レビュー
【タイヤレビュー】トーヨータイヤのSUV向け本格オールテレーンタイヤ「OPEN COUNTRY A/T III」をジムニーに履かせてみた
2022年12月12日 09:10
スノーフレークマークを取得
2023年で40周年を迎えるTOYO TIRE(トーヨータイヤ)のOPEN COUNTRYシリーズに、オンロードもオフロードもこなしつつ、さまざまな気象条件を走破するオールテレーンタイヤの「A/TIII」が加わった。そもそもこのOPEN COUNTRYシリーズは北米のカスタマイズで人気を得る一方で、デザートレースであるバハ1000やダカールラリーにおいて優勝するなど由緒正しき銘柄。日本に登場したのは2016年からで、アウトドアブームに乗り人気が高まっている。ユーザーからは「キャンプなタイヤ」=OPEN COUNTRYという図式が成立し始め、コアなユーザーからは「オプカン」という愛称がつけられるほど。2019年からは軽自動車に対してもOPEN COUNTRYシリーズを本格展開している。
今回取り上げるSUV&CCV(Cross Country Vehicle)向けのOPEN COUNTRY A/TIIIは北米で2020年2月に先行して発売。欧州環境規制適合品で車外騒音規制にも対応している。また、特徴的なのはシビアスノー要件を満たしたスノーフレークマークを取得していることだ。つまり、高速道路の冬用タイヤ規制は通行可能となるオールシーズンタイヤ的にも使うことができる。もちろん、スタッドレスタイヤではないため凍結路面には対応していないし、チェーン規制となればチェーンを巻かなければならないので、チェーンを携行する必要はあるだろう。
ちなみに、事実上の旧製品である「OPEN COUNTRY A/T plus」(スノーフレークマークなし)とOPEN COUNTRY A/TIIIをスノー制動で比べた場合、13%も制動距離が短くなったというデータもある。いざという時に動けるか動けないか、はたまた止まれるか止まれないかは雲泥の差。非降雪地域の東京主体で使う僕のようなユーザーからすれば、これはかなりありがたい。トラクション指数についても41%もアップしているという。
その秘密は、まずスクエアでワイルドなトレッドデザインを採用したことだろう。ショルダーはサイドウォールまで回り込んだデザインを採用しつつ、同方向に段差を設けることでスノー&オフロードのトラクションを向上させる高スタッカードショルダーを採用。センター部にはジグザグなブロックを採用し、エッジ効果が見込めるラージトラクションブロックも奢っている。また、内部はジョイントレスキャップ&エッジプライ、高張力スチールベルト、高剛性プライ構造を採用。フラつかず真っ直ぐ走るタイヤを目指したとのことだ。
ルックスがかなりワイルドに!
そんなOPEN COUNTRY A/TIIIをわが愛車のジムニーに装着した。タイヤを履き替えての第一印象は、何と言ってもルックスがかなりワイルドになったことだった。
今回のOPEN COUNTRY A/TIIIはOPEN COUNTRY RTやOPEN COUNTRY MTのようにカスタマイズサイズが主体ではなく、あくまでも純正からの履き替えでそのままのサイズを装着することを想定しているのだが、サイズ変更していないにも関わらず、少し太めのタイヤを履いたかのような盛り上がりが感じられる。サイドウォールまで回り込んだショルダーがいい仕事をしているのだろう。また、ステアリングを切った時に見えるゴツいブロックもなかなか。RTやMTのようにホワイトレターがラインアップされていないのが残念だが、それはまた次の機会に期待しよう。いずれにしても、ドレスアップ効果まであるとは意外な発見だ。
けれどもタイヤの音がうるさくなく、これが標準タイヤと言ってもいいのではと思えるほどの静粛性があった。もちろん、これだけワイルドなトレッドを採用しているから厳密に言えば微振動などは存在する。だが、そこにイヤミがなく、十分に受け入れられそうなところがマル。装着して間もなく1000kmほどになるが、目に見えて燃費が悪化していないところも嬉しい。
走り味はとにかくしっかり感が伝わってくることだ。ケース剛性が高く、高荷重でもきちんと受け止めてくれることや、入力を一発で収めてくれるところも好感触。硬質な感じだが、乗り心地はかえってよく感じる。タイヤがたわみすぎず、無駄なバウンスがなくなり、リアの追従性もよくなったことで一体感溢れるハンドリングを実現。ジムニーがちょっとスポーティに変身したことが何より嬉しい。これならオンロードでも走りが楽しめそうだ。
一方で撮影時にちょっとした砂地を走ってみたが、しっかりとしたトラクションが得られ、不安感なく走破してくれた。本格的な悪路となればRTやMTには勝てないのだろうが、ジムニー初心者からすれば、これくらい走ってくれれば十分に感じる。あとはスノー路面でどんな走りを示すのか? それは時期的にまだ試せていないが、冬になったら試しに出かけてみたい。オールラウンダーな“オプカン”は1年中、いつでもどこでも楽しめそうだ。