レビュー

【タイヤレビュー】トーヨータイヤのSUV向け本格オールテレーンタイヤ「OPEN COUNTRY A/T III」をジムニーに履かせてみた

2022年7月に発売となった新オールテレーンタイヤ「OPEN COUNTRY A/T III」をマイカーであるジムニーに履かせてみた

スノーフレークマークを取得

 2023年で40周年を迎えるTOYO TIRE(トーヨータイヤ)のOPEN COUNTRYシリーズに、オンロードもオフロードもこなしつつ、さまざまな気象条件を走破するオールテレーンタイヤの「A/TIII」が加わった。そもそもこのOPEN COUNTRYシリーズは北米のカスタマイズで人気を得る一方で、デザートレースであるバハ1000やダカールラリーにおいて優勝するなど由緒正しき銘柄。日本に登場したのは2016年からで、アウトドアブームに乗り人気が高まっている。ユーザーからは「キャンプなタイヤ」=OPEN COUNTRYという図式が成立し始め、コアなユーザーからは「オプカン」という愛称がつけられるほど。2019年からは軽自動車に対してもOPEN COUNTRYシリーズを本格展開している。

 今回取り上げるSUV&CCV(Cross Country Vehicle)向けのOPEN COUNTRY A/TIIIは北米で2020年2月に先行して発売。欧州環境規制適合品で車外騒音規制にも対応している。また、特徴的なのはシビアスノー要件を満たしたスノーフレークマークを取得していることだ。つまり、高速道路の冬用タイヤ規制は通行可能となるオールシーズンタイヤ的にも使うことができる。もちろん、スタッドレスタイヤではないため凍結路面には対応していないし、チェーン規制となればチェーンを巻かなければならないので、チェーンを携行する必要はあるだろう。

 ちなみに、事実上の旧製品である「OPEN COUNTRY A/T plus」(スノーフレークマークなし)とOPEN COUNTRY A/TIIIをスノー制動で比べた場合、13%も制動距離が短くなったというデータもある。いざという時に動けるか動けないか、はたまた止まれるか止まれないかは雲泥の差。非降雪地域の東京主体で使う僕のようなユーザーからすれば、これはかなりありがたい。トラクション指数についても41%もアップしているという。

 その秘密は、まずスクエアでワイルドなトレッドデザインを採用したことだろう。ショルダーはサイドウォールまで回り込んだデザインを採用しつつ、同方向に段差を設けることでスノー&オフロードのトラクションを向上させる高スタッカードショルダーを採用。センター部にはジグザグなブロックを採用し、エッジ効果が見込めるラージトラクションブロックも奢っている。また、内部はジョイントレスキャップ&エッジプライ、高張力スチールベルト、高剛性プライ構造を採用。フラつかず真っ直ぐ走るタイヤを目指したとのことだ。

OPEN COUNTRY A/T IIIは、さまざまな気象条件や路面状況での走行にバランスよく対応するオールテレーンタイプ。トレッド部に大きなブロックを配置した力強いパターンデザインを採用し、一般道での操縦安定性と快適性を確保するとともに、キャンプ場など凸凹のある路面や林道などに入った際にも安定した走行をサポートしてくれる。また、降雪時における性能も向上しており、圧雪路でのブレーキング性能が従来品(OPEN COUNTRY A/T plus)比で13%良化するとともに、「スノーフレークマーク」の要件を満たし、季節を問わず国内におけるSUVの用途に対応する

ルックスがかなりワイルドに!

 そんなOPEN COUNTRY A/TIIIをわが愛車のジムニーに装着した。タイヤを履き替えての第一印象は、何と言ってもルックスがかなりワイルドになったことだった。

 今回のOPEN COUNTRY A/TIIIはOPEN COUNTRY RTやOPEN COUNTRY MTのようにカスタマイズサイズが主体ではなく、あくまでも純正からの履き替えでそのままのサイズを装着することを想定しているのだが、サイズ変更していないにも関わらず、少し太めのタイヤを履いたかのような盛り上がりが感じられる。サイドウォールまで回り込んだショルダーがいい仕事をしているのだろう。また、ステアリングを切った時に見えるゴツいブロックもなかなか。RTやMTのようにホワイトレターがラインアップされていないのが残念だが、それはまた次の機会に期待しよう。いずれにしても、ドレスアップ効果まであるとは意外な発見だ。

 けれどもタイヤの音がうるさくなく、これが標準タイヤと言ってもいいのではと思えるほどの静粛性があった。もちろん、これだけワイルドなトレッドを採用しているから厳密に言えば微振動などは存在する。だが、そこにイヤミがなく、十分に受け入れられそうなところがマル。装着して間もなく1000kmほどになるが、目に見えて燃費が悪化していないところも嬉しい。

 走り味はとにかくしっかり感が伝わってくることだ。ケース剛性が高く、高荷重でもきちんと受け止めてくれることや、入力を一発で収めてくれるところも好感触。硬質な感じだが、乗り心地はかえってよく感じる。タイヤがたわみすぎず、無駄なバウンスがなくなり、リアの追従性もよくなったことで一体感溢れるハンドリングを実現。ジムニーがちょっとスポーティに変身したことが何より嬉しい。これならオンロードでも走りが楽しめそうだ。

 一方で撮影時にちょっとした砂地を走ってみたが、しっかりとしたトラクションが得られ、不安感なく走破してくれた。本格的な悪路となればRTやMTには勝てないのだろうが、ジムニー初心者からすれば、これくらい走ってくれれば十分に感じる。あとはスノー路面でどんな走りを示すのか? それは時期的にまだ試せていないが、冬になったら試しに出かけてみたい。オールラウンダーな“オプカン”は1年中、いつでもどこでも楽しめそうだ。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、ジムニー(JB64W)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34・納車待ち)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学