インプレッション

BMW「7シリーズ(第6世代)」

今度もやはり革新的な装備が満載

 セグメントでいうと「F」に属するラグジュアリーサルーンの世界では、ざっくりメルセデス・ベンツ Sクラス vs その他のモデル、という構図があるように思える。「その他のモデル」というのは、プレミアム・ブランドメーカー各社のフラグシップサルーンのことで、具体的にはBMW 7シリーズ、アウディ A8、ジャガー XJ、レクサス LSなど。あるいはポルシェ パナメーラやベントレー フライングスパーも含めてもいいだろう。

 各モデルとも商品力の向上に勤しみ、近年ではますます激戦区と化しているように感じられる。その中で、もっともSクラスにとって強敵で、互いに切磋琢磨してきた経緯があるのが7シリーズだ。その7シリーズがモデルチェンジとあっては、これまで4台のSクラスを乗り継いできた筆者としても気にならないわけがない。

 さっそく実車と対面だ。スタイリングについては、かなりチャレンジングなモデルチェンジを果たしたSクラスからすると、7シリーズは保守的に見えるのは否めない。ところが中身は驚くほど革新的だ。その革新的な装備の数々について、限られた試乗時間の中ではあるがざっと試してきたので紹介しよう。

今回試乗したのは、新型7シリーズにおけるベーシックグレードとなる「740i」。ボディサイズは5110×1900×1480mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3070mm。カーボン・ファイバー強化樹脂、アルミニウム、超高張力スチールを組み合わせる複合構造ボディ「カーボン・コア」を採用し、ボディ剛性を高めるとともに、先代モデルから最大130kg軽量化することに成功したのが大きなトピックの1つ。価格は1217万円
アダプティブLEDヘッドライトを標準装備。そのほか車速が約70km/hを超えるとLEDの約2倍に相当する最大600mまでの照射範囲を照らすことが可能な「BMW レーザー・ライト」をオプション設定(750iと750Liは標準装備)
空力性能と燃料消費量の最適化を図るべく、新型7シリーズでは通常時は空気抵抗を減少させるため閉じられるが、エンジンやブレーキを冷却する必要がある場合に自動的に開いて冷却効果を高める「アクティブ・エア・ストリーム」をキドニーグリルに備える
20インチVスポーク・スタイリング628アロイホイール(タイヤサイズはフロント:245/40 R20、リア:275/35 R20)

 もっとも分かりやすかったのが量産車世界初の「ジェスチャー・コントロール」だ。これは3Dカメラが手の動きを認識して、6通りの使用頻度の高い機能を簡単に操作することができるというもの。試してみるととても面白い! 便利かどうかはさておき、これは女子ウケしそうだ(笑)。

 後席乗員のために用意される「BMWタッチ・コマンド」は、後席センターアームレストに取り外し可能な7インチタブレットで快適装備やエンターテインメントを操作することができる。こちらはロング・ホイールベースモデルに標準装備だ。

「BMWディスプレイ・キー」はリモコンキーに機能を与えたもので、車両のコンディションについてのさまざまな情報が表示されたり、パーキング・ベンチレーションなど選択した機能をディスプレイ内蔵のタッチパネルから操作したりできる。ゆくゆくはこうしてキーのスマホ化が進んでいくのだろうが、7シリーズはいち早くそれを実現したわけだ。さらにはこのキーを操作することで、車外から狭いスペースにも駐車できる量産車世界初の「リモート・コントロール・パーキング」が可能となるというから驚く。そちらは2016年中旬に導入予定とのことで、楽しみにしたい。

 また、ステアリングを自動操舵して車線中央の走行を維持する「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト」も、すでに同様の機構は実用化されているが、7シリーズにも装備された。これについては後ほど。また、日中のみの試乗だったので試すことができなかったが、最長600mもの距離を照射するという「BMWレーザー・ライト」も、聞いたところでは相当に明るいらしい。今度ぜひ試してみたい。

740iのインテリア。撮影車はマルチファンクションレザーステアリング、クライメート・コンフォート・ガラス、BMWヘッドアップ・ディスプレイ、電動ガラス・サンルーフなどを含む「プラス・パッケージ」(57万6000円)、リヤ・アクティブ・ベンチレーション・シート、リヤ・コンフォート・シート、ヒート・コンフォート・パッケージ、リヤ・シート・エンターテインメント・エクスペリエンスを含む「リヤ・コンフォート・パッケージ」(76万6000円)に加え、最大出力1400Wのデジタルアンプ(3個)を含めた計16個のスピーカーなどからなる「Bowers & Wilkinsダイヤモンド・サラウンド・サウンド・システム」(59万8000円)などを装着
ラグジュアリー感あふれる前後シート。標準装備される「エクスクルーシブ・ナッパ・レザー」には、上質感を感じられるステッチ加工が施される。撮影車はリヤ・コンフォート・シートの装着により後席はバックレストの角度の調整などが可能になっている
トランスミッションは8速AT。シフトの右側に用意されるスイッチによって標準設定の「コンフォート」、効率を重視した「ECO PRO」、ダイナミックな「スポーツ」、サスペンションなどの設定を状況や走行スタイルに合わせて調整する「アダプティブ・モード」の4段階の走行モードを選択できる
メーターまわりでは12.3インチのディスプレイを搭載
厚みを感じるキッキングプレート
メーターの表示例。左からコンフォート、スポーツ、ECO PRO
「リヤ・コンフォート・パッケージ」に含まれるリヤ・シート・エンターテインメント・エクスペリエンスは、ルームライトやシートヒーターなど快適性の調整からエンターテインメント機能などさまざまな設定をタブレットで操作できるBMWタッチ・コマンドをはじめ、左右独立10インチディスプレイなどを装備
キドニーグリル内のカメラ、リアビューカメラ、左右のドアミラー下部に装備されたカメラを用いて車両の周囲360度の映像をコントロールディスプレイに表示可能。新型7シリーズでは新たに3Dビューが追加され、確認したいアングルからクルマ周辺の状況を3Dで表示することが可能になっている
量産車世界初搭載となる、3Dカメラが手の動きを認識してジェスチャーにより車載コントロールシステムの操作が行なえる「ジェスチャー・コントロール」で音量調節をしているところ

軽さがもたらした走り

 こうした目に見える革新的な装備類は言うまでもないが、そもそも7シリーズは基本骨格からして革新的だ。BMW iの開発で培った技術を駆使して実現した「カーボン・コア」と呼ぶボディ構造により、従来比で最大130kgもの軽量化をなし遂げた。

 走るとまさしくそのとおりで、とてもFセグメントと思えないほど身のこなしが軽い。とくに車両の挙動に影響の大きい車体の高い部分の軽量化が効いているように感じるし、車体剛性の向上にも大いに寄与していることと思う。

 前後アクスルにはセルフレベリング機能付きエアサスペンションを採用。また、サスペンション、ブレーキ、ホイールの軽量化を徹底することで、バネ下重量を従来型よりも最大15%軽量化した。さらに、フロントウィンドウに設置されたステレオカメラが路面状況を検知し、常に最適なサスペンション調整を行なう「エグゼクティブ・ドライブ・プロ」を装備する。

 従来型より採用している、前後輪を統合制御する「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」もより洗練された。従来はやや横方向の動きが速すぎるように感じる状況もあったが、そのあたりも巧みになった。

 この軽く強靭な車体に、優れたサスペンションと先進的な機構が一体となって、本当に素晴らしいというほかない卓越した走りを実現している。ハンドリングは俊敏かつ素直で、これほど大きなクルマがまさしく意のままに動く。コーナリングや加減速での姿勢変化もほどよく抑えられている。バネ下の動きにもまったくフリクションを感じさせないほどしなやかにストロークして、ラグジュアリーセダンとして相応しい上質で快適な乗り心地を実現している。

 これらはすべて“軽さ”が基本にあってのこと。とにかく軽さは正義であることをあらためて実感させられた。ややリアがヤワな気もするものの、ラグジュアリーセダンであれば、このセッティングにより得られる快適性を走りよりも優先すべきで、7シリーズはまさに好バランスにある。

「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト」も、とても自然に直進性を保ってくれる。これがあれば長距離の高速走行での疲労感は飛躍的に軽減されることだろう。

 今回試乗したのは740iのみで、従来比+5kWの240kW(326PS)と450Nm(45.9kgm)を発生する新世代の3リッター直列6気筒DOHCターボエンジンを積む。スペックどおり動力性能は高いことに加えて、ターボ付きながらラグのまったくない優れたアクセルレスポンスを実現していることも印象的だった。

740iに搭載される直列6気筒DOHC 3.0リッターツインパワー・ターボ・エンジンは最高出力240kW(326PS)/5500rpm、最大トルク450Nm(45.9kgm)/1380-5000rpmを発生。JC08モード燃費は12.2km/L

 インテリアもラグジュアリー感に満ちている。冒頭で挙げた競合車たちも相当に力を入れきている中でも、まったく引き目を感じさせることはない。レザーとアルミニウムの巧みな使い方が印象的で、極めて上質な空間が構築されている。

 このように革新的であり、ラグジュアリーセダンとしての素晴らしい完成度を見せつけた新しい7シリーズは、もしかしたら多くの部分でSクラスを超えたかもしれない、という気がしてきた。やはりSクラスの最大のライバルは7シリーズであり、こうして切磋琢磨して自身を磨き上げるからこそ、お互いがともに素晴らしいクルマに成長するのだ。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:原田 淳