試乗記

フォルクスワーゲンのバッテリEV「ID.4」、実は大きく仕様変更していた2025モデルに乗ってみた

2026年1月に仕様変更された「ID.4」(2025モデル)に試乗

自動車メディア6媒体がリレー試乗

 フォルクスワーゲンの中核を担う電気自動車の「ID.4」が、実は今年日本導入となった2025モデルでビッグマイナーチェンジを行なっていた。エクステリアが変わらずの状態だったため正直に言えば見逃していたのだが、今回改めてその内容を振り返ると中身はまるで別物といえる進化がある。

 大幅に変わったのは主にロングレンジの「ID.4 Pro」というモデルだ。出力は+82PS、トルクは+235Nmとなる286PS/545Nmを発生。それだけで終わらず充電能力を拡大。直流入力電源が403V/250Aだったものが403V/350A(141.05kW)へと向上したことで、150kW級の急速充電器を使った場合、その能力を概ね引き出すことが可能となった。すなわち、力強く、充電時間も短く走れるようになったというわけだ。

今回試乗したのは「ID.4 Pro」の2025モデル(661万8000円)。実は大きな仕様変更を受けており、最高出力は先代の150kW(204PS)から210kW/286PSへ、最大トルクは310Nmから545Nmに向上。さらに直流入力電源が403V/250Aから403V/350Aに向上し、150kW級の充電器で充電した際、これまでよりも短い時間での充電が可能になった
ボディサイズは4585×1850×1640mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2770mm、車両重量は2140kg
Proは20インチアルミホイールにハンコック「Ventus S1 evo3 EV」(フロント235/50R20、リア255/45R20)を組み合わせる。なお、2025モデルのProの最高出力は210kW(286PS)/3675-6500rpm、最大トルクは545Nm(55.6kgfm)/0-3675rpmと従来モデルから出力アップを果たし、一方で最大航続距離は31km減の587km(WLTCモード)とした
インテリアでは大きな変更はないが、従来ではProにのみ標準装着されていたフォルクスワーゲン純正インフォテインメントシステム「Ready 2 Discover MAX」が全グレードに標準装備となり、モニターサイズが10インチから12インチに進化。また、ドライブモードセレクターの形状と搭載位置が変更を受けている

 今回はそんな新生「ID.4 Pro」を使った長距離リレー試乗会なるものが開催された。東京 品川のフォルクスワーゲンジャパンを出発した1台の「ID.4 Pro」が高崎(群馬県)、上越(新潟県)、富山新庄(富山県)、岐阜南(岐阜県)、浜松西(静岡県)、静岡駿東(静岡県)といったディーラーを巡り、再び東京に戻るというものだ。その工程を、自動車メディア6媒体がリレーして試乗する。われわれCar Watchが担当したのは岐阜南から浜松西までの区間だ。高速道路が主体となるこの区間を新生「ID.4 Pro」はどう走るのか?

「Volkswagen岐阜南」でCARトップから取材に来ていたモータージャーナリストの山田弘樹氏(左)からタスキを受け試乗スタート!

 走り出してまず感じたのは、アクセルひと踏みでかなり軽快に発進するようになったということだ。車両重量2140kgで以前はその重さを感じるもっさりしたところが存在していたのだが、新型にはそのような感覚がまるでない。俊敏に動き出し、アッという間に巡航スピードまで引き上げてくれるような感覚がある。以前のゆったりとした乗り味もそれはそれでわるくはなかったし、電費を稼ごうと考えるならそれもアリだという感覚もなくはない。実際のところ一充電走行距離(WLTCモード)は618kmから587kmへと減少してしまったのだから、新型がいかに動力性能に振ったのかが、この数値だけでもご理解いただけるだろう。分かりやすく言えば「旧型はGTで、新型はGTIか!?」 ……くらいの乗り味の違いが存在する。

岐阜から浜松まで高速道路を主体に移動。途中150kWの急速充電器でチャージングを試したが、スピーディに充電が進むことを体験できた

 おかげで高速道路における合流や追い越し加速時にも爽快すぎる加速を展開してくれるからストレスがない。瞬発力だけでなく、高速域における伸び感までも兼ね備えていた。この力強さをリアタイヤを使ってしっかりトラクションが与えられるところにこのクルマの価値がある。瞬時にトルクを与えても音を上げることのないところがリア駆動の良さ。さらにすっきりとしたハンドリングや、最小回転半径5.4mを実現してしまうステアリングの切れ角を実現するところも絶妙。ちなみに浜松駅周辺の狭いパーキングに入っても取り回しはかなりしやすかった。

ストレスがない爽快な加速が2025モデルの魅力

 このように盛大に動力性能を引き出すとバッテリの消費が気になるところだが、コーステイングの絶妙さと、必要とあらばBレンジを使いリアモーターがしっかりとエネルギー回生できるからそれほど不満はない。今回は高速巡航が8割ほどと多かったが、トータルで6.6km/kWhを記録していたほどだ。その上で150kWの急速充電器でクイックチャージも可能なのだから、日常生活で不満が出るようなことはないのではないだろうか。

 新生「ID.4 Pro」は完熟の域に達したと言っていいだろう。

性能が進化し、日常での利便性も高まったID.4

カーボンニュートラルを実現した「Volkswagen 浜松西」も取材

Volkswagen 浜松西(静岡県浜松市中央区入野町933-1)

 なお、今回の取材会で立ち寄った正規ディーラー「Volkswagen 浜松西」は2022年12月にオープンしたばかりの新しい店舗。屋上全面に太陽光パネルを設置し、ショールームで使用する電力をまかなうというカーボンニュートラルを実現したショールームであることが特徴となっている。開設時期がコロナ禍と重なり当初は販売に苦戦したものの、地域に根差した認知活動を継続し、現在は店舗認知が順調に進んできているという。

 今回の取材では、店長代理の安藤雅徳氏にID.4およびID.BuzzというフォルクスワーゲンのEVについてや、「Volkswagen 浜松西」における充電・環境施策などについて話をうかがうことができたので、以下に紹介する。

2022年12月にオープンしたばかりの正規ディーラー「Volkswagen 浜松西」。カーボンニュートラルを実現したショールームとなり、代車にもID.4などフォルクスワーゲンのEVを用意するという。また取材当日はID.Buzzも展示されており、まるでモーターショー会場のようなLEDによる華やかな演出がされていたのも印象的
Volkswagen 浜松西(サーラカーズジャパン株式会社) 店長代理の安藤雅徳氏

──ID.4やID.BuzzといったフォルクスワーゲンEVの販売状況はいかがでしょう?

安藤雅徳氏:環境意識が高い方々に選ばれる傾向にあります。自宅にソーラーパネルや充電器をお持ちの方が2台目、3台目として購入されるというパターンが多いです。駐車場にも余裕がある地域ということもありますので。また、ID.Buzzを指名買いする方々も一定数いらっしゃいます。現状はT-Crossが牽引し、ティグアンやパサートなどが他メーカーユーザーからの新規顧客を増加させてくれるような存在となっています。

──販売されるとき、フォルクスワーゲンのEVのどのようなところをおすすめポイントとして挙げていますか?

安藤雅徳氏:まず最初に安全性のお話はさせていただいていまして、フォルクスワーゲンはどこまでも安全を第一に考えていることをお伝えしています。あとEVは重量があるのでパワーを気にされる方もいらっしゃいますが、試乗されると出だしの力強さに感動していただき、「これなら遠出も行けるね」とおっしゃっていただけます。

──こちらのディーラーはカーボンニュートラルへの取り組みに積極的なようですね。

安藤雅徳氏:Volkswagen 浜松西を運営するサーラカーズジャパンは、都市ガスやLPガスなどのエネルギー供給事業をはじめとした生活関連事業47社で構成されるサーラグループに属しています。

 そのうちの1つであるサーラエナジーでは、J-クレジットのプロジェクト(省エネ装置の導入)等を購入していただくことで、カーボンオフセット車両をご提供することを行なっています。これは主にICE車両を購入する際、CO2排出量を算定。削減しきれないC02を温室効果ガス削減・吸収の取り組みに資金を提供する(クレジットを購入する)ことで埋め合わせをできるような体制をご提供しています。

 また、店舗屋根には210枚の太陽光パネルを設置し、電力の約38%を賄っています。不足分については割高であってもカーボンフリー電力を使用し、カーボンフリー化を実行しています。

Car Watch組のゴールとなったVolkswagen 浜松西では、最終ランナーのMotorMagazineにタスキを渡し任務完了
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:宮門秀行