レビュー

【タイヤレビュー】コンチネンタル「スポーツコンタクト 7」、快適な乗り心地も享受できるプレミアムスポーツタイヤ

2022年6月に発売となった新製品「SportContact(スポーツコンタクト)7」を試した

多くのハイパフォーマンスカーに採用されるスポーツコンタクトシリーズ

 ドイツ屈指のタイヤメーカーであるコンチネンタルの創業は1871年。自動車が走り始める前から移動に限りなく近いところに存在する世界の5指に入る巨大タイヤメーカーだ。

 日本ではメルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンなどをはじめとするOE装着のタイヤとしてなじみが深く、それに伴うOEMの代替品として輸入車ユーザーの間で知られている。ドイツ製品らしい安定した性能は、装着した多くのドライバーから高い信頼を得ている。日本メーカーではまだOEM装着は少ないが一部車種ではすでに装着が始まっており、今後のグローバル展開で増える可能性も高い。

 われわれがよく目にするコンチネンタルタイヤはスポーツ系の「SportContact(スポーツコンタクト)」とコンフォート系の「PremiumContact(プレミアムコンタクト)」になるが、何れのコンタクトシリーズも第7世代に入り、ウェットを中心に大きく性能を向上させた。

 スポーツコンタクトは快適な乗り心地を提供しつつ、超高速域でも安定した手応えとしっかりしたグリップを目指したタイヤ。いわゆるスポーツタイヤとは異なる。多くのハイパフォーマンスカーに採用されていることからもその信頼性の高さが分かる。

 スポーツコンタクトがその名を上げたのは20年前の2003年で、360km/hという世界最速の市販タイヤを発表して話題になった。同時に発表された網の目のような特徴的なカーカス構造も斬新だった。

 フラグシップであるスポーツコンタクトは2022年6月に第6世代から第7世代になり、現代のスポーツカーの特性に合わせられた。安全対応の強化、整備の充実、省燃費技術で重量は重くなる傾向にあり、一方で燃費向上の要求に従って転がり抵抗の低減への要求にも対応した形だ。

欧州タイヤラベリングの「燃費」でC、「ウェットグリップ性能」でAを獲得する「スポーツコンタクト 7」は高い走行安全性、優れた耐摩耗性能と環境性能を両立する。225/45ZR18~315/25ZR23まで全37サイズを展開
スポーツコンタクト 7では車両やタイヤサイズの組み合わせにより異なる性能要件に合わせるため、タイヤサイズに応じてテクノロジーを使い分ける「テーラーメイド・コンストラクション」を採用。また、トレッドパターンとコンパウンドの競合するターゲットを最適なバランスで解決するため、特別に開発された粘着性の高いコンパウンド「ブラック・チリ・コンパウンド」(第3世代)を用いる
コーナリング時にもっとも大きな力を伝達するアウターショルダーの接地面積を最大限に確保。アウターショルダー部のグループ内に設置された「インナーロック・エレメント」によりトレッドパターンの変形を抑制する。タイヤのサイド部にチェッカーフラッグの模様を施してスポーティさを強調した

 新しい「スポーツコンタクト 7」ではサイズによって構造を変えており、そのクルマに適した性能を出せるようにカーカス角度を変えることで剛性の巧みな使い分けを行なっている。

 コンパウンドはスポーツコンタクトの太いストレートリブに合わせて、コンチネンタルが開発してきた粘性の高いブラック・チリ・コンパウンドに新開発の樹脂剤を加えることでグリップ力と耐久性を向上させている。また新しいシリカ分散材を採用し、さらに転がり抵抗とウェットグリップに磨きがかかった。

 いずれにしてもコンチネンタルらしい粘り強さと安心感の高いスポーツタイヤを目指している。

リニアリティの高さがコンチネンタルタイヤの持ち味

 試乗は栃木県にあるGKNテストコース内のスラロームコース(ドライ)と、高速周回路における140km/hでのレーンチェンジなどの高速試験だ。試験車両は後輪駆動のスカイライン GT。タイヤサイズは245/40R19で純正指定空気圧での試乗だ。

 最初はタイトなスラロームを往復して停止するというプログラムでタイム計測が行なわれた。コースの習熟を兼ねてゆっくり操舵することでタイヤのフィーリングをつかむ。

 柔らかい手応え感があって安心感が伝わってくる。スポーツタイヤのようなガツンとグリップする感じではないところがコンチネンタルらしい。操舵初期からジワジワとコーナリングフォースが立ち上がり、舵角が大きくなってもしっかりついてくる感触が好ましく、ドライバーを安心させてくれる。

 センターフィールもジワりと粘るようで操舵が大きくなっても突然グリップ力が大きくなるわけではなく、ドライバーに余計な緊張感を与えない。このリニアリティの高さがコンチネンタルタイヤの持ち味だ。

 スラロームで車速を上げ、操舵速度を速くするが、それでもコンチネンタルタイヤの自然な性格は変わることはなく、操舵初期からのリニアな応答性とグリップ力が自然と大きくなる性格はクルマのコントロールがしやすい。計測タイムにもそれが表れており、バラツキがなく平均して速い。一定のリズムで運転しやすいことを物語っている。

 ただスポーツコンタクト 7はサーキットでのタイムアップを目的に作られたタイヤではなく、ピュアなスポーツタイヤのようなハンドル操作量が大きい範囲でガツンとした手応えがあるタイプとは違う。普段は快適な乗り心地を享受でき、その延長でサーキットも攻略できるというコンチネンタルらしい実用性の範囲を大きく膨らませたプレミアムスポーツタイヤという印象を強く持った。

 スラロームテストを終えてから、高速周回路でのレーンチェンジとドライのスキッドパッドでの中速での円旋回を行なうプログラムに移る。

 高速周回路ではハンドルのスワリの良さを実感した。直進時でも微妙なハンドル操作でしっとりとした手応えがある。高速のレーンチェンジでも安心感が高く、操舵初期から微妙な手ごたえが感じられ、自信をもって操舵できる信頼感があるのはありがたい。高速レーンチェンジの最初の操舵から元のレーンに戻る操作までハンドルの操舵量が少なく、タイヤの剛性バランス、上下収束性も優れているように感じられた。

 スキッドパッドを一定速度で走っている時はややアンダーステアになるものの、アクセルのON/OFFを行なっても姿勢変化は少ない。高い限界速度よりも変化の穏やかさを重視している。試乗後のフロントタイヤショルダーを見たが、ブロック摩耗はスポーツコンタクト 6よりもおとなしいようだ。

 スポーツコンタクト 7、今回は試せなかったが実はウェットの実力はかなり高いという。第7世代のコンタクトシリーズはいずれも転がり抵抗とウェットグリップの進化が目覚ましいとのことで雨の多い日本の気候にもマッチしそうだ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学