レビュー

横浜ゴムの最新スタッドレス「アイスガード7」

横浜ゴムの新型スタッドレスタイヤ「アイスガード7」

横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ「アイスガード7」

 横浜ゴムが2021-2022年シーズンに新投入した「iceGUARD 7(アイスガードセブン)」。その試乗についてはデビュー時にお伝えしているが、今回はその性能がどのようにして成立しているのかを、前回とは異なるテストを行なうことで体感できるようだ。そこで再び北海道のテストコースへと行ってきた。

 今回用意されていたのは、雪上のテストコースだというのになんとスリックタイヤ! これでいきなりパイロンが並べられたコースを走ってくれというのだから尋常じゃない。果たして無事に帰れるのか? 不安を抱えながらスリックタイヤでコースインしてみることに。

前回とは異なった条件で横浜ゴムのスタッドレスタイヤ「アイスガード7」試乗

 きっと動くことすら難しいだろうと想像していたが、意外にもクルマはスルスルと動き出すから驚きだ。サイプが大切だとか、雪中剪断力が大切だとか頭デッカチな感覚とはまるで違うスムーズな動き出しに驚くばかり。50km/hくらいまですんなり加速してしまったのだ。トレッドの剛性感はもちろん高いのだが、スリップアングルが大きめになると一気にグリップを失うような感覚だ。やはりサイプをはじめ、トレッドの細工がないと走れないことは言うまでもない。

だが、意外にも走れてしまうのはやはりアイスガード7のコンパウンドに秘密がある。「シリカ」を均一に分散させた新採用「ホワイトポリマーII」によってしなやかになり、氷への密着が増え、「マイクロエッジスティック」が氷や雪を噛むエッジ効果を実現しているからこそ達成できるらしい。

 そこにはもちろん、雪に対して車重がかかる圧縮抵抗があるからある程度走れるメカニズムがあるのは理解できるが、感覚的にはそこまでスリックタイヤが走れるとは思いもしなかった。やはり新コンパウンドはおそるべし。10年ほど前に同じようなテストを行なったことがあるが、それとは格段にトラクションもブレーキも効いていた印象がある。

室内氷板路での制動テスト

新型アイスガード7のコンパウンドを使ったスリックタイヤで走行。温度が低ければ意外と走れてしまう

 続いてこのスリックタイヤで室内氷板路で制動テストを行なってみる。路面温度はマイナス9.9℃に保たれたこの路面で止まるのか? 30km/hからのフル制動を行なう。すると16m前後でしっかりと止まるから驚きだ。専用の「ウルトラ吸水ゴム」や「新マイクロ吸水バルーン」に加え、新採用の「吸水スーパーゲル」が氷上で滑る原因となる氷表面の水膜を吸水しているからこその芸当なのだろう。ちなみにアイスガード7では約12m。今も販売は継続されてはいるが、事実上の旧製品である6では約14mという結果だった。コンパウンドだけでもなかなかの制動を生み出せることには驚きだ。

タイヤの表面を確認中

 だが、マイナス2.2℃に保たれた氷板路で同様のテストを行なうと話はまるで異なる。アイスガード7は19m、アイスカード6は21m、スリックタイヤは29mとかなりの差が出てくる。温度が上がって水膜が増えるとコンパウンドだけではどうにもならず、やはりサイプやパターンが重要となってくることが理解できる。

 アイスガード7は旧製品から比べるとゴムで8%、パターンで6%のトータル14%の性能向上があったという。柔らかめのコンパウンド、そして吸水素材や溝&エッジを増やしていることが氷上における性能アップにつながっていたのだろう。

当たり前だが制動力的に最も優れていたのはアイスガード7

雪上路面で比較試乗

アイスガード7で雪上路面を走る

 再び話は雪上路面に戻り、純粋な新旧比較を行なってみる。まずは旧製品のアイスガード6で走ってみると、ステアリングの微小操舵角における引っかかり感が薄いことが気になる。トラクションのかかりも薄いイメージがあり、アクセルコントロールに気を使う感覚だ。

 だが、新型となるアイスガード7は、発進から楽にトラクションがかかる。ステアリングを切った瞬間からグリップが得られ反力が伝わる感覚があり安心感も高いのだ。溝エッジ量33%増、横方向の溝エッジ量18%増はダテじゃない。スリックではどうしようもないステアリングを切ってからの動きは、これらのトレッドパターンの細工がかなり効いているのだと感じることができた。

 対して舗装路などを走るとトレッド表面のヨレが感じられるところがあるが、雪上や氷上におけるグリップの高さをこれだけ感じられるなら許せる範囲内だろう。

 ここまで冬路面に寄せた性能を感じると、摩耗について心配になるところだが、横浜ゴムの技術者によれば旧製品と同等のレベルはキープしているとのことだった。たしかにコンパウンドは柔らかめになってはいるが、パターン剛性のアップによってカバーしたとのことだ。旧型のサイプは溝の奥に行くにつれて先細りするような形状だが、新型はトレッド表面は細く、真ん中は太く、溝の奥は細くという細工が施されている。トレッド表面を細くしたのは、トレッドの倒れ込みを抑えようとしたというわけだ。

 このように、ゴムも溝もあらゆる方向から進化が見られたアイスガード7なら、冬シーズンを確実に乗り越えるくれることだろう。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、ジムニー(JB64W)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34・納車待ち)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。