レビュー

【タイヤレビュー】ミシュラン「プライマシー5」、頼り甲斐のある仕上がりと最後まで持続する性能に注目

2025年3月に発売された「プライマシー5」を試した

プライマシーシリーズを整理

 ミシュランのプレミアムコンフォートタイヤであるPRIMACY(プライマシー)シリーズが変化した。かつては「プライマシー4+」、「プライマシー SUV+」そして「e・プライマシー」という3つの商品をラインアップしていた。だが今回のモデルチェンジをきっかけに「プライマシー4+」と「プライマシー SUV+」が統合されることとなり、「プライマシー5」へと進化することになった。

 その目的はミシュランが「持続可能なMobilityの実現」という理念を持つからだという。環境に関わる性能の優先順位を引き上げるとして、その1つが数多くあるモデルの統合だったというから興味深い。かつてはユーザーニーズに合わせて細かく商品を仕立てていたが、その結果として在庫を多く持つ必要があり、それが販売店へ行ったり来たりという無駄があったようだ。店頭に来たエンドユーザーがSUVに乗っていたら、乗用車用としたタイヤでは受け入れてもらえず、SUV用と入れ替えなければならないという事象もあり、その分で輸送に無駄が出る。商品を統一しておけばサイズさえ合致していれば即座にエンドユーザーに届けることが可能ということなのだろう。

 銘柄が統合したもう1つの理由は乗用車用でもSUV用でもユーザーニーズに大きな差がないということだった。求めるのは静粛性やウエット性能という項目が多く、それなら同じ製品で両方をカバーできるようなものを作ったほうが効率がよいということだ。結果として「プライマシー5」ではコンパクトカー、セダン、ミニバン、SUVと幅広く対応している。とはいえ、もちろんサイズごとに設計の最適化はしており、たとえばSUVが履くようなサイズに対しては高荷重に耐えられるようにしている。

「プライマシー5」は濡れた路面での安心感が長く続く、環境にも配慮したプレミアムコンフォートタイヤ。「プライマシー4+」と「プライマシー SUV+」の後継モデルで、コンパクトカー、セダン、ミニバン、SUVと幅広い車種に対応する。16インチ~20インチまでの全42サイズを展開
「プライマシー5」の主な採用技術としては、ショルダー側の縦溝の幅を広げて排水性能を向上させつつ、太い横溝と細い横溝を組み合わせることでブロックのエッジ数を増やし、静粛性を損なわずに排水性能・エッジ効果が向上する「LONG LASTING SCULPTURE(ロングラスティング スカルプチャー)」を採用。プライマシー 4+に比べて、新品時および摩耗した状態のどちらでも溝の体積が10%以上増加した
プライマシーシリーズの代表的な技術である「サイレントリブテクノロジー 」コンセプトを踏襲しつつ、3本のセンターリブに配置している横溝の両端部分が主溝に接続する角度の最適化を実施。この3世代目へと進化した「Silent rib gen-3(サイレントリブ ジェン-3)」により、各ブロックのエッジ部分の剛性が高まり、ブロックの振動を抑制し、ノイズ軽減および耐摩耗性を向上させたという

 特徴はやはりウエット性能で低燃費タイヤのグレーディングで最高グレードのaを取得している点だ。また、耐摩耗性は約30%向上。摩耗時のウエットブレーキング性能も約2.4%向上したようだ。一方で転がり抵抗は約7%低減しており、低燃費タイヤのグレーディングで上から2つ目のAAを取得したサイズも増加している。ここまであらゆる性能を引き上げつつも、静粛性は「プライマシー4+」と同等だという。

残溝2mmでウエットブレーキテスト

まずはセレナでテストコースの外周路を走行

 そんな「プライマシー5」をまずはテストコースの外周路でミニバンのセレナに装着して走ってみる。まず感じたのはクセがなく軽快な反応を示すステアリング応答と、入力を即座に収める乗り心地だった。旧製品に比べるとやや硬質になったような感覚だが、いつまでも揺らぐよりもフラットに走るのは好感触。静粛性についても気になるところがない。ミニバンをきちんと走らせてくれる頼り甲斐のある仕上がりがうれしい。

 場所を移してウエットハンドリング路ではSUVのメルセデス・ベンツ GLAに乗り、旧製品となる「プライマシー4 SUV+」との比較を行なった。比べて感じるのは「プライマシー5」が生み出す剛性感の高さだった。旧製品のようにタイヤがヨレて先読みしずらいということはなく、狙ったラインにビシッと一発で行ける感覚に長けていることが印象的。特にブレーキングからターンインまでの動きに正確性が高く、少ない操舵角で駆け抜けることが可能なところが光っていた。

旧製品と比べ、「プライマシー5」は剛性感の高さが光った

 最後はゴルフに乗って80km/hからのウエットブレーキテストを行なった。それも残溝2mmまで減らした状態で試すという。だが、踏み始めからABSが効くようなハードブレーキを行なうと、ブレーキを踏んだ瞬間から減速Gがしっかりと立ち上がっていた。リアの接地感はやや抜け気味だったが、減った状態であっても排水をきちんと行なえていることが伺えた。おそらく縦溝を太めに設定していることが効いているのだろう。

残溝2mmまで減らした状態の「プライマシー5」でウエットブレーキテスト

 これなら最後まできちんと使うことができそうだ。あらゆる無駄を排除しながらも、買った時から捨てるまで性能を持続できる「プライマシー5」。サスティナビリティを大切にしたという言葉通りの仕上がりが感じられるタイヤだった。

コンフォートタイヤ「プライマシー5」は性能が最後まで持続してくれる
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。