試乗記

スバルディーラーで気楽に試乗できるようになる(かもしれない)アプリを体験!

絶賛開発中の「店頭試乗用アプリ Supported by SUBAROAD」(仮)を体験

ディーラーの試乗でクルマの特徴がわかるアプリ

 スバル「レヴォーグ レイバック」のプロトタイプ試乗会で長野に訪れたとき、試乗会場である「八方尾根スキー場」からの往路を使って、非常に実験的な試乗メニューが用意された。

 その名も「店頭試乗用アプリ Supported by SUBAROAD」(仮)。ちょっとド直球なネーミングだけれど、プロトタイプだから仕方ない。

 そんなスバルらしい生真面目さからもわかる通り、このアプリはスバルディーラーに訪れるユーザーに向けたサービスだ。ベースとなるのは、位置情報と連動してドライブルートにある景色や地域の特色を、音声や音楽を使って楽しく届けてくれるドライブアプリ「SUBAROAD」。ここで培われた音声AR技術を活用して、スバル車の価値や特徴をユーザーに伝えるアプリケーションをいま、スバルのビジネスイノベーション部が鋭意開発中なのである。

 その目的は「試乗」という体験を、「もっと気軽&愉しいクルマ選びの接点」としてアップデートしたかったからだという。

 現在クルマの購買行動はオンライン中心になっており、ディーラーへの来店時には、すでに意思決定されていることも珍しくない。それでも開発チームは、クルマは「乗ってこそわかる」価値があると考え、手続きの必要性や「その場での言い出しにくさ」といった、必ずしも気軽とは言い切れない試乗へのハードルを、もっと下げることができないか? と考えた。

 もちろん予約や試乗車の検索などでは、オンラインならではの利便性を活用する。そして全ての車両がそろうフラグシップ店だけでなく、全国のディーラーで柔軟な試乗体験ができるシステムを、作っていくつもりだという。

 さらに開発チームは、試乗したときの「時間と質」にもこだわった。

 検討しているのは「同乗に依存しない試乗体験」。つまりは助手席にディーラーの営業担当者が乗ることなく、自分のペースで試乗をすることで、クルマの価値に気付いてもらえないかと考えた。

 例えばそれは、ユーザーが点検で入庫をしたとき。ここで空いた待ち時間を使って、気になっていたスバル車に乗れたらどうだろう。

 そこで活用されたのが、SUBAROADで培われた音声AIガイドだったというわけだ。

 ということで今回は、「来店入庫の空いている時間を使った試乗」にシチュエーションが設定された。試乗車は、「e-BOXER(マイルドハイブリッド)」の「クロストレック Limited Style Edition」だ。

 ちなみにこのマイルドハイブリッドのe-BOXERだが、残念ながら現行モデルをもって、生産終了がアナウンスされてしまった。スバルいわく電動化の進展および環境規制の強化を踏まえ、商品ポートフォリオを見直した結果、マイルドハイブリッドの展開を終了することにしたという。ストロングハイブリッドが登場したことで、燃費仕様のモデルとしては、少し中途半端な存在になってしまったということだろう。

 現状e-BOXERを搭載するモデルはインプレッサ/クロストレック(2WD/4WD)のみであり、これがインプレッサは2.0リッターガソリンモデル、クロストレックは「S:HEV」のみのラインナップとなる。んー、クロストレックにも、買いやすいガソリンモデルがあればいいのになぁ。

 ということでe-BOXERは在庫車の販売のみになるとのことだから、もしあなたが購入を考えていたなら、さっそくディーラーに在庫確認をしてみてほしい。

「e-BOXER(マイルドハイブリッド)」の「クロストレック Limited Style Edition」で試乗メニューを体験。今回乗ったマイルドハイブリッドモデルは、現行モデルで終売となる

今後の試乗が変わるかも?

 試乗は、八方尾根スキー場のうさぎ平テラスから、整備用の取り付け道路を下りながらスタート。

 するとほどなくして、車内のスピーカーからAIボイスが語りかけてきた。

――ん? いつものスバロー君じゃないぞ?――

 スピーカーのボリュームが絞られていたせいでイントロダクションを聞き逃してしまったけれど、その声は以前よりも優しくて甘め。あのちょっと緊張気味で、背筋を伸ばした感じのスバロー君のガイド、好きだったのにな。

 なんて寂しがっていると、「これスバロー君ですよ。ではあるんですけど、進化しちゃったんですよ!」と、同行していた編集担当氏がなぐさめてくれた。

 そんな新生スバロー君は、プレゼンテーションで開発陣が述べていたコメントを、とても落ち着いた口調でもう一度われわれに話してくれた。

「日々、お客さまのクルマ選びは進化しています。情報収集やオンラインで調べたり、動画を見たりして完結することも増え、来店前に絞り込まれていることも珍しくはありません」。

「一方で、本当に納得するクルマ選びには、やはり最終的に自分の肌に合った感覚で試した、実体験がとても重要なポイントです。視界のよさや取りまわしのしやすさ、出力の質感や乗り心地、カタログやスマホで見た情報だけでは伝えきれない、実際に乗ってみた価値が、数多く存在します……」。

 といった具合にこの試乗のコンセプトを伝え、試乗車であるクロストレックの特徴を説明してくれた。まだ現段階では車両説明の内容も、サラッと軽め。今後は車種ごとに詳しさを増していくのか、ディーラーごとの試乗コースに合わせて、ハンドリングの軽快さやパワーユニットの力強さを表現していくのかは、まだわからない。わからないけれど、その発想は確かに新しかった。

 デジタル技術の進化は、疑似体験の進化が主流だ。その一方で、こうしたリアルな価値を伝えるためのツールとして使うのも、素晴らしいことだと思う。

SUBAROADではルート上の見どころや土地の特徴などを紹介していたが、今回の試乗用SUBAROAD(仮)では、試乗している車両の説明や、ルート上でのクルマの体感ポイントなどを紹介。この車両説明や体感ポイントはディーラーごとに設定ができる。そのため、案内役のスバロー君(仮)には、ある程度トレーニングしたAIを用いることで、車両特徴の説明やルート案内などを読み上げる際に、ディーラーで細かな調整をしなくてすむようにしているとのこと

 ユーザーを1人きりで乗せることに対するディーラー側の不安や、1台にかかる試乗時間の長さなど、クリアしなければならない問題はたくさんあるだろう。それでも開発陣には果敢なチャレンジで課題を乗り越えて、この新しい試乗体験のワクワクを、ユーザーに届けてほしいと思えた。

 この新しい試乗体験は、一部店舗でのトライアルを実施しながら、その結果を踏まえて修正が図られる。そして2026年度中にサービスの提供を開始し、全国展開を目指すとのことだ。

山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:高橋 学