試乗記

復活したマツダ「RX-7」 世界が称賛したスポーティなシルエットと気持ち昂る走りを、今一度全身で味わってみた

マツダがフルレストアした「RX-7(FD3S)」に試乗する機会を得た

1999年式のタイムマシンに乗った

 その名は「マツダ RX-7 TYPE RB Sパッケージ」。かつてCar Watchをはじめ、多くの自動車メディアで紹介された個体だから、覚えている読者も多いことだろう。それは長崎県に住む女性オーナー(西本尚子さん)が25年間乗り続けた愛車であり、80歳の誕生日を迎えるにあたって、自動車運転免許の自主返納と合わせて、マツダへと譲渡された個体だ。

 筆者にとってもFD型のRX-7は、思い出深い1台だ。それは免許を取って、初めて買った新車であった。手に入れたのは「1型」のType Rで、色も同じシルバー。まだその名前は“アンフィニ”RX-7だった。

 かたや試乗したセブンは、1999年製の「5型」だ。FD3S型のRX-7は2002年に「6型」でその生産を終えているから、その1つ前の型になる。

試乗したのは1999年式のマツダ RX-7 TYPE RB Sパッケージ(5型)

 調べると「TYPE RB Sパッケージ」は、エンジン出力が265PS/6500rpmである「TYPE RB」がベースとなっていて、その外観や装備に「TYPE R」や「TYPE S」と同じパーツが装着された仕様のようだ。

ボディサイズは4285×1760×1230mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2425mm、車両重量は1240kg、最小回転半径は5.1m

 フロントまわりの造形はまずコンビネーションランプの外枠が“つり目”で、バンパー中央の開口部が大きく開いている。両脇のオイルクーラー用ダクトの形状と合わせて、リトラクタブルライトを上げたとき“笑い顔”になるのがちょっと愛らしい。

リトラクタブルライトを上げると笑い顔に見えるのも愛らしいポイント
前期型は四角く光るテールランプだったが、後期型は片側丸目3灯タイプになった

個人的にセブンは1型のデザインが、一番美しいと思っている

 直線基調の硬派なFC3Sから、一転してオリジナリティのあるスポーツカーへと生まれ変わったFD3S。そのイタリア車のようなボディラインには、小ぶりなコンビネーションランプや、おちょぼ口のバンパー開口部、そして同じく小ぶりなリアウイングがよく似合っていた。

最近のスポーティモデルでは、なかなかこのサイズのウイングは見られないが当時はこれでも小ぶりに感じたものだ
純正ホイールとミシュランの「パイロットスポーツ4」の組み合わせ。サイズは前後225/50ZR16

 しかし、255PS/6500rpmからスタートしたエンジンパワーは2度の変遷を経て、この5型では最大280PS/6500rpmにまで引き上げられたから、冷却用にバンパー開口部が大きくなり、リアスタビリティを高めるべくウイング形状を大きくするのは、イメチェンと同時に必要なことだったのだろう。当時スポーツカーで280PSの自主規制値に到達していなかったのはRX-7くらいだったから、スポーツカーとしてその性能を純粋に高めることは、必然だったはずだ。

最近のクルマは軒並み大きくなっているから、RX-7がだいぶ小さく見える

サッシュ部に埋め込まれたドアノブを引いて、コクピットに滑り込む……

 国産車で初めてこれを採用したスポーツカーは、初代NSXだったと思う。ドアパネルにノブを付けなかったのは、かがまずにドアを開閉するためだろう。ちなみにRX-7の全高は1230mmと、現代のスポーツカーである「GR86」の1310mmと比べても格段に低い。

コクピットはまさに運転だけに集中しろといわんばかりのレイアウト
当時はセミバケットやフルバケットタイプのシートに交換していたオーナーもきっと多いことだろう
リアシートもきれいな状態。車高が低い分、後席に座高のある人が座るのはなかなか厳しかった

 デザイン的にはCd値の向上というよりも、側面のフラッシュサーフェス化が主な理由だろう。くぼみ部分のエア溜まりを考えたら、日産「GT-R(R35)」のようなバータイプの方が抵抗は少なくなるはずだ。

 メーターナセルの中央にレブカウンターがあるのは、サバンナRX-7時代から続いた伝統だ。そしてこの右側にはスピードメーター、左には小さくブースト計、水温計、燃料系の3つが並ぶ。

純正ステアリングはナルディ製
懐かしのカセットデッキ!
オドメーターの走行距離は7万9215km。前オーナーの西本さんがマツダに譲ったのが7万7592kmなので、まだ1600kmほどしか走っていない。ライトオンで薄い緑色に光るのも今となってはなんだかエモい
シフトノブは前オーナー西本さんが使い込んだままのそのもの
アルミ製のブレーキ、クラッチペダルも新鮮に感じる

 ドライバーズオリエンテッドに傾斜したインパネは、左側に空調ダイヤルとオーディオが収まり(カセットデッキだ!)、そのままの流れでセンタートンネルのシフトノブへと自然に手が届くようになっている。80スープラもこの形式を採ったが、セブンの方がコクピットは圧倒的にタイトだ。北米好みなトヨタ「スープラ」を戦闘機に例えるならF-14トムキャットで、セブンには零戦のようなストイックさがある。

 スパルタンな内装と比べて、純正シートは意外にもフカフカである。それでもサポート性が保たれているのはマツダらしいところで、現代的なレベルで見ても大人っぽい座り心地だといえる。

搭載するエンジンは654ccのローターを2つ連ねた1308ccのロータリーターボエンジン。ターボチャージャー(13B-REW)は、低回転で動き出すプライマリーと、中回転から動き出すセカンダリーを備えたシーケンシャルツインターボ仕様。最高出力195kW(265PS)/6500rpm、最大トルク294.2Nm/5000rpm。10モード/10・15モード燃費は8.1km/L

 キーシリンダーをひねると、“クシュクシュッ”と独特な作動音と共に、13Bロータリーターボが目覚める。エキセントリックシャフトが回って火が入り、猫のノド声のようにグルグルと低い音を立てて、アイドリングが始まった。

 トランスミッションに直結するシフトレバーを1速に入れると、“ゴクッ”と心地いい感触が手に伝わってくる。クラッチは反力があるけれど軽めで、あっけないほど簡単にFDは走り出した。低速トルク、こんなにあっただろうか?

思いのほか低速トルクがあったことを再確認できた

 最高出力は10PSほど違うが、最大トルクは294.2Nmで同じ。おそらく16ビット化したECUで、点火時期や燃料噴射マッピングを細かく制御できているのだろう。かつてのプルプルとした頼りないアイドリングや、回転を上げずにクラッチをつないだときの神経質さはまるでなく、ストップ&ゴーを繰り返しても、実に扱いやすい。

 それは「ちょっと大きなロードスター」といった印象で、しなやかな足まわりとピックアップのよいエンジンのおかげで、街中でも快適に運転できた。フロントガラスごしに盛り上がるフェンダーの峰は、運転にリアリティを与えてくれる。クルマを小さく感じさせてくれるだけでなく、車幅感覚がとてもつかみやすかった。

思わず視線を送ってしまうほどきれいなプロポーションは現代にも通じるレベルだ

ワインディングを走らせると、そのテイストはさらに濃厚さを増した。

 3000回転を超えたあたりからグッとブーストが盛り上がる力強さは、いまや失われてしまった加速感だ。

 そのままアクセルを踏み続けると、4500回転あたりで一瞬の谷間ができてから、さらに加速が勢いを増す。セカンダリータービンが加わって、ツインターボになる瞬間だ。そのターボラグは非効率的なはずなのに、今となってはむしろ楽しいくらいだった。

3000回転を超えたあたりからググッと加速感が盛り上がる!

 肝心なロータリーサウンドはというと、トーンは割と低めで、それほど官能的な音色ではない。しかしレシプロエンジンとはまるで違った、一気に高回転まで回るその激しい回転上昇感には、独特な中毒性がある。

 その速さは、手の内にある印象だ。現代でも十分に通用する瞬発力があるけれど、驚くほどではない。

純正エアクリーナー&純正マフラーなのでそれほど排気サウンドは大きくないが、それでもロータリー独特の音は気持ちが上がる

 その理由はRBグレードのファイナルギアが4.1と、RSグレードに対して若干ロングギアだせいもあるだろうか。また2型以降はリアまわりの剛性アップやスタビライザー径を見直したことで、接地性も上がっているはずだ。

 さらに試乗車には純正サイズだが、ミシュラン パイロットスポーツ4を履かせていたことも大きい。セブンにはトラクションコントロールさえ付いていないけれど、ターンアウトではきっちりアクセルを踏み込むことができた。

試乗車は現代のタイヤを履いているため、若干だがグリップが勝っている印象だ

 対してフロントの操舵応答性は、ちょっとピーキーだ。もう少しダンパーがロールスピードを抑えてくれた方が、ターンインで落ち着いて切り込んでいける。

 つまりはタイヤのグリップ力が当時よりもかなり高めというであり、そのグリップレベルを落とせばリアの安定感も多少失われるはずだから、やはりRX-7の本性はストイックな前後バランスの上に成立したスポーツカーなのだと理解した。

もし現代にF“E”3Sが登場していたら、どんなスポーツカーになっただろう

ロードスターをひとまわり大きくしたような印象で、FD3Sも人馬一体を追求した乗り味に仕上がっている

 衝突安全基準への対応や、先進安全装備の装着によって、この車重を維持することは不可能だろう。それでもやはりマツダは、軽さと前後重量配分のよさを1番の武器とした、ピュアスポーツカーに仕立てるはずだ。

 最大のネックは、ロータリーエンジンの環境性能の低さだ。しかしロータリーエンジンだからこそ「RX-7」なのだと考えると、その復活は厳しいといわざるを得ない。

こんなに気持ちよく、楽しく走れるRX-7の後継モデルの登場を待ち望んでいる読者も多いだろう

 これ対してマツダは「MX-30」や「アイコニックSP」で、発電機としてのロータリーエンジンの未来を模索している。もし次期型ロードスターが大型化や重量増を余儀なくされるのであれば、そのプラットフォームを流用した小型クーペに、これを積むのはありだと思う。

ジャパンモビリティショー2023で世界初公開された「アイコニックSP」は、カーボンニュートラル燃料で動く2ローター・ロータリーEVシステムを搭載しているというコンセプトカーだ

 当時はスカイラインGT-Rやスープラといったライバルに立ち向かう必要があったけれど、これからは手に負えないスピードを追いかける時代でもない。避けられない電動化を1つのフックとして、自然吸気のコンパクトなロータリーエンジンを復活させることができれば……。このFD3Sがもたらす、走りの気持ちよさを再現できれば……。

 そんな思いを馳せてしまうほど、現代の路上を走らせたRX-7は、気持ちのよいスポーツカーだった。

ピュアスポーツを心底楽しめるRX-7……
筆者も復活を待ち望む1人であることはいうまでもない
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:安田 剛