試乗記

メルセデス・ベンツ「A 200 d アーバンスターズ」、コンパクトカーの良さと性能の良さがギュッと詰まったモデル

「A 200 d Urban Stars」に試乗

乗った瞬間に思い浮かんだのは「オーバースペック!」

「A 200 d Urban Stars」に乗り出した瞬間、思い浮かんだのは「オーバースペック!」という言葉。Aクラスと言えば、メルセデス・ベンツの中でもっともコンパクトなモデルであり、ここまでのパワーがあるとは正直予想していなかったからだ。

 A 200 d Urban StarsはコンパクトハッチバックのAクラスに、直列4気筒2.0リッターディーゼルターボエンジン(150PS/320Nm)を搭載している。馬力の数値だけ見れば、そこまでおどろくほどのパワーがあるようには見えないかもしれないが、最大トルクは1400rpmから320Nmを発揮するので、特に発進加速の面ではコンパクトモデルとは思えないほどの力強さを見せてくれるのだ。

A 200 d Urban Starsが搭載する直列4気筒2.0リッターディーゼルターボエンジンは、最高出力110kW(150PS)/3400-4400rpm、最大トルク320Nm/1400-3200rpmを発生。これに8速ATを組み合わせ、WLTCモード燃費は19.1km/Lとなっている

 今回試乗したAクラスは、2025年5月にモデルラインアップを一新し、ベースグレードは「Urban Stars」に置き換わった。Urban Starsは装備が充実しつつ価格が抑えられたグレードで、人気装備のAMGラインパッケージや本革仕様の内装、アルミニウムのインテリアトリムが採用されるAMGレザーエクスクルーシブパッケージなどが標準装備されている。

 AMGラインパッケージには、18インチAMGアルミホイールやスポーツシート、本革巻スポーツステアリング(ナッパレザー)、通常より車高を15mm下げつつも乗り心地の良さを担保するローワードコンフォートサスペンション、舵角に応じてギヤ比を自動で調整するダイレクトステアリングなども含まれる。

 そのほかにも、走行状態や周囲の環境に合わせて自動でヘッドライトの照射範囲を調整するマルチビームLEDヘッドライトや、前走車や歩行者を眩惑しないようにするアダプティブハイビームアシスト・プラスなども標準装備されている。

2025年6月に発売された「A 200 d Urban Stars」。「Urban Stars」はこれまでコンパクトモデルオーナーに好評だった装備の多くを標準化し、装備レベルの充実を図るとともに、標準仕様の装備を向上させながら従来モデルと比較して魅力的な価格を実現させた1台。「マルチビームLEDヘッドライト」や「アダプティブハイビームアシスト・プラス」などの運転支援機能を標準装備し、価格は588万円
「A 200 d Urban Stars」のボディサイズは4440×1800×1420mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2730mm
足下は18インチホイールにコンチネンタルのハイパフォーマンス・エコタイヤ「EcoContact 6」(225/45R18)をセット

 本来であれば、70万円相当の人気のオプション装備が実質約20万円で装着できるとあって、これらの装備を前提に購入を検討していた人にとってはお買い得なモデルとなっている。本体車両価格だけを見ると、以前より20万円ほど上がっているものの、充実した装備分を含めれば、実のところ40万円以上お得になっているというわけだ。

 A 200 d Urban Starsは、Aクラスが2023年にマイナーチェンジしたことを受けて、よりスタイリッシュなエクステリアになり、今回のUrban Starsの上質な内装を組み合わせたことで、より上位モデルに近づいたと感じる。個人的には初代のコロンとした丸いフォルムの初代Aクラスも好きだが、当時は賛否両論あったモデルだった。それから徐々に“メルセデスらしい”デザインへと姿を変えていき、今の4代目になって、どんな人にとっても違和感の少ない上質なコンパクトモデルの形を手に入れたと言えるだろう。2025年にはセダンモデルの生産が終了したが、ハッチバックモデルは今のところ2028年までは販売される見通しだ。

 現在は販売期間が延長されたものの、「Aクラスが販売終了するかも」と思った時には、メルセデスに存在するコンパクトモデルという日本の交通事情に合っていて、使い勝手も良いモデルがなくなるのは寂しいと感じていた。

「A 200 d Urban Stars」のインテリア。Urban Starsでは従来モデルで有償オプションとなっていた「AMGラインパッケージ」「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」を標準装備している

コンパクトモデルらしい軽快な楽しさがある

いざ試乗

 改めて今回のA 200 d Urban Starsに試乗してみると、とても快適でコンパクトモデルらしい軽快な楽しさがある特別なモデルだと感じたので、末長く継続してほしいと祈るばかり。

 Aクラスは前輪駆動ベースではあるが、他の後輪駆動のメルセデスのように回頭性が良く小まわりが利く。それに加えて、A 200 d Urban Starsは運転のしやすさだけではなく、溢れんばかりのトルクがあるのでどんな時にでもパワーに余裕があり、ドライブシーンに合わせて「街中では軽快に」「高速道路では力強く加速して伸びやかに流れに乗る」と言ったように自在に力を出し入れできるので、気持ちにもゆとりを持って運転することができる。

 メルセデスのEクラスなどに採用されているディーゼルエンジンは、A 200 d Urban Starsに採用されているものとベースは同じであり、それにオルタネーターとスターターを兼ね備える「ISG」を搭載したマイルドハイブリッドモデルとなる。最高出力/最大トルクは197PS/440Nmと、もちろんAクラスのディーゼルモデルに比べればハイパワーだが、おそらく乗ってすぐその豊かなトルクや余裕を感じられるのはAクラスだと思う。

A 200 d Urban Starsは溢れんばかりのトルクがあり、どんな時にでもパワーに余裕があることを感じた

 A 200 d Urban Starsは、上位クラスのようなゆったりどっしり感は少なく、街中のマンホールや道路の凹凸などによってコツコツ突き上げられる時もあるものの、基本的にはフラットで快適な乗り心地で、ボディや足まわりがしっかりしている安定感を感じた。何より低速からドライバーをグイグイ引っ張っていくような力強さや、細い道でもスイスイと走っていける操縦性の良さや軽快感は、コンパクトなA 200 dならではと言っていいだろう。

 冒頭に、乗り出した瞬間「オーバースペック!」と感じたと言ったが、乗れば乗るほど街中をくるくると走りまわれる操縦性と、この豊かなトルクの組み合わせがあっという間に肌になじんで、癖になる感覚すらある。このボディサイズに対してこのパワーは、十二分……いや十三分、十四分もあるような気がするが、きちんとそのパワーが自分の手の中で、安全に、そして爽快に扱える感覚はとても楽しく心地がいい。

 Aクラスも以前よりもボディサイズは大きくなったものの、きちんとコンパクトカーの良さとメルセデスの性能の良さがギュッと詰まったモデルだと感じた。

機会があればぜひ試乗してその性能を確かめてみてほしい
伊藤梓

クルマ好きが高じて、2014年にグラフィックデザイナーから自動車雑誌カーグラフィックの編集者へと転身。より幅広くクルマの魅力を伝えるため、2018年に独立してフリーランスに。現在は、自動車ライターのほか、イラストレーターとしても活動中。ラジオパーソナリティを務めた経験を活かし、自動車関連の動画やイベントなどにも出演している。若い世代やクルマに興味がない方にも魅力を伝えられるような発信を心がけている。

Photo:中島仁菜