試乗記

ボルボ・トラック「FH2026年モデル」に試乗 新採用のデジタルミラー「カメラモニターシステム」の使用感は?

ボルボ「FH」の2026年モデルに試乗

デジタルサポートで視界を広げる「カメラモニターシステム」

 カメラモニターシステムを新たに採用したボルボの大型トラック「FH」の2026年モデルが、国内では2026年6月にUDトラックスから発売される。2026年モデルにおける最大の注目点は、従来のサイドミラーに代わるデジタルミラー(カメラモニターシステム)の採用で、メディア向けの先行試乗会でその効果を試した。

 まず、実車の外見では、これまでのミラーと違ってキャビン外側にコンパクトに設置されたカメラユニットがある。これにより空気抵抗の低減で低燃費が期待できるだけでなく、キャビン内のAピラー付近に設置されたモニターにより、悪天候時や夜間でも鮮明な視界を確保している。

ボルボ「FH」2026年モデルの特徴はサイドミラーがカメラモニターシステムのカメラになっていること

 カメラの位置はこれまでのミラーよりも高めの場所となっており、従来の2つのミラーで見えていたのと同じように、通常ビューと全体を俯瞰する広角ビューを同時に表示できる。また、表示範囲は切り替えができるほか、視界がトレーラーの後端を自動で追従する機能を持っているため、いつでもトレーラーの後端の状況を確認できるようになっている。

運転席からの視界。Aピラーにミラー状のディスプレイが備わっている

 また、カメラによる表示となったため、汚れにくくクリアな視界が確保され、ミラーによる風切り音も減少して運転環境の改善が期待できる。さらに、空気抵抗の低減による燃費向上にも効果がある。

ミラーのかわりにカメラが付く

 カメラで得た映像を表示する範囲である“視界”は切り替え可能で、ミラーよりも広い範囲を映すことができる。たとえば、左側に合流するような場合、トラックの場合は見えにくいところが多いが、カメラの表示範囲を変更することで死角も減らせる。

左側のカメラ
直下を映すミラーは従来どおり装備
カメラはたたむことも可能
こちらは2025年モデルで、ミラーを装備している
右側のカメラの構造。金属フレームで丈夫に作ってあり、何かが当たれば倒れる構造だという
カメラは向きが違う2個を装備している
左右のディスプレイ。運転席側は下に操作ボタンが並ぶ。助手席側の方はドライバーから離れた搭載位置になるため、少し大きい

 映像に表示される基準線の位置は任意の場所に設定できる。例えば、トレーラーの後端部分にセットしておけばバックする際の目安になるし、内輪差の基準としてもいいだろう。基準線は左右のミラーともに同時に動く。

 カメラは赤外線照射によって真っ暗闇でも視界を確保できる。暗い場合はカラー映像ではなくモノクロ映像になるが、障害物などを確認するためには十分で、さらにデジタル処理によって映像が補正されるので、見やすい映像になる。

説明されたカメラモニターシステムのメリット

 暗闇でも確認できるので、夜間の休憩時に不審者が近づいてきたことや、不審者の挙動も確認可能。外に出ることなく安全なキャビンの中から確認できるため、女性ドライバーなどでも安心だという。

暗闇で不審者がトラックに近づいた様子を再現。安全なキャビンから様子を確認できる

エンジンがプッシュスタートに。スマートキー採用のほか、全体的な機能向上

 さらに、エンジンの始動方法が「パッシブスタート」へと変更になった。これはいわゆるスマートキーで、これまでのキーを差し込んでひねる方法から、キーを携帯し、車両側のボタンを押すことでエンジンを始動させる方法になっている。

2026年モデルからはスマートキーとなった
プッシュスタートボタン。従来はここにキーの穴があった
ダッシュボード。中央には電子パーキングブレーキのスイッチがある

 ほかにも、側方衝突警報装置(BSIS)、オートマチックパーキングブレーキ、ボルボ・ダイナミックステアリングなどを搭載し、機能が向上している。

側方衝突警報のイメージ。右側通行のシーンなので、自転車レーンを右側から走ってきた自転車を検知して停止。自転車が無事通過した。日本では左側通行に準じた動作をする
レーンチェンジの際に左右のクルマを検知する機能も引き続き装備。従来はミラー上に警告が出たが、カメラモニターシステムではディスプレイ上に表示が出る

 なお、エンジンはボルボD13eSCRから変更はなく、トランスミッションも定評あるAMTの「I-シフト」が組み合わされる。

左後端がいつでも見やすい幸せ! トレーラー後端を自動追従

 実際に車両に乗り込んでテストコースを周回する。13リッターのエンジンとAMTの「I-シフト」によって、ポジションを前進の「A」に入れてアクセルを踏めばスムーズに加速していく。ボルボFHの特徴として静かなキャビンが挙げられることが多いが、加速中もささやき声で独り言を言ってもしっかり聞こえるくらいだ。

 加速中はシングルクラッチのAMTなので、加速の途切れは積み荷次第で大きくなることもあるが、重い荷物ほど急加速をするものでもないので気になることはないだろう。

ミラーと運転席。今回の試乗時に分かりやすいようカメラモニターシステムで主に操作するところに2色のシールを付けている。いずれも操作しやすい場所にある

 肝心のカメラモニターシステムの動作だが、試乗ルートには周回路のほかにきついコーナーを通るシーンもあったが、電子ミラーがトレーラー後端に追従する点が感動的だった。

右のカメラ映像。広い範囲と両方が同時表示され、従来の2枚ミラーに近い

 固定のミラーなら視界から外れてしまうほどヘッドを折ったときでも、何も操作せずにトレーラーの後輪や後端が大きな画像で表示され続ける。きついカーブほど内輪差も大きくなるので内側にある障害物を確認する必要があるが、追従してくれるため確認しやすい。

左のカメラのデモ用にヘッドを大きく折った状態にした
左の助手席側ディスプレイ。上側が追従して後端を映している
これが通常の角度での表示。下の全体映像では映っているが、上の映像では後端が映っていない

 表示範囲の移動は、動画をパンするようになめらかに移動するのではなく、決められた範囲をパパっと切り替えるようなタイプ。好みもあると思うが、視界が変わったことに気がつきやすいので、ヘッドとトレーラーの折れ具合を把握しながら走るトレーラーなら、この方法もありだと思った。

 バック時には残念ながら追従する機能はない。それでもドライバーの手元の上下左右キーの操作ですぐに視界を調整できるので、確認したいところを表示するのは難しくない。

 また、テストコースのガレージ内で試したのは薄暗い場所での見え方。赤外線技術で真っ暗闇でも確認できる。その場合、画像がモノクロになってしまうものの、光がないときでも見えることは大型車を操るうえで安心感にもつながる。

暗い場所での右側の映像。ディスプレイの右上に月のマークが出ているときが夜間モード
左側の映像。こちらも暗い中に人がいる様子が分かる
夜間モードでは赤外線が照射される

ハンドル操作はボルボ・ダイナミックステアリングでらくらく

ボルボ「FH」2026年モデルで外周コースへ向かう

 テストコースのコーナーをまわる際には、レーンキーピングアシストによるステアリング操作なども試してみたが、低速であればトレーラーの後端が車線内に収まるようにステアリングをアシストしてくれる。

テストコースを周回するボルボFH

 そして、ステアリング操作は適度に軽いものの「ボルボ・ダイナミックステアリング」によって、道路の荒れによってハンドルが取られることもなくスムーズにコーナーをいなしていく。

周回中。レーンキーピングアシストがあるとトレーラーを引いてもレーン内の走行もしやすい

 また、今回の試乗日はあまり風が強くなかったので効果を感じなかったが、強風で横風にあおられるようなシーンでもボルボ・ダイナミックステアリングの効果で、修正舵も行ないやすいという。

 加えて、ボルボ・ダイナミックステアリングの体験ということで、轍のある未舗装路の走行もしてみた。ボルボ・ダイナミックステアリングの性能は同じという2025年モデルで試乗した。

2025年モデルで轍のある未舗装路を走行中。ボルボ・ダイナミックステアリングによってスムーズに走行できた

 轍が深い道路では、乗り越える際に大きくハンドルを取られることもあるが、ほとんど感じずに走れた。全く轍を感じない訳ではなく、楽に乗り越えられるようになっている。

 特に大型トラックではサスペンションシートの採用が多く、ボルボFHも採用する。そのため荒れた路面では、シートにしっかり収まっていても、ステアリングホイールとの位置関係がシートサスペンションのストロークぶんだけ連続的に変化する。

 未舗装路ではシートから飛び出してしまうのではないかと思うほど上下に移動するが、最新のFHでは運転姿勢の変化はあまり感じずに走り抜けられた。

ボルボ・コネクトではジオフェンス機能なども機能拡張

 この日はボルボ・トラックの、そのほかのサービスの説明も行なわれた。今回、車両情報をリアルタイムで管理するサービスである「ボルボ・コネクト」にジオフェンス機能が追加された。

ボルボ・コネクトのジオフェンス機能の説明。UDトラックス本社・上尾工場のテストコース部分を囲っており、この範囲にクルマが入るとアラートが出るように設定できる
ボルボ・コネクトの走行レポートの表示

 これは地図上に仮想領域をセットすると、車両がそこを通過した際にアラートが出る仕組み。車両位置を把握することはもとからできていたが、これによって車両の到着がより分かりやすくなる。ユーザーの活用次第で、さまざまなことができるという。

ボルボ・ブルー・プレミアの説明
ボルボ・トラックの部品配送のリードタイム

 また、アフターサービスについても、整備契約の「ボルボ・ブルー・プレミア」では新車購入から3年間または5年間、車両メンテナンスの一般部品、駆動系部品、メンテナンスの3つを毎月定額で払うサービスが紹介された。整備拠点も全国で190か所あり、必要なパーツ供給は群馬県太田市のパーツセンターから届くためリードタイムが短いことも強調していた。

 今回新型FHを試乗したが、カメラモニターシステムの採用により、特に車長の長いトレーラーで安心して走行できることを実感できた。

トラックも日々進化している
正田拓也