レビュー

【タイヤレビュー】トーヨータイヤの新コンフォートタイヤ「PROXES Comfort IIs」、従来から段違いなウェット性能

TOYO TIREの新プレミアムコンフォートタイヤ「PROXES Comfort IIs」を試した

 TOYO TIRE(トーヨータイヤ)から久ぶりにPROXESシリーズのモデルチェンジが行なわれ、その試走会が栃木県のGKNドライブラインジャパン プルービンググラウンドで開催された。モデルチェンジしたのはプレミアムコンフォートタイヤ「PROXES Comfort IIs(プロクセス コンフォートツーエス)」と、プレミアムスポーツタイヤ「PROXES Sport 2(プロクセス スポーツツー)」の2種類だ。

 いずれのタイヤも新旧モデルでドライの周回路とウェットの内周路で比較試乗できた。PROXES Comfort IIsは外周路とウェットハンドリング路ではカムリを使い、PROXES Sport 2は外周路ではアウディ A4、ウェットハンドリング路ではBMW 3シリーズを試乗車として使い、新旧タイヤの比較テストを行なった。

 本稿ではPROXES Comfort IIsについてレポートする。

「PROXES Comfort IIs」は3月より順次発売。発売サイズは185/65 R15 88H~225/45 R21 95Wの全39サイズ
上質なクルージングの実現を目指し、環境性能を進化させたプレミアムコンフォートタイヤで、パターン設計にあたっては独自のタイヤ設計基盤技術「T-MODE(ティーモード)」を活用し、トレッドパターン内で機能を分担させる非対称パターンを採用したのが特徴の1つ。向かって左がOUT側、右がIN側
PROXES Comfort IIsでは材料設計基盤技術「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」を用いて低燃費コンパウンドの開発を行なうなど、従来品の「PROXES C1S」比で転がり抵抗を28%低減。また、新シリカ分散剤を採用し、転がり抵抗の低減、ウェット性能や耐摩耗性能の向上に効果を発揮するシリカをより均一に分散させることで、これらの性能を高次元で最適化させた。加えてタイヤの内側と外側で最適なパターン設計を施し、タイヤパターンに起因して発生するノイズの騒音エネルギーを従来品「PROXES C1S」比で22%低減している
サイズ展開(39サイズ)

凹凸に対してタイヤのゴムの追従性が良く、乗り心地が向上

新旧タイヤをカムリで試した

 まずは従来モデルの「PROXES C1S」での外周路だが、40km/hの低速での保舵感は手応え感があり、さらに速度を60km/hから80km/hにまで上げるとそれが少し緩くなる。また凹凸の乗り下げで収束がわるくなる。大きめの凹凸ではタイヤ変形の戻りで乱れる感触だ。しかし縦方向の剛性も含めてバランスが取れて落ち着きがある。

 ロードノイズはリアから入る音が少し大きい程度。操舵力も重めだが切り始めから滑らかで扱いやすい。急激な動作をしなければバランスのとれたタイヤという印象だ。

 一方、新型のPROXES Comfort IIsは左右非対称パターンのアウトブロックに細い縦溝が入っており、パッと見た感じでは外側ブロックが細かく見える特徴あるデザインだ。転がり抵抗が小さいというのが第一印象だった。例によって40km/h一定から始めたが、路面からの細かい凹凸に対してタイヤのゴムの追従性が良く、ザラついた路面での乗り心地が向上しているのが分かる。

 速度を徐々に上げていく。直進安定性もしっかりとしており保舵感も妥当だ。操舵力は重めだがハンドル操舵に応じて素直に反応して安定感がある。また一定舵角でのコーナリングでもよく踏ん張り、ライントレース性も向上しているのが分かる。タイヤが発する音ではパターンノイズが小さくなり、従来モデルではリアから入っていたゴーという音も抑えられた。

 またレーンチェンジのタイヤの応答性も素直。タイヤのダンピングの向上で動きが少し抑えられている感じだ。タイヤ構造の進化によるところも大きい。

 新型の特徴はタイヤが余分な動きをしない素直さにあり、合わせて音も含めた乗り心地がレベルアップした点にある。

ウェット性能は段違い

 一方、段違いな性能差を見せたのはウェットハンドリング路だ。まずカムリに装着された従来モデルで走り出す。郊外にあるような一般的な舗装でスプリンクラーによってウェット路面となっている。ところどころに水溜まりができており、コーナーは小さくまわり込むところもありトリッキーなコースである。試乗車のカムリは車体剛性も高く安心してハンドルを握れるクルマだ。

 従来モデルはウェットでのグリップ限界が低く、コントロールしやすいがリアが流れやすかった。また水深によっては急に滑り出すケースがあった。

 新製品のPROXES Comfort IIsでは新しいシリカ分散材で柔軟なゴムとなっており、高いウェット性能と低転がり抵抗を両立させている。排水性ではストレート溝が積極的に水を吐き出し、その排水性に加えて新しい左右非対称パターンもタイヤが滑り出す限界域でのウェットでのひと踏ん張りに効いている印象だ。

 このコースは冒頭にも記載したようにアップダウンはないもののバリエーションに富んだレイアウトになっており、ブレーキや多彩なコーナーなど実際に遭遇しそうな場面を作り出すことができ現実的だった。基本的にウェット路面ではしなやかなゴムで接触面を多くとってグリップを上げている。

 この効果は絶大で、制動力もさることながら、ターンインからアウトまでグリップの変化が小さく、コーナー立ち上がりでは加速できる余裕すらあった。少し水深のあるところでも持ち前の排水性の高さで急なグリップを失うケースは少ない。オーバースピードを許容するわけではないが、従来品に比べると格段のウェットグリップだ。

 このウェットグリップは実際のシーンで大きな効果を発揮するに違いない。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:中野英幸