レビュー

【タイヤレビュー】トーヨータイヤの新プレミアムスポーツタイヤ「PROXES Sport 2」をドライ&ウェット路面で試す

プレミアムスポーツタイヤ「PROXES Sport 2」を試した

欧州車との相性も良い

 プレミアムスポーツタイヤ「PROXES Sport 2」のレビューに続き、TOYO TIRE(トーヨータイヤ)の新しいプレミアムスポーツタイヤ「PROXES Sport 2(プロクセス スポーツツー)」について紹介しよう。

 フラグシップタイヤであるPROXESシリーズは、1991年に日米欧で発表、1993年にはポルシェの承認マークも得て技術の高さを証明している。その後も進化を続けて同社のプレミアムタイヤとしてサイズを拡大し、国内メーカーの上級車種にも採用実績が多くある。

2月より順次発売を開始した「PROXES Sport 2(プロクセス スポーツツー)」はドイツ・ニュルブルクリンクで開催される耐久レースをはじめとするモータースポーツへの参戦経験を生かし、スポーツタイヤに求められるハンドリング性能とブレーキ性能を高次元で実現させたプレミアムスポーツタイヤ。215/45R18 93Y XL~255/35ZR20(97Y)XLの全23サイズを用意する。
PROXES Sport 2では、非対称トレッドパターンと非対称トレッドコンパウンドを採用することによって機能の分担を図り、ブレーキ性能とハンドリング性能を効果的に向上。従来モデルの「PROXES Sport」との比較による性能評価結果では、ドライブレーキ性能で4%短縮、ウェットブレーキ性能で16%短縮する結果を明らかにしている。写真向かって左側がOUT側、右側がIN側
非対称トレッドコンパウンドとして、トレッド部の内側のコンパウンドにはゴムの柔軟性に寄与するシリカを均一に分散することで、路面の凹凸にタイヤがしなやかに接地し、ウェット、ドライ双方の路面でのグリップ性能が向上。一方で外側のコンパウンドでは、シリカの分散を制御することでゴムの剛性を確保した
PROXES Sport 2のサイズ一覧
モータージャーナリストの日下部保雄氏がPROXES Sport 2をチェック

 まず周回路でアウディ A4に履かせた従来モデルの「PROXES Sport」を試乗する。タイヤサイズは225/45R18。縦溝を主としてカット溝を入れたオーソドックスなパターンだ。高速では少し突き上げ感があるがダンピングも強めで、スポーツタイヤらしく収束は早い。

 細かい凹凸では少しざらつく感触があるが、高速域でのハンドル応答性や追従性、追い切り性などもプレミアムスポーツらしい仕上がりだ。TOYO TIREの製品らしくバランスの取れた性格は誰でもなじみやすい。

 新しいPROXES Sport 2は、軽いスラロームを行なった時のハンドル追従性が向上して応答遅れが少ない。しなやかなフィーリングでセンターフィールを鈍く設定しており欧州車との相性も良い。

 ハンドルに力が入るか、入らないかの微妙なところから手応えを感じつつ、タイヤはジワリとコーナリングパワーを出していく。タイヤプロファイルの変更や構造でタイヤ剛性が上がっているがゴムとの相性が良くしなやかに感じる。

 低速での乗り心地はあたりが強めだが、速度を上げていくとピタリとフラットな味付けになる。速度レンジの高いクルマに合わせられた作り込みだと感じた。

 興味深いのはトレッド面のOUT側とIN側でコンパウンドを変えていることだ。シリカを使っているのは同じだが、OUT側はポリマーも凝縮して使ったいわゆる硬いゴムで、IN側はシリカを分散させた柔軟なゴムでウェットとコーナリングでの剛性をバランスさせている。合わせてシリカ効果で転がり抵抗も小さくなり、燃費向上に役立っている。

ウェット路面での安心感はかなり違う

 一方、ウェットハンドリング路ではFRのBMW 3シリーズを使用した。タイヤサイズは225/45R18になる。従来のPROXES Sportもウェットでの癖がなく。FRの3シリーズではもう少しリアが流れるかと想像していたが、予想以上に素直な反応はさすがにフラグシップタイヤと改めて感心した。

 新しいPROXES Sport 2で特に制動時の安定性と制動力に違いを感じたのは、タイヤの接地面積と新しいコンパウンドの相乗効果だ。また、プロファイルが変わりコーナーやブレーキでのタイヤ変形が小さくなったことも大きいようだ。ブレーキではPROXES Sportではぎりぎりで滑りそうだったものがPROXES Sport 2だと少し余裕をもって制動する。次の周でさらに奥で強く踏むとさすがにスリップしそうになるが、回復するのが早く、安心感はかなり違う。

 またターンインでは応答性が早く、旋回中のグリップ変化も少ない。PROXES Sportでは少し修正舵を使うことがあったが、PROXES Sport 2ではほとんどなく、ウェットでの姿勢安定性が高いことが確認できた。

 PROXES Sport 2への進化は落ち着いたスポーツタイヤを求めるユーザーに歓迎されるだけでなく、その性格は欧州車への適合もよさそうだ。サイズは60扁平から35扁平までのハイスピードレンジに合わせたレンジで23サイズが用意されている。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:中野英幸