レビュー

【タイヤレビュー】ミシュラン「プライマシー5エナジー」、最大の特徴はパイロットスポーツ5エナジー以上の「穏やかさ」

2026年4月に発売となったプレミアム・コンフォートタイヤ「プライマシー5エナジー」を試した

OEタイヤからリプレイスする選択肢の1つになる

 前回の「パイロットスポーツ5エナジー」に続き、「プライマシー5エナジー」をインプレッションしてみよう。

 ミシュランのプレミアム・コンフォートラインである「プライマシー」シリーズにおいて、より高い水準でサスティナブル性能を目指したタイヤがプライマシー5エナジーだ。モデル的には「e・Primacy」(イー・プライマシー)の後継モデルに当たり、スペック的には「ウェット性能」と「耐摩耗性能」のレベルをより高めた。また低燃費性能においては、変わらず「AAA」を獲得している。

 そんなプライマシー5エナジーの試乗メニューは、「高速周回路」「ウェットハンドリング路」(195/50R19)のあとに、新品時と残溝2mmの状態で比較する「ウェットブレーキング」(195/60R17)が付け加えられた。車輌はプリウス(ハイブリッド)だ。

今回試したプライマシー5エナジーは「e-Primacy」の後継製品となり、タイヤラベリング制度において転がり抵抗係数は最高グレード「AAA」、ウェットグリップ性能は「b~C」を獲得。ウェットブレーキング性能を約4.5%向上させるとともに、優れた耐摩耗性能や静粛性能を持たせたのが特徴
新世代の合成ゴムを使用したエナジーコンパウンド「エナジー パッシブ 2.0 コンパウンド 」を採用することにより、優れた転がり抵抗と濡れた路面でのグリップ性能、さらには耐摩耗性を高い次元でバランスさせることに成功。また、エネルギー損失を極限まで減らすためのトレッド構造「スリムベルト」を採用。スチールベルト、キャッププライ、アンダートレッド部のパッケージの強度を保ちつつスリム化し、転がり抵抗を低減。燃費やBEVのバッテリレンジの向上に貢献する
今回はプリウスで試した

 プライマシー5エナジーを走らせて感じる最大の特徴は、パイロットスポーツ5エナジー以上の「穏やかさ」だ。スラロームや2つのバンク、ダブルレーンチェンジといったハンドリングセクションで感じるのは素直な操縦特性。パイロットスポーツのようなアジリティは持ち合わせていないけれど、切れば切っただけ、ブレーキを踏めば踏んだだけ接地感を高めてくれる優しいキャラクターである。低燃費性能タイヤながら硬さの感じられない、もっちりとした乗り味は今時のニーズにも合っているから、OEタイヤからリプレイスする選択肢の1つになると思う。

 またウェット路面でも、そのしなやかな特性がパイロットスポーツ5エナジー以上に際立っていた。実際そのマトリクスチャートでも、e・Primacyと比べて大きく引き上げられているのはウェット性能であり、そのブレーキング性能は約4.5%向上している。またウェットグレードでも先代のウェット「C」から、「b/c」へとグリップ力を高めた。そして肝心な転がり抵抗は、依然として「AAA」を維持している。

ウェット路面ではしなやかな特性がパイロットスポーツ5エナジー以上に際立っていた

2つの“Energy”を試して感じたこととは?

80km/hからのウェットブレーキングテストも行なった

 80km/hからのウェットブレーキングテストは195/60R17サイズで行なった。新品時における制動距離は29.90m(GPSロガーで計測)で、非常に優秀な結果だった。対して残溝2mmのベストは36.62mとなり、その差は6.72m、伸び率は22.47%という結果となった。

 摩耗限界(1.6mm)に近い溝量でこの値を出すのは極めて優秀であり、タイヤを最後まで使い切るミシュランの狙いどおりだと言える。また削られたタイヤの表面を見たとき、排水溝がきれいに残っているのも説得力があった。

ウェットブレーキングテストは新品と残溝2mmのタイヤで実施。残溝2mmのタイヤの排水溝がしっかり残っているのが分かる

 こうした特性を生み出す技術としては、「エナジー パッシブ2.0コンパウンド」が挙げられる。新世代合成ゴムとシリカの結合を高めたこのコンパウンドは、ドライ路面で転がり抵抗を抑えながら、ウェット路面では高いグリップ性能を発揮してくれる。またシリカを高濃度で配合かつ攪拌することにより、ゴムがちぎれにくくなる。つまり耐摩耗性も高められている。

 構造的にはパイロットスポーツ5エナジーと同様、スリムベルトを採用して軽量化を実現。内部構造が最適化されたことでトレッド面の接地分部も均一になり(マックスタッチ・コンストラクション)、走行性能と摩耗性能という背反する要素が両立できている。

 また静粛性では、サイズの異なるブロックを最適配置して不快な周波数帯の音を抑える「ピアノ アコースティックテクノロジー」を採用。かつ3本のセンターリブに補強を入れて、従来の「サイレント・リブテクノロジー」を強化した。正直、静粛性ではスポーツタイヤであるパイロットスポーツ5エナジーの方が高かったと感じたが、そこにはbZ4Xの車格が大きく影響していると思う。

 今回2つの“Energy”を試して感じたのは、タイヤのしなやかさだ。通常エコタイヤ性能を高めると変形を防ぐためにタイヤは硬くなりがちだが、どちらもスムーズな転がりを感じさせながら、路面からの入力をジワッと受け止め、その乗り心地は非常に快適だった。より不規則な入力が連続する一般道で、この柔軟性はかなりのアドバンテージになるはず。

 古いタイプの筆者に言わせればそれは往年のミシュランが戻ってきた印象で、ぜひともリアルワールドで試したいと思えるタイヤに仕上がっていた。

パイロットスポーツ5エナジー、プライマシー5エナジーともにタイヤのしなやかさがしっかり感じられた
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。