試乗記
レクサスの新型「ES」初試乗 ハイブリッドとバッテリEV、もっとも好印象なのは?
2026年5月27日 20:00
ハイブリッドとBEVをラインアップする新型ES
初代レクサス ESがデビューしたのは1989年。実はフラグシップのLSと並んでレクサスブランドの幕を開ける存在だった。新型レクサスESは、そこから数えて通算8代目のモデル。2025年4月の上海モーターショーでのデビューから約1年を経て、アメリカ サンディエゴにてようやくそのステアリングを握ることが叶った。
掲げられた「EXPERIENCE ELEGANCE & ELECTRIFIED SEDAN」というコンセプトは、つまり「継承と進化」と読み替えられるという。伝統的に培ってきたエレガンスを、電動化によって次の領域へと導く存在といったところである。
一番の注目点と言えば、やはり電動化だ。新しいESはパワートレーンとしてHEV(ハイブリッド)のほかにBEV(バッテリ電気自動車)を用意しているのである。レクサスで言えばRX、LMなどにも使われているGA-Kプラットフォームをベースにするマルチパスウェイプラットフォームは、フロアを高くすることで床下へのBEV用バッテリの搭載を可能にしている。
問題は、そのぶん全高が高くなること。実際、新型ESの全高1500mmは先代よりも105mmも高い。解決策としてはトヨタ クラウンクロスオーバーのようなリフトアップセダンとすることも考えられるが、レクサスはESをあくまで正統派セダンと位置づけ、その高さに見合った全長、全幅を与えることとした。その結果、新型ESは全高が165mm伸ばされて5140mmに、全幅も1920mmにそれぞれ拡大されている。手法としては、やはり1つのボディでBEVと内燃エンジン搭載車を設定するBMW 5シリーズと同様の形である。
すでに屋内では幾度かその姿を確認することができていたが、陽光の下で見る新型ESも十分にフォーマルさを持ったセダンの雰囲気を醸し出していた。BEV版ではラジエーターグリルを持たないことから採用された、各部に紡錘形の絞り込みを用いるスピンドルボディと銘打たれたシェイプは、従来よりも若返った感じだ。ただし、舞台がアメリカだったが故にサイズ感がマッチしていたという面はあるかもしれない。
用意されるモデルは、まずBEVが前後2モーターのES500eと、前1モーターのES350eの2種類。そして2.5リッターエンジンに第6世代と呼ばれる最新のハイブリッドシステムを組み合わせるHEVがES350hのFWD版、そして初設定のAWD版となる。
もっとも好印象だったのはES350e
最初にステアリングを握ったのはES500e。北米仕様の「Luxury」と呼ばれるグレードだ。高めの着座位置は乗り込みのしやすさ、そして適切なドライビングポジションに繋がっている。低く抑えられたベルトライン、メーターフードを廃したフラットなダッシュボード上面などのおかげで、雰囲気も開放的だ。
その走りは、車体の大きさから想像するよりはるかに軽やか。電気モーターは豊かなトルクをジェントルに発揮させ、とても扱いやすい。しかもアクセルの踏み込みに応じてリニアにパワーが盛り上がる特性をも備える。特に「SPORT」モードでは、わずかに上乗せされたサウンドとともにスムーズかつ豪快な伸びを見せて、車名の「500」という数字は伊達じゃないと実感させるのである。
パワー感だけじゃない。レスポンスが軽やかで正確なステアリングや、速度が高まるほどに路面に吸い付くような感覚を味わせるシャシーも、そんな印象に繋がっている。ここ数年、レクサスが社内で続けてきた「味磨き」活動は、車体の前端、フロントバルクヘッド、リアアクスル前側、そして車体後半の4か所に力点を置いた高剛性な骨格作りに繋がっている。新型ESのボディは、まさにその現時点での集大成。まさしく「すっきりとしていて奥深い」走りの最新型と言っていい。
正直、これまでのESは快適性、静粛性は素晴らしくても、敢えて走りを語るクルマではなかった。しかし新型は、そこでも秀でた仕上がりと言える。しかも今回の試乗車は北米仕様ということで、DRS(後輪操舵機構)やAVS(電子制御サスペンション)が未装備だった。これらが備わる日本仕様は、さらに心地良い走りを実現しているに違いない。
続いて乗ったES350hは、発進時などにBEVではうまく処理されているモーター音が聞こえること、エンジンが始動した際の音質などが気になったが、それはBEVに乗った後だった影響もあるだろうか。とは言え、今の電動化を取り巻く状況を見れば、改めてレクサスも高効率性に味わいまでこだわった専用エンジンを考えてもいいかもしれない。
もっとも走り自体に文句をつける要素はなく、ドライブは快適だ。さらにAWDでは高速域での安定感の高さを実感。出力40kWとリアモーターは決して強力ではないが、あるいはそれによるリアの重さも効いているのだろう。
そして、もっとも好印象だったのがES350eである。実用域の力感はES500eにも遜色なく、むしろちょうど100kg軽い車重が身のこなし、乗り心地をスッキリさせている。後席も、フラットな姿勢のおかげでAVSなしでも苦にならない。もちろんありならば快適性は相当なものになるだろう。
最上級の「Luxury Exective」トリムをまとっていたこのクルマ、この後席にはリクライニングやマッサージ、オットマンなどが備わるコンフォートモードなるパッケージが装備されており、前後席間距離が先代より77mm伸びていることもあり、LSもかくやという寛げる空間を作り出している。ミニバンよりも良い意味で閉じた空間になるのが、セダンの後席のメリット。これこそを求めていたという人も、きっと少なくないのでは?
電動化、とりわけBEVの設定という大変化の一方で、あくまでセダンであることにこだわった新型レクサスESは、その電動化や車体の進化、充実のインフォテインメント機能等々によって、まさしくセダンの旨味の進化した形を、走りの面でも快適性の面でも、しっかり堪能できる1台となっている。日本での発表は6月後半あたりとのこと。走り慣れた日本の道で、その真価を早く味わってみたい。
















