レビュー

【タイヤレビュー】第7世代に進化したコンチネンタルの新コンフォートタイヤ2モデル、ウェット性能と乗り心地やいかに?

第7世代に進化したコンフォートタイヤも試した

 GKNテストコース内で行なわれたコンチネンタルタイヤの試乗会。スポーツタイヤの新製品「SportContact(スポーツコンタクト)7」については既報のとおりだが、コンフォート系も第7世代に進化した。

 リプレイス市場中心の「PremiumContact(プレミアムコンタクト)7」「UltraContact(ウルトラコンタクト)UC7」「ComfortContact(コンフォートコンタクト)CC7」がそれで、今回の試乗ではウルトラコンタクト UC7とコンフォートコンタクト CC7に乗ることができた。いずれもアジア市場を重視したタイヤで、生産国はタイ、中国、マレーシアになる。

ブレーキレスポンスの良さと安定性の高さが際立つウルトラコンタクト UC7

 ウルトラコンタクト UC7はウェットの安全性とオンロードでの静粛性、それに摩耗を重視したタイヤで、シンプルなストレートグルーブに斜め溝を入れてノイズや排水性に効果のあるパターン。見た目もスッキリした印象だ。

 ウルトラコンタクト UC7に使われる基礎技術は大きく3つの要素からなり、1つは「ダイヤモンド・コンパウンド」と呼ばれる技術。シリカとレジンを配合することで、ロングライフでありながら転がり抵抗の低減とウェットグリップの向上が図られる。

 静粛性には「ノイズ・ブレーカー3.0」と呼ばれるストレートグルーブの一部に突起を設けることで、高周波のパターンノイズを分散させる効果があるとしている。この突起、X-フロー・アクセラレーターは排水の面でもベンチュリー効果で流速を上げられ、効果的と言われる。

 排水性に効果があるのはアドバンスド・アクア・チャネル。ストレートグルーブに導く斜めに入った薄い溝のことで、この溝で効率よく路面とタイヤにある水を吐き出す。

 コンチネンタルタイヤでは、ダイヤモンド・コンパウンドの「D」とノイズ・ブレーカー3.0の「N」、それにアドバンスド・アクア・チャネルの「A」を取ってダイヤモンド「D.N.A」と呼称し、ウルトラコンタクト UC7の基幹技術としている。サイズは16インチ~18インチで今後サイズ拡大する予定だ。

2023年1月より順次発売となったセーフティ・コンフォートタイヤ「UltraContact(ウルトラコンタクト)UC7」。コンフォートセグメント向けに開発されたConfidence+(コンフィデンス・プラス)テクノロジーの採用により、ウェット性能、ハンドリング性能を大幅に向上。優れた静粛性と快適性、ロングドライブライフに重点を置いて開発したという
ウルトラコンタクト UC7では独自のシリカとレジンを配合した「ダイヤモンド・コンパウンド」、縦溝内を通る音波を遮断し、分解・分散させることでノイズが蓄積して車内に伝わるのを抑制する「ノイズ・ブレーカー 3.0」、ハイドロプレーニングの発生を抑制し、濡れた滑りやすい路面で優れたグリップ力を発揮することでウェットブレーキング性能と安全性の向上に大きく貢献する「アドバンスド・アクア・チャネル」を採用。タイヤサイドにはダイヤモンド・コンパウンドの名にふさわしいデザインが施される
ウルトラコンタクト UC7のサイズ一覧

 試乗車はFFのカムリ WS。サイズは215/55R17の純正サイズで空気圧も指定空気圧の240kpa。標準タイヤと比較しやすくなっている。

 まずは80km/hからのウェットのフル制動。水深はほぼ一定に保たれた路面で制動距離を測る。ABSは作動させているので、制動開始ポイントから思い切りブレーキペダルを踏み込めばよい。何回かトライできたが制動距離はほぼ変わらずで、一定した減速Gが得られているのが分かる。

 他のタイヤでも同じテストを行なったが、ウルトラコンタクト UC7の場合は制動開始時点からわずかに早いタイミングで制動力がかかる。その制動感が最後まで続き、それが途中でスーと抜ける感触がない。ブレーキレスポンスの良さと安定性の高さが大きなセールスポイントだ。

 同じウェットではダブルレーンチェンジを伴う緊急回避も経験できた。進入速度は同じく80km/hでかなりハンドルを大きく切らなければ規制パイロンをクリアするのは難しい。舵がどこまで効くのか想像しながら80km/hを維持するのはちょっと勇気がいる。

 しかし意外と簡単にクリアできてしまった。操舵角が小さいところから舵が効き始め、最初のコーンの壁を通過するのもあっさりと可能だった。感覚的に最初のハンドル応答で方向が変わり始めた時点でかなり楽になった。次のハンドルの切り返しでアクセルを緩めずに速度を維持するのは結構大変で、ハンドルの切り返しで応答遅れが大きいと次のコーンの壁をクリアするのに苦労するが、こちらもハンドルの効きは予想以上によく、ダブルレーンチェンジも速度を落とすことなくクリアすることは予想以上に容易で、良い意味で期待を裏切られたウェット路面だった。

 ダブルレーンチェンジでも制動同様に、ハンドル操作初期のジワリとグリップするところが安心感となる。最初にハンドルを通してどのように情報が伝達されるかが重要で、ウルトラコンタクト UC7はその面でもドライバーに寄り添ったタイヤだ。

 ウルトラコンタクト UC7はウェットでの情報量が多く、安心して走れるタイヤの1つだ。これはスポーツコンタクト7でも感じられたコンチネンタルタイヤの味に通じ、一本筋が通っている。

見た目の繊細さとは裏腹に骨太な味わいのコンフォートコンタクト CC7

 一方、もう1つの戦略タイヤであるコンフォートコンタクト CC7は、13インチ~17インチをカバーする28サイズが展開される。

 静粛性と乗り心地がセールスポイントだが、コンチネンタルらしくウェットグリップも高いレベルにあるという。ウルトラコンタクト7が主要技術としてD.N.Aを冠としたのに対し、コンフォートコンタクト CC7は「Z.E.N」を基幹技術としている。

 まずZは「ゼロ・ショック・パターン」。同じく少し細く入ったストレートグルーブのリブパターンに、きめ細かく入ったサイプが特徴で、路面からのショックをやわらげるパターンになっている。

 Eは「エバー・フレックス・コンパウンド」。こちらもシリカの分散剤を効果的に使うことで柔軟なコンパウンドで路面の細かな荒れを包み込むように吸収し、合わせて高いウェットグリップを持たせることができた。

 最後のNは「ノイズ・ミューター」。ウルトラコンタクト UC7でも使われたノイズブレーカー3.0で高周波音を分解し、耳障りの少ない音にする。また斜めに入ったサイプの途中に消音効果のあるホールを設けることで、共鳴周波数を吸収させ室内共鳴を減らしている。

 パターンは主としてノイズに注意を払った細かいパターンで構成され、繊細な感じを受けるがサイドウォールはなかなか華やかなデザインが施されている。

2023年3月より順次発売となった「ComfortContact(コンフォートコンタクト)CC7」は、高い静粛性とストレスを感じさせない滑らかな乗り心地を追求したサイレント・コンフォートタイヤという位置付け。日本向けに軽自動車用サイズを6サイズラインアップし、コンパクトカーからミニバン、電気自動車まで幅広い車種に対応する。タイヤサイドには静粛性にこだわったことがうかがえる音符のデザインが
コンフォートコンタクト CC7では独自のリブ構造とサイピングが特徴の「ゼロ・ショック・パターン」により衝撃を軽減するとともに、路面の粗さに柔軟に適応することで衝撃を軽減し、スムーズな乗り心地を実現する「エバー・フレックス・コンパウンド」、縦溝内を通る音波を細かく分散しノイズが車内に蓄積するのを防ぐ「ノイズブレーカー3.0」とヘルムホルツ共鳴の原理を利用して設計されたチャンバー内に共鳴周波数の音を吸収することでノイズを中和、車内で感じる騒音レベルを低減する「ヘルムホルツ式レゾネーター(消音器)」からなる「ノイズ・ミューター」といった技術が盛り込まれる
コンフォートコンタクト CC7のサイズ一覧

 こちらはドライのハンドリングコースに20mmと15mmの突起が単発、あるいは連続的に配置され、さらに50mmの突起も置かれて、10km/hと20km/h、そして30km/hで走行して乗り心地と音をじっくり感じてみるというものだ。こちらの試乗車はカローラセダン。タイヤサイズは195/65R15。

 15mmの連続した突起を通過した際にはショックをよく吸収し、いなすような収束によってタイヤの柔軟性を感じさせた。50mmの突起を通過した際は大きなショックが伝わってくるが角の取れたような感触となって伝わってくる。他のコンフォート系のタイヤでも同じような感触だと感じていたが、あたりが柔らかいのと通過した際のショック音が抑えられている。表現が難しいが「バタン!」が「パタン」ぐらいになっている。

 突起乗り越しのテストは神経を研ぎ澄ましても難しいことが多いが、その中でもコンフォートコンタクト CC7は丸いタイヤだと感じた。タイヤが丸いのは当たり前だが、衝撃時のあたりがマルいこと、さらに走行時の音に高周波のとがった音がないことことから感じられたものだ。

 ゆっくり走っても手応え感はやはりジワリとしたコンチネンタルタイヤ一族に共通したもので、見た目の繊細さとは裏腹に骨太な味わいだった。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学