試乗レポート
カワサキのオフロード四輪車「TERYX/MULE」2023年モデルに乗ってみた
2022年12月9日 09:30
- 2022年12月7日 開催
カワサキモータースジャパンは12月7日、国内導入を発表したオフロード四輪車の試乗会を開催し、実車の公開とともにオフロードでの走行性能を披露。合わせて国内での販売についても説明も行なわれた。
導入が発表された4モデルは、自然の走破やスポーツ走行を想定したTERYX(テリックス)シリーズの「TERYX KRX 1000」「TERYX4 S LE」の2モデルと、農場や建築現場などで業務用途を想定したMULEシリーズの「MULE PRO-FXT EPS」「MULE PRO-FX EPS」。
今回「MULE PRO-FX EPS」は用意されなかったが、MULEシリーズの2タイプは後席の有無とそれによる荷台の違いなので、実質的にすべてのラインアップを見ることができた。
岩場や森の中を走破する「TERYX KRX 1000」
トレイルアドベンチャー「TERYX KRX 1000」は岩場や森の中などの大自然を走破することを目的に設計されており、高い走破性、耐久性、信頼性を持っている。
エンジンはリアに搭載され、999ccの水冷4ストローク並列2気筒で、104Nmのトルクと84kWの出力を発揮する。デュアルレンジCVTと自動遠心クラッチを組み合わせ、高いトラクション性能があり、ダウンヒルでは滑らかなエンジンブレーキが走行をサポートする。
4シーターのオフロードスポーツ「TERYX4 S LE」
4人乗りのTERYX4 S LEは、TERYX KRX 1000の4シーターモデルという位置づけではなく、同じTERYXシリーズではあるが、別シリーズのモデルとなる。
エンジンは783ccの水冷Vツインで車両中央部に搭載され、前後重量配分が48:52とし、スポーティなハンドリングを実現している。ワイドトレッドとロングホイールベースの組み合わせとFOX製ショックアブソーバーを組み合わせてオフロードの安定した乗り心地を提供し、直進安定性やコーナリング性能も高めている。4人乗りながら、最大積載量は113kgあり、レジャー用品を積載するのに十分な荷台を確保している。
実用性追求のMULE。6人乗りの「MULE PRO-FXT EPS」と積載重視の「MULE PRO-FX EPS」
実用性を追求し、農場や牧場、建築現場などで使うMULEシリーズ。横3名乗車で2列シートで6人乗りの「MULE PRO-FXT EPS」と1列シート3人乗りで荷台を最大化した「MULE PRO-FX EPS」がある。
エンジンは812ccの水冷3気筒で、CVTと遠心クラッチを組み合わせて4輪または2輪を駆動する。産業用として積載量が多いことも特徴で、6人乗りモデルもリアシートを畳めば荷台が広がり、どちらのモデルも最大積載量は453kgを確保し、最大積載量350kgの軽トラックよりも荷物が積める点をアピール。さらに907kgの牽引力により、さらにトレーラーなどを引っ張るといった牽引性能も特徴となる。
「TERYX KRX 1000」で未舗装路や岩場のコースを走破
悪路や岩場などがあるテストコースでは、「TERYX KRX 1000」で走破した。同乗と実際にハンドルを握って走行したが、まず、第一印象として乗り心地がソフトで快適に走破したということ。急な坂道でも、クルマ自体は大きく揺れるもののガツガツという衝撃はなく、ソフトにいなしていく。
よく伸びるサスペンションのおかげで、タイヤが浮きそうになる場面でもしっかりと接地し、駆動力を確実に地面に伝えて前に進んでいく。全長3305mm×全幅1730mmという小さくないサイズに、強固に仕上げたボディ構造ながら860kgと軽量で、999ccのエンジンにパワー不足を感じることはなかった。
走り出しは遠心クラッチのため、エンジン音もあいまってバイクのような感覚だが、動き出せば4輪がしっかり路面を捉えて前に進む。
急な坂になった岩場はテストドライバーの同乗試乗となったが、下り坂でもほぼエンジンブレーキのみでゆったりと下っていき、ドライバーには不安をあたえず走破していく印象だった。
また、山道を想定した外周路で「TERYX4 S LE」と「MULE PRO-FXT EPS」を運転してみたが、こちらも非常に安定して急な坂になった砂利道などを全く不安なく走破していく。「TERYX4 S LE」は左右フロントシートの中央部あたりにエンジンがあるため、エンジン音はにぎやかだが、レジャーユースならVツインエンジンの唸りもまた楽しさのひとつとなる。
一方のMULEは実用車らしくおとなしく確実に山道を走破する印象。短時間の試乗程度では細かな走破性の違いまで分からなかった。MULEの特徴としてエンジンをかけた瞬間、3気筒のエンジンから感じられるのは2気筒に比べればマイルドな音質で、仕事として長時間乗ってもTERYXシリーズよりは疲れが少なそうな印象なこと。
問題と感じたのはシートがベンチシートのためかシート調整機構がなく、欧米人向けの設計のためか、身長が低かったりすると適切なドライブポジションが取れず、シートに安定して腰掛けることもしにくいことだ。
「間違いなく日本において需要がある」と車種拡大も視野
今回の試乗会では、最初にカワサキモータースジャパン 代表取締役社長の桐野英子氏があいさつ。「素晴らしい乗り物で機械としてこんなに優れているのかというのを、日本ではあまりなじみがありませんので、ぜひとも 日本の方に知っていただきたい」のオフロード四輪車のラインアップのよさを強調した。
国内の営業展開については、カワサキモータースジャパン 販売店サポート部 部長の又川浩久氏が説明。オフロード車ということで車両の登録制度などがないため、今回のようなオフロード車の市場の状況がつかめないとしならも、すでに正規輸入しているメーカーや、多数の並行輸入で国内に入っていることから「間違いなく、日本においても需要がある」と強調した。
そして、日本で販売していくため「どこで見られるのか、どこで買えるのか、案内できる正規のネットワークが必要」と販売ネットワークの重要性を指摘。アフターサービスなども充実させるとした。
そして、同時に安全・安心の提供も必要とし、国内導入のTERYX KRX 1000には6点式シートベルトを標準装備することや、購入後も安全に使用してもらうことを書いたクイックスタートガイドの作成など行なうとした。
また、日本での販売について具体的な方針も発表された。ターゲットは4つで、ユーザーユース、ワークユース、レジャー&リゾートユース、特殊需要。
中でも、当初はワークユースが主力になると予想していたが、オフロード体験のできる施設に相当数配備されていることから「レジャー&リゾートユース」も多くあると想定。すでに入っているクルマのリプレイス需要も期待できるとした。
特殊需要とは災害派遣用に官公庁が調達したり、防衛省が調達したりするなどの需要。今回のオフロード車の国内導入では、正規販売店での通常の販売では公道で走れるように登録をすることを禁止しているが、特殊需要の一部ではカワサキモータースジャパンが協力し、大型特殊自動車での登録をサポートすることもあるとしている。
また、正規販売店についても、9月の発表以降、多くの問い合わせがあるとし、現在8店舗だが、再来年には全国で20店まで拡大する予定としている。
そして、車種ラインアップだが、ATVと呼ばれる4輪バギーについても需要はあるとしているほか、そのほかの車種でも需要に合わせてカワサキの4輪オフロード車のラインアップを拡大していくとしている。