試乗記

レクサス初の本格3列シートSUV「TX」試乗 2.4リッターターボをチェック

2023年6月に世界初公開された新型「TX」に試乗

V型6気筒3.5リッターのPHEVも開発中

 レクサス初の本格3列シートSUVが「TX」となる。日本ではなじみがないが北米市場専用モデルでトヨタ「グランドハイランダー」のレクサス版にあたる。

 GA-Kプラットフォームに2.4リッターターボと6速ATを組み合わせたFFモデルとその4WD仕様、さらにそのパラレルハイブリッドとダイレクト4(4WD)を組み合わせて前後トルク配分を行ない、後輪ステアも装備した仕様がある。現在はV型6気筒3.5リッターのPHEV(プラグインハイブリッド)を開発中とされる。

 全長は5mを超える5160mm、全幅1990mm、全高1990mmという北米サイズの大きなボディだが、スクエアなデザインは新しさを感じる。ホイールベースは2950mmと長く、その伸びた後部に3列目シートと大容量のラゲッジルームがあって、さすがに長い。

新型TXは北米地域における3列のシートを備えたクルマへの強いニーズへ寄り添うため地域専用モデルとして新開発されたモデル
試乗車は直列4気筒2.4リッターターボ「T24A-FTS」エンジンを搭載する「TX350」。GA-Kプラットフォームを採用し、プロトタイプモデルのボディサイズは5160×1990×1780mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2950mm
エクステリアではレクサスの新たなフロントフェイス「ユニファイドスピンドル」を採用するともに、実用的エレガンス(PRACTICAL ELEGANCE)をコンセプトに機能と品質を兼ね備えた
足下は22インチアルミホイールにコンチネンタルのオールシーズンタイヤ(255/45R22)の組み合わせ

 試乗したのはFFとその4WD仕様。ハイブリッドはおあずけとなったが、初めて乗るレクサスSUVの3列シートモデルには興味津々だ。装着タイヤはレクサス初となるコンチネンタルのオールシーズン。それも北米タイプの夏タイヤに近いものではなく、パターンの細かい本格的なオールシーズンを採用する。サイズは255/45R22という大径で迫力がある。

 2.4リッターターボの実力はこの大きなボディを引っ張るにも十分で、上り勾配も軽快に走る。ただし「低速トルクの厚みはそれほどないな」、と感じたところでグイッと加速した。アクセルのゲインが高く飛び出すようだ。どうもピックアップが鋭すぎる。試乗中にドライブモードの切り替えスイッチを捜したがアナログスイッチはなく、モヤモヤした気持ちで3周の試乗を終えた。こちらはあとで再確認。

 操舵感は重めの設定でレクサスらしい滑らかさがあるが、長いホイールベースのために曲がるよりもまっすぐに走る方が得意。ステアリング応答性は鈍い。アクセルを踏んでいるとストレートエンドではかなり速度が乗っており、直線でしっかり減速するのが重量級TXのセオリーだ。

そして2列目はもちろん、3列目に座った乗員からも「足下が広くて快適な乗り心地」と評価が高い。3列目はリアアクスルの上に位置するのでゴツゴツした突き上げがあるかと思っていたが、そうでもないらしい。滑らかなサーキット路面であることを考慮しても家族が皆で乗れるSUVを目指したのが分かる。

新型TXのインテリア。3列シートは6人乗りまたは7人乗りから選択できる

古き良き豊かなアメリカを連想させる家族のためのSUV

 あとはドライブモードの確認だ。次に乗ったのは2.4リッターターボの4WD。基本的には前輪の駆動力が大きい設定になっている。ドライブモードの存在を問うと、なんとセンターディスプレイから入れた。FFではすべてスポーツモードで走行していたことになるが、それだけ変化を持たせていることが分かった。確かにスポーツにふさわしい。

 4WDではノーマルモードを選択した。ピックアップは鋭いが、かなり滑らかになってのんびりと走る余裕が生まれた。急に蹴とばされるように前に出ることもなく粘り強い加速だ。さらにアクセルを踏むと出力の山に乗る。4WDはさらに直進安定性が高く、ハイウェイをクルーズしている光景が目に浮かぶようだ。

 後席の乗り心地は「快適です」とのコメントが続き、3列シートを大切にしているのを再確認した。驚くべきは3列目を普通に使ってもラゲッジルームには55Lのスーツケースが7つ積めることだ。7人分の荷物ということで勘定が合うところが芸が細かい。

 古き良き豊かなアメリカを連想させる家族のためのSUV。それがTXではないかと思う。人気の出そうな予感がする。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛