レビュー

【タイヤレビュー】ミシュランの最新ハイグリップスポーツタイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」、特筆すべきは快適性の高さ

2026年4月に登場したハイグリップスポーツタイヤ「パイロットスポーツ 5 エナジー」を試した

「パイロットスポーツEV」の後継モデル

 2030年までに自社製品におけるサスティナブル素材の使用割合を40%へと拡大し、2050年にはこれを100%持続可能にする。こうした高い目標を掲げるミシュランが、報道陣に向けてサスティナビリティの取り組みを理解するためのワークショップを初めて開催。さらに新製品の試乗会を行なった。

 試乗したのは、2026年1月に発表された「パイロットスポーツ 5 エナジー」(以下、PS5エナジー)と「プライマシー 5 エナジー」の2つだ。どちらのタイヤにも“Energy”(エナジー)の名前が付くことから分かるとおり、「転がり抵抗の低減」と「耐摩耗性の向上」を強く意識したタイヤである。

 試乗コースはミシュランのテストドライブとしては定例となった、GKNドライブラインジャパンの栃木プルービンググラウンドだ。基本メニューは「外周路」と「ウェットハンドリング路」の走行で、かつプライマシー 5 エナジーには新品と摩耗状態(残溝2mm)の制動距離を比較する「ウェットブレーキング」テストが用意された。

 最初に試乗したのはPS5エナジー。まずその立ち位置から説明すると、このタイヤは「パイロットスポーツEV」の後継モデルとなる。

 ちなみに同タイヤは“EV”という名前が付くことで勘違いされやすいが、BEV(バッテリEV)専用タイヤではない。その守備範囲はハイブリッドやマイルドハイブリッドといった「電動化されたクルマたち」にまで広く及んでおり、PS5エナジーもこれに準ずる。そのコンセプトは、高い運動性能を備えるパイロットスポーツシリーズに、高い環境性能を両立させる次世代のスポーツタイヤだ。

 性能面で見て行くとPS5エナジーは、まず先代モデルに対してウェットブレーキング性能を3.3%向上。タイヤラベリング制度におけるウェットグレードでは、スポーツタイヤながら「b」を獲得した。また転がり抵抗ではミシュランのスポーツタイヤとしては初めて「AAA/AA」を獲得(先代モデルは「AA」)し、低燃費性能を向上。合わせて耐摩耗性もグレードアップさせている。

PS5エナジーは「パイロットスポーツEV」の後継モデルとして開発されたタイヤで、スポーツ走行に求められるハンドリング性能に加え、低燃費性能、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のさらなる向上を実現するなど、環境性能にも配慮した作りになっている。近年は電動化によるバッテリ搭載などによって車両の大型化と重量化がタイヤの摩耗を加速させ、交換サイクルの短縮が懸念されているが、PS5エナジーは均一な接地圧分布と高い接地安定性を実現することでタイヤの摩耗を抑制し、交換時期を遅らせることでドライバーが長期間安心して使用できる特徴を備えるという

 そして興味深いのは今回ミシュランが、その比較対象としてパイロットスポーツEVではなく「パイロットスポーツ 4 SUV」(以下、PS4 SUV)を用意したことだ。その理由はより高い運動性能を発揮するPS SUVと比べることで、「“Energy”の名前が付いてもパイロットスポーツと呼ぶにふさわしい動的性能が得られていることを体感してもらうため」とのことだった。

PS5エナジーはリッチな乗り味が得られるタイヤ

bZ4Xに装着されたPS5エナジーをチェック

 試乗車はトヨタのBEV「bZ4X」で、タイヤサイズは純正の235/50R20だ。

 外周路のメニューは30km/hを目安とした低速スラロームからスタート。ここでの操舵応答性は、当然ながらPS4 SUVの方が操舵初期からグリップ感が高く、ハンドリングレスポンスも俊敏だった。

 かたやPS5エナジーは、パキッとしたコーナリングパワー(CP)の立ち上がり感こそないものの、タイヤのたわみや操舵量に応じて、自然にグリップを高めていく特性だった。

低速スラロームではタイヤのたわみや操舵量に応じて自然にグリップを高めていく感触が得られた

 1つめのバンクは80km/hを目安にアプローチ。どちらもこの程度の速度レンジで挙動を乱すようなタイヤではないが、アプローチから高い剛性感を見せたのはやはりPS4 SUVだ。ただしタイヤのグリップが余りすぎていて、コーナリング中の操舵に対し過敏に反応してしまう一面も感じた。

 対してPS5エナジーは、タイヤに荷重を与えてから本領を発揮するタイプ。だから少し早い段階からタイヤを切り始める必要はあるが、適正荷重を得たときの接地感がジャストフィットしている。より足まわりが硬く、スポーティなSUVならPS4 SUVだが、今回はPS5エナジーの方がクルマの性格には合っていると感じた。

 その差が最も顕著に表れたのは、80km/hからアプローチするダブルレーンチェンジだ。PS4 SUVはタイヤがしっかりしている分だけ速度の対する先読みがしやすく、わずかなアクセルオフから狙いどおりのラインをトレースできる。ただしあまり減速せずにターンすると、荷重の重移動速度も速くなる。タイヤ自体はこの慣性重量を余裕で受け止めきっているが、クルマ側としては、ロールが遅れて発生する傾向が強かった。いわゆる“オツリ”だ。

 一方のPS5エナジーは、アプローチで速度を落とさなければならない分だけ全ての帳尻が合う。荷重が乗ったフロントタイヤは切り始めからほどよいグリップを発揮し、切り返しではリアタイヤを多少変形させながらも、そのままアクセルを合わせていくことができる。

 ターンインでの確かな手応えか、ターンしてからのバランスか。タイヤとの対話がある分、自分はPS5エナジーがやっぱり好みだが、どちらにしろ思うのはBEVの重さだ。この分だと電動化時代におけるタイヤの役割は、ますます大きくなるなと感じた。

高速巡航時には高い快適性が得られた

 こうした穏やかな特性を持つPS5エナジーで特筆すべきは快適性の高さだ。高速巡航時においてもPS4 SUVに対してロード/パターンノイズは明らかに少なく、継ぎ目を模した段差路でも、突き上げを優しく吸収しながら素早く減衰できる。

 技術的な側面から見るとそのトレッドは、ショルダー部分に転がり抵抗を高める「エナジーパッシブコンパウンド」を、センター分にはモータースポーツ由来の「グリップアダプティブコンパウンド」を採用している。しかし走らせてもタイヤに硬さは全く感じられない。とても転がり抵抗AAAを獲得するタイヤとは思えない快適さなのだが、それは構造も含めたトータルバランスが高いからだろう。

 構造材としてはスチールベルト、キャッププライ、トレッド下部のパッケージを軽量化した「スリムベルト」を採用し、強度や剛性を保ちながらもバネ下の動きをよくしながら燃費性能にも貢献。またホイールとの接点となるビードフィラーまわりの剛性を入念にチューニングしたことが、この乗り味を実現できたカギだと思われる。

ウェットハンドリング路での接地感はPS5エナジーに軍配が上がった

 最後はウェットハンドリング路を走った。ここでも操舵応答性の早さや、転舵時の剛性感はPS4 SUVが一枚上手だったが、濡れた路面での接地感はPS5エナジーの方が高かった。単純にブレーキングGの立ち上がりや旋回スピードを測ればPS4 SUVの方が速いはずだが、PS5エナジーの方が扱いやすいのだ。

 総じてPS5エナジーはリッチな乗り味が得られるパイロットスポーツに仕上がっていた。テストコースでの印象でしか述べられないが、むしろこれがミシュランのプレミアムラインである「プライマシー」だと言われてもよいくらいだと思えた。

PS5エナジーとパイロットスポーツEVを比較すると、耐摩耗性、低燃費性、ウェット性能で上まわっている結果が公表されている
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。