試乗記

スバルの得意なツーリングワゴンがBEVになった! 「トレイルシーカー」プロトタイプを雪道で試す

スバル「トレイルシーカー」プロトタイプ

スバルのこだわりが詰まったBEVツーリングワゴン

 日本勢としてはBEV初のツーリングワゴンがスバルからもリリースされる。ベースとなった「ソルテラ」はトヨタの「bZ4X」との兄弟車。双子車だが細部にはスバルらしいこだわりがあり、4WDを柱とするスバル独自の視点で仕上げられていた。

「トレイルシーカー」と名付けられたBEVのワゴンは、スバルがこれまで培ったツーリングワゴンのノウハウが詰め込まれ、駆動方式はFWDと4WDの2モデルが予定されている。

ツーリングワゴンタイプのBEVとなるトレイルシーカーのプロトタイプに試乗。正式発表・受注開始日は4月9日を予定しているので、登場まで間もなくだ

 ソルテラのプラットフォームを共用しているためホイールベース2850mm、全幅1860mmで共通。ただし、大きな荷室を確保するために全長はソルテラの4690mmから4845mmと155mm延長されている。これによってもたらされた荷室容量は633L。ソルテラ比で+181L、ひとクラス上の「アウトバック」と比べても72L大きい。大きなラゲッジルームには9.5インチゴルフバッグが横に4つ搭載できる。確かに荷室はフラットで広く驚くばかりだ。

 BEV専用に作られたプラットフォームは室内長を伸ばせるが、ワゴンはそのメリットをさらに活かしている。もともと余裕がある後席のヒップポイントは変わらないので、全長が長くなった分は全て荷室の容量に振り当てられている。

トレイルシーカー プロトタイプのボディサイズは4845×1860×1670mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2850mm。最低地上高は210mmを確保している。車両重量は2WDで1900kg、4WDで2010~2050kg。
左がトレイルシーカー、右がソルテラ。並べて横から見ると車両後部の違いがよくわかる
エクステリアデザインは、自然の中で存在感のあるラギッドなデザインを採用。フロントのスバルエンブレムは融雪ヒーターが付いているので、触るとほんのり温かい。リアにはスバルのエンブレムではなく、光る「SUBARU」のレターマークが用いられている
トレイルシーカー プロトタイプのインパネ。水平基調が特徴
異形ステアリングホイールや、ダイヤル式シフト、2つのワイヤレス充電ポートなど、インテリアデザインはソルテラと共通
明るいブルー基調のシート
ラゲッジはとにかく広い。容量はアウトバックよりも上の633Lを確保

 バッテリパックは現行のソルテラと同様。容量をアップして電気の出入力抵抗を下げた最新型。総電力量は74.7kWhとなっている。リアアクスルもインバーター、トランスアクスルの抵抗低減で大きな効率アップで航続距離を伸ばしている。

 満充電による想定航続距離はWLTCモードでFWDモデルは734km。4WDの18インチタイヤでは690km、20インチタイヤは627kmとされる。BEVではトップレベルの航続距離としている。

 一方、充電時間も最新型ソルテラ同様にセルや温度管理を精度アップし、150kWの急速充電器でSOC10%~80%までの充電時間は低温時(−10度)でソルテラより7分短い53分、さらにあらかじめ電池を最適温度にするプレコンディショニング機能を使うと28分まで短縮するとされる。常温では従来型と大きな違いはないが寒冷地では大きな安心となるはずだ。

 パワートレーンでは、リアモーターがソルテラ4WDの3XM型からフロントと同じ出力の大きい2XM型となり、システム最高出力はソルテラ4WDの252kWから280kWに向上。前後のモーターをそろえることで積載時の駆動力バランスを取っている。

フロントフェンダー部分に普通充電ポートと急速充電ポートを備える。
ボンネット内はぎっしりと詰まっている

BEVになってもスバルらしい4WD制御

 試乗コースは群馬サイクルスポーツセンター。路面は圧雪だがところどころ舗装が出ている状態。水分も多くていろいろな雪道で走ることができた。

雪の群馬サイクルスポーツセンターで試乗

 試乗車のタイヤはSUV用のスタッドレス、横浜ゴムのG075でサイズは235/60R18。3種類あるECO/NORMAL/POWERのドライブモードから最初にNORMALを選んだ。

 最低地上高は210mmと高いこともあり、水平基調のダッシュボードからの視界は開放感がある。

 車両重量は2t強。圧雪からのスタートもアクセルコントロール性が高く、ジワリと発進する。BEV特有の水平移動するような感覚はトレイルシーカーも同じだ。さらに4WDの制御もスバルらしく直進安定性を重視したもので、状況が厳しいほど真価を発揮しそうだ。

雪の状態を確かめながら走り出す

 まずライントレース性に優れているのに驚いた。雪道ではコーナーに入る手前でハンドルの応答遅れを想定して、グリップを探るように少し手前から操作することがあるが、トレイルシーカーでは応答が早く、ターンインでのタイミングを作りやすい。姿勢が早く変わることで余分な操作をしなくて済む。

 コーナーでは前後の駆動力制御が精密で、駆動力と旋回力がバランスしている印象だ。低重心の水平対向エンジンを活かしたスバル伝統の応答性の良さは、BEVのトレイルシーカーでも受け継がれている。

 トラクションを切り取ってみると、旋回力が高いだけではなく可変で行なわれる前後の駆動力制御が絶妙なバランスで、コーナーを駆け抜ける。

 前後固定の駆動力配分は特性さえつかめればドライビングはシンプルだが、トレイルシーカーはその次元を超え、弱いアンダーステアを保ちながら駆動力を高度にコントロールし、ドライバーに負担をかけていないのが素晴らしい。スバルらしくコントロール幅を残しつつ、車体制御が行なわれているのだ。

BEVになっても4WD制御からスバルらしさを感じる

 そして制御の入るタイミングが早いのが特徴だ。感覚的には操作した瞬間からクルマが先読み制御しているようで面白い。ハンドル操作量が明らかに少なくビックリした。

 またアイスバーン状の路面でのターンインは絶妙な左右のブレーキ制御によって行なわれ、ドライバーをサポートする。

 パワーモードではさらにアクセルのレスポンスが早くなり、操舵力も重くなる。スタビリティコントロールも介入が遅くなり、雪中のクローズドコースでは面白く走れた。ライントレース性が損なわれることはないので、安心してドライビングに専念できた。安全のマージンは十分だ。

 ツイスティな圧雪路で痛感したのはアクセル操作に対して過度な反応をしないこと。それと同時に、ハンドル操作に対して前後の駆動力制御が緻密なことだ。

ドライバーをサポートするような緻密な制御で、運転に集中できる

 試乗後のインタビューでは左右の車輪速の違いを検知して後輪に駆動力を配分することでオーバーステアに陥らない制御をしていると聞いた。複雑なファクターを紐解いて精密にコントロールする技術の進化に驚かされた。

 駆動力は通常は7:3でフロント側が高いが、姿勢によっては4:6まで駆動力を可変させているという。

 サスペンションの追従性も高いレベルにある。210mmの最低地上高は高い走破性を実現している。気になるところがあるとすれば凹凸路面でのブレーキングで後輪が跳ね上げられた直後に瞬間的に接地を失い、十分な制動力を得られないことがあった。レアケースだがさらに進化してほしい。

 精緻な駆動力制御と高いボディ剛性、低い重心高がもたらす運動性能は想像以上に楽しい。スバルらしいドライバーを中心に置いたクルマ作りはBEVでも変わることなく進化し続けていた。

スバルらしいクルマ作りの進化を感じた
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛