レビュー
【タイヤレビュー】第7世代に進化したコンチネンタルの新コンフォートタイヤ2モデル、ウェット性能と乗り心地やいかに?
2023年6月19日 10:30
GKNテストコース内で行なわれたコンチネンタルタイヤの試乗会。スポーツタイヤの新製品「SportContact(スポーツコンタクト)7」については既報のとおりだが、コンフォート系も第7世代に進化した。
リプレイス市場中心の「PremiumContact(プレミアムコンタクト)7」「UltraContact(ウルトラコンタクト)UC7」「ComfortContact(コンフォートコンタクト)CC7」がそれで、今回の試乗ではウルトラコンタクト UC7とコンフォートコンタクト CC7に乗ることができた。いずれもアジア市場を重視したタイヤで、生産国はタイ、中国、マレーシアになる。
ブレーキレスポンスの良さと安定性の高さが際立つウルトラコンタクト UC7
ウルトラコンタクト UC7はウェットの安全性とオンロードでの静粛性、それに摩耗を重視したタイヤで、シンプルなストレートグルーブに斜め溝を入れてノイズや排水性に効果のあるパターン。見た目もスッキリした印象だ。
ウルトラコンタクト UC7に使われる基礎技術は大きく3つの要素からなり、1つは「ダイヤモンド・コンパウンド」と呼ばれる技術。シリカとレジンを配合することで、ロングライフでありながら転がり抵抗の低減とウェットグリップの向上が図られる。
静粛性には「ノイズ・ブレーカー3.0」と呼ばれるストレートグルーブの一部に突起を設けることで、高周波のパターンノイズを分散させる効果があるとしている。この突起、X-フロー・アクセラレーターは排水の面でもベンチュリー効果で流速を上げられ、効果的と言われる。
排水性に効果があるのはアドバンスド・アクア・チャネル。ストレートグルーブに導く斜めに入った薄い溝のことで、この溝で効率よく路面とタイヤにある水を吐き出す。
コンチネンタルタイヤでは、ダイヤモンド・コンパウンドの「D」とノイズ・ブレーカー3.0の「N」、それにアドバンスド・アクア・チャネルの「A」を取ってダイヤモンド「D.N.A」と呼称し、ウルトラコンタクト UC7の基幹技術としている。サイズは16インチ~18インチで今後サイズ拡大する予定だ。
試乗車はFFのカムリ WS。サイズは215/55R17の純正サイズで空気圧も指定空気圧の240kpa。標準タイヤと比較しやすくなっている。
まずは80km/hからのウェットのフル制動。水深はほぼ一定に保たれた路面で制動距離を測る。ABSは作動させているので、制動開始ポイントから思い切りブレーキペダルを踏み込めばよい。何回かトライできたが制動距離はほぼ変わらずで、一定した減速Gが得られているのが分かる。
他のタイヤでも同じテストを行なったが、ウルトラコンタクト UC7の場合は制動開始時点からわずかに早いタイミングで制動力がかかる。その制動感が最後まで続き、それが途中でスーと抜ける感触がない。ブレーキレスポンスの良さと安定性の高さが大きなセールスポイントだ。
同じウェットではダブルレーンチェンジを伴う緊急回避も経験できた。進入速度は同じく80km/hでかなりハンドルを大きく切らなければ規制パイロンをクリアするのは難しい。舵がどこまで効くのか想像しながら80km/hを維持するのはちょっと勇気がいる。
しかし意外と簡単にクリアできてしまった。操舵角が小さいところから舵が効き始め、最初のコーンの壁を通過するのもあっさりと可能だった。感覚的に最初のハンドル応答で方向が変わり始めた時点でかなり楽になった。次のハンドルの切り返しでアクセルを緩めずに速度を維持するのは結構大変で、ハンドルの切り返しで応答遅れが大きいと次のコーンの壁をクリアするのに苦労するが、こちらもハンドルの効きは予想以上によく、ダブルレーンチェンジも速度を落とすことなくクリアすることは予想以上に容易で、良い意味で期待を裏切られたウェット路面だった。
ダブルレーンチェンジでも制動同様に、ハンドル操作初期のジワリとグリップするところが安心感となる。最初にハンドルを通してどのように情報が伝達されるかが重要で、ウルトラコンタクト UC7はその面でもドライバーに寄り添ったタイヤだ。
ウルトラコンタクト UC7はウェットでの情報量が多く、安心して走れるタイヤの1つだ。これはスポーツコンタクト7でも感じられたコンチネンタルタイヤの味に通じ、一本筋が通っている。
見た目の繊細さとは裏腹に骨太な味わいのコンフォートコンタクト CC7
一方、もう1つの戦略タイヤであるコンフォートコンタクト CC7は、13インチ~17インチをカバーする28サイズが展開される。
静粛性と乗り心地がセールスポイントだが、コンチネンタルらしくウェットグリップも高いレベルにあるという。ウルトラコンタクト7が主要技術としてD.N.Aを冠としたのに対し、コンフォートコンタクト CC7は「Z.E.N」を基幹技術としている。
まずZは「ゼロ・ショック・パターン」。同じく少し細く入ったストレートグルーブのリブパターンに、きめ細かく入ったサイプが特徴で、路面からのショックをやわらげるパターンになっている。
Eは「エバー・フレックス・コンパウンド」。こちらもシリカの分散剤を効果的に使うことで柔軟なコンパウンドで路面の細かな荒れを包み込むように吸収し、合わせて高いウェットグリップを持たせることができた。
最後のNは「ノイズ・ミューター」。ウルトラコンタクト UC7でも使われたノイズブレーカー3.0で高周波音を分解し、耳障りの少ない音にする。また斜めに入ったサイプの途中に消音効果のあるホールを設けることで、共鳴周波数を吸収させ室内共鳴を減らしている。
パターンは主としてノイズに注意を払った細かいパターンで構成され、繊細な感じを受けるがサイドウォールはなかなか華やかなデザインが施されている。
こちらはドライのハンドリングコースに20mmと15mmの突起が単発、あるいは連続的に配置され、さらに50mmの突起も置かれて、10km/hと20km/h、そして30km/hで走行して乗り心地と音をじっくり感じてみるというものだ。こちらの試乗車はカローラセダン。タイヤサイズは195/65R15。
15mmの連続した突起を通過した際にはショックをよく吸収し、いなすような収束によってタイヤの柔軟性を感じさせた。50mmの突起を通過した際は大きなショックが伝わってくるが角の取れたような感触となって伝わってくる。他のコンフォート系のタイヤでも同じような感触だと感じていたが、あたりが柔らかいのと通過した際のショック音が抑えられている。表現が難しいが「バタン!」が「パタン」ぐらいになっている。
突起乗り越しのテストは神経を研ぎ澄ましても難しいことが多いが、その中でもコンフォートコンタクト CC7は丸いタイヤだと感じた。タイヤが丸いのは当たり前だが、衝撃時のあたりがマルいこと、さらに走行時の音に高周波のとがった音がないことことから感じられたものだ。
ゆっくり走っても手応え感はやはりジワリとしたコンチネンタルタイヤ一族に共通したもので、見た目の繊細さとは裏腹に骨太な味わいだった。