試乗記

フォルクスワーゲン「T-Roc」ディーゼル×4MOTION、遠方の宮崎で感じた魅力とは

「T-Roc」TDI仕様の魅力を確かめるために宮崎県へ

ディーゼルエンジンの特徴を振り返る

 燃料費の高騰が危惧されるいま、もう一度スポットを当てておきたいパワーユニットがディーゼルエンジンだとフォルクスワーゲンはいう。BEV(バッテリ電気自動車)の「ID.Buzz」を2025年に発表し注目を集めた一方で、実は今回扱う「T-Roc」はディーゼルエンジンを進化させて登場させていたことがその証。BEVだけじゃなく、やはり全方位戦略が必要ということなのだろう。原油の輸入に不安が残るとはいえ、レギュラーやハイオクガソリンまでは高くならない軽油。その実態はどうなのかをT-Rocに乗りながら感じてみることにする。

 今回試乗することになったT-Roc TDI 4MOTION R-Line Black Styleは、ディーゼルエンジン搭載車の中で最上級モデルとなる1台。4245×1825×1590mm(全長×全幅×全高)という取りまわしの良いサイズながらも上質に仕立てられたことが伝わってくる、ちょっとスポーティなイメージが好感触。

 凝ったラインを描くフロントマスクや Black Styleならではの引き締められたカラー、そしてアダプティブシャシーコントロールDCCパッケージとセットで装着される19インチホイールもインパクトを与えてくれる。さらに車名からも分かるように、このクルマは四輪駆動であり、リアサスペンションはFFのトレーリングアームとは違い4リンクとなる。小さくても隅々まで手抜かりナシなわけだ。

今回試乗したのは、2025年1月に新たなパワートレーンとして追加された「T-Roc」の「TDI 4MOTION」モデル。撮影車は「T-Roc TDI 4MOTION R-Line Black Style」(564万5000円)で、純正インフォテイメントシステム“Discover Pro”やLEDマトリックスヘッドライト IQ.LIGHTなどを標準装備
ボディサイズは4245×1825×1590mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2590mm。Black Styleではアルミホイール、専用デザインCピラー/ルーフレール、ドアミラー/ウインドーフレーム、フロントグリルなどがブラックとなり、エキゾーストフィニッシャー風加飾もブラックアウトされる
19インチアルミホイールに組み合わせるタイヤはブリヂストン「ポテンザ S001」(225/40R19
インテリアではダッシュパッド、インフォテイメントシステムのディスプレイ、 エアコンベゼル、センターコンソールなどをブラックで統一するなど、全体的に精悍な装い。走行モードは「エコ」「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」「カスタム」から選択可能

 本題となるディーゼルエンジンは2.0リッターの直列4気筒ターボとなるEA288evoというモデルで、最高出力110kW(150PS)/3000-4200rpm、最大トルク360Nm/1600-2750rpmを発生。湿式7速DSGと組み合わされている。また、ツインドージング(デュアルAdBlue噴射)システムを搭載することで、前の世代に比べて最大80%ものNOx削減に成功している。

 このツインドージングシステムは2か所でAdBlueの噴射を行なっているが、その理由は排気温度が200~350度付近でAdBlue噴射を行なうのが最も効率的だから。排気温度が低い状態の時は排気上流となるエンジン直下のSCR触媒コンバーターで、排気温度が高くなってきた時には排気下流の車体下部にあるSCR触媒コンバーターでという感じで噴射位置を変えることで対処。また水冷式の低圧EGR(排気再循環)システムの冷却効率を向上させることで環境性能も向上。さらに2000barにも達するコモンレール式燃料噴射システムは、一回の燃焼サイクルの間に9回の分割燃料噴射を行なうことでさまざまな効率を高めている。

直列4気筒2.0リッターディーゼルターボ「EA288evo」エンジンは最高出力110kW(150PS)/3000-4200rpm、最大トルク360Nm/1600-2750rpmを発生

 今回のT-RocのWLTCモード燃費は17.0km/Lを記録。車重1530kgの四輪駆動ということを考えればまずまずの数値だろう。ちなみに同ユニットを搭載する「ゴルフ」ではWLTCモード燃費20.8km/Lを記録。以前、東京から新潟まで走る長距離燃費競争イベントではそのゴルフに乗って30.2km/Lを記録したことがある。実燃費や高速燃費はT-Rocもおそらく伸びるのではないだろうか?

あらゆる性能が高次元でバランス

宮崎県の日南周辺で試乗
静粛性の高さが際立つとともに、低速からトルクがついてくる感覚はTDIの大きな魅力

 けれども今回は燃費を競うようには試乗しない。あくまでも普通に使った場合、どんな仕上がりなのかを試してみる。ステージは宮崎の日南周辺の海岸線やワインディングを主に試乗した。

 走り出してまず感じるのは静粛性の高さだった。ディーゼルエンジンというとガラガラとした音を想像するかもしれないが、そのイメージはほぼ払拭された感覚だ。また、低速からトルクがついてくる感覚に溢れており、応答遅れなくリニアに走ってくれる。わずか1600rpmで最大トルクを迎えるのだから当然といえば当然のこと。街乗りであろうがワインディングであろうが、高速走行であったとしてもとにかく低回転で駆け抜けてくれるのだからうるさくもない。

 巡航時にアクセルをオフにすれば、即座にギヤがニュートラルになりコースティングしてくれるところもさすが。燃費を伸ばす術を心得ている制御がたまらない。もちろん、ブレーキを少しでも踏めば駆動が瞬時に復活するから不安定になるようなこともない。車間距離をしっかりと保ち、アクセルオフを早めに乗るとグングン燃費が伸びていることを体感できる。結果としてトータル平均燃費は18.6km/Lを記録。燃費走行だけでなく、ワインディングではしっかりと踏むシーンがあったにも関わらずである。これならもっと燃費を伸ばすこともできそうだ。

コースティングにより燃費を伸ばすことも可能。ワインディングでの走行を含めトータルの平均燃費18.6km/Lは大したもの

 ワインディングシーンではシャシーの仕上がりの良さもメリットだと感じた。特に今回のクルマはアダプティブシャシーコントロールDCCパッケージに加えて19インチホイールを装着なのだから当然といえば当然なのだが、スポーツモードでシャープなハンドリングを実現する。4MOTIONでトラクションに不満は一切ない。

 一方で、コンフォートモードを選んで優雅にも振る舞えるという二面性が好感触だった。しっかりとホールドし、硬質ではあるがしっかりと身体を支えることでロングドライブを快適にしてくれるシートの仕上がりもいい。

景色を眺めながらゆったりと走るのにも向いていると感じた

 このようにコンパクトながらもディーゼルエンジンの搭載によってかなり魅力的に仕上がっているT-Roc。決して飛び道具を持っているようなタイプのクルマではないが、実際のところはあらゆる性能が高次元でバランスしていることは間違いない。その存在をもう一度見直してみても良いのかもしれない。

今回の試乗では改めてT-Rocの魅力を感じることができた
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛