試乗記

レクサスの新型「ES」初試乗 ハイブリッドとバッテリEV、もっとも好印象なのは?

米国カリフォルニア州サンディエゴで新型「ES」の試乗会が開かれた

ハイブリッドとBEVをラインアップする新型ES

 初代レクサス ESがデビューしたのは1989年。実はフラグシップのLSと並んでレクサスブランドの幕を開ける存在だった。新型レクサスESは、そこから数えて通算8代目のモデル。2025年4月の上海モーターショーでのデビューから約1年を経て、アメリカ サンディエゴにてようやくそのステアリングを握ることが叶った。

 掲げられた「EXPERIENCE ELEGANCE & ELECTRIFIED SEDAN」というコンセプトは、つまり「継承と進化」と読み替えられるという。伝統的に培ってきたエレガンスを、電動化によって次の領域へと導く存在といったところである。

 一番の注目点と言えば、やはり電動化だ。新しいESはパワートレーンとしてHEV(ハイブリッド)のほかにBEV(バッテリ電気自動車)を用意しているのである。レクサスで言えばRX、LMなどにも使われているGA-Kプラットフォームをベースにするマルチパスウェイプラットフォームは、フロアを高くすることで床下へのBEV用バッテリの搭載を可能にしている。

 問題は、そのぶん全高が高くなること。実際、新型ESの全高1500mmは先代よりも105mmも高い。解決策としてはトヨタ クラウンクロスオーバーのようなリフトアップセダンとすることも考えられるが、レクサスはESをあくまで正統派セダンと位置づけ、その高さに見合った全長、全幅を与えることとした。その結果、新型ESは全高が165mm伸ばされて5140mmに、全幅も1920mmにそれぞれ拡大されている。手法としては、やはり1つのボディでBEVと内燃エンジン搭載車を設定するBMW 5シリーズと同様の形である。

 すでに屋内では幾度かその姿を確認することができていたが、陽光の下で見る新型ESも十分にフォーマルさを持ったセダンの雰囲気を醸し出していた。BEV版ではラジエーターグリルを持たないことから採用された、各部に紡錘形の絞り込みを用いるスピンドルボディと銘打たれたシェイプは、従来よりも若返った感じだ。ただし、舞台がアメリカだったが故にサイズ感がマッチしていたという面はあるかもしれない。

日本では5月にトヨタ自動車の研究開発拠点「Toyota Technical Center Shimoyama」で公開された新型「ES」(写真はES350h)。ボディサイズは5140×1920×1555mm(全長×全幅×全高、ES350h)、ホイールベースは2950mm(数値は日本で発表されているプロトタイプでの値)
レクサスの次世代電動車の先陣を切るモデルに位置付けられ、エクステリアでは次世代BEVコンセプト「LF-ZC」のデザインテーマで、挑発的な存在感と研ぎ澄まされたシンプルなデザインを意味する「Provocative Simplicity」に着想を得て、セダンがもっとも美しく見えるプロポーションを追求したという
フロンとまわりでは新世代のスピンドルボディとともに、次世代の新しいデザインアイコンとして採用した「ツインLシグネチャーランプ」などを用いる。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアはESとして初めてマルチリンク式を採用した
インテリアではプラットフォームの設計段階から骨格を見直し、従来モデルから全長を165mm、ホイールベースを80mm延長し、広々とした室内空間を確保。また、室内空間を構成するシートやトリムなどを可能な限り薄型とし、フロントやサイドのウィンドウ枠下端を低くしガラス面積を大きくすることで、開放感を得られるようこだわったという

 用意されるモデルは、まずBEVが前後2モーターのES500eと、前1モーターのES350eの2種類。そして2.5リッターエンジンに第6世代と呼ばれる最新のハイブリッドシステムを組み合わせるHEVがES350hのFWD版、そして初設定のAWD版となる。

もっとも好印象だったのはES350e

BEVのESでは約685km(CLTCモード[中国小型車両テストサイクル]における2WDモデルの目標値。19インチタイヤ装着時)の航続距離を可能にする2WDモデルの「ES350e」と、航続距離が約610kmのAWDモデル「ES500e」を設定

 最初にステアリングを握ったのはES500e。北米仕様の「Luxury」と呼ばれるグレードだ。高めの着座位置は乗り込みのしやすさ、そして適切なドライビングポジションに繋がっている。低く抑えられたベルトライン、メーターフードを廃したフラットなダッシュボード上面などのおかげで、雰囲気も開放的だ。

 その走りは、車体の大きさから想像するよりはるかに軽やか。電気モーターは豊かなトルクをジェントルに発揮させ、とても扱いやすい。しかもアクセルの踏み込みに応じてリニアにパワーが盛り上がる特性をも備える。特に「SPORT」モードでは、わずかに上乗せされたサウンドとともにスムーズかつ豪快な伸びを見せて、車名の「500」という数字は伊達じゃないと実感させるのである。

 パワー感だけじゃない。レスポンスが軽やかで正確なステアリングや、速度が高まるほどに路面に吸い付くような感覚を味わせるシャシーも、そんな印象に繋がっている。ここ数年、レクサスが社内で続けてきた「味磨き」活動は、車体の前端、フロントバルクヘッド、リアアクスル前側、そして車体後半の4か所に力点を置いた高剛性な骨格作りに繋がっている。新型ESのボディは、まさにその現時点での集大成。まさしく「すっきりとしていて奥深い」走りの最新型と言っていい。

 正直、これまでのESは快適性、静粛性は素晴らしくても、敢えて走りを語るクルマではなかった。しかし新型は、そこでも秀でた仕上がりと言える。しかも今回の試乗車は北米仕様ということで、DRS(後輪操舵機構)やAVS(電子制御サスペンション)が未装備だった。これらが備わる日本仕様は、さらに心地良い走りを実現しているに違いない。

ハイブリッドのES350hは自然吸気の直列4気筒2.5リッターエンジンに電気式無段変速機を組み合わせる。システム出力は182kW(247.4PS)を発生し、0-100km/h加速は7.8~8.0秒

 続いて乗ったES350hは、発進時などにBEVではうまく処理されているモーター音が聞こえること、エンジンが始動した際の音質などが気になったが、それはBEVに乗った後だった影響もあるだろうか。とは言え、今の電動化を取り巻く状況を見れば、改めてレクサスも高効率性に味わいまでこだわった専用エンジンを考えてもいいかもしれない。

 もっとも走り自体に文句をつける要素はなく、ドライブは快適だ。さらにAWDでは高速域での安定感の高さを実感。出力40kWとリアモーターは決して強力ではないが、あるいはそれによるリアの重さも効いているのだろう。

もっとも好印象だったES350e

 そして、もっとも好印象だったのがES350eである。実用域の力感はES500eにも遜色なく、むしろちょうど100kg軽い車重が身のこなし、乗り心地をスッキリさせている。後席も、フラットな姿勢のおかげでAVSなしでも苦にならない。もちろんありならば快適性は相当なものになるだろう。

 最上級の「Luxury Exective」トリムをまとっていたこのクルマ、この後席にはリクライニングやマッサージ、オットマンなどが備わるコンフォートモードなるパッケージが装備されており、前後席間距離が先代より77mm伸びていることもあり、LSもかくやという寛げる空間を作り出している。ミニバンよりも良い意味で閉じた空間になるのが、セダンの後席のメリット。これこそを求めていたという人も、きっと少なくないのでは?

 電動化、とりわけBEVの設定という大変化の一方で、あくまでセダンであることにこだわった新型レクサスESは、その電動化や車体の進化、充実のインフォテインメント機能等々によって、まさしくセダンの旨味の進化した形を、走りの面でも快適性の面でも、しっかり堪能できる1台となっている。日本での発表は6月後半あたりとのこと。走り慣れた日本の道で、その真価を早く味わってみたい。

新型ESの日本での正式発表は6月後半あたりとアナウンスされている
島下泰久

1972年神奈川県生まれ。
■2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。国際派モータージャーナリストとして自動車雑誌への寄稿、ファッション誌での連載、webやラジオ、テレビ番組への出演など様々な舞台で活動する。2011年版より徳大寺有恒氏との共著として、そして2016年版からは単独でベストセラー「間違いだらけのクルマ選び」を執筆。また、2019年には新たにYouTubeチャンネル「RIDE NOW -Smart Mobility Review-」を立ち上げた。