写真で見る

写真で見る スバル「Performance-E STI concept」「Performance-B STI concept」などJMS2025出展車両

ジャパンモビリティショーに出展しているうち、4台の車両を紹介

 スバルは、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「ジャパンモビリティショー 2025」(プレスデー:10月29日~30日/一般公開日:10月31日~11月9日)に2台のSTIコンセプト「Performance-E STI concept」「Performance-B STI concept」など、多種多様な車両を出展している。

 本稿では展示車両の概要とともに出展車両の一部を紹介していく。

Performance-B STI concept

 6月1日にスーパー耐久 第3戦 富士24時間レースの会場で、スバル 取締役専務執行役員 CTO(Chief Technical Officer、最高技術責任者)藤貫哲郎氏が語った新型車が、このPerformance-B STI concept(パフォーマンス-B STI コンセプト)となる。

 パフォーマンス-B コンセプトはまだ企画段階で、生産も決定していない状況とのこと。このクルマを企画した背景としては、最近のスポーツモデルは運動性能や静粛性は素晴らしいレベルにある一方で、価格も上昇しており、技術開発の進化としては正しい傾向ではあるものの、若い人がもっと気軽に楽しめる、いじっても楽しいクルマが減っていることがあるという。

 その声を聞いて、「それならば作ってみようじゃないか」ということで企画をスタート。数値上の高性能を追求するのではなく、今ある技術を組み合わせて「楽しさ」を追求しようと考え、コンセプトは「スバルが今持っている最もコンパクトな車体に、出力のあるエンジンと軽量なマニュアルトランスミッションを搭載し、4WDも採用する」というシンプルなものにしたという。「素のモデル」になるのは、現在のクルマとして必要な安全装備や環境性能は備えつつ、それ以外は“引き算”をしたクルマとのことだが、今回のパフォーマンス-B STI コンセプトは、「引き算になっていない展示車」とのこと。

 スバルでは、まずはシンプルないいクルマを作り、購入後にパーツや専用ソフトウェアのアップデートを通じてクルマを“育てていく”ことを考えているとして、これまでの完成形のクルマを売る「売り切り」のビジネスから、売り切り後もバリューチェーンを通じて収益を上げていくビジネスモデルに向かっていきたいと考えているという。そのため、現在JMSで展示しているクルマはアップデートの一例であり、最終形ではないとした。

 今後はスーパー耐久などのレースを通じて鍛えていき、その成果をフィードバックするというような流れができていけばと考えているといい、エンジンの詳細は後日となるものの、パワートレーンは水平対向ターボエンジンと、6速MTの搭載を検討中としている。

 なお、パフォーマンス-B STI コンセプトがWRXの後継となるのか、という点については、まだ決まっていないとのこと。現行のWRXは、クルマとして完成された形で、スバルが「どういった商品が良いか」を突き詰めた「足し算」のクルマとしてリリースしている一方で、パフォーマンス-B STI コンセプトはどちらかというと「ベース」を提案する方向になるため、根本が異なるとした。

パフォーマンス-B STI コンセプト。ボディはクロストレックがベースとのこと
ボンネットには大型のエアインテークが設けられており、「Proud of BOXER」の文字が刻まれる
編み目状のグリルの隙間から見えるラジエータのサイズは大きそう
ホイール&タイヤ
大型のリアウイングを装着
マフラーはセンター2本出し
インテリアを細かく見ることはできなかったが、スバル共通となる大型のセンターディスプレイや、MTのシフトノブが確認できる
シートはブラック×レッドでスパルタンな印象

Performance-E STI concept

 Performance-E STI concept(パフォーマンス-E STI コンセプト)は、パフォーマンスシーンの未来像を表現するBEV(バッテリ電気自動車)のコンセプトカー。「Everyday Supercar」をコンセプトに、BEVの技術を最大限に活かし、BEVだから実現できる運動性能と実用性を両立。スバルならではのドライブの楽しさを追求した1台となり、単なるショーカーではなくパッケージや走りも考慮されている。

 BEVだからこそできるパッケージングにより、優れたハンドリングを実現しながら、室内空間と実用性を両立。STIのヘリテージを進化させたダイナミックな造形や、ダウンフォースと空気抵抗のバランスを追求した空力性能により、スバルらしい走りの楽しさが感じられるようになっているという。

パフォーマンス-E STI コンセプト

 パフォーマンス-E STI コンセプトは「人を中心」とした思想を取り入れ、スバルが安心してパフォーマンスを楽しむための絶対条件と考えている、理想のドライビングポジション、開けた視界、運転に必要なすべてが正しい位置に配置されていることを念頭に開発された。

 バッテリには三元系円筒セルを採用し、床下に配置。これにより、室内スペースを確保しながらも車両の全高を抑え、従来のガソリン車に比べて約15%以上の低重心化を可能にしたという。さらに、ルーフ高を抑えることで空気抵抗を低減し、エネルギー効率も向上させ、電池を増やすのではなく、エネルギーを賢く使うことで走りを進化させていくとした。

 採用される三元系円筒セルには3つのメリットがあるといい、1つ目の「高出力」では、LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリと比べて瞬間的に大出力を発揮できるため、高いパフォーマンスが期待できるという。2つ目は「長寿命」で、スバルで開発を進めている冷却システムはセルの側面を直接冷却する方式を採用しており、これによって常にセルを最適な温度に保ち、車両ライフ全体にわたって安定した性能を発揮するため、バッテリ交換も必要ないとした。3つ目は「軽量」で、同様の容量のLFPバッテリを使用した場合に比べて、車両全体で約10%以上の軽量化が可能になるという。この軽さによって、スバルらしい走りの質感がさらに引き上げられるとした。

 エネルギーの流れ、伝達時間、周波数を設計対象として扱う、車体剛性の新しい考え方となる「ダイナミック・スティフネス・コンセプト」も取り入れており、軽量かつ高効率な車体を実現し、従来のスバルグローバルプラットフォーム(SGP)を超える動的質感、雑味のないしっかり感、ドライバーの意のままに操る楽しさを、さらに高い次元で実現していくという。この車体性能を次世代の新サスペンションで引き出し、新設計によってフードの高さを従来比で5%以上低減。これによって、スタイリングと低重心の両立が図れたとした。さらに、SGPでもこだわった、サスペンションのキングピン軸とタイヤの回転中心の「キングピンオフセット」をさらに縮小することにより、操舵に対する応答性がよりいっそう向上し、走りの質感をもう一段階上げられるとした。

 また、スバル独自の「クルマと対話するテクノロジー」がキーポイントであるとして、BEVは「車両からのフィードバックが希薄で一体感に欠ける」「無音でスピード感が分からない」「限界が分かりづらい」といった声があるといい、スバルはその要因の1つは、人が感じる「情報」の質にあると考えているという。クルマの走りは、一般的にXYZの各方向と、その軸の回転を含めた6軸で語られるが、人はこれらを単純な視覚や加速度で感じるだけでなく、音や微細な振動など、五感を使って車両の状況を判断しており、スバルはこうした「感性情報」に着目。研究を続けた成果として、BEVでありながら、ドライバーがクルマの挙動を感じ取りやすい、対話できるようなクルマが実現できるとした。そして、このテクノロジーの実現の一端を担うのが、BEVならではの高応答・高精度なハイパワー4WDであるといい、ドライバーの入力に対して瞬時かつ滑らかに応答することで、遅れのないフィードバックが可能になるとともに、音や振動といった五感に響く情報を制御することで、クルマとの対話が可能になるとした。

パフォーマンス-E STI コンセプト
低いフォルムで空力に考慮
空力に配慮しつつも、サイドミラーはしっかりと設定
ゴールドのフラットなホイール
細いヘッドライト
角張ったリアランプはコンセプトカーだからこそできる形状
リアウイングは左右で分割された形状。これでも十分な空力が期待できるという
「SUBARU AERO SPACE TECHNOLOGY」のロゴが入っている。開発時に航空宇宙部門との意見交換を行なっているという
リアには六連星のエンブレムはなく、SUBARUの文字が光る

Trailseeker prototype(日本仕様)

 SUVタイプのBEVとなる「トレイルシーカー」は、4月の上海モーターショーで世界初公開され、日本では「ソルテラ」に続く2車種目のBEVとなるモデル。トヨタとの共同開発モデルとはなるが、群馬県の矢島工場でスバルとして初めてとなるBEVの国内生産を行なう予定としている。

 トレイルシーカーのコンセプトは、「日常、非日常でも使いやすい、スバルらしい実用CEV」で、スバルのSUVラインアップをBEVでも補完し、ユーザーの選択肢を広げるとした。

 トレイルシーカーは、スバルの得意なワゴンとして、ルーフレールや空力形状、視界を確保したリアクォーター、荷室形状などを実現。ベースがソルテラである派生モデルとなるものの、ソルテラからは「外観」「荷室」「動力性能」の3つを変更しており、荷室を開けるとスバルらしい設計、形状、雰囲気が感じられるという。

 4WDは寒冷地での使用頻度が高く、夜間や後方の視界についても意識して設計されており、ヘッドライト周辺は雪がつきにくい造形としつつ、性能と両立させてクリーナーを全車標準装着し、汚れも改善できるようにしている。ソルテラではレイアウトが難しかったリアワイパーもトレイルシーカーでは装備可能となっており、リアデフォッガーと合わせて視界の最適化が図られた。

 エクステリアでは、ソルテラが少し都会的で洗練された方向に進化したのに対して、トレイルシーカーはラギッドな方向に大きく進化。大型の樹脂クラッディングとルーフレールを採用し、フロント/リアの外観をよりラギッドな方向に仕上げた。スバル車のアイコンである6ポイントのシグネチャーランプとイルミネーションオーナメントはソルテラから流用し、フロント/リアのバンパー、サイドクラッディング、ホイール外観などを新設計とした。

 インテリアでは、ソルテラの基本パーツを流用しつつ、表皮や加飾を変更し、ブルーとブラックのコーディネーションを採用。ピラーなども黒基調とし、全体的な質感の差別化が図られた。

 ラゲッジについては、スバルのワゴンで培ってきた要件を取り込み、アウトバックレベルの収納性・実用性を確保している。

 動力性能については、2WDではフロントに167kWのモーターを、4WDでは前後とも167kWのモーターを搭載。システム最大出力は電池の制約などもあり、2WDで165kW、4WDで280kWとしている。0-100km/h加速は4.5秒。

 充電時間や航続距離は、ワゴンのハンデを最小限とし、ソルテラ同等レベルを目標に開発を進めているところとのこと。

 グレードのラインアップは標準と上級の2種類で、ルーフレールは標準装備。上級仕様にはハーマンカードンオーディオやシートベンチレーションを採用している。なお、ソルテラにはソーラールーフ仕様があるものの、トレイルシーカーには設定されない。

トレイルシーカー プロトタイプ(日本仕様)
フロントは新型ソルテラと似たデザイン
ラゲッジはかなり広い
トレイルシーカーのインパネ。淡いブルーが用いられている
ソルテラと同じ異形ステアリング
シフトまわり

Forester Wilderness prototype

 参考出品となる「フォレスター ウィルダネス」「アウトバック ウィルダネス」は、スバルが際立たせる「アドベンチャー」を担う重要なモデルとして、「お客さまの探究心に応え、行動範囲を広げることで新しい経験を通じ、人生を楽しんでもらう」ことを、スバルとして後押ししたいという思いで開発されたモデル。今後、スバルとしてグローバルにウィルダネスを展開していく考えがあることを明らかにしている。

 ウィルダネスは、最低地上高、アプローチアングル、デパーチャーアングルなどの基本諸元を標準車から変更しているといい、これによって深いわだちや障害物のあるような悪路でも安全に走行できるようになり、行動範囲の拡大につなげるとしている。

 加えて、ギア比を変更することで低速トルクを向上させ、ATの制御によって悪路での走破性を高めたり、けん引容量を上げることで実用性を向上させたり、走行性能も向上させているという。さらに、オールテレーンタイヤと、フルサイズのスペアタイヤを搭載し、万が一パンクしたときにも安全に帰れるような安心感も提供しているとのこと。

 こうした改良点により、普段使っている「いつものクルマ」で悪路の走破やアウトドアができるようになることが、ウィルダネスの価値としている。

 なお、米国ではすでに3車種のウィルダネスを展開しており、現地では車中泊などをしながら長距離を旅する「オーバーランド」の入門車種として、高い評価を得ているとのこと。

 今年度、米国ではフォレスターとアウトバックの2車種に新型を導入する予定としており、JMS2025では冒険心を喚起するような専用の外観を持つ米国仕様を基にしたプロトタイプを出展する。

フォレスター ウィルダネス プロトタイプ
専用のフロントグリル&バンパーや、オレンジの差し色を各所に用いている
専用17インチホイールには、トーヨータイヤ「オープンカントリー R/T」を装着
マッドフラップも採用している
ウィルダネスのエンブレム