試乗記

ボルボのフラグシップBEV新型「EX90」初試乗、街中からワインディングまでオールラウンダーな乗り味が光る

ボルボのフラグシップBEV新型「EX90」に試乗する機会を得た

 2027年で創業100周年を迎えるボルボ。初めから「安全が第一」というブランド理念は変わらず。それと同時に持続可能性を考慮し、工場は人からいわれる前から水力発電によって電力を賄おうとしてきたという姿勢も示している。

 そんなボルボだからこそ、いち早く2030年を目標とした電動化の方針を打ち出してきた。だが、市場環境にあわせてその目標は2040年までにと柔軟な姿勢に改められてきたのが現状だ。

 けれどもBEV(バッテリ電気自動車)への手綱を緩めてはいない。それを証明するかのように登場したのが、BEVモデルの「EX90」である。ようやく真打ちといえるフラグシップの登場だ。

試乗車は最上位グレードの「Ultra Twin Motor Performance」で、すっきりしたライン。目立たないセンサー、象徴的なヘッドライト、現代的なエッジを備えた北欧のデザインを採用。グロッシーブラックのサイドウインドフレームで高級感を付与している。価格は1399万円
ボディサイズは5035×1965×1740mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2985mm、車両重量は3095kg、最小回転半径は5.9m
試乗車の装着タイヤはピレリの「スコーピオン エレクト」でサイズはフロント265/40R22、リア295/35R22。強固で軽量な22インチ鍛造オープン5スポークアルミホイール(ダイヤモンドカット/グロッシーブラック)はUltra専用のオプション

 日本市場では2022年に「C40」というクーペ型SUVでスタートしたBEV化は、その後BEVの「XC40」、そして「EX30」と次々に発展していった。まだBEVのトレンドが来ていない状況で、まずはお求めやすいクルマからということだったのだろう。

 今回のフラグシップであるEX90の登場に続き、実は来年にはミディアムクラスの「EX60」も導入される予定との話もある。それが達成できた時、ようやくボルボのSUVにおけるBEVのフルラインアップが完成するのだろう。

グレードの高いモデルに搭載される「ハイディフィニッション・ピクセルヘッドライト」は、光の形状を完全な精度で調整する100万を超えるピクセルを搭載。他の道路利用者が近づくと、周囲の道路にはハイビームを照射したまま、他の道路利用者に投影されているライトが自動的に暗くなる
ピラー部分も点灯する仕様
テールランプは「C」形状

 そのトップを牽引することになるEX90は、これまでに存在していたXC90のサイズ感にかなり近い。ボディサイズは5035×1965×1740mm(全長×全幅×全高)で、XC90に比べると全長は80mm、全幅は5mm大きく、全高は35mm低いが、ホイールベース2985mm、最低地上高は210mmと変わらず。伸びやかでありながら低く構えたスタイルはなかなかの存在感だ。

 こうなると室内のサイズが窮屈かと思いきや、ヘッドクリアランスは拡大しているし、ニークリアランスも同等になっている。ラゲッジは47Lも拡大するなど、使い勝手はより良く進化している。

水平基調ですっきりと視界の室内には、14.5インチセンターディスプレイを搭載
7人の乗員が眺めを楽しみながら快適に過ごせるエルゴノミクス設計のシートを採用。フロントシートは長時間のドライブで背中をマッサージしてくれるリラクゼーション機能も備える
ダッシュボードとドアパネルは天然木材を使用したLight Ash装飾を採用。暗くなると北欧の室内をイメージした温みのあるライトパターンで輝く
2列目の各シートは独立してスライドやリクライニングが可能
3列目シートは身長170 cm以下の乗員2名が足下にゆとりを持って快適に乗車できる

 使用するプラットフォームはSPAのジェネレーション2へと生まれ変わり、高剛性化されると共に足まわりも熟成されたことで、乗り心地も良好になったとのこと。また、このタイミングから400VのEVアーキテクチャーだったものが800Vへと変更し、最大350kWの超急速DC充電が可能になっている。

 東名高速道路の海老名パーキングで運用が開始される350kW充電器があれば、10%→80%が22分で充電が可能となる。もちろん400V充電にしか対応できていない充電ステーションでもDC/DCブースターを備えることで充電を可能とし、その場合の最大充電出力は120kWで、10%→80%の充電時間は39分となる。

すべての後席のバックレストを起こした状態でも324Lの荷室容量を確保
2列目シートおよび3列目シートも倒せば広大なラゲッジスペースが現れる
34Lのフロントトランクも確保
トランクの床下にも72Lの収容スペースを備える

 いずれにせよ、106kWのバッテリを搭載し650kmの航続可能距離を実現しているのだから、そこまで充電残量が気になるようなことはないだろう。ただしEX90はどのグレードを選択したとしてもツインモーターを採用。

 今回乗った「Ultra Twin Motor Performance」は、フロントの最高出力220kW(299PS)/最大トルク390Nm、リアは最高出力280kW(381PS)/最大トルク480Nmを発生。0-100km加速は4.2秒を記録する。このパフォーマンスを存分に味わってしまえば、やはり急速充電時間の早さは魅力的かもしれない。

パノラマ・ガラス・ルーフは、太陽光の強さに応じて遮光率が変化するエレクトロクロミックガラスを採用。もちろんセンターディスプレイから手動で、透明な状態から不透明な状態へと操作できる

その走りは意外にもオールラウンダー

 そんなEX90を走らせれば、走り出しからとにかく乗り味がいい。高剛性化されたというプラットフォームとエアサスを採用した足まわりがとにかく良い仕事をし、舗装されたばかりの道が続いているかのごとく突き進んでいくのだ。

高剛性プラットフォームとエアサスがとにかく良い

 また、フロント265/40R22、リア295/35R22というとんでもなく大きいタイヤ&ホイールを採用しているにも関わらず、ワンダリングが気になるようなこともなく、しっかりと安定して走っていく感覚もある。

 そして低重心であることもあってか、SUVの高さが気にならず、ワインディングであっても手足のように動かせる感覚がある。そこに前述した大パワーが加わったとしても、持て余すようなことはない。まさに地に足ついた仕上がりで、路面へと無駄なく駆動が伝わっていくから心地いい。

先進レーダーとドライバーモニタリング機能を標準装備とし安全性も向上している

 コンフォート性能が優れる乗り心地からワインディングにおける走りまで、オールラウンドで満足できる仕上がりだった。それは2列目、そして3列目に乗車したとしても変わらない。

 その上で先進のレーダーおよびドライバーモニタリング機能を標準装備とした「Safe Space Technology」を搭載し、守られている感が強くなったところも嬉しいポイント。前走車が近づけばクルマが先に減速を開始し、衝突の危険性をいち早く軽減していた。ちょっとおせっかいかな? と思いきや、それが慣れると次第に心地よくなるあたりはさすが。

路面へと無駄なく駆動力が伝わっていく心地いい走りだった

 また、高速道路でACCを使用時にレーンキープアシストを働かせることが可能だが、ステアリングを触れていればほぼステアリングはお任せで走ってくれるのもありがたい。

 ここまで完成度が高ければハンズオフしても良いのかもと思えたが、ボルボは「ドライバーがステアリングから手を離さないことが安全につながる」という考えを貫いており、それは技術が進んだとしても変えるつもりはなさそうだとのことだった。

 こうした変わることのない安全思想と上質な走りを存分に味わえるEX90は、BEVのフラグシップとして納得の仕上がりが存在していた。

EX90はボルボのフラグシップBEVとして納得のいく仕上がりだった
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:中野英幸