CES2015
BMW、リモートガレージパーキングをデモ
空いている駐車空間を探して自動駐車
(2015/1/23 00:02)
- 会期:2015年1月6日~9日(現地時間)
- 会場:Las Vegas Convention and World Trade Center(LVCC)、LVH、The Venetian
自動車メーカーがCESに参加し始めたのは、そう新しいことではない。8年前にフォードのマーク・フィールズ氏がマイクロソフトの当時のビル・ゲイツ会長と共に基調講演に登壇したことに始まり、GMやクライスラーといったデトロイト・スリーは例年参加している。
5年前からはアウディが参加しており、CEOのルパート・シュタトラー氏がアウディ「e-tron」に乗って現れてNVIDIAのTegraを使った次世代のディスプレイを発表した。さらに2014年の基調講演でシュタトラー氏は、NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアン氏と共に登壇して、第2世代の車載グレードのTegraについて熱弁を振るった。ダイムラーも2012年にCEOのディーター・ツェッチェ氏が初めて基調講演に登壇し、自動運転について語った。そして今年も、新たな自動運転の将来について語ったのは別の記事にあるとおりだ。今年になって、北米市場での販売台数を伸ばそうとしているフォルクスワーゲンが初参加を果たして、ドイツ勢が揃い踏みという状況になった。
ただし、これまでフォルクスワーゲン・グループを代表してアウディが参加していたことを鑑みると、ドイツ車メーカーの中では去年初めてCESに登場したBMWがドイツ勢としては最後発といってよい。というのも、これまで自動車メーカーにとって、CESとは自動運転やインフィテインメントシステムといった運転そのものと少々離れたところに要所が置かれていて、「駆け抜ける歓び」をキャッチフレーズに運転の楽しみを追求するBMWにとって、いまひとつなじめない世界だったに違いない。
ところが去年、プレスデー前日にラス・ヴェガス・スピードウェイにメディアを集めて行われた自動運転車によるドリフト走行のデモンストレーションは、「究極のドライビングマシーン(英語圏でのキャッチフレーズ)」をうたうBMWらしいものだった。元々、BMWはトラック・トレーナーと称して、レーシングドライバーのサーキットでの走行を自動運転でトレースし、その経験から運転スキルを向上させようというものだった。また、アウトバーンでの渋滞時のように、運転の楽しみとは無縁の状況下において、クルマに運転を任せようという思想で自動運転技術の開発を進めてきた。
サーキットで見た自動“ドリフト”運転は人目を引くもので、CESへのデビュー戦としては、BMWブランドにふさわしいものだった。一方、今年はより現実的なソリューションを用意してきた。
身近なところでは、17年前からスタートしたコネクテッド・ドライブの最新版だ。現在、SIMカードがあれば、OTA(Over The Air、無線経由の接続)でのアップデートにも対応している。また、専用のAppsストアではコネクテッド・ドライブのスマホ用アプリを導入し、駐車をしたあとの案内、つまり「ラストマイル」はカーナビからスマホにバトンを渡して案内する。年内に、ドイツ本国をはじめヨーロッパ数カ国、そして北米からサービスを開始する。
iシリーズの導入に関して、「BMW iコネクテッドモビリティ」なるサービスも展開している。例えば、デジタル・カレンダーを分析して、次のアポに間に合うように出発時間を計算するなど、スマホやスマートウォッチと連動する機能を持つ。また、「DriveNow」というサービスでは、全米200都市、4200の駐車場と提携して、駐車場の空きスペース情報を提供する。支払いには、新しく設定されたマルチ機能付きクレジットカードを使うが、それはそのままDriveNowというカーシェアリング・サービスを利用するときの電子キーにもなる。iシリーズに関しては、非接触での充電も想定している。あわせて、ユーザーの普段の行動を分析して、電力の消費のピークを予想するといった電力系統に負担をかけないような情報のフィードバックを視野に入れている。その他、高度なドライバー支援にもコネクティビティは有効だとしている。単なる利便性だけではなく、CO2を減らしたり、事故を減らすことにも活用したいと、BMWでは考えているようだ。
目立つところでは、インテリジェント・ライトシステムと呼ばれるレーザーライトとOLEDが挙げられる。すでに「i8」に搭載されており、600m先まで見渡せる。実際、筆者も夜間走行を体験したが、まるで昼間のように明るいと掛け値なしで言える。日本の法規では、明るすぎてそのまま採用できなかったほどだ。今回、BMWがCESの会場に持ち込んだ「M4」ベースのコンセプトカーでは、フロント・ランプのメインにレーザーライトを据えた上で、リアにOLEDを採用した新型ランプを搭載する。従来のLEDと比べても、OLEDは薄く、フレキシブルなので、デザイン性に優れる。こちらは去年の「Vision Future Luxury」に搭載されたものを見てはいたが、実際に暗がりの中で見ると、その迫力はなかなかのものだ。
●BMW、「M4コンセプト」のレーザーライトやOLEDリアコンビネーションランプを世界初公開
http://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/ces2015/20150108_682923.html
自動運転に関しても、新たな発表があった。同社は、前述のトラックトレーナーに加えて、ミュンヘンーインゴルシュタット間というアウトバーンでも渋滞の名所にて、自動運転車のテスト走行を行ってきた。そして去年、サーキットでの自動”ドリフト”走行のデモンストレーションを実施し、必要な技術開発が整いつつあることを証明した。
さらに今年は、「i3」をベースにした研究車両を披露した。メルセデス・ベンツとBMWの自動運転技術でもっとも異なる点は、メルセデス・ベンツはカメラ、BMWはレーザー・スキャナで周囲の障害物との距離をはかることだ。BMWでは、測定対象物との相対速度を必要とせず、悪天候や夜間にも強いレーザー・スキャナを使う方針だ。周囲をスキャンして自車位置を確認し、細い棒状の柱などの位置も分かり、駐車や運転時に衝突の可能性を警告することは、特に都市部での自動走行に有効だ。
実際に、ホテルの屋上にある駐車場でデモンストレーションを行ったところ、車両を降りたあと、スマホで自動運転を起動すると、8km/h以下の速度で走り、空いているスペースを探すと、自動で車庫入れをする。縦列駐車はもちろん、後方からの車庫入れにも対応する。レーザー・スキャナで自車位置をマッピングするが、同時に駐車場の入口などでストップする際に、既存の駐車場内のマップもダウンロードしておくことで、しらみつぶしに駐車場を走り回らなくても、どの方向に向かって走れば空きスペースがあるかなどの判断がしやすくなり、より短時間で見つけることができる。ドイツでは駐車場の入口に空きスペースの把握機能があり、その情報を使う。その機能はない駐車場では制御が複雑にはなるが、対応は可能だ。
スマホで起動するだけなので、操作性も高い。呼び出すときには、サムソンのギャラクシー・ウォッチに「Pick me up!」と命令し、呼び出した位置まで無人で走ってくる。途中、いじわるでスーツケースをおいたりしてみたが、状況次第で障害物を避けたり、自動ブレーキで停車してバックするなどして、回避していた。
この自動運転の「i3」に搭載された技術は、レーザー・スキャナ、ミリ波レーダー、近・中距離レーザーなどのセンサー、自車位置認識、ギャラクシー・ギアとのWiFi通信によるコミュニケーションなどである。特に、レーザー・スキャナについては、本来の機能はGoogleが公道で自動運転の走行テストを繰り返す実験車両の上で回っているレーザー・スキャナと同じく、360度の障害物を検知しているが、BMWでは160度の仰角がある5つのスキャナで360度を監視する。
なお、リモートガレージパーキングは、2015年の7シリーズから投入される予定だ。360度検知については、センサーのコストが課題だが、2020年までに実用化したいとしている。
BMWでは、運転の自動化によって、1.交通と安全の向上、2.快適なドライブ、3.モビリティサービスと効率のよい運転といったことがもたらされると考えている。現段階ではドライバーがすべてをコントロールし、運転の過程全般に責任を持つが、今後は、ユーザーが望むときにオンデマンドで自動運転が提供されるべきとしている。つまり、運転したい!とドライバーが望めば、走る楽しさを堪能すればよいのだが、ドライバーがあまり運転したくないと思っていたり、疲れていたりして正しい判断がしにくい状況では、自動運転への要求は高まると見ている。
次世代のHMI提案
利便性に話を戻そう。今回、次世代のHMI(Human Machine Interface)に関する提案もあった。インフォテインメントシステムに関して、タッチパネル、モーションコントロール、iDriveのすべてで操作可能になる。ただし、BMWではこれらの3つの操作系のなかでiDriveをもっとも精度が高いと位置づけて、すべての操作をiDriveで行える設定としている。一方で、タッチパネルとモーション・コントロールで操作できる機能は、運転を邪魔しない範囲に限定した。タッチパネルだけですべてを操作すると、デザイン性とのバランスが難しいし、運転中にジェスチャーですべてをコントールするのは難しいからだ。
具体的には、ピンチやスワイプといったタブレット風に操作できるタッチパネル機能を持つディスプレイを装着し、さらにルーフに備わるカメラで人の動きをモニターして、ジェスチャー・コントロールにも対応する。3つのジェスチャーに加えて、1つは好みの操作をプログラムする程度に抑える。モーション・コントロールに関しては、例えば、メッセージ到着という情報が現れたらタップすると最新インフォメーションが出る。あるいは、手をくるくると回すジェスチャーをすると、インフォテインメントシステムの音量調整ができる。そのほか、タッピングすると電話が取れたり、スワイプすると電話を取らない。また、2本指でタップすると、画面ONなどの機能が盛り込まれている。これらの動作をルーフにあるカメラで読んで、コントロールする仕組みだ。くるくる回すのはボリューム調整に機能を固定するが、3つのモーションのうち、2つは「家に帰る」「ラジオをかける」など、好みでプログラムが可能だ。
リアシートに備わるサムソンのタブレットを使ったデモンストレーションも行われた。取り外しが可能で、運転席以外からでもドライビング・インフォメーションなど幅広い情報にアクセスできる。エアコン、左右独立でのシートコントロール、衛星ラジオなどもタブレットから操作できる。アダプターで充電もできる。クラッシュ時の安全性に配慮してアームレスト付近に装着される。左ハンドルの国ではかなり利便性が高まりそうだが、私たち右ハンドルの国の右利きの住人にとっては、右手を反対に伸ばしてタッチパネルを操作し、利き手ではない側でのジェスチャーはなんだかぎこちないような気がするが、BMWでは右ハンドル向けのデザイン性や操作性にも配慮しているというから、実車への搭載時にどれほど利便性を高めてくるかに期待をしたい。