試乗記

ジープ「アベンジャー」に48Vマイルドハイブリッドモデル「4xe Hybrid」追加! さっそくオフロードを走ってきた

ジープ「アベンジャー 4xe Hybrid」

ジープのラインアップで最も小型なSUV

 ジープブランドの末っ子にして、クラス屈指のイケメン・コンパクトSUV「アベンジャー 4xe Hybrid」(フォー・バイ・イー ハイブリッド)を試乗して、「ようやくパズルのピースがそろった」と感じた。

 アベンジャーの登場は、2022年のパリ・モーターショーと少し前の話だ。日本導入は2024年と、特別新しいモデルではない。

 にもかかわらずその見た目が今もって魅力的なのは、バッテリEV用にデザインされた近未来的なジープルックが、力強い新鮮さを放ち続けているからだろう。

そして少しばかり早すぎたバッテリEVの投入が、日本市場でその存在を希薄にしていたことも、否めない事実だ。

 しかし今回、日本仕様に待望の48Vマイルドハイブリッドモデルが加わったことで、その存在感がより現実味を大きく増した。

 詳しい方ならご存じの通り、このマイルドハイブリッドモデルはすでに欧州で2023年から発売されているモデルだ。ちなみにジープの生まれ故郷である北米ではアベンジャーそのものが発売されておらず、欧州やアジア地区に向けた、「市場専用モデル」になっているのも面白い豆知識である。

アベンジャー 4xe Hybrid。ボディサイズは4120×1775×1600mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2560mm。車両重量は1755kg(スタイルパック装着車は1765kg)。最小回転半径は5.3m
ジープの伝統をスタイリッシュにアレンジした7スロットグリルや大径ホイールアーチなどを採用し、スクエアなスタイルと都会的なデザインを融合
BEVモデルよりも高く、外側に配置されたフォグランプで夜間の視認性を向上させたほか、フロントとリアのバンパーは傷防止加工が施されたモールドインカラーとするなど、都会派でありながらも実用的なデザインとなっている。また、後輪ホイールトルクが1900Nmあり、ぬかるみにはまったラングラークラスの車両を牽引することもできることから、頑丈なリア牽引フックを標準装備
フロントデザインは4xe Hybrid専用で、グリーンのXのアイコンが特徴。バンパーには渡河性能を示す印が刻まれており、ちょうど400mmのところに“Jeepダック”が泳いでいる
マットブラックの17インチアルミホイールを装着。215/60R17サイズのオールシーズンタイヤとなるグッドイヤー「Vector 4Seasons Gen-3」を標準装備
アベンジャー BEV(左)と、アベンジャー 4xe Hybrid(右)。BEVと4xe Hybridのボディサイズを比較すると、全幅は同じで、4xe Hybridの方が全長が15mm長く、全高が5mm高い。最低地上高はBEVモデルは200mmなので、4xe Hybridは10mm高い
アベンジャー 4xe Hybridのインテリア。シフトはスイッチ式。テクノレザーステアリングホイールを採用し、スポーク付け根の右側にはヒルディセントコントロールのスイッチを配置する
助手席側のパネルに「4xe AVENGER」のロゴを施している
センターには10.25インチタッチパネルモニターを装備し、Apple CarPlay、Android Autoにも対応するオーディオナビゲーションシステムを採用する
メーターは10.25インチのフルカラー表示が可能。メーターデザインも好みに応じて変更できる
路面の状況に合わせて走行モードを選べる「セレクテレインシステム」を装備。「AUTO」「SPORT」「SNOW」「SAND/MUD」から選択可能
専用の撥水加工を施した完全防水シートを標準装備
ラゲッジ容量は325Lを確保。カーゴフロアボードの下にはモーターが収まる
7スロットグリルやテントウムシなど、アベンジャー 4xeにもたくさんの“イースターエッグ”が隠されている

 そんなアベンジャー 4xe Hybridのアーキテクチャは、「e-CMP2」プラットフォームがベースとなっている。パワートレーンはステランティスグループの主力ユニットに躍進した「e-Hybrid」。直列3気筒1.2リッターターボ(136PS/230Nm)と、15.6kW(21PS)/51Nmのモーターを内蔵した「e-DCT」の組み合わせはBセグメントのみならず、Dセグメントまでカバーする守備範囲の広さである。

 さらに「4xe」を名乗るこのモデルは、リアアクスルにも21kW(29PS)/89Nmのモーターを備えて、4輪駆動を実現している。ちなみに0.9kWhの小さなバッテリは、助手席下のシートレールの間に配置されている。

最高出力100kW(136PS)/5500rpm、最大トルク230Nm(23.5kgfm)/1750rpmを発生する直列3気筒DOHC 1.2リッターターボエンジンを搭載。フロントには最高出力15.6kW(21PS)/4264rpm、最大トルク51Nm(5.2kgfm)/750-2499rpmを発生するZA03モーターを、リアには最高出力21.0kW(29PS)/3000rpm、最大トルク89Nm(9.1kgfm)/500-2000rpmを発生するZA05モーターを搭載する。容量0.9kWhのバッテリは助手席下に配置
マイルドハイブリッドとなったアベンジャー。まずはオフロードでその性能を試す

マイルドハイブリッドでも、オフロード性能は本格派

 試乗ステージは、愛知県豊田市にある「さなげアドベンチャーフィールド」。このオフロードコースは岩場の登坂コースや、本格的なトライアルコースも有しているが、今回はオフロード体験用の「ワンダフルコース」と、林道コースが試乗路となった。

 そしてこのチョイスが、アベンジャーにはベストマッチだと筆者は感じた。本格的なオフロード性能を試すには物足りないけれど、実際に愛車で走ることになったら、ちょっとためらうくらいのダートコースだったからだ。

体験用とはいえ、愛車で走るにはちょっとためらうくらいのオフロードコース

 イメージ的には、見知らぬ林道をぐんぐん突き進む感じだ。プレゼンテーションではプロダクト ジェネラルマネージャーの御館氏が、「バス釣りに行くときに通るような、湖周辺の“軽トラ獣道”を想定している」と述べていた。なるほど、である。あぁ、アベンジャーでバス釣り行きたい!

 ということでコースを走らせてみると、全幅1775mmのコンパクトなボディが、狭い林道をスイスイ走った。バッテリEVと共用するボディは、空力性能を求めてだろう、割とAピラーを寝かせているが、アップライトな着座位置からの眺めは見切りもまずまずだ。

 タイヤは215/60R17サイズのオールシーズンタイヤ(グッドイヤー ベクター4シーズンズ)が標準装備だったが、荒れた路面でもきちんとグリップを発揮した。メーター内のアニメーションを見ると走行時の駆動はほぼFWDで、発進時やカーブでアクセルを強めに踏んだときだけ、4WDになっていた。またこのe-Hybridは30km/h以下で約1kmのEV走行を可能とするが、今回のシチュエーションだとEVモードには入らなかった。

オールシーズンタイヤでもぐんぐん登る

 エンジンは1.2リッターしかない直列3気筒ターボだが、e-Hybrid+4WDの走りは予想以上にパワフルだった。走行モードは「AUTO」「SPORT」「SNOW」「SAND/MUD」の4つ。お約束の「SAND/MUD」モードだと、曲がり込んだ登り坂でもタイヤが路面をかきむしりながらグイグイ進んでくれたけれど、正直どのモードに入れても、いたって普通に走り切ってしまった。

 ライトオフロードとはいえこうした走りができた理由は、まさにリアモーターのおかげだろう。可変ジオメトリータービンも低速から力強くトルクを盛り上げてくれるけれど、アクセル開度が小さい状況からモーターがリアタイヤに素早く駆動をかけてくれるから、エンジンは1500回転も回っていれば十分なのだ。リアモーターのトルクは89Nmだが、22.7:1の減速比を持って、後輪には1900Nmのホイールトルクが与えられるのだという。だから「SAND/MUD」が活躍するのは、よほど路面がぬかるんでいるときだろう。

AUTOでも十分走る性能を持つ

 また、急な下り坂では「ヒルディセントコントロール」も安心感を高めてくれた。興味深いのは「N」(ニュートラル)を指示されたことで、おそらくこれはe-DCTのデュアルクラッチを守るためだろう。そこからアクセルを踏むと車速を上げたのは、リアモーターの独立制御によるものだ。

 ちなみにアベンジャー 4xe Hybridの3アングルは、バンパー形状や最低地上高(210mm)の変更によって、EVモデルよりも大きく取られている。具体的にはアプローチアングルが22度(アベンジャーBEVは20度)、ランプブレークオーバーアングルが21度(同20度)、デパーチャーアングルが35度(同32度)だ。そして渡河性能は、400mmである。

 気になる乗り心地は、オフローダーとして見ればやや硬め。岩や轍を乗り越えて、頭が左右に振られるほどではないけれど、足がグッと踏ん張るタイプだ。

 モーター式4WDとなったことでリアサスは、トーションビームから6つのリンクを有するマルチリンクとなった。ごついロアアームは軽量化のために肉抜きされており、一部のリンクにはアルミ製の押し出し材も使われているとのことだった。

鉄製のフロアアンダーカバーで床下を守り、サスペンションアーム下部にはラバー塗装を施して飛び石や泥からパーツを保護する。また、専用のマルチリンクサスペンションはアルミ押し出し材も使用

 このしっかりとした乗り味からイメージすると、オンロードの走りはかなり良さそうだ。また今回はアクセルを大きく踏み込む場面はなかったが、4WDとなった分だけ、同じシステムを使うフィアット・600 Hybridよりも、高速道路での合流などをよりスムーズにこなしてくれそうである。

 走り終えた姿を見ると、汚れたボディもまた一段とカッコよかった。泥はねはフロントバンパーなら黒い部分まで、サイドパネルなら斜めに傾斜した大ぶりなガーニッシュまでで遮られており、マットグレーのボディがきれいなままなのも好印象だ。

泥のはね方も計算されたデザイン

 その価格は、標準仕様で499万円から。この価格で、このイケメンを、充電のわずらわしさなしに楽しめるのは、かなりそそられる。

 対抗馬は、ずばり48Vハイブリッドを登場させたばかりのMINIだろう。全長は4120mmとカントリーマンより小ぶりだし、全天候型4WDであるのも大きな武器だ。価格も、4WD同士だとアベンジャーの方が少し買いやすい。

 オフロードでの走りは、ある程度理解した。今度はそのトータルパフォーマンスを確かめるために、オンロードへと繰り出してみたい。

オフロードで楽しく走った次は、オンロードでのドライブを味わいたい
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:安田 剛