インプレッション

フォルクスワーゲン「ポロ(マイナーチェンジ)」

「クラスをリードする装備群」が与えられた新型ポロ

 隙のない各部の作り込みと高い走りの質感で、デビュー以来常に「このカテゴリーのベンチマーク」と認められてきた現行のフォルクスワーゲン「ポロ」。そんなポロが8月にマイナーチェンジを受けて発売された。

 現行型の登場は2009年春。すなわち、今回のリファインはそのモデルライフ半ばでの、最大規模のイベントとも紹介できる。そうはいっても、ご覧のように見た目部分での従来型からのイメージ変更は、さほど大規模なものではない。

 フロントグリルや前後バンパー、ヘッドライトやリアのコンビネーションランプ……と、言葉で表せばリファインの手が加えられた部位は広範囲。ゴルフと同タイプのステアリングホイールやメータークラスターを採用し、ドアトリムにもクローム装飾を採用と、インテリアでも同様に数多くの項目の変更が報告されている。

 一方で、そんな新型ポロ全体が醸し出す雰囲気というのは、総じて「大きくは変わっていない」と表現できるもの。そしてそれは同時に、「相変わらずいまひとつ華やかさに欠ける」ということを示しているも同然だろう。

8月にマイナーチェンジを受けた新型ポロは、「クラスをリードする安全性」「ひとクラス上の快適性」「優れた経済性と走行性能」「普遍的なデザインと絶妙のサイズ」の4点をもって「ハイスタンダート・コンパクト」を謳う。ボディーサイズは3995×1685×1460mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2470mm。グレードはコンフォートライン(223万9000円)、コンフォートライン アップグレードパッケージ(249万5000円)を設定する。撮影車のボディーカラーは新色のサンセットレッドメタリック
ヘッドランプはハロゲンのみの設定
フォグランプやコーナーリングランプはアップグレードパッケージに標準装備される
テールランプの光る部分の形状が従来型から変化した
インテリアではステアリングやメーターパネルなどを刷新。トランスミッションはデュアルクラッチの7速DSGを採用する

 見方を変えれば、それはこれまでのモデルのデザイン全般がすでに高い完成度を誇り、モデルライフの途中で敢えてイメージを変更する必要がなかったことを証明するといってもよいはず。と同時に、デビューから5年という時を経る間に、採用が可能となったさまざまな先進のアイテムを、兄貴分であるゴルフにも迫る勢いで積極的に取り入れることになったのは、今回の新型での大きな見どころだ。

 例えばエアバッグ作動後にはブレーキを作動させ、2次衝突のリスクを低減させる「マルチコリジョン・ブレーキシステム」や、ミリ波レーダーによって前方車両を検知し、衝突の回避や衝撃の低減を図る「フロント・アシストプラス」などは、全グレードで標準採用化。また、全車速対応の前車追従機能付きクルーズコントロールやリアビュー・モニターも上級グレードで標準装備、ベースグレードでオプション設定とした。

 加えて、モジュール設計化された最新のインフォテイメント・システムが標準装備されたのも見逃せないニュース。いずれにせよ、これらさまざまなアイテムを「クラスをリードする装備群」と紹介しても、それはまったく過言ではないはずだ。

純正インフォテイメントシステム「Composition Media」はコンフォートライン、コンフォートライン アップグレードパッケージともに標準装備。オーディオに加え、エコドライブのアシスト機能や車両情報などの表示や設定操作が可能になっている

ハイライトはエンジンにあり

新型ポロが搭載するのは直列4気筒DOHC 1.2リッター直噴ターボエンジン。最高出力66kW(90PS)/4400‐5400rpm、最大トルク160Nm(16.3kgm)/1400‐3500rpmを発生し、JC08モード燃費は22.2km/Lとなっている

 そんな最新のポロにまつわるニュースは、走りのメカニズム面にも及んでいる。実は、このモデルに搭載される直列4気筒DOHC 1.2リッター直噴ターボエンジンは、従来型とは異なる新ユニットだからだ。

 この期に及んで搭載エンジンの“フルチェンジ”が行われたのは、実はVWグループが急ぎ推進するモジュール構造化プロジェクト”MQB”に対応するため。ポロの場合、さしあたりボディーやシャシーは従来からのアイテムを継続使用する一方で、パワーユニットだけはこのモジュール対応アイテムを先取りしたというわけだ。

 従来とは搭載方向を前後逆に、排気側を後方として新搭載されたのは、これまでの2バルブSOHCに対して4バルブDOHCのエンジン。ただし、最高出力値は105PSから90PSへ、最大トルクは175Nmから160Nmへと、こと数字上では”出力ダウン”となっている。

 もっとも、パワーもトルクもそのピーク値を発生するポイントがこれまでよりも低回転側へと寄せられたこともあって、実際の印象はそうしたスペックとは必ずしも一致しない。というよりも、力感でもフィーリング面でも予め教えられない限りは、「エンジンが変わった」と気付く人は皆無であろうというのが現実。

 むしろ、そもそもクラス随一と紹介できた静粛性には一層の磨きがかかり、これまでも特に違和感のなかった微低速シーンでのDCTのマナーはさらに向上し……と、全般に「より熟成された」という印象が強いのが最新ポロでの運動性能なのだ。

 同様に、やはりこれまでも秀逸と実感のできたフットワークの仕上がりも、基本的にはそうした従来のよさをそのまま受け継いだという印象が強い。ピッチモーションが徹底して封じ込まれたその乗り味は、少々硬めの傾向ではあるものの不快感は極力排除されたもの。

 今回フル電動化されたパワーステアリングが生み出すフィーリングは、今さらいうまでもなく兄貴分であるゴルフと同様。すなわち、そこに一切の違和感は伴わないものだ。そして、そんなポロの走りが望外なまでの“意のまま感”を味わわせてくれるのは、自然で正確なハンドリングなど実際の走りの高いポテンシャルを実現していることに加えて、日本の狭い道路環境にもマッチした“手の内サイズ”のボディーや、ピラーやドアミラーによる死角が気にならない視界の広がり感など、必ずもメカニズムの優劣にはよらないコンパクトカーとして秀逸なパッケージング・デザインに宿っていることにも改めて気が付かされた。

 だからこそ、アイドリング・ストップ時にステアリングのパワーアシストが失われてしまうという点や、完全に車速がゼロにまで至らないと、その後の再発進が2速ギアから行われてしまうなど、「日本での使い勝手を考えると、これはどうかな?」という今回も残された小さな疑問点についても、改善を求めたくなってしまうというものだ。

 加えれば、テスト車に装着されていた全車速対応のクルーズコントロールは、「ぜひとも頻繁に渋滞に遭遇する都市部の人にこそ使って欲しい」といいたくなるアイテムだった。

 パーキング・ブレーキが電動化されていないため、停車状態を保持できないのはゴルフのそれとは異なるポイント。が、長時間の“ほふく前進”という状況の中で前車への不注意による追突が避けられるだけでなく、渋滞の中での心理的ストレスを大幅に減らしてくれる、日常シーンでの実用面でも大きなメリットを享受できるものであるからだ。

河村康彦

自動車専門誌編集部員を“中退”後、1985年からフリーランス活動をスタート。面白そうな自動車ネタを追っ掛けて東奔西走の日々は、ブログにて(気が向いたときに)随時公開中。現在の愛車は、2013年8月末納車の981型ケイマンSに、2002年式にしてようやく1万kmを突破したばかりの“オリジナル型”スマート、2001年式にしてこちらは2013年に10万kmを突破したルポGTI。「きっと“ピエヒの夢”に違いないこんな採算度外視? の拘りのスモールカーは、もう永遠に生まれ得ないだろう……」と手放せなくなった“ルポ蔵”ことルポGTIは、ドイツ・フランクフルト空港近くの地下パーキングに置き去り中。

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Photo:中野英幸