試乗記
新型MINIクーパー 5ドア試乗 第4世代の「S」に搭載される4気筒エンジンを味わう
2025年3月24日 06:00
クーパー3ドアとエースマンとの違いは
新生MINIの4世代目では、これまでグレード名だった「クーパー」が車名の一部になり、2024年3月に3ドアが日本に上陸し、同年6月に5ドアが追加された。MINIのハッチバックの5ドアモデルとしては、2014年に初代が誕生し、初のモデルチェンジとなる。
そんなわけで以降の本稿では件の3ドアと5ドアハッチバックを「クーパー」と記す。MINIクーパーの3ドアにはBEV(バッテリ電気自動車)版もあるが、5ドアはガソリンエンジン車のみで、5ドアのBEVを求める人にはMINI初のBEV専用車である「エースマン」がある。
最高出力115kW(156PS)/最大トルク230Nmを発生し、直列3気筒1.5リッターターボを積む「C」が408万円、最高出力150kW(204PS)/最大トルク300Nmを発生し、直列4気筒2.0リッターターボを積む「S」が477万円というラインアップとなり、いずれも7速DCTが組み合わされる。
スリーサイズは4035×1745×1470mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2565mmと、BEV以外のクーパーの3ドアが3875×1745×1455mm(同)、ホイールベースが2495mmであるのに対し、ホイールベースと全長を拡大してリアドアを追加している。定員が5人乗りと4人乗りという違いもある。
一方のエースマンは、4080mm×1755mm×1515mm(同)、ホイールベース2605mmと5ドアよりもひとまわり大きいという関係となっており、たしかにクーパー5ドアの後席の空間や荷室はエースマンよりもだいぶ小さく、いかにもクーパーの3ドアをベースに5ドア化したような作りになっている。
このことから、まずはなにより見た目の好みがどうなのかが大事なのは当然として、後席の使用頻度がそれほど高くなく、荷室の広さもそれほど重視していなくて、BEVの購入にはまだ抵抗があるという人にクーパーの5人乗りは向いているといえそうだ。
従来とガラリと変わった内外装
4世代目のデザインは新生MINIとなってからもっとも大きく内外装の雰囲気が変わっているが、「ミニマルな新しいデザイン」を目指したというエクステリアは、新しい世代になったことを全身で表現しながらも、ひと目でMINIと分かるDNAを継承しているのはさすがである。
インテリアは、運転に必要な情報が円形有機ELセンターディスプレイとヘッドアップディスプレイに映し出されるようになっていて、これまた新鮮味がある。「エクスペリエンズ」と記されたレバーを押すと、デザインと音声が異なる表現豊かな最大8つのモードから選べて(モードの上限はモデルで異なる)、ドライブフィールだけてなく選択肢に則した車内の光と音の演出を楽しむこともできる。
スッキリとした中にMINIらしさが表現されていて、やや樹脂パネル等の質感にもの足りなさを感じなくもないものの、ファブリックを多用し、インパネを一面ぐるりと覆ったりいたるところにアクセント的に配したりするなどして、これまでとは違う新しいカジュアルな雰囲気を演出している。
一見すると狭いように感じるが、実はそれほどでもないあたりも計算されているように思える。明るい配色の空間は居心地もよい。
装備については、パノラマビューほか機能を持つ「パーキング・アシスタント・プラス」を備えた最新の運転支援機能などを採用したほか、車載カメラを使用した全方向記録可能なドライブレコーダーが「S」に標準装備される。
走りについても、「S」と「C」ではエンンジンだけでなく足まわりのセッティングが異なり、標準のタイヤサイズや、完成度の高いアダプティブ・サスペンションが選べるかどうかといった違いがある(「S」でJCWトリムを選択した場合のみアダプティブ・サスペンションが付く)。
「S」の走りを味わってしまうと……
以前に直列3気筒1.5リッターターボの「C」にも乗ったことはあるが、直列4気筒2.0リッターターボを搭載する「S」は、エンジンがパワフルでサウンドもやっぱり3気筒とは違うことをあらためて確認した。低く響く勇ましいサウンドは、John Cooperでなくてもなかなかスポーティなテイストを味わえる。
このエンジンは本当によくできている。微妙な足の親指のミリ単位の繊細なコントロールにも応えてくれて、パワフルだけど扱いやすい。急激にオフにしてもスナッチ的な不快な揺れが起こりにくいというよさもある。
足まわりの仕上がりも非常によく、MINIらしく小さくてキビキビ走れて乗り心地もいいという両面を見事に両立している。
MINIは1つ前の世代から、それまでいささか過敏だったハンドリングをいくぶん穏やかにするとともに、乗り心地も硬さを感じさせないような味付けとしてきており、新世代もその流れの延長上にある。その上で、パワフルで扱いやすく官能的な4気筒ターボエンジンをひとたび味わうと、多少は高くても「S」を選ばずにいられなくなる人は少なくなさそうだ。