PS)/5500rpm、最大トルク60Nm(6.1kgfm)/100-2000rpmを発生する「PB03A」モーターを組み合わせるフルハイブリッドシステムを搭載

 ハイブリッドについてはさまざまな場面で実力を確認することができた。

 エスクードのボディサイズは欧州サイズとは言えコンパクトにまとまっており、4175×1775×1610mm(全長×全幅×全高)と狭い道の多い日本でも使いやすい大きさだ。ホイールベースは2500mmとなっており、車両重量は1320kgとスズキらしく軽量に仕上がっている。

 外装では気を付けて見るとヘッドライト内に一部ブルーの加飾が加えられておりハイブリッドモデルであることをさりげなく訴えている。

ヘッドライトにブルーのラインを追加して、クリーンで先進的なイメージを演出
リアの車名エンブレムの下に、ハイブリッドを示すエンブレムを装着
アルミホイールの意匠も新しくなった。タイヤサイズは215/55R17。装着タイヤはコンチネンタル「EcoContact 5」
エスクードのインパネ
ステアリングのスポークには、オーディオ関連のスイッチと全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロールのスイッチを配置
ステアリング付け根の右側にはエンジンスイッチや、車線逸脱警報OFFスイッチ、デュアルセンサーブレーキサポートOFFスイッチなどに加え、エコモードスイッチ、ヒルディセントコントロールスイッチ、ESPのOFFスイッチ、フォグランプスイッチなどが並ぶ
ハイブリッド化にともない、シフトノブの加飾がサテンメッキに変更された
メーター中央には平均燃費などを表示できるマルチインフォメーションディスプレイを配置
マルチインフォメーションディスプレイにはエネルギーフローインジケーターも表示可能
雪山など寒い場所で重宝する運転席・助手席シートヒーターを装備
「AUTO」「SPORT」「SNOW」「LOCK」の4つのドライビングモードを切り替えられるALLGRIPモードスイッチを設定
シートは前後ともに本革&スエード調表皮を採用

オンロードでエスクードを乗り尽くす!

 いよいよ浜松に向けてエスクードとの旅が始まった。ドライビングポジションは比較的高い位置で視界は開けている。キャビンは広くはないが効率よく配置されており、後席のレッグルームも無理なく確保されている。ギュッと詰まった感じで配置され好ましい。

 ただ、スイッチ類はもう少し整理して配置してほしい。例えばステアリングコラム右にあるECOスイッチはEVのサポートが強くなりエアコンの効きも弱くなる燃費重視だが、位置の関係で使いにくいのだ。

 緩加速ではエンジンがかからずEV走行から始まる。少し強めにアクセルを踏むと1.5リッターNAエンジンが始動するが、それまでと音の落差が大きく少し耳につく。市街地でのドライバビリティは電気のサポートがあり比較的軽快だ。小回りが利くのもありがたくコンパクトSUVの真骨頂だ。またAGSの変速時のショックなども当初よりかなり熟成されてリズミカルで好ましい。

 東名高速の100km/h区間では6速2500rpmをキープする。山北付近のコーナーが続くコースではロールは大きいものの4輪はよく踏ん張っている。装着タイヤはコンチネンタルの「エココンタクト5」でサイズは215/55R17。少しオーバーサイズ気味でタイヤグリップが上回るような印象がある。

 山北あたりは登坂が続くが1.5リッターエンジンはトルクがあって自然に速度が乗せられる。

 新東名では120km/hの区間に入る。快調に走り続けるがエンジン回転は3000rpm/6速になりややノイジーだ。試しに追い越しのためにパドルで5速に落としたが、4000rpmまで跳ね上がったのでさすがに音は大きい。

 また120km/hクルーズでもEVモードでエンジンを停止していることもあり、路面の勾配や走行負荷の小さいところではマメにEV走行に切り替えて燃費の向上を図っていることが分かる。

120km/h走行でも、条件が合えばEV走行を行なう

 長い直線路ではクルーズコントロールを使うが、認識は甘めなものの適度に前車との距離をキープする。レーンキープのスイッチを入れると車線を逸脱しそうになると警報音は鳴るがハンドルキープはしないタイプで世代として少し古く感じる。

「スズキ セーフティ サポート」を搭載。ステアリングのスイッチを操作し、ミリ波レーダーで先行車との距離を測定しながら設定した車間距離と速度を保ちながら走行するアダプティブクルーズコントロールを設定。単眼カメラで白線を認識して車線逸脱を抑制する機能や、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能なども採用されている

 リアから入ってくるロードノイズは大きめだが、共鳴するような煩わしい音ではない。

 平坦路でクルージングしていると頻繁にコースティングをしてEV走行となり、また回生も頻繁に行なっているのが分かる。目まぐるしく変わるが体感上は全く違和感がなく滑らかに走り続ける。

 サスペンションは高速道路上のギャップでは衝撃を伝えやすく、フロント側のバンプストロークがもう少し欲しくなった。タフなSUVにとっては低速のオフロード走行の粘り強さこそ本領を発揮するところ。実際に滑りやすい路面でSNOWモード+LOCKモードにすると4輪のブレーキ制御をするので、そんな場面でサスペンションの動きなどを見てみたいと感じた。

 浜名湖湖畔で撮影をしたが、やはり砂利に置いた方がエスクードは似合う。また小さく波打つ湖面とそのさざ波を誘っているような松の枝が浜松らしい情緒を感じ、それをバックにしたエスクードはスズキらしかった。最低地上高の185mmも力強く感じる。

 浜松では懐かしい三ヶ日のオレンジラインを走った。低中速のワインディングロードが続き、なかなか楽しいコースだ。パドルシフトを使ってシフトしながら走るが、AGSの特色でダイレクト感があって小気味よく走る。クルマの重量感はほとんど感じない。ただコーナーが連続したコースでは前述のようにタイヤとのグリップバランスからか、ハンドルの保舵感がもう少し欲しくなる。タイヤグリップで曲がっていく感じが強い。

 バッテリーはマメに回生をしているため、意外と残量があって加速時のサポートもしてくれるので1.5リッターNAエンジン以上のレスポンスを示してくれたのは意外だった。

 ドライブモードをそれまでのAUTOからSPORTにするとさらに積極的に電気のアシストが入り、低いギヤをキープすることでアクセルレスポンスが鋭くなる。操舵感の独特のクセを承知でドライブすると、SUVとはいえオンロードでも結構スポーティだ。

 高速道路でもSPORTモードにして、アクセルのツキなど違いを見ると、電気のサポートをより分かりやすく感じられる。キビキビと走りたいときにはメリハリのあるモードで使い勝手はよい。

 ラゲッジルームはそれなりの広さだが、分割可倒シートをうまく使えば3人乗車でも結構かさばる荷物も入る。帰路には荷物を満載にして同じルートを走行したが、小ぶりなシートにもかかわらずクッションストロークが結構たっぷりしているので疲労は少なかった。

 そして燃費だが、期待を裏切らず公式データのWLTCモード19.6km/Lに近い値を高速でマークできた。燃費を気にせず市街地からワインディングロードまでこなし、撮影を行なっての数字は16km/Lほどだったのでなかなかの実用燃費だ。4WDであることを考えると素晴らしい。

 エスクード、都会派になったかと思ったが、やはりガンガン使い倒すのが正しい乗り方だと改めて実感した。世界での累計380万台の生産数、4代目の現行型でも84万台を世界中のユーザーが使っていることからもその真価が分かろうというものだ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛